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第13回 長崎市原子爆弾放射線影響研究会

更新日:2022年6月6日 ページID:038702

長崎市の附属機関について(会議録のページ)

担当所属名

原爆被爆対策部調査課

会議名

第13回 長崎市原子爆弾放射線影響研究会

日時

令和4年3月30日(水曜日) 14時00分~15時40分

場所

長崎原爆資料館 会議室

議題

【審議事項】 

1. EPI-CT study論文の取扱いについて

2.  韓国の若年集団における低線量電離放射線診断の被ばくと癌リスクの関連性

3. 低線量、高エネルギー被ばく集団の疫学調査における交絡と選択バイアスの評価

4. 低線量照射とがんに関する疫学研究:理論的根拠、論文の枠組、適切な研究の概要

【報告】

 1. 広島「黒い雨」訴訟に係る長崎市の対応について

審議内容

審議事項1 EPI-CT study論文の取扱いについて

(会長)

 ヨーロッパで行われている大規模な小児CTスキャンによる低線量被ばくの疫学研究であるEPI-CT studyの論文について、現在、最終段階の論文を書かれているところだと推定している。

当研究会では、EPI-CT studyはこれまで発表されてきたものの中で、最も重要な研究であるとして、その動向を注視してきた。昨年12月に静岡社会健康医学大学院大学で開かれた放射線の健康問題のセミナーにおいて、EPI-CT studyの責任者であるフランスのAusreleさんのEPI-CT studyの新たな論文が近々出されるとの情報をA委員より連絡いただいた。

今後論文が出るだろうということがわかったが、もう少し待たないといけない状況である。

前回のこの会議で、EPI-CT studyの最後の論文が令和3年度に出るだろうということで、これをもって研究会の最終のまとめに入ると話していたが、できなくなったということをお詫びし、ご了承願いたい。この論文が出た時に、結論を出してはどうかと考えている。

また、同様の大型の疫学論文が韓国から出ている。それも含めて、令和4年度に最終的にまとめたいと考えている。

(A委員)

 静岡での勉強会に参加していた方によると、ヨーロッパは、コロナの関係で論文の査読がかなり滞っているので、結構時間がかかるようである。

(会長)

本研究会としてはEPI-CT studyの論文を待って、最終結論に入りたい。

審議事項2 韓国の若年集団における低線量電離放射線診断の被ばくと

癌リスクの関連性 

(会長)

 情報提供シートをご覧いただきたい。

これは、韓国のソウルにあるKorean university からの報告で、JAMAというアメリカで最大の内科の雑誌の電子版に掲載された論文である。

抄録から紹介すると、研究の主要目標と方法は、被ばくのあり、なしによるがん発症の頻度の比IRRを求めることである。

結果については、コホート、集団のサイズが世界最大で1,200万である。また、低線量の検査、CT検査、CTスキャン他、低線量のレントゲン検査も一部含むが、8割以上はCT検査の症例である。 

被ばくしたグループが127万5,829人でこれも最大級であり、対象の非被ばく群は、1079万2992人である。2006年の1月1日から2015年12月31日の期間において、癌の発生がこの集団から2万1,912人出ており、被ばく群の127万5,829人のうち1,444人、1.4%の方ががんに罹患している。

 dだが、被ばく群のがん発生の全体頻度は、非被ばく群のそれより大きい。単純計算でIRRは1.64である。95%CIとは信頼範囲だが、1.56から1.73である。統計的な有意差のP値が0.001である。

eだが、全体の約80%がCT検査の被ばくによるものである。そのCT検査に限ってみるとIRRは1.54に少し下がる。これも95%CIは、記載のとおり割合狭い範囲であり、P値が0.001である。がんの種類別では骨髄性白血病群でIRRは2.148、CIが1.86から2.46であり、これも同じレベルで有意である。骨髄異形成症候群、MDSは、IRRは2.48でCIが1.77から3.47と有意である。乳がん群のIRRが2.32でCIが1.35から3.99で、割合どれも狭い範囲であり、これも有意である。甲状腺がん群のIRRが2.19でCIが1.97から2.20で有意であり、全て有意という結果だった。

このことにより、著者らの結論として、この大規模コホート研究は、低線量の診断放射線被ばくによりがん発生率が上昇することを明らかにした。従って、低線量といえどもその検査は絶対に必要とされる場合にのみ、実施すべきであるという提言をしている。

4番目のデータベースだが、韓国は国民番号が95%以上普及しており、色々なデータ収集を全てコンピュータでできるという状況で、色々な病気にかかった時の保険請求なども全てデジタル化されており、KNHISという略語で呼ばれているデータベースである。

5番目のLag Periodは、CT検査をしてから1年後、2年後、5年後という3つの異なる期間を観察しているが、観察期間が長くなるにつれて、IRR比は1年目が1.72、2年目が1.64、5年目が1.48と下がっていく。これが全て下がってしまうと、CT検査をしてから5年以内にほとんどのがんが出てしまうということになるが、そうではなく、5年までで少し下がるが、5年以降にがんが出てきている部分を検算すると、IRRは有意差が出てくる。

この1年2年5年というIRRの3つのデータは、2年目の1.64を標準とした時に、1年と5年のIRRの有意差が統計学的になかったというのが、彼らのデータがある程度信頼できる一つの根拠になっている。

 7番目、一つの大きな論文の欠点とも言えるのは、低線量電離放射線検査をなぜ実施したのか、特にCT検査をなぜしたのかという理由についてのデータが全くない。これは、著者らも述べている。

 本研究の強力な部分として著者らが挙げたのは、1,200万はこれまで発表された疫学研究中、最大規模の低線量被ばくの健康影響に関するコホートであるということである。

 本研究の弱点は、検査の理由についてのデータが欠落しているということと、Reverse causation、まだがんが明らかになっていないが、何らかの症状が出ていて、そこでCT検査や他の放射線科の低線量の検査をしたりした場合、がんがその後1年後2年後5年後に現れてきた場合に、これをReverse causationと言って、逆行性のがんの原因と呼ばれているが、これを完全に除外できていないと著者らは言っている。

 次のページ、Berrington de Gozalez et alという人達が以前に出した研究結果も同じようにCT検査を受けた若年者から有意にがんが多く出ているという報告をしているが、やはり今もReverse causationを心配し、元々CT検査をされた病院の放射線科のシステムに戻って、死因分析、病理検査結果の分析をしなおしている。その結果は、以前にオリジナルな論文として出したものと結果的に有意差は認められなかったということで、Reverse causationというのはあっても僅かではないかとBerrington de Gozalez et alらは考えたというわけである。

 結論として、この大規模コホート研究は後ろ向き研究であるが、低線量被ばくをもたらす電離放射線被ばくを伴う検査はできる限り適応を限り、線量も最低限にする必要性が示された。検査とがんリスクとの関連には、慎重な判断を要するということで、これは放射線健康科学の面での結論をここに引っ張ってきている。 

低線量その他の考察というのはないが、CT検査が8割方で、CT検査に使われる線量が割合低いところで、20mSvなどで低線量であることは間違いないと思う。線量データがないというのは、大きな欠陥である。

 私の意見として、1番目に韓国のKNHISを最大限に利用した大規模コホート研究である。

そして、2番目に全低線量検査及びCT検査、全CT検査で統計学的有意差をもってがんリスクの上昇が確認できている。3番目、慎重にReverse causation、遡ってがんの発症前の症状がCT検査をするという判断となった可能性を1年2年及び5年のタイムラグを設けてそれぞれのIRR、比率を検討しているが、低下傾向は認められたが有意差はなかったということである。研究結果の信頼性は、保たれていると著者らは結論付けている。

この著者らの結論は、一応妥当だと考える。4番目、個人線量が全く欠落していることが、がんリスクの解析を目的とした研究としては、欠陥がある。しかし、このことでIRRの被ばく群における上昇を否定するものではないと判断する。CT検査が実施された病院の放射線科、先ほどのGonzalezさんらのやり方、CT撮影条件の記録に当たれば、ある程度線量を推定できるのではないかと思うが、あるいはCTをした理由なども解析できると思うが、今回はされていないようである。

 最初の論文の説明は、以上である。

(B委員)

 課題として一番大きいのは会長が言われたようにReverse causationの排除が十分できてないということと、線量がなく線量効果関係が得られていないため、放射線のリスクの論文としてのクオリティとしては、それほど高い評価はできないのではないかと思う。

この論文の一番のポイントは、低線量の医療被ばくにおいてもリスクを上げる可能性を示唆するデータが得られたということで、一つの警鐘と言うか、単に必要のない人に無駄に医療放射線による検査をしてはいけないと言うようなことが恐らく重点であり、リスクを評価するうえでの論文の精度というのは、あまり持っていないように思う。

 特に疫学的研究で一番重要なのは、交絡因子をどうやって調整するかということである。

そういう観点からこの論文は、色々な交絡因子があると思うが、その一つが先程言われたReverse causationとなるようながんの遺伝的素因を持っているような人を含んでいる可能性があるということである。当然、普通の子供達にはCT検査はしないため、CT検査を受ける子供の集団という意味では、既にそこに背景があるということである。遺伝的な素因がある可能性もあるし、それ以外の可能性もあるということで、少なくとも病気の何らかの要因を持った子供の集団が含まれている可能性があると思われ、そういう調整ができていないというのが結構大きいと思う。

 会長にお伺いしたい。リスクを上げる例として Myelodysplasia (骨髄異形成症候群)や乳がんなどが書かれているが、会長の研究でもMyelodysplasia(骨髄異形成症候群)が被爆者から見つかってきていると発表されている。その場合も結構時間が経ってから発症するといったケースが多いと思うが、その期間として例えば5年、あるいは乳がんでも5年というのはすごく早いと思うが、がんを考える上では問題にならないか。

(会長)  

 このコホートは年齢が比較的低い層のデータなので、本来はあまり骨髄異形成症候群が出るような年齢ではない。そこでこれだけの骨髄異形成症候群が診断されているというのは、一応そのまま受け取らないとしようがないと思うが。これだけよく出たと思う。

(B委員)

 そういう点からしても、骨髄性白血病が出ると言われれば、放射線との因果関係がはっきりしているため、そういう発症の仕方はあるかもしれないが、大人で非常に長い潜伏期をもって発症しているようなMyelodysplasia(骨髄異形成症候群)が子供に見つかること自体がそもそも異常な所見だと思う。

(会長)

 小児科領域でも骨髄異形成症候群が何種類か設定されてはいる。細かいデータが出ていないため、そこにはアプローチできないが、それが増えているという可能性はあるかもしれない。小児タイプのMDSは、大人のMDSと相当違うMDSだと思うが、それが細かく書いていないため、わからない。

(B委員)

 例えば、今までの低線量影響の研究で小児のMyelodysplasia(骨髄異形成症候群)が増えるというような報告はあるか。

(会長)

 それは見たことない。

 そういう年齢との関係をこのMDS群はどうなっているのかというのは、やはりこのグループはレポートするべきだと思う。いわゆる60代70代で増えてくる大人のタイプのMDSとは少し違うと思う。血液専門医学の中に、名前が入っていないような気がする。だから、診断されたままに統計に使っているのではないかと思う。

(会長)

 他に意見はあるか。

(C委員)  

 今、B委員がご指摘されたところに私も同意で、この論文の結論の部分は、納得できることが多い。特に小児の場合、医療での放射線の検査はやはり慎重に判断すべきで、線量の低減化を図るべきだろうということ、あるいは、その検査の正当性、妥当性というものを慎重に吟味すべきであるという論文の結論自体は、その通りだと思う。

 ただ、B委員の指摘のとおり、潜伏期の問題が非常に気になる。私が仕事をしてきたチェルノブイリでは、ご承知のように甲状腺がんが増えている。大体、甲状腺がんの上昇というものが認められているのは、ベラルーシで事故から5年後位から上昇が認められる。ロシアがもう少し遅れて上昇が認められている。基本的に事故当時0歳から5歳くらいの子供達が、甲状腺がんが多発する世代として認められている。ただ皆さんご承知のとおり、原爆被爆者の固形がんのというのは、もう少し潜伏期間が長い。10年から数十年という潜伏期を経て上昇が始まっているということで、チェルノブイリの場合は、小児甲状腺がんがそれよりも短い、5年以降にということなので、少し潜伏期間が短くなっている。これは何故かということがよく議論になるが、その中でよく言われるのが線量である。チェルノブイリの事故後に避難した子供達の内部被ばくによる甲状腺の被ばく線量は、中央値でだいたい200から500mSvと言われている。10%くらいの人は 1Sv つまり1000mSvを超えているという推計結果が出ており、かなり高い線量である。そういった甲状腺に限局した非常に高い内部被ばくをしたことによって比較的早い、短い潜伏期間で甲状腺がんが小児において上昇したのではないかというのが一つの考えとして出されている。

 今言ったような潜伏期の問題、おそらくチェルノブイリに比べれば2桁線量が低いと思われる、そういった方々でなぜその1年後から種々の白血病あるいは固形がん、MDSも含めて増加しているかということについては、慎重に吟味する必要があるかと思う。

(会長)

 このグループでも甲状腺がんが出ていて、IRRが2.19となっており、5年から、10年間は見ているので、10年位の間に甲状腺がんが低線量から出ることは、あまりチェルノブイリでは観察されていないということか。

(C委員)

 そうである。チェルノブイリもあくまでも推定値なので、非常に誤差も大きいと思うが、この線量域で統計的な有意な上昇は認められていない。

(会長)

 骨髄異形成症候群については、小児タイプがあるので、それがどういう風に出ているかを発表してもらいたいというのは大事なところなので、これはレターを出したい。

(D委員)  

 線量のデータが無いという話だが、CTそのものも全身CTではなく、おそらく局所のCTだと思う。がんのリスクが臓器別に計算されているが、そもそも臓器別の線量も違ってくる。 

臓器側の感受性の問題と当たっているdose(線量)、この二つを分けることができなくて、結果的にはこのようにリスクが臓器で違っていると思う。だからそこをもう少し、明確にすべきと感じる。

(会長)

肺がんの部分では、そういう臓器との関係などを述べてある。確かに臓器との関係もあるし、なぜそこで臓器線量みたいなものを調べなかったのかという疑問もある。そういうのは、やはりレターを書かないといけないと思う。

 一応、結論はあまりにも大きい統計値なので認めざるを得ないという論文だと思う。これでこの論文の評価は終わりたい。

審議事項 3 低線量、高エネルギー被ばく集団の疫学調査における交絡と選択バイアスの評価   

(C委員)

 この論文は、同じく低線量被ばくの高エネルギー、比較的1回の検査で、短時間の検査で被ばくした集団についての論文である。

 概要だが、低線量被ばくによるがんリスクについては議論の余地がある。2006年のBEIR Ⅶ以来、多くの論文が低線量被ばくによるがんリスクを報告している。この論文では、これらの研究をレビューしてリスクの大きさを評価して、その結果がまたバイアスによって変化するかどうかを評価するものである。

その結果、固形がんについて22の論文のうち16が、単位線量当たりのERR過剰相対リスクが陽性、ポジティブであった。潜在的なバイアスを伴うと判断された4つの研究を除外して18の論文、そのうちの12が単位あたりのERR過剰相対リスクがポジティブで、白血病については20件の研究のうち17件がポジティブで、正のバイアスの可能性がある5件の研究を除外した後も単位線量あたりの過剰相対リスクの中央値はポジティブ、要するにプラスだったということである。メタ解析の結果では、100mGyあたりの過剰相対リスクは、成人被ばくの固形がんで0.029。95%信頼区間が0.011から0.047。これは0を跨がないと統計学的に有意と判断する。この場合は0を跨いでいないので、統計的には有意ということになる。白血病の過剰相対リスクは0.16これも95%信頼区間が0.07から0.25で0を跨いでいないため、有意となる。小児被ばくでは、白血病の100mGyあたりの過剰相対リスクは2.84。これも95%信頼区間が0.37から5.32で有意ということになる。

結論として、近年の疫学研究は、低線量被ばくによるがんリスクを示しているといえる。さらに、これらの低線量被ばくによるがんリスクは、原爆被爆者のがんリスクと整合性が

あるといえるというのが著者の結論である。

私の意見として、この論文の長所は、非常に丁寧に各論文のバイアスの存在の可能性について評価し、バイアスが存在する可能性がある研究を取り除いたうえで、メタ解析を行うということである。要するに、それぞれの研究のデータを足して、よりサンプルの数を大きくすることによって、より精度の高い研究にしようという試みだが、それで過剰相対リスクがどのようになるかを検討している。最終的な結果は、原爆被爆者の場合は、0から125mSvの線量域における1SvあたりのERR過剰相対リスクが0.74なので、それと比べてもそんなに大きく外れた値ではないかと思う。

ただ、いくつかの論文を集めることによって、サンプルサイズを大きくしようという試みだが、サンプルサイズを大きくした論文の中には、例えば、医療被ばくのようにCT検査など何回か複数回に分けて数分で急性の被ばくをするような群、あるいは、慢性に1年間や数年間でずっと慢性に被ばくするような集団、原発をはじめとする放射線作業環境の労働者の職業被ばくがある。一般的に言えば、急性の被ばく集団よりも影響が少ないと考えられる集団である。さらにインドや中国などの一部にある自然放射線が高い地域の住民、これも同じように慢性の被ばくで、ずっと住むことにより慢性の被ばくをするといった地域のデータ、これを被ばく形態、つまり線量率を勘案することなくプールして解析している点には注意する必要がある。

 こういった研究で常に議論されていることだが、論文の対象となった国々や地域のがんの診断能力、ベースラインのがんの発生頻度等、ある意味最も大きな潜在性のバイアスを考慮していない。当然ながら、人種によってもがんの頻度というのは違いがあり、民族でも当然違うというはよく知られているが、このベースラインのがんの発生頻度を考慮できていないというのは、この種のプール解析の研究の限界だと思う。一例をあげると、中国の自然放射線が高い地域に住む住人のデータというのは、1979年から1998年に集められたものをもとに解析を行っている。一方で、日本の原発労働者の疫学調査は、1991年から2002年のデータをもとに解析をしている。要するに1970年代から始まっている中国の解析と、1990年から2002年のデータで行っている日本における調査で、がんの診断能力が同等であるかというとそれは少し考えにくいと思う。当然ながら、診断能力が違えば、診断できる疾病の数も当然異なってくるため、非常に注意する必要があると思う。

 私はずっと25年位チェルノブイリで働いてきているが、チェルノブイリにおいて広島大学や長崎大学の専門家が集まって、チェルノブイリ笹川医療協力プロジェクトというのをやった。その時に、甲状腺がんの上昇を認めたが、ロシア、ウクライナ、ベラルーシの3つの国で行ったこの調査で日本の専門家が最も注意したことは、3つの国における診断精度が同じになるようにした。即ち、検査をするのであれば同じ試薬を用いて同じ機械で行い、3つの国で精度に違いがないかクオリティチェックをする。あるいは、甲状腺がんで最も診断に大切な超音波検査については、必ず指導を日本側で行う。 

あるいは、そこから採ってきた細胞を顕微鏡でみる能力についても、日本側で指導を行うことによってクオリティチェックをして、同じ症例については同じ診断が下せるようトレーニングをすることに注力した。そうすることによって、同じクオリティで診断をして、分母と分子の精度を同じにする。

質の高い疫学研究にはそこが必要になってくると思う。その点でこの種の研究については、慎重に評価する必要があるのではないかと思った。いずれにしても、論文の各部分のバイアスの存在、バイアスがありそうな可能性を取り除いて、プール解析をしたという点については、評価できるのではないかと思う。

(会長)

 私自身はこの手のバイアスの検討をこれだけ手広くやったのは、初めて読んだが、C委員も同じような経験か。

(C委員)

 そうである。非常によく論文を集めてあるし、tableを見てもわかるように非常に幅広く大規模研究を集められていると思う。

(会長)

 今のC委員の解析、解説について、意見はあるか。

(A委員)  

 C委員の懸念として、最初に言われた急性被ばくのデータと慢性被ばくのデータが混ざっているということだが、どちらかというと慢性被ばくの方がいろいろながんの発生の方が出にくいということを考えると、ミックスしたことによってどちらかというとアンダーエスティメイト(過小評価)しているという可能性が出て来るということか。

(C委員)

 対象者の集団の数にもよるが、原発労働者のデータの数が割と多いようなので、慢性被ばくの対象者が結構あるのかという印象を持っている。

(A委員)

 急性被ばくでの高い比率がそれによって隠れてしまうという可能性もある。

(C委員)

 恐らくあり得ると思う。調査によっては、逆もあり得ると思う。

(会長)

 ずっと以前から、慢性被ばくと急性被ばくの場合は、急性被ばくの方は2をかけるというがリコメンデーション(推奨)されていたことがあったと思うが、それは今でも続いているか。

(C委員)

 一応、ICRPなどの勧告の中には2倍と。いわゆる急性と慢性の違い2というケースは特に否定はされていないと思う。

(会長)

 この研究会でいくつかの原発労働者のがんと白血病に分けたレポートを分析したことがあるが、慢性的な原発労働者のリスク上昇とこれまでに発表されている急性のものとでは、あまり差がないというのもあったような気がする。まだ、本当の結論が出ていないような気がする。

(C委員)

 慢性の低線量被ばくで割と有名なのが、私もD委員も行ったインドのいわゆるハイバックグラウンドの放射線被ばくをしている住民の方のデータ、鹿児島大学の先生方がやられた調査だが、累積線量で結構高い線量、100mSvを超えるような線量群の住民も含めて解析しているが、これで見ると、比較的数十年かけて高い線量を被ばくした住民でリスクが上がっているかというと、がんの上昇は認められていないというものが出されている。これは、割と横軸と縦軸の信頼性が高いデータになっているのではないかと思う。

(会長)

 日本人の一人の人が生涯における被ばく線量が書いてあるものがあったが、年間1mSvを70年ならずっと70年受けるということからすると、相当累積線量があるなかで、例えば、原発労働者の労働に伴う被ばくや、医療被ばくの場合も同じだが、そういういわゆるバックグラウンドというか、その人が持つ、それまで生きてきた間に受けた累積線量というものの関係を分析したような論文は、私は全く見たことがないが、そういうものを解析しているという知識を持っている方がおられたら、教えてほしい。

 例えばCTでこれだけ受けたとしても、その人も毎年バックグラウンドを受けているわけで、そういう影響を考慮した方がよいのではないかというようなことを少し書いてあるような論文はあるが、そういった研究はあまり本格的にされていないように思うが、今のところはそれでいいか。

(B委員)

 低線量の特にハイバックグラウンドの住民の方の疫学調査は、低線量影響を見る上では非常に重要だと思う。代表的なものは、先程、C委員が言われたインドのケララ地方のデータと中国のハイバックグラウンドのデータだと思うが、2つともがんについては、リスクが上がっていない。染色体異常はハイバックグラウンドの方が高いデータだが、がんのリスクに関しては上がっていないというデータである。

 ケララの場合、600mSvを超えてもがんのリスクは上がっていないというデータになっているので、そこでは線量率効果が認められるということで、慢性の被ばくの方が、がんのリスクが低いのではないかと示唆するような所見である。

 一方、動物実験で低線量率の被ばくと急性被ばくの実験が行われているが、そこではまだ必ずしも結論が得られていないというのが現状である。それは、動物の発がんモデルによって結果が異なっており、例えばラットの乳がんのモデルでは、線量率効果が見られないという報告の方が多いと思う。一方で、線量率効果があるという報告もあるが、全体としてみれば、そういう報告の方が多いという感じがする。

 一方では、別の発がん例では線量率効果がはっきり認められる肺がんのモデルなどがあるが、それは実験モデルによって異なるという結果であり、必ずしも一定の結論が得られているわけではない。

(会長)

 いわゆる、生まれてからずっと放射線を浴びていくと、アダプテーション(適応)など色々あり、普通にボンと浴びる場合とはずいぶん違う放射線感受性を示すというような論文を読んだような気もするが、そういうものがあるか。

(B委員)

 適応応答というのは、はっきりとした生物学的な現象として、低い線量を与えてから急に高い線量を与えた場合と、何もしないで急に高い線量を与えた場合では、明らかに反応が違うということは、色々なモデルで確認されている。そういう現象は間違いなくあるが、それがどのようにがんのリスクと係わってくるかということに関しては、十分な知見がないというのが現状だと思う。

 我々は、会長が指摘されたように毎年年間日本人で年間2.1mSvという量の放射線を浴びている。

(会長)

 医療被ばくも含めてか。

(B委員)

 医療被ばくは含まれていない。医療被ばくはもっと高い。

 医療被ばくを含めると、日本人の平均の線量というのは6mSv近くになり、結構高い線量を浴びているというのが現実である。

(会長)

 今まで2.5と言ってなかったか。

(B委員)

 自然界では2.1で、世界平均でいうと2.4mSvだが、日本は大体2.1。ラドンやトロンとなどからの被ばくが少ないために環境放射線から受けるのは大体2.1だと言われている。それ以外に医療被ばくが別に乗っていて、それが結構高い。

(会長)

 医療被ばくというのは平均でいくのか。

(B委員)

 平均である。

(会長)

 医療被ばくのない人とある人と結構分かれる。

 この低い線量のところは、わからない部分も沢山あって大変難しいが、今までには無かったような韓国のような論文が出たり、バイアスの検討もかなりされて、低線量被ばくのところのリスクもほぼこの辺りではないかということが明らかになってきたように思う。 

 

審議事項4 低線量照射とがんに関する疫学研究:理論的根拠、論文の枠組、適切な研究の概要  

(E委員)

 この論文は、C委員が紹介されたものと同じグループである。

 要約は、2006年から2017年に発行された研究から、100mGyより小さい平均線量である疫学研究を選択して系統的レビューを行った。条件は、個人線量と信頼区間を伴う線量反応推定を条件として、26の適切な研究を特定した。平均線量の範囲は0.1から82mGy。100mGyあたりの過剰相対リスクがポジティブ、正である。プラスであったのは、固形がん研究22のうち16、白血病研究20のうち17であった。この論文の目的は、これらの研究の潜在バイアス(線量の不確定さ、交絡要因、結果の誤分類)を系統的にレビューすることである。

 この26を選ぶ前に不適切な研究として、平均線量が100mGyより大きいもの、カテゴリーごとのリスク推定、累積線量ではないものの14研究除外している。

 次に枠組だが、この論文は枠組のところをやったというところがポイントだと思う。論文の図1にあるが、まず4つの段階があり、ステップ1として、適切な研究であるかを評価するために、個人線量が推定されているか、線量反応関係と信頼区間があるか、平均線量は100mGy未満か、という条件を満足しているかいうことをチェックしている。次に、追跡ソースからの潜在バイアスがあるかを評価している。潜在バイアスというのは、線量誤差があるか、交絡要因があるか、選択バイアスがあるか、結果の確認は妥当か、というようなことである。ステップ3として、各ソースからのバイアスの方向を評価するということで、ヌル、0の方向に向かっているのか、0から遠いのか、バイアスの向き方向は不確かか、というバイアスの向きをチェックすることである。ステップ4として、可能であればバイアスの大きさを推定する、バイアスは結果を説明するに十分な大きさか、ということを4つの枠組を組んで研究を選んだということがポイントである。

 適切な研究の概要だが、環境放射線被曝、医療被曝、職業被曝の3つに分けて紹介している。論文の図表から整理しなおした表を私がもう一度作り直したものを添付資料としている。 

成人の曝露と小児期の曝露に分けたということと、それを固形がんと白血病に分類している。

表1-1は成人の固形がんの話でERRが有意となったのは、テチャ川住民、アパートが汚染された台湾居住者である。それから、カナダの心臓画像、イギリスの放射線従事者、INWORKSだったと言っている。次に小児期曝露の固形がんとして有意となったのは、スイス自然放射線、イギリス小児CT、甲状腺がんである。3つ目が成人の白血病で、ERRが有意となったのは、台湾居住者、カナダの原子力労働者、INWORKSである。最後が小児期曝露の白血病で、ERRが有意となったのは、チェルノブイリ居住者、イギリス自然放射線、イギリス小児CTであったと報告している。この論文は、26の論文がどのようなものか要約、概要を説明している。

最後に彼らは、主要な国際機関、国の機関、BEIR Ⅶや米国科学委員会とかいったものは、放射線照射のがんリスクに関する疫学研究を定期的にレビューしていると言っている。

しかし、これらのレビューと今回の論文との最も重要な違いは、バイアスを系統的に評価するための統計的疫学的技法を用いて、系統バイアス分析したことを自負している。以前の疫学研究からのレビュー結果や方法の比較は次の論文で述べるということで、ここでは紹介していない。何をその次の論文で言っているかというと、報告バイアス、公表バイアスを含む潜在的ソースについても議論する、強固性とバイアス評価アプローチの限界についても議論する、そして、将来の系統的バイアスの評価のために追加データを推奨するということを次の要約論文で書いているそうである。その要約論文というのは、このグループのシリーズでバイアスアセスメントとメタアナリシスという論文にまとめてある。

私の意見は、低線量とがんとの線量反応関係が有意であることを示すために被曝線量100mGy未満の研究に限定し、条件を揃え該当した研究を適切な疫学研究としており、条件を揃えたことは、かなり絞られた疫学研究となり、精度もよくなっているように思える。

正のERRがたくさんあると述べているが、実際は22の固形がんの研究のうち16が正。20の白血病研究のうち17が正で、この中でERRが正というだけではなく、しかも有意というのは、固形がんで8個、50%。白血病では6個、35%となっている。バイアスを系統的にレビューするとしており、条件を揃えて適切な研究をまとめたいという意図が窺えた。メタアナリシスをここで行っておらず、他の論文に紹介があるとしており、メタの結果はC委員の報告の通りである。

(会長)

 C委員からは、同じシリーズの研究ということで何かないか。

(C委員)

 特にはないが、表の1-2、これは結構興味深いというか意外だと思ったが、小児期曝露の白血病でERRが有意となったのは、イギリスの自然放射線のグループなどである。

例えば、表の1-2の小児期曝露の固形がんでERRが有意となったものの中には、スイスの自然放射線が入っており、そういった自然放射線被ばくでもERRが有意となっているのは、あまり今まで知らなかったデータであり、興味深かった。

(会長)

自然放射線の累積がこの小児のイギリスのデータは4mSvと書いてある。最大が31mSv、ERRが2と非常に高い。スイスも似たような本来4や9などで、これは正で採用されているのか。

(E委員)

 自然放射線でこれ程高いのかと少し奇異に感じたが。

(会長)

 これが本当であれば、ケララ州などでも観察されていいような気もする。鹿児島大学の先生方がされたケララ州の調査は、小児のデータも含まれているか。

(C委員)

 恐らく含まれていると思うが、自然放射線なので、一般的には年齢を重ねると線量も上がってくるため、先程B委員が言われた600mSvくらいまでとデータを見ている。要するに小児でそれだけ被ばくしている人は恐らくおらず、割と長期間生存されている方が線量が高くなる傾向にあると思う。

(会長)

 15歳以下の小児のデータだと思うが。

 E委員、2013年出版のオリジナルの論文をまた読んでみてもらえないか。

(E委員)

 わかりました。

(D委員)   

イギリスの高バックグラウンド地域について、チェルノブイリやスイスと比べても高い値になっているが、これは土壌がおそらくトリウム系によるものだと思う。そうなると、ラドンが当然寄与してくるが、論文の記載を見るとだいたい10%がラドンの寄与ということなので、話は合う。ただ、イギリスだけ特異的に高バックグラウンド地域に人がいるということは、あまり聞いたことがない。

(B委員)

 イギリスの自然バックグラウンドの放射線レベルはよくわからない。ここまで高いことに驚く。イランが平均線量4mSvと言われており、高いところで結構70mSvになるところもあるらしいが、平均は4mSvと聞いた。

(会長)

 そこで、固形がんのリスクが上がっている訳で、この辺りは論文をしっかり読まなくてはいけない。

 本日3つ用意した論文の検討はここで終わりたい。

 100mSv以下では、あまりがんの発生リスクが上がらないことが過去ずっと言われてきており、その根拠は、放影研の原爆被爆者からのデータだったが、最近は100mSvから下がってきているという話が続いている。 

1970何年に被爆地拡大地域の土壌プルトニウムの岡島先生の研究でも、70数か所調査をやられて、25mSv位の生涯線量だということで、長崎で行われた検討会で発表された。

その後、厚労省の委員会が設立されて、そこでの検討ではこの25mSvでは、がんの発生は考えにくく、100mSv以下では、長崎の被爆地拡大地域でのがんの発生があるとは考えられないという結論だったと思う。

 それをもう一度検討し直すことが必要だと思わせるような状況が生まれていると私は思ったが、他の委員はどう思うか。

 D委員がこの会でも発表されたのも大体同じような線量だったと思うが。

(D委員)

 そうだったと思う。岡島先生も、それ以外の他の色々なグループの発表も大体25mSv同じようなところで来ている感じである。

(会長)

 次の段階でこの会でもそういうところを検討しないといけないと私は思っている。

 黒い雨について市から報告があるが、黒い雨では線量がわからなくても、広島高裁は一応認めた。

そういうところが今から報告があるということで、次に移る。

報告1. 広島「黒い雨」訴訟に係る長崎市の対応について   

(事務局)

1 「黒い雨」訴訟の概要について、本訴訟は、被爆地域及び第一種健康診断特例区域外に居住していた一審原告84名が、広島への原爆投下後に降った雨、いわゆる「黒い雨」等により放射線に被曝し健康影響を受けたとして、被爆者健康手帳交付申請却下処分の取消し等を求めて広島県・市を提訴した事案である。

広島と長崎の被爆地域図である。上段が、広島の被爆地域図で、黒い雨訴訟の原告の方々は、地図の赤い線の範囲になるが、爆心地から10kmから30km地点で黒い雨を浴びたとしている。

下段が長崎の被爆地域図で、赤い円が半径12kmで黄色の部分が第二種健康診断特例区域、いわゆる被爆体験者の地域である。

2 「判決の経緯」について、第一審、第二審いずれも原告勝訴となっている。

3 高裁判決のポイントとしては、(1) 被爆者援護法1条3号(原子爆弾が投下された際又はその後において、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者)に該当すると認められるためには、「原爆の放射能により健康被害が生ずることを否定することができないものであったこと」を立証することで足りる。」としている。

この第3号が今回の訴訟で争点となった規定で、現在は、救護や死体の処理に当たった者が対象となっているが、黒い雨を浴びた場合でも、放射能の影響を受けるような事情にあるとして、今回、主張がなされたものである。

次に(2)について、以下の事情があれば内部被曝による健康被害をうける可能性があり、「原爆の放射能により健康被害が生じることを否定することができないものであったこと」が認められる。としている。

具体的には、黒い雨に直接打たれたこと、黒い雨に打たれていなくても、空気中の放射性微粒子を吸入したことや放射性微粒子が混入した飲食物を摂取して、放射性微粒子を体内に取り込んだことがあげられている。

(3)、このため一審原告らは、法1条3号に該当し、被爆者健康手帳の交付を義務付けるのが相当とされた。

これに対し、被告である広島県市及び国は、昨年7月28日に上告をしなかったことで、判決は確定することとなった。

4 国が上告を断念するにあたって閣議決定された、「黒い雨」訴訟の判決に関しての内閣総理大臣談話である。

「今回の判決には、重大な法律上の問題があり、政府としては本来であれば受け入れ難いこと、とりわけ、内部被曝の健康影響を科学的な線量推計によらず、広く認めるべきとした点については容認できるものではない」との考えを示したうえで、「84名の原告の皆様と同じような事情にあった方々については、訴訟への参加・不参加にかかわらず、認定し救済できるよう、早急に対応を検討します。」との方針が示された。

5 長崎県市の要望について

(1)黒い雨訴訟広島高裁判決に関する要望は、昨年8月2日に、長崎市長及び市議会議長並びに長崎県知事及び県議会議長の4者で、広島の黒い雨体験者と同様に長崎の被爆体験者についても認定・救済を求めるよう国に要望した。

また、(2)長崎の被爆体験者等の救済に関する要請は、昨年11月5日に長崎県知事及び長崎市長名で、被爆地域外でも黒い雨や灰が降ったとの証言をまとめた資料を新たに提出し、再度、被爆者として認定するよう要請した。

6  5者による被爆者援護法第1条第3号に係る審査の指針に関する協議である。

審査の指針とは、援護法1条第3号に記載の身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者に該当するか否かを判断するにあたり、全国統一的な運用を図る観点から審査の基準を具体的に定めているもので、黒い雨に遭った方々に被爆者健康手帳を交付するためには新たな基準をこの指針に盛り込む必要がある。

参考として、現在の指針の基準の抜粋は記載のとおりである。

次に、(1)開催の経緯について、昨年11月から12月までに3回開かれ、3回目の協議の際に「黒い雨」訴訟を踏まえた審査の指針改正の骨子案が示された。

(2) 「黒い雨」訴訟を踏まえた審査の指針改正の骨子案だが、総理談話にあった「原告と同じような事情にある者は、黒い雨に遭った者で、11種類の障害を伴う一定の疾病にかかっている者とする。」とし、黒い雨に遭った者とは、1.黒い雨に遭ったことが確認できること。2.黒い雨に遭った当時の状況が原告と同じような事情にあったことが確認できることとされている。

(3) 骨子案に対する長崎県市の回答だが、長崎は対象にならないとのことであったため、長崎県・市においては、「長崎においても広島と同様に黒い雨等が降っていることは、平成 11 年度証言調査より明らかである」こと、「長崎においても黒い雨等が降った事実を国が認めた際には長崎も対象とする旨を現時点で骨子に明記すること」とし、広島に限定される指針骨子案は受け入れられるものではないと、国に回答している。

これに対し国からは、(4) 厚生労働省における広島県市及び長崎県市との今後の進め方が示された。

今後、「被爆者援護法第1条第3号に係る審査の指針」の改正骨子に基づき、指針の作成に向けた取組を進める」とする一方で、「長崎への対応については、引き続き、長崎県・長崎市と協議をする」とし、同じ被爆地でありながら、対応が異なる結果となっている。

最後に、7現在の状況について、国からは、被爆地域として指定されていない地域にいる方は、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情にはなかったとする判決が最高裁で確定している中、この裁判例との整合性や平成11年度の証言調査の客観性に対する指摘などを受けている。

そこで、(1)長崎の対応を検討するための厚生労働省と長崎県市との実務者による打ち合わせを行っており、現在、広島・長崎の裁判の事実認定で用いられた書証の分析を行っている。

また、(2)長崎県においては、証言調査の客観性を検証するための、有識者による「長崎の黒い雨等に関する専門家会議」が設置され、第1回目の会議が本年2月8日に開催され、現在、検証を行っているところである。

説明は以上だが、長崎においても、黒い雨が降ったという事実は広島と同じであり、広島と長崎で援護施策に差が生じることがないよう、県と連携しながら、引き続き国に強く訴えていきたいと考えている。

(会長)

 長崎での黒い雨の古い証言の精査をするということか。

(事務局)

 精査したが、精査した内容に客観性がないということを国から言われており、客観性を高めるために、県が専門家会議を立ち上げた。委員の中には弁護士の方がおられるので、証拠として充分であるかどうかや、後障害研究所の横田先生にも加わっていただいており、疫学上どうなのかというところも見ていただいている状況である。

(会長)

 黒い雨が降ったかどうか以前の問題で少し足踏みしているわけか。

(事務局)

 そういう状況である。

私どもは、黒い雨は被爆地域拡大と平行的に行っており、あくまでも被爆地域拡大をということは、変わらない。

かつ、当然被爆地域の中でも被爆未指定地域の中でも黒い雨を浴びた方はいらっしゃるので、まず救える人は救い、そのうえで被爆地域拡大もしようとしている。

(会長)

 本研究会として次のステップとして、100mSv以下の低線量がどのくらいかの分布を示すかというところについて、まとめの段階に入るというのはそれでよいか。

(事務局)

 今まで通り進めていただければと思う。

(会長)

 D委員が本研究会では中心になって行ってきた。今から被爆地拡大の西から東まで地図の黄色の所、その辺りをもう一回フォールアウトという観点から、黒い雨とそれ以外のフォールアウトで検討できるのか。例えば、プルトニウムの検出がされている地域など、今後まとめたいと考えているが、いかがか。テクニカルな問題も含めて、委員の意見を伺いたい。

(D委員)

 以前の岡島先生のレポートもそうだが、それ以前の1945年のマンハッタンを含めて理研、九大のデータを見ても、明らかに東の方向に対して線量が高い。線量が高いということは、放射性降下物があったという理解である。雨が降れば集中的に降下して、沈着量も高いと思うが、とはいえ線量が高いということなので、雨が降らなくとも何かしら放射能が飛んできているわけである。当然ながら、科学的にはそう考えざるを得ない。ところが今回は、それが雨というところに絞られているのが実に科学的には理解ができないところである。

そういう意味では、雨のみならず、放射性降下物があったということ、それが故に線量が高かった。というところはしっかり厚労省に理解してもらわないと、科学的な議論は進まないと思う。

 ちなみに、検討会にA委員が入っておられるので、4月下旬位に開催ということで準備を始めていると聞いている。ワーキンググループ、我々の線量評価や土壌の採取、それから、調査のワーキンググループからは昨日最終報告書を厚労省に提出したので、おそらくそれに向けて次の検討会が開かれると思う。

(会長)

 D委員、この研究会として被爆地拡大地域の線量を最後にもう一回分布を考えてみるというのはいかがか。難しいか。

(D委員) 

 科学的には、今から放射能を計るというのはまず無理である。もちろん、計れば微量でも出るが、とはいえ、そこから推定するのは非常に難しい。

(会長)

 私が直接D委員のところへ行って、今後の線量分布のところの詰めをどうするか意見を伺いたい。

B委員、広島は続々と黒い雨で手帳は貰われているのか。

(B委員)

 行政手続きが続いているように伺っている。

(会長)

 次回はいつとは申し上げられないが、EPI-CTの論文が出ることを待つということと、もう少し長崎は、独自に拡大地域の線量のまとめに入りたい。

 以上で閉会とする。

終了 15:40                                    

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