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第12回 長崎市原子爆弾放射線影響研究会

更新日:2021年6月3日 ページID:036830

長崎市の附属機関について(会議録のページ)

担当所属名

原爆被爆対策部調査課

会議名

第12回 長崎市原子爆弾放射線影響研究会

日時

令和3年3月25日(木曜日) 14時00分~15時30分

場所

長崎原爆資料館 平和学習室

議題

審議事項
1 EPI-CT研究:ヨーロッパ7ヶ国による統合型疫学研究における小児CTの放射線誘発がんリスクの定量化

その他
2 次回開催について

審議内容

開会

審議事項

1 EPI-CT研究:ヨーロッパ7ヶ国による統合型疫学研究における小児CTの放射線誘発がんリスクの定量化

(会長)

この会も7年目に入り、最近5年くらいは低線量被曝の論文を検討しているが、低線量被曝の人体影響について結論めいた論文は出てない。今回は、EPI-CTにおいて、ヨーロッパ、EUの9ヵ国が小児のCT被曝による脳腫瘍と白血病の低線量での被曝のレポートにおいて、100万人を超えるデータをまとめる論文が出たので検討していきたい。

今回は、概要を論文に従って、パラグラフごとに進めていき、委員のご意見をお伺いして最後に総合的な討論をしたいと考えている。

まず、なぜこのコホートはセットアップされたかであるが、これまでにEPI-CTのイギリスやフランスの研究論文を議論してきた。医学診断用の放射線の被曝が大衆被曝という意味で一番多く、しかも低線量である。20年間で先進国を中心にCTの使用が増えており、CTの被曝線量が他の臨床検査、例えば胸部レントゲンなどに比べるとかなり高く、検査による被曝の全体の40~70%を占めている。

小児は原爆被爆者の研究からもはっきりしているが、有意に発がんのリスクが高いということが分かっているため特に注目されている。

CT検査の応用が始まった初期、1970年代の後半頃では、1回の検査の被曝線量が高い傾向にあり、CT検査が世界中に広まった1980年から1990年代にかけての研究で脳腫瘍と白血病において、リスクの上昇が数々報告されてきた。

これについては、特にがんの患者が増える方向に働くようなバイアスを慎重に検出することが行われ、CT以外にもがんを起こす因子があるのではないか、ということが検討され現在まで続いている。

それともう一つは、検査を受けた人を解析する場合には、低線量のわずかなリスクの上昇を検討するものであるため、症例数が大量に必要となる。ヨーロッパではEU単位でのがんの領域の研究が非常に多くなってきており、その典型としてEPI-CTが2011年からスタートしている。この研究はIARCと呼ばれ、フランスに本拠がある。先行していた国はイギリス、フランス、ドイツで研究費がEUの科学研究から出ており、肺か頭かお腹かなど、どの部分をCTでスキャンしたかという臓器線量の出し方も統一されている。

CT検査をした後、1年後に早くもがんが出たというような場合は本当にCT検査で起こったのか疑問であるため除外し、1年から5年くらいの期間で見て、その後も見ている。しかし、子どものコホートであり、人間は大人になってからの方が、発がんリスクが上がっていくが、白血病を例にとると、むしろ0歳から3歳くらいまでに一つのピークが来て、その後下がり、その後から小児期の白血病が上がってくる。さらに思春期、大人となっていくが、そういう普通の集団でも特徴ある年齢群とすることがある。そのため色々な要素を考慮しながら、統計や解析をやらないと誤った結論を導くということはよく理解しており、国際的にも放射線被曝の人体医学における研究でそれぞれの国のエキスパートがスクラム組んでやっている。

2ページの誰が集団に入ったかであるが、117万人のうち、81%、約95万人で検討され、年齢は0から21歳で、フランスは0から9歳、ドイツは0から14歳で、最初にCTを受けた時の年齢は、フランスで2.9歳、ドイツで6.8歳、全体で10.7歳であった。

フォローアップについては、CTを受けた日から1年以内にがんを発病した人たちは除かれており、がんの追跡期間は平均7.8年、95万人であった。統計学で人年という概念があり、観察された期間と人数を掛け合わせた数でいくと、870万人年となっている。通常は、これが大きいほど統計学的なパワーが上がると考えられている。国別の人年では英国が370万、オランダが150万、スウェーデンが140万で、追跡終了までに亡くなった方は、1.3%であった。追跡が終了した時の年齢は、イギリスが一番高くて24歳、フランスは9.4歳で、まだ小児期にある方や国が多かった。

何を測定したかについては、患者1人当たりのCTの撮影の回数は平均1.5回で、1回が全体の75%で、10回以上が0.2%であった。22%の人が2000年までに、78%が2000年以後に実施されている。特に退院した時の情報をデータベースとして利用しており、国々の国勢調査のデータや経済に関するデータなども集めている。また、交絡因子が絡んでいることで、これまでの論文では疑問視されてきたところがあるが、特にこの論文は力を入れている。

どういう数字でがんが増えているかについては、SMRと統計上略される標準化死亡比率に対して、CTを受けたグループがどれくらい死亡が増えているかという、死亡数対観察できた死亡数の比率で計算している。

死亡率は低くいものであったが、全ての国においてSMRの強い上昇が観測されている。これはCT後の最初の5年間に見られている。最初の5年間における全ての原因による死亡に基づくSMRの上昇は統計学的に有意であった。全ての国において1.0を超えており、ベルギーの1.9からデンマーク、フランス、英国の4.9まで高く上昇した国もある。5に記載のとおり、最初の5年間の全ての原因による死亡に基づくSMRの上昇は統計学的に有意であり、全ての国で1.0を超えている。

5年後の期間においてもSMRはやや低くなるが、ベルギーとスウェーデン以外の全ての国において有意に上昇している。観察期間が5年以上経った後、SMRはスウェーデンにおいてのみ1.3で、その他の国は標準死亡率と等しくなっていた。しかしがん以外の死因による死亡率はフランスとスペインを除き全ての国で上昇していた。以上の結果は、研究対象の集団では予想していたことであったが、正常集団に比してCTを受けた集団の健康は明らかに劣っていたと書いてある。

10番目、最初のCTから5年後のSMRの低下傾向はexclusion period、1年間の間にがんが出たのは期間を考慮して、reverse causation、検査ががんのために行われたことを暗に疑われる。そういうものをしっかり見て低下傾向を解釈できないと、この論文はまだ十分に我々専門家が納得できるような説明になってないようなところもある。

11番目、詳細なSMRと被曝線量との関係については、今回の論文には被曝線量との関係が詳細に述べられていない。ある程度有意差があったと結論だけが書かれており、後から出版される論文において記述するとある。近々、出ることを期待したい。

Table7には、リスクの推定が各国の論文をまとめて比較してあり、英国、フランス、ドイツ、オランダのデータが載っている。英国ではCNSがんと白血病において線量依存性が示されている。低いところの線量であるが、少しずつ上がっていき、上がっていくとリスクが発生し死亡率が上がるということである。正常対象と比べがんと悪性リンパ腫の発生増が、ドイツの場合は報告されている。

フランスとドイツで線量反応があっており、ドイツの脳腫瘍のみ線量反応は有意であった。がんを疑ってCTをしたのではないかということもあり、CTを受けて一年以内に早くもがんが出た場合はreversするとか、2年経ってからなど、色々なexclusion期間を設けて検討している。

16番に最初の交絡因子の解析がイギリスから出た。死亡統計に基づく悪性腫瘍の除外によって、過剰相対リスクは先行がんの除外で白血病では15%低下し、脳腫瘍では0.023から0.016まで低下したとあるが、これらの過剰相対リスクは依然として有意に上昇していると書いてある。

17番、フランスのコホートでは色々なPredisposing factors(PF)について、CT検査を受けに来たお子さんが、がんになりやすい先天異常を元々持っているなど、色々な病気をかなり詳しく解析して白血病と脳腫瘍について検討している。3%の患者さんがイギリスの場合はPF、交絡因子を先天異常のようなものを持っていた。この小さい3%の数字が全体集団のそれよりも高い数字であった。これらの症例を除いて、過剰相対リスクを再検討したところ、以前として有意な上昇が認められている。

即ち、先天異常などの特別なPFを持っているお子さんたちを集団からまず除き、健康と思われるお子さんたちで放射線の影響を解析したところ、依然として有意な放射線の影響があった。

それからPFを有しない集団とPFのない集団に分けての分析では、PFのない集団では被曝線量に従って白血病と脳腫瘍の発生増加が認められている。PFを有する群においてはこのような増加が得られていない。これもかなり重要な知見ではないかと思う。被曝線量で新たにがんが出てくるということは、この集団では認められていない。PFを有する小児においては高い死亡率が観測されたと思われる。というのは、PFを持っているとやはり、死亡が被曝線量とは関係なく、上がってきている。そういうことで、フランスのデータは非常に重要かと思う。

線量推計については、A委員に要約をお願いしたい。

(A委員)

CTの場合の患者さんの臓器当たりの被曝線量というのは、各1回、1回の撮影条件によって違ってくるため、個々の患者さんがどれだけ被曝したかという計算は記録が残っていないとできない。実際にその細かい記録(CTDI)をとっているところはあまりなく、一般的な撮影条件から線量を推定せざるを得なかったということであるが、このコホートでは、そういうデータが残っている病院は、できる限り抽出している。さらにもっと細かい撮影条件になると、ここに書いてあるが、画像アーカイブ・コミュニケーションシステム(PACS)というが、どれだけの距離で何分間当てたかなどの細かいデータが全て残るようになっている。これがあると、臓器の各検査の正確な線量を計算することができる。つまりオーダーメイド的な線量評価を行っている。それから当てられた線量が最終的にはシーベルトという単位に変換する必要があり、係数が必要になってくるが、それも共通フォーマットで得た係数(NCICT)を使っている。各コホート、各検査機関あるいは各国ごとの計算による違いは極力小さくして共通的なデータが得られるようにしているところが強みである。

(会長)

後でまた質問をさせていただきたい。

95万人の検討の結果、有力な知見や弱点は何かということについて、1番目に、この95万人の小児においてCT被曝によって白血病と脳腫瘍、CNSがんにおいて小さいが、がんのリスクの増加があり、十分な統計学的な有意性をもって証明できたと述べている。この点も後で委員に評価をいただきたい。

2番目に、この研究は今後この集団の年齢が上がるとともに、今後のがんリスクがどのように変化するか種々の情報をもたらすものと考えられ、これに期待している動きがある。がんは年齢が高くなるにつれて上がっていくため、この集団は最後までフォローアップしていかないといけないという考え方があるようである。

3番目に、このような多数の国による集合的な研究は、統計学的パワーを高めることが可能ということが明らかになった。これは委員もお認めになるのではないかと思う。

4番目、検査について、標準化することは、線量まで含めて大いに今後役立つと思われる。

6番目、本研究にはリミットもあり、PF以外の数多くのPredisposing Factorsについて、先天異常やそれ以外にも例えば、自然放射線の量が違う地域に住んでいる子供たちなど、色々なものを考慮しないといけないが、100万人という情報を全部集めて論文に反映させることは困難である。

2)CT検査を実施した理由については、一般的にあまり記録がなされていない弱点がある。

3)医学情報の電子化が1980年代から90年代に徐々に広まっていき、2000年代にさらに高度になってきているが、一部の国に限られている。

4)このコホートの小児の年齢が現時点で比較的若いことも留意される必要がある。まだがんを発症している途中を解析している。研究費を今後の長期の追跡を可能とするようにEU政府には願いたいと書いてある。

ここまでで何かご意見はあるか。

(B委員)

この論文は、コホートのプロファイルを記載した論文という位置づけであり、会長から指摘があったが、詳細な解析については、次の論文で発表するということであり、我々が今すぐ知りたいような情報が記載されてない。集団そのものの死亡率が高く、一般のヘルシーな集団とは違うということであるが、交絡因子に関しては十分な情報がない。また、国によって随分と集団の要件が違っており、交絡因子をどうやって調整して解析するのかというところが、この論文を評価する上で非常に重要だと思うが、そういう情報が必ずしもこの論文には記載されてない。

(会長)

今の意見に賛成の委員も多いと思う。

95万人で国が9つあると共通の部分もあるが、医療の実態はまちまちである。統一的に1つの論文で、データを解析しどういう風に処理していくかというのは、やはり中身をよくみないとわからない。

(C委員)

十分に解析したデータが多く出ている訳ではなく、この論文一本で云々というのはどうかという気がする。何年か前に、ドイツのブレンナーさんが書いたこのようなプールスタディの弱点というような論文を紹介したと思うが、その点が当てはまる。このような集団をきれいなデータとして出すのは難しいと思う。

(会長)

ブレンナーさんの論文について議論した。そういう多様性のある国を統合して分析する場合、本当に統合データにして解析して、統計処理を行なっていいのかというところがある。

(D委員)

この集団は95万というかなり大きいコホートであることは良いと思う。線量推定についても共通プロトコルで行っており、大事な線量推定のところもきっちりしているが、委員が言われるように、詳細がよくわからない。

表1から集団を見てみると、イギリスが一番大きくて32万2,125人、ベルギーが一番小さくて1万74人で、国による違い、交絡因子をどう調整するかというところで、かなりばらつきがあり、イギリスの方にかなり引っ張られている可能性があると感じる。

論文にも書いてあるが、CTを受けたことによるバイアスについて欠落しているというか論証がない。国別に行うと集団が小さいために色々な国を集めてプール解析をしているが、この表6をみると、5年未満で全死因が4.2、5年経つと2.2で半分に減っている。がんについては5年未満が3.3、5年以上では1.1ということで、かなり標準化死亡が小さくなっている。

最も気になることは、5年未満でNon-cancer mortalityが3.7で、がんより大きいということで、やはりがん以外の色々な疾患を持っているのではないかという感じがする。

(会長)

4ページの、有力な知見は何か、また弱点は何かの一番目にがんのリスクの増加が十分な統計学的な有意性をもって証明できたと断定して書いているが、これについてもご意見をいただきたい。

まず、私の意見であるが、EU 9ヵ国が11年かけて実施した大規模疫学研究によって、低線量のCTスキャン検査によって小さいリスクであるものの、正常対象小児集団に比し、CT検査後の脳腫瘍と白血病によるSMRの有意な上昇が認められた。国によるばらつきがかなりあるが、最も注目される知見は、がん及び白血病を起こす確率の高い種々の交絡因子、特にPF、先天異常などを有しない集団とPFを有する集団に分けた分析をされており、PFなし群で線量依存性が認められている。PFありの群でもSMRは上昇したが、線量反応性は観察されなかったと書いてある。この点は非常に重要だと思う。線量反応が観察された群とされない群が、2つに分かれたのはどういう意味があるのかを考えているが、結論は出せていない。

委員からご指摘があったとおり、CT検査を受けることになった95万の小児は明らかに、不健康な小児を多く含んでいたと思われる。

イギリスはファミリードクター制で、そこから大きい病院に紹介され、CT検査をすることになると思うが、そこに不健康な小児を多く含む最初の要因があるのではないかと想像する。そこですぐにがんの発生率が異常に高い集団になっていくことがどういう風に解釈されるのか、もっと一般的な小児科領域の中の小児の患者の集団をどのように見てどのようにデータに響いているか、考えていかなければいけない。

また、PFのない群も不健康とすれば、線量依存性というのは何を意味するのか。放射線感受性の高い集団を期せずして観察しているという可能性も考えるべきなのか、この辺りも委員の意見を伺いたい。

それでもCT被曝が脳腫瘍と白血病を引き起こすリスクを証明しているものと考えることもできるため、後続する論文で線量反応の詳細データが発表される予定であり、さらに詳しく検討できる機会が来ると思われる。

(E委員)

この論文の結果は、Table6でがんの死亡率の増加などが議論されており、この症例100万人の中でCTを受けた後、1年以内にがんを発症した人を除くということになっている。これはがん死ではなく、がんの診断を受けたということだと思うが、その数がTable1に載っており、2番で、Cancer diagnosed within 1 year after first CTで、足していくと110万人のうちの3万4,000人、1年間で3%の人が亡くなるような集団だということになる。日本の若い人のがんの罹患率を調べてみると0.01%で、1万人に1人ということは30倍の差がある。この比較が正しければ、100万人の集団というのは非常にアンヘルシーでがんになりやすい集団であり、そういうところからスタートしているのではないかという印象を受けた。

Table6の結果、最初の5年間で有意に高い。5年以降では、スウェーデン以外は有意差がなくなっており、以前の国別の調査では脳腫瘍か白血病で、白血病が比較的早いにしても、固形がんの発生が5年以内に高くて、5年過ぎると低くなるのはおかしい。この最初の5年間の比較的高いがんの発生もこれはCTなのかと疑わしい数字ではないかという点が疑問である。

(会長)

イギリスで、ある期間に全国の病院に来てCTを受けた子供たち100万人が抽出されており、本当に病気だった子供達も含めて色々な子供たちを集めた観察データということも念頭に置いておかなければいけない。

(C委員)

この論文のポイントはTable6だと思う。委員から指摘があったように、1年から5年の時点で標準死亡比が上昇していて、5年以上になってくるとこれが逆に下がるという傾向がみられているのが特徴である。

チェルノブイリでは、5年以降で小児甲状腺がんが増加しているというのが一般的な特徴で、これはベラルーシのデータでがん統計をとっているためはっきりわかっている。原爆被爆者の方の白血病以外の固形がんも10年以上経って起こっており、チェルノブイリの方がどちらかというと原爆被爆者より潜伏期間が短い。チェルノブイリにおいては、甲状腺の被曝線量が極めて高く、避難した方の子供で、200から500mGyくらいなので、極めて高い線量であるというのが一つの原因ではないかと言われている。それにしても、はるかに低い線量であろうこのグループが1年から5年の段階で上昇しているというのは、いかにも合わないという印象を持っている。

さらに、がん以外の疾患の増加も同じような傾向でみられるというのをどう評価するかがポイントだと思う。

こういう議論のきっかけになった論文が、イギリスのグループでピアースという人たちが、CTの検査の結果として脳腫瘍と白血病+MDS、骨髄異形成症候群が増えているというものを出した。そこからCT検査に対する調査が増えたのではないかと思うが、その後どうなったかをみてみると、対象者の半分くらいしか扱わなかったらしいが、実際にがんになった症例の臨床経過や病理所見を詳細に観察して、それも明らかにCT検査以外に疾患が存在していたと思われる症例を抜いて再解析をすると、白血病の有意性が消えている。その辺りにこういったCTの検査をした患者のプールスタディの難しいところがあるのではないかという気がする。

(会長)

ピアースの昔のフォローアップ論文を引用し、白血病の上昇が消えているということに注意すべきとのご指摘をいただいた。

(A委員)

線量評価も全てのデータが、統一的なフォーマットでとられているわけではなく、各国によって違う。その辺りが、アーカイブコミュニティーがまだ少し問題があり、この論文自体は、このコホートの全体図を示したものであって、全体の解析はこれからだと思う。各国のデータを見ても、特にイギリスがリスクも高く人数も多い。あとはフランスとオランダも人数も多くリスクも出ており、これで引っ張られるところはあると思うので、どうやって解析するのか興味がある。

個々の論文を読んでみても、イギリスはかなり高いリスクを出しているが、オランダの場合は白血病に関しては事実に関しては否定的であり、フィンランドで症例対象で白血病をみると、リスクは出てくるが、有意ではない。現在の状況では、統一的な解釈は無理だと思う。

(会長)

線量の再構築のところは、ある程度のコアの部分は共通プロトコルにのってやられたという判断はできるというように読まれたか。

(A委員)

この線量評価法自体は、2013年にすでに公表されている。もちろん、データが収集できる病院とできないところ、あるいはできる国とできない国がある。

(B委員)

すでに委員が言われたことと基本的には同じ意見である。問題になるのは、この集団がいわゆる健康な集団ではないということで、その交絡因子をどのように解析するかということだと思う。それに関しては、会長から紹介があったが、キャンサーのプレディスポジションに関しては、それを考慮して解析をしても有意差があるという答えであるが、データとしてそれだけでは説明しきれない。具体的には、観察期間を見ると5年間までは非常にがんリスクが高いが、それ以降を見ると全部下がっており、その辺りが一番検討すべき課題ではないかと思う。

もちろん、90万人以上の大規模集団をコホートとして設定して、検出力を高めて調査をするということであり、それによって非常に小さいリスクも検出できる可能性は大いにあると思う。

一方で、国ごとにCTを受ける社会的状況や医療の状況が大きく異なっており、CTを受けた年齢の分布、平均年齢、観察期間や部位など、非常にヘテロな集団をまとめて解析しないといけないため、交絡因子の調整の仕方が非常に複雑で、具体的には調整の仕方が書いてないのでよくわからないが、その辺がこのデータを評価するうえで議論になるのではないかと思う。

このプロジェクト自体は立ち上がってから年数が経っておらず、これから長い観察期間をかけていけば、もっと精度の高い情報が得られるのではないかという期待があるため、是非、長期的に調査をやっていただけたらと思う。やはり観察期間が大きなポイントではないかという気がする。

(会長)

観察期間が今後もう少し長く、例えば10年、この人たちが30代になるまでとか、見ていかないといけないということか。

(B委員)

C委員が指摘されたが、白血病は非常に早く出るが、固形がんの発症を考えた場合はやはり、チェルノブイリのデータでも原爆被爆者のデータでも固形がんは結構時間がかかっている。特に、いわゆる放射性発がんということになれば、もっと長い年月を経てがんを発症するというのが原爆被爆者で観察された事実であるため、最初の5年間でがんのリスクが高くて、その後、急激にリスクが減るのは、そこに何かあるのではないかということを考えないと、うまく説明できないような気がする。

もちろん、発がんリスクというのは被曝してから時間が経てば経つほど、下がってくる が、その下がり方がこのデータでは、非常にシャープ過ぎるのではないかという印象がある。

(会長)

小児のがんの発生リスクがどのように動くかというのは、がんセンターのデータでも確かにあるが、疾患によって相当違いがあり、特に白血病は大きいと思う。

原爆被爆者の小児の白血病というのは、比較的早く起こっている。1年から5年の間にこれだけがんが出たというのは、脳腫瘍については詳しく知らないが、白血病に関しては、これくらい早期に出ることは原爆の例からではあり得る。

1年から5年の間のところでがんリスクが上がっていることを証明できたということについてはまだ、留保するべきとの意見ということでよろしいか。

(B委員)

この論文だけでは、結論は得られないと思う。こういうデータを蓄積していくことが非常に重要であり、この論文に関して詳細なデータが発表されると思うので、それも踏まえて評価する必要があると思う。

あくまでプロファイルであるため、概要をまず知らせて、その概要について所見があったということで、それをもう少し細かいデータで、最終的には線量評価関係がどうなるかという話になると思うので、そのデータを見て評価されるのではないかと思う。

(C委員)

基本的には同じで、それぞれの線量域におけるリスクの上昇があるかないかというような解析をされていくと思われるため、そのデータを見る必要があると思う。

(会長)

その場合も1年から5年という、一つの壁みたいなところは、線量反応のところでも同じことがあると思う。

(E委員)

詳細がつかめない論文である。

(会長)

小児でアンヘルシーというのは、病院を受診する小児は短期的には何か病気があり、本当にがんを発病していた可能性もあるような小児も含まれており、小児診療の現場では、普通のことだと思う。

健康な人ばかり小児科に来て健康診断を受けるということではなく、症状が出て臨床検査の一つとしてCTが撮られることになる。簡単に言うと、当たり前の小児科の集団でのCTの被曝線量のデータが取られたと見れないこともないと思う。

(E委員)

100万人という症例を集めると、明らかな疾患がなくても素因として、放射線感受性の比較的低い人から高い人までかなりばらつきがあると思うが、健康な小児100万人と、このコホートの100万人では放射線に対する感受性が高いほうにかなり寄ったグループだとしか考えられない。

(会長)

コホートは、10万や20万の個別のものを9ヵ国集めて行うことによって、小さいコホートではわからなかったことも、足してみるとわかってくることがあるというように統計的には考えてよいか。

(D委員)

統計の手法として、数が少ないために色々なものを足し合わせて統計のパワーを上げるというのは常套手段であるが、交絡要因をきれいに調整することはできない。どうしても集団の大きいところの情報に引っ張られるという傾向がある。

(会長)

大きい集団の傾向に引っ張られるとすると、非常に重要だと思った線量反応のPFなし群とPFあり群での特にPFなしにしたプレディスポジションのある子供たちを除いた残りで見ると線量依存性にSMRが上昇した。PFあり群でもSMRは上昇したが、今度は線量反応が観察されなかった。こういう異なるデータが出てきたときにどう考えたらいいかご説明いただきたい。

(E委員)

以前、死亡率に線量依存性があったが、それぞれのポイントで見る死亡率というのは、有意じゃない。そういう時に線量依存に意味があるのかどうかを議論した論文があったと思うが、今回の論文の線量依存性のところの詳しいデータがなく、実際に有意な依存性と考えていいのかというところが引っかかっている。

(会長)

次の論文が出てから確認していきたいと思う。

後続の論文がいつ出るのかは今の段階では確認できないが、場合によっては出版状況をカーディスさんか誰かに聞いてみたいと思う。

7年経って、そろそろ結論めいたものは出すべきかと思う。低線量については、こういう国際的な研究動向により、一定の結論が出てきているのではないかと思う。これに合わせて夏くらいまでには、これまでに検討した論文を確認して皆さんと議論する機会をもち、最終的には低線量での人体影響があったかどうか、この研究会としての結論を出していければと思う。

過去の論文をひと月に一回くらい、私なりにまとめたものを委員の皆様とやり取りして、8月後半頃にご意見をお聞きするという段取りで進めていきたいと思うがいかがか。

(委員)

異議なし。

(会長)

本日は、これで終了とさせていただく。

2 その他

(調査課長)

次回の開催時期及び内容については、会長及び委員と調整させていただき決定したい。

お問い合わせ先

総務部 行政体制整備室 

電話番号:095-829-1124

ファックス番号:095-829-1410

住所:〒850-8685 長崎市魚の町4-1(9階)

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