ここから本文です。

第10回 長崎市原子爆弾放射線影響研究会

更新日:2019年5月30日 ページID:032916

長崎市の附属機関について(会議録のページ)

担当所属名

原爆被爆対策部調査課

会議名

第10回 長崎市原子爆弾放射線影響研究会

日時

平成31年3月29日(金曜日) 14時00分~16時00分

場所

長崎原爆資料館 2階 平和学習室

議題

1 原子爆弾災害調査における放射線被曝と急性症状の発現

2 国際原子力労働者研究(INWORKS):長期低線量被曝の健康影響に関する知識を向上させるための共同疫学研究

3 小児CTスキャンによる癌のリスク:放射線防護にとっての意味づけ

審議内容

開会

審議事項

1 原子爆弾災害調査における放射線被曝と急性症状の発現

(参考人A)我々は旧長崎医科大学の調来助教授が中心に立って進められた、原子爆弾災害調査の調査票を2015年に放影研から移管され、きちんとデータ化して永久保存することと、貴重なデータであるため再解析を行ってみようと計画した。

移管を受けた後、2年間かけて調査票のデータを電子化するということで入力作業を行った。全項目209項目と非常に多岐にわたる項目があり、それが5,808枚あった。間違いなく入力するためにダブルエントリーという方法をとり、同じ調査票を独立して2人が入力し、その後照合を行い異なっている場合は元の原票に戻ってきちんと判定をするということで、データ入力の精度を高める工夫をした。

その後データの編集等を行い、より精度の高い解析ができるデータを作り直すということで2016年、17年、18年の最初の頃まで作業に費やした。

データを解析するが、調来助先生も調査後に『統計的観察』という第4編にわたる報告書を書かれている。こちらのほうは、第1編で死亡率、第2編で死亡時期、第3編で外科的損傷、第4編でいわゆる原爆症といわれる放射線病についての考察を述べている。第4編について関心があるが、急性症状の11症状についてそれぞれ距離別、遮蔽別、性別等の分類で主に記述的な統計をされて、そこから読み取れるものを考察して述べている。

結論としては、黄色のアンダーラインをつけている嘔吐・下痢・発熱・出血・脱毛・嚥下痛。これらの項目については原爆症としての意義があろうという結論を掲げている。こういった調先生の報告を受けて、我々でもう一度解析を行った。

調先生の集計は、生存者と死亡者に分けて、さらに男女合わせたもので、それぞれの分類が、距離ごとそれから遮蔽ごとにまとめてある。距離で近距離ほど頻度が高くて、少し離れると低くなるということで、脱毛については放射線の影響というのは考えられるだろうということになっている。遮蔽についても同じく、屋外は高くて屋内は低いということが見られるため放射線影響に関係するだろうということでまとめられている。

今回、元になった調査票は、一人一人その時に聞き取ったものになっており、この患者さんが居た場所が座標で書かれており、距離も記載がある。居た場所ということで、住所に「本原」という記載もある。屋内の木造の住宅にいたということである。それから、熱傷や外傷について熱傷はなく、外傷が軽度のものがあったというようなことが克明に書いてある。

症状についてもこのような項目が設けられており、頭痛があった、悪心があった、嘔吐それから疱疹といったものがあった。それから食欲については食欲不振の期間があった。倦怠等もあった。出血症状として吐血をした。嚥下痛はあった。脱毛はない。皮膚色素の沈着があった。といったことがデータとしてあるため、コンピュータ入力してデータベース化した。

このデータ化したデータがこのような形になった。全体で5,795人のデータである。生存者のデータが5,462人で死亡が333ある。調先生の報告書にも死亡の333があっているので、こちらはきれいに再現できたと思う。それに対して生存の方は数が違うため、調先生が集計されたデータとは生存者の数が全体をとれていない、残ってないのではと思う。

性別については男性が45%、女性が54%ということで被爆者の全体の分布を反映していると思われる。性別が不明としている15名は、調査票には性別の記載がなかった。記載状況の衣服や職業などの他の情報から性別を判定して決めている。そういったことから不明の15名というのは最後まで分からなかった方である。

これは距離別の人数になるが、近距離のところは死亡者の割合が多く人数も少なく、亡くなられているので人数が少ない。1.4キロまで、1.9キロまでというのが主なプロポーションとなるが、この辺りは昔の兵器工場や製鋼所等の方が多いため、中心に集められたのではと思う。それから3キロ以遠のところは市街地となるが、こちらがそれぞれの対象者の座標を地図上にプロットしたものである。ここが爆心でこれが2キロの円、これが4キロの円になるが、こちらが今の文教町の兵器工場、製鋼所、茂里町の兵器工場も含めてこの辺りにある。大学病院というのはこちらのほうになるが、2キロ以内というのは非常に多いというプロポーションになっている。そちらから外れた南の方、三菱造船所のあった辺りでもかなりの数がいる。丸の大きいところが人口の多いところになる。それから、市街地は、そもそも人口が多いためそういったところの人数が入っていく。4キロ以遠のところは、ぽつぽつと4.5キロまでの間の方が対象として捉えられていることがわかる。

それから遮蔽状況についての内訳になるが、最も多いのは木造家屋内にて被曝した方が52.4%で半分を占めている。無遮蔽は430人で7.4%。コンクリートと煉瓦造りというのも結構あり、812人いる。不明は177人となる。

全データによる脱毛のあった人は749人いた。これを距離別と遮蔽別としてグラフにした。距離と遮蔽で被爆した時の放射線量が関連するため、その変化を見たいと思い分類した。この青いところは無遮蔽の方々である。無遮蔽であるため、最も脱毛の頻度が近距離で高くて離れていくにつれて減る。ここで、2キロのところで脱毛の方が比較的高いパーセンテージであるというのがどういうデータなのか疑問に思ったため、データのフィルターをかけ、脱毛といっても放射線以外のいろんな要因でも起こることを考えられたため試しにやってみた。

頭部の脱毛に限り外傷がない人。例えば、頭に外傷があり脱毛しているというものもあるのではないかと思い、頭部の外傷がなくて頭部の脱毛がある人でフィルターをかけると523人で、大まかな形は元々のものとあまり変わりない。2キロでも相変わらず高いと出ている。

さらにフィルターとして放射線による脱毛が被爆から2週間後以降に頻度が高いといわれているため、8月下旬から以降の脱毛についてフィルターをかけると337と少なくなるが、フィルターをかけてみると2キロの高かったものが落ちているため、期間を区切ると放射線以外の脱毛もとれると思った。逆に出てきたのは1.5キロくらいのところで、屋内遮蔽にもかかわらず10%ほどの高いデータも残るということで、それだけで説明できるものではないことが分かった。

期限だけで脱毛については調査できると思ったが、フィルターをかけるごとにデータが少なくなるため、せっかく取れている全体のデータがあるのに部分的なフィルターをかけるのはどうだろうと思い直した。

そこで行ったのは、距離と遮蔽状況という2つのパロメータがあるが、煩わしいので放射線量を推定できれば、それを横軸にとり放射線状にとって評価できたほうがいいと思い、距離と遮蔽を被曝線量に変えるということを試みた。横軸を被曝線量としたうえで、単純な発現頻度を見るということと、最終的にロジスティック回帰というモデル分析をして、被曝線量が症状の発現についてどう影響しているかを評価するという、最近ではよく使われる方法ではあるが、それを使った解析を使用することで同時に重度の外傷のある方、生死・性別・年齢等を一緒に考慮した解析となるため進めた。

まず、線量の推定であるが、以前広島で開発されたABS93Dという線量推定の方法がある。これはDS86という放影研で開発されている、正規の推定方式を簡易版にしたものであるが、爆発地点から発せられた中性子とガンマ線さらに即発遅発もあるが、成分ごとに距離でどのくらい減衰するかのパロメータがDS86の報告書に記載されているため、そのパロメータを使って被曝地点と遮蔽の状況の線量を出している。

1キロメートルの無遮蔽の状態だと8Gy。1.5キロメートルだと900mGyという値になる。さらに木造の家屋や木の陰になると約60%から70%の600mGyになる。屋内になると無遮蔽の場合の半分の450mGyというような推定になる。こういった推定方式を使って評価をしようと、ただしこの推定方式の場合にパロメータが提供されているのが、屋外だと木や木造家屋の陰。屋内だと木造家屋内となり、無遮蔽と3つの遮蔽状況でしか推定ができないため、対象が若干減ってしまうがこれを採用した。

話が変わるが、一般に被曝をして放射線の影響というのは確定的影響と言われていて、ある閾値と呼ばれる線量を超えると症状が発現していく。発現する可能性が増えてくる。十分高いところまで行くとほぼ100%の人が発症するという理論的な話がある。イメージとしては火傷みたいなものを考えてもらいたいが、例えば50度 、60度程度の温度だと皮膚の弱い人は火傷の症状が出るかもしれないが、強い人はあまり気にならないと思う。しかし、100度 、200度となるとほぼ人体は焦げてしまうため、火傷というのはほぼ100%みられるということになるというイメージで捉えてもらえればと思う。この確定的影響の実験がある。マウスに人毛を植え付けて、それに放射線を当ててどれくらいの脱毛が観察されるかというのを実験した結果である。その結果によると、1Gyで0.8%程の発現が見られている。2Gyになると十数%になり、だんだん上がっていく。3Gyで60%、4Gyで98%というほぼ100%近い形でこちらの理論的な影響と似通った形が実験で確認できている。2Gy 3Gyのところというのは脱毛の閾値線量ということで考えられると思う。

これに対して、実際の集団で先程の調査などで得られる観察データというのはもっとこのように出ており、より低い線量でも脱毛が発現する割合が観察され、逆に高いところでは100%まで行かず、原爆であるため線量だけでなく、爆風や熱線などで人が亡くなっているため人が少ないこともあり100%の観察はできない状況になる。

ここで考えなければならないのが、縦軸と横軸の誤差の問題である。まずは横軸の線量であるが、低い線量でこれだけの割合の人の脱毛が観察されているということ自体が、実は割合が上がっているということは本当の線量はもっと高いのではないかという方向の考え方が一つある。もう一つは高いほうで十分取れてないというのは、先程言った集団が十分捉えられてない、亡くなった方が多くなって全体が捉えられないということが考えられると思う。

縦軸の方向、症状の発現頻度という面で見ると低いほうで上がっているというのは、放射線以外の原因で起こる脱毛というのも、ここに入ってしまっているのではないかということである。それから高いほうの頻度としては、十分放射線影響がそれだけの人数が高いほうが人数の影響が非常に大きいと考えられる。

これらの点について今後、解析を進めるときに確認を一つ一つしたほうが良いのではないかと思い、これらのことを考えた。まず横軸の放射線量の推定の正しさという点からは、距離と遮蔽状況と先程説明したように被曝線量が決まるため、それらの情報が正しいのかという点で距離については先程調査票を示したが、距離と地図座標があるため、この辺りの照合をできるだけ進めた。遮蔽状況について他の情報を突き合わせることができないかと考えると、同時期に日米合同調査団という別の調査があり、それと同じ対象者が含まれているというのはある程度わかったため、その結果と照合してみようということが一つ。三つ目としては長崎特有のことであるが、地形遮蔽というものが考えられる。金比羅山、稲佐山、岩屋山等の遮蔽があるが、これは2キロ以上のところの話になってしまうため、今回はそこまで考慮しなくてもよいかと思い省略した。

縦軸の症状発現の確かさの確認については、先程脱毛の話をしたが、発現時期や期間というのは放射線影響の一般的な知識とあっているかということが考えられるが、脱毛についてはある程度わかるが、それ以外のところではちょっと難しいと思い参考程度とした。外傷・熱傷との関係というのは考慮すべきと思い、入れた。また、症状申告の確かさや放射線以外の原因で起こる脱毛が入っていないかということについても他の調査の結果との照合というものをやってみた。

まず対応しなかった地形遮蔽の話であるが、2キロ以内のところは色がついており、遮蔽がなくほぼ照射されている。金比羅山の陰になるところ、西山地区や桜町そういった地域になるが、この辺りは金比羅山の山陰になり直接の放射線というのは、山によってある程度遮蔽された地域であるため放射線はいくらか弱くなっているというのが考えられる。周辺部分はこのように非常にグレーの部分が広がっており、こういったところでは地形による遮蔽というのも効果がかなりあったのではないかということが考えられる。今回2キロ以上というのはこの部分ということになるが、今回これは考慮していない。

もう一つの日米合同調査団の調査の照合を行ったが、これは同じ時期、11月、12月の時期が中心だったが、合同調査団という形でアメリカチームのドクター達が入って患者の調査を行っている。通訳として日本のドクター達も入るという形で、項目自体は非常に災害調査と似通っているので照合できる項目が多いということでこれを採用した。

災害調査の5,795人と合同調査では5,858人というデータがあり、それをかな氏名・年齢・被爆距離で照合して若干幅を見た。同定できたのは3,449人。災害調査全体の59.5%になる。氏名は完全一致を取った。被爆距離と年齢については完全一致が3,065人。全体としては3,449人の数で、若干違うところも含んでいる。

照合した結果であるが、まずは遮蔽状況に一貫性があるのかというところで見た。屋内か屋外かで見ると災害調査屋内が75.9%、屋外が24.1%。これに対して合同調査が75.4%、24.6%と非常に似通っている。これを一致数として屋内屋外の一致数を見ると2,348で一致しており全体の97.3%、非常に高い割合で遮蔽の状況については一致が見られたということである。ちなみに他の木造家屋については96%の一致である。無遮蔽については若干低くなっているが、83.1%である。

災害調査の無遮蔽のデータについては、調査の一つの項目だけではなく、遮蔽になるようなものの記載はないかと綿密に見て、何かしらの遮蔽があったものについては無遮蔽から外している。その意味で割合が若干低くなっているためそういったことで、差があるということをご理解いただきたい。

一方、症状の方の照合と発現時期についてであるが、これが脱毛の発現時期と奥のほうが継続した期間になる。8月9日から脱毛があったという証言もあるが、8月中旬以降のものが多く、9月中旬になるとだんだん少なくなっていくという傾向がある。期間としては1週間以内からというのが非常に多いが、中には1日というデータも非常に少ないがある。脱毛については、適切な放射線の影響とみられるところを取り出すことができないわけではなく、こういった状況であるということを参考までに。

先程の合同調査対象の症状の一致ということで、比較をした。比較の一度として、カッパ係数というものが統計的にあるが、それを示したものである。高い順に並べてみるとこのようになっており、結果だけ申し上げると、嘔吐・下痢・悪心・脱毛・鼻出血・発熱とこの辺りまで非常に高い一致の割合が見られ、こういった症状については非常に安定した回答が得られていると思う。この合同調査との比較で、ある程度信憑性が高いということまでは言えないが、安定したデータが得られる症状というのは選別できると思う。

症状の発現の性差についてみると男性のほうが意識障害では高く、それ以外の悪心や嘔吐、炎症や食思不良については女性が高いと統計では有意に性差として出ている。それから年齢差で見ると、これはほとんどの症状で20歳代、20から39歳くらいの年代で症状の頻度が高いというのが見られている。唯一痙攣については統計についての有意な差はなかった。性別や年齢で傾向の違いを考慮しなければならないという訳である。

それに加えて、生死と重度外傷についても違いを見てみる。生存と死亡を比べると各症状で死亡のほうが症状の頻度が高いというのがそれぞれの症状で見られる。高いものだと下痢や発熱については70%や90%で死亡のほうが高いという違いがある。それに対して重度外傷の割合で見ると、重度外傷のある人のほうが症状の発現も多くより近距離で被爆していることもあるであろうし、その違いがあるということであるが、重度外傷があって死亡というのは全体の26%。それに対して重度外傷がなくて生存しているのが95%というのでわずかなものがあるということである。重度外傷があるが生存しているのが4.1%で、重度外傷がないが死亡しているのが73%となっており、なぜこのようなことを行ったかというと、死亡と重度外傷というのが強く結びついており、どちらかの説明をするのであれば、どちらかのパロメータだけで解析できると思っていたが、それぞれには別の意味合いがありそうなため、両方とも考慮すべきと思った。

被曝線量による解析の集団としては、被曝線量推定ができた人達という形になり、5,795名の全体から推定が可能だったのは3,566人、全体の61.5%という数になる。性別の割合や年齢の割合はそもそもの全体の集団とは大きく離れていない。統計的にサンプリングできている形になると思う。

これは横軸に線量をとって各症状の発症頻度を単純にグラフにしたものである。右側の線が多くて紛らわしいが、右側が最終的な位置になるため、痙攣や色素沈着については線量での病症の傾向というのは最後にぐっと上がるが、全体の頻度としてはあまり多くないということで、傾きが大きく出ていない。それに対して脱毛から上の症状というのは、頻度も高くてもともと高いものもあるが、傾きがほぼ同じくらいで線量による上昇というのがこちらよりは明確にみられる、というのが分かると思う。したがって、脱毛から上の部分と下の部分では若干区別できると思う。

最終的な解析の方法としては、ロジスティック回帰モデルというモデルを使った解析になるが、これは何かと簡単に説明すると、意識障害や眩暈や脱毛などの症状の有無について、被曝線量と性別・年齢・生死・重度外傷のデータを入力していき、全体の人達の傾向が成り立つような係数を求めていく。これがうまく求められていると、全体との要因が症状発現に効いているか分析できるツールになっている。求められるのはオッズ比といって、症状の発現しない確率と発現する確率の割合ということになるため、これが1以上であれば症状について効果があるという風に見られる。

そういった点でこちらの縦軸がオッズ比の結果になり、高い順に並び替えているが、脱毛・嘔吐については非常に高く1.4の値がある。それから以降の発熱・悪心・出血・炎症についても1.3以上ということで比較的高い値が得られている。それ以降の症状についてもこれも関連がないわけではなく、全て1以上であるため関連は見られるが、症状間で見ると脱毛・嘔吐というのが高いというのが見て取れると思う。唯一痙攣についてはデータ量が少ないこともあって、1にかかっているため実際、効果が放射線の影響はあるのだろうかという疑問がある。

これは症状ではなく、死亡にどの症状が影響しているのかを参考までに見たものである。死亡を見ると、意識障害や発熱・痙攣・食思不良といった症状が死亡と強く結びついており、亡くなりそうになって非常に重篤であれば発現する症状と思うため、そういったものを反映した結果だと思われる。注意すべき点は、脱毛と色素沈着については死亡に関して有意な結果を得られていない。効果がないということで、脱毛や色素沈着があるからといって死亡に結び付くということはないということがこれから読める。

全体のものをまとめると、項目が多いため全体のスコアなどを見たくなりまとめてみた。まず、調先生が出された報告書の中で原爆症の意義があると書かれていたものがこちらである。炎症がただの丸になっているのは、こちらは嚥下痛だけのことで解析されていたため白丸にしている。先程のオッズ比が出ていて、特に高かったのは1.3以上のこの白丸のところになる。それから、最初に行った症状の頻度でみたものがこちらということで、最後に症状の合同調査との一致。安定したデータが得られているのがこれということで全体を表にしてみた。

見てみると、ここに挙げた悪心・嘔吐・下痢・発熱・出血・炎症・脱毛というのが、一貫して放射線の影響というのを調べるには対象としてよさそうな症状である。嘔吐・脱毛についてはオッズ比で非常に高い値を示していたため、この辺りは注意してみるべきであると思う。

これまで、原爆当時の臨床的なことにあたられた方の経験もあり、それまでの得られている、放射線被曝の方の症状が観察された結果等の経験的に得られている原爆症というものが被曝線量ということで統計的な解析の結果、ある程度の関連と違いが見られたということになる。生死や外傷、性別や年齢等の調整も行ったのでその辺りも踏まえて統計的な違いが見られたと考えている。特に脱毛と嘔吐に注意しなければならないというのが結論になる。

以上でこれまでの結果になるが、今後症状の合併として単一の症状だけではなく、原爆の放射線によって被曝していれば、この症状とこの症状が合わさって出ているパターンが多いなど、そういったことで放射線被曝の証明とまでは言えないが、関連が強いということをさらに割り出していけたらと思っている。2番目としては、薬剤等が不足している中で治療の、非常に当時のドクターが苦悩されている状況が記載されているため、その辺りを歴史的なものとしてまとめる必要があるということと、あとはその後のがん死亡との関連といったところで解析を進めていきたいと考えている。

最後に、線量が上がると合併する数が4つ以上の症状というのがピンクと赤の部分になるが、被曝線量が上がると同時に発症している症状の数というものが確実に上がるため、先程の合併するパターンが割り出すことが可能ではないかと考えている。

今後、6月の原爆後障害研究会等で進めていければと思っている。

(会長)委員からデータに関して、あるいは解析方法に関して質問があれば受けたい。

(委員A)脱毛の頻度のところで症状がいつ出るかということで予備解析している。結果はかなり変わってきているが、後の方の症状の性差・年齢などのところにはこのデータを使ったのか。

(参考人A)遮蔽と距離がばらばらのパロメータで出すとそういったグラフになり、非常に読み取りが難しいということで、一本の軸に線量という形でまとめている。後ろのほうで出ている性差がある、年齢差があるといったところは最後のロジスティック回帰の中にパロメータとしてきちんと入れて、データを調整しながら結果を出すということをした。線量との関連があるかという点で解析を進めるという形になっている。 

(委員B)前半部分は調先生の調査の結果をデータベース化され、最初は脱毛に着目をして遮蔽の有無などを解析されている。その後再解析として今度は被曝線量との関係を見られたということである。そこでデータとして、再解析デザインのスライドの前の推定線量があって、放射線被曝と症状発現頻度についてであるが、この観察データというのは実際に計算されて出てきたデータということか。

(参考人A)観察データというのは、先程の横軸を線量にして症状の頻度を出した図になる。線量が増えるにしたがって、頻度が上がっていくが、今ここは代数ではないが飛んでいるためぐっと上がっている。

(委員B)この書かれ方というのは、何かをモデルにフィットさせて書いたように見えるが。

(参考人A)そうでなくあくまで、模式的なものになる。線量的にここが例えば1Gyとかこれに対応させると1ぐらいからとなるが、それよりも低いところ。例えば先程の距離と遮蔽状況でいうと、例えば1.5キロのところでの被曝となると先程900mGy と申し上げたが結構な割合の、10%くらいの脱毛があるというデータになっているため、実際の観察データというのはもっと低いところでも頻度が高いということを示していることになる。

(委員B)そういうイメージを示されているということか。

(参考人A)そうなる。

(委員B)要するに、高線量の場合100%までの頻度を上げるときりがないということで、そこで切ったということか。

(参考人A)そうなる。

(委員B)そのあと、日米合同調査団の調査の結果と併せて、マッチングして両方とも使えるデータを絞り込んでいる。聞きたかったのはオッズ比の前、被曝線量としてはこれ。ここで、横軸の一番左が5mGy 未満で、非常に低い線量である。例えばそこで20%とか18%とかいる。これは確定的影響であれば、集団の18%くらいが超えるということで閾値と理論的に考えられるが、このデータを見る限りでは非常に低い線量のところで6%くらいはいるのでむしろバックボーンを考えてしまうと思われるが。

(参考人A)そうだと思う。もしかすると線量の効果でなくて、災害のもので起こっているものも当然入っているものと思っている。

(委員B)この集団が爆弾の集団として差し引いてみると、また別の結果が出るということである。それから、ロジスティック回帰モデルでオッズ比を出されているが、こちらの信頼限界というのはどこになるのか。

(参考人A)棒が信頼限界、信頼区間になる。

(委員B)わかった。では最後に、参考データで死亡と症状発現の関連があるが、これはどういうモデルなのか。

(参考人A)ここを死亡に変えて、こちらのほうに症状というのを要因として入れて、この症状がどれくらい死亡に寄与しているか、というイメージの解析がこれになる。逆に言うと死亡の中で多かった症状というのが、線量を調整したうえでの効果があったものというのが、この症状であると示している。

(委員B)症状間の交絡というのはどうか。

(参考人A)それについては今後ということになる。

(委員C)やはり非常に低い閾値が出ていて色々な症状が出ているということであるため、その辺りの整理が非常に難しいとなっている気がする。この中で一番わかりやすいのが脱毛だと思うが、これの定義や差異というのはどういったものから脱毛と呼んでいるのか。

(参考人A)災害調査の中では、脱毛があったか、なかったか、いつからそれが発現したか、どのくらいまであったか、という項目で終わっている。他の調査の中には、脱毛の程度を合わせて聞いているものもあり、その程度が入っていればデータとして重度の脱毛であればより信憑性が高いかということで、採用している研究もある。今回のデータの中では脱毛の情報の中で、選別できる正しそうな、確からしさという意味で選別できるデータがなかったため、今回は採用していない。唯一、発症時期と期間というところで、区切れはするが、脱毛についてはそちらを使うということに余地があると思う。

(会長)何回目かの研究会で日米合同調査団のデータを皆さんで検討したことがあったが、大体がその時に言われていたことと同じことが、今も再現されているように感じる。低線量のところで脱毛があれば、放射線被曝を受けているという証拠としては弱いという感じであった。

かなり絞り込んだデータでも5mSvや0.1Gy、すなわち100mGy のところでも脱毛が出たりする。なかなか、コンクルージョンというか、松田先生が言われたように、バックグラウンドとしても放射線被曝の証拠としては、もう書けないという割り切り方をしてから解析されていたのではないか。それは、脱毛と放射線の関係を見る研究としてはそうであるが、被爆地拡大の方々も脱毛が見られている。それが放射線被曝との証拠足りうるかということに関しては、なかなかならないということで、今回も同じように結論付けられるかと思って聞いていたが、どうか。

(参考人A)直接の被爆で、放射線を浴びた方のデータとしてこのようなものがあるため、拡大という意味での遠距離で被爆された方というのは放射線降下物などそちらのほうの影響が考えられると思う。それで脱毛が起こるのかということについては、この範疇には入っていないため、別の降下物の線量値と脱毛の発現というデータがあるのであれば、そちらで解析するべきだろうと思う。

(会長)実際にあるのか。降下物で、フォールアウトで脱毛というのは。

(参考人A)データは見たことがない。

(委員B)ビキニのほうにあるようであるが、あちらに脱毛はあるのか、調べていただきたい。

(参考人A)わかった。

(委員B)調先生は距離が違ったようである。遠距離は調査されてない。あそこに西山地区や矢上地区などの広い範囲で色々症状を訴える方がいたが、調先生達、医科大学のチームにそういった情報は入っていれば調査していたであろうが、その頃は全く情報が入っていなかったのだと思う。特に脱毛と被曝線量との関係というのは長年言われていて、我々臨床医も結論めいたものを出せていないため、じくじたるものがあるが、あと、どなたかが言われていたことで、毛髪に火傷を負った場合、脱毛するのではないかと思うが、それは調べていないのか。

(参考人A)今回の最初のグラフは頭部の外傷を除いており、後の解析の方で場所は特定できていないが、重度の火傷も含めた形で、重症のパロメータは例えば重度の外傷もしくは三度以上の火傷があった人という風に定義をして、それで調整をした結果になる。火傷が頭にあったかということについては、調査データの中には入っていないため詳細は分からないが、多少はその中に含めて解析している。

(委員B)影響は出ないのか。

(参考人A)結果として調整しても出てこないというか、低線量でのという意味ではなくて、一般的に関連は消えないということであるため、火傷があった人が調査されても線量との関係はそのまま残ったということになる。

(委員B)それは近距離の影響か。

(参考人A)近距離での影響になる。

審議事項

2 国際原子力労働者研究(INWORKS):長期低線量被曝の健康影響に関する知識を向上させるための共同疫学研究

(会長)これまでINWORKSの最初の代講をかなり詳しくこの研究会で分析して、委員の先生方も非常に多岐にわたる意見が出て、まだ低線量の人体影響について確定できるほどの、データではないのではないか、ということがこれまでの我々の研究会の評価になるが、その後も国際的にいろいろな異議が評論の形で出されていた。それを受けてこのINWORKSのグループが、代講グループと全く同じあるが、国際研究のこのグループがもう一度オリジナルデータから線量の出し方、いろいろな交絡因子というか、そういったものの影響も含めてもう一度分析し直して、その結論を今回出している。そういった意味では代理本というよりも、訂正報告という形になるかと思う。

ここで重要なことは、低線量領域で線量反応が徐々に上がっていくことが第一報で主張されていたが、それは撤回されている。撤回しているが、これが今日先生方のご意見を伺いたいところが論文で微妙な表現をしており、ご意見を聞かせていただきたいと思う。

INWORKSは多国籍コホート研究である。コホートというのは集団で、フランス・イギリスおよびアメリカ合衆国の原子力産業で、1945年以降原子爆弾の製造、マンハッタン計画に従事した人から始まっている。トータルでその後、原子力発電所の従業員をこの3か国でフォローアップして、ずっと被曝線量とその後どういった病気で亡くなられているかを調査されているのが意義となる。その総数は308,297人の労働者の方々である。

このコホートでは、電離放射線の外部被曝についての詳細な個人モニタリングがあり、そちらを今回も十分に解析して信頼に足るものだということを言っている。それから追跡期間はそれぞれ一人一人違うが、平均すると27年間。労働に従事している間の被曝になる。

その集団から出てきた27年間の死亡数は、66,632人になる。その内、固形癌によって死亡された方が、17,957人であり、血液癌すなわち白血病が1,791人とは少ない。それから心臓血管系の病気で、心疾患で亡くなられた方が27,848人であった。この辺りは、第一報からは大きく動いてはいない。

それから、1945年から2005年の期間にわたる平均の個人累積外部線量は25mSvであった。これはかなり低い線量である。この研究は低線量被曝の人体影響を明らかにしようということになっている。

分析により、赤色骨髄線量(RBM)といわれる骨髄の線量と白血病の関係を見てみると、慢性リンパ性白血病と少し専門的になるが、放射線との関係がないと知られているため除かれている。白人にはこの慢性リンパ性白血病が多いのためこれを入れると少し不確かになってしまう。

赤色骨髄線量と白血病発生のリスクの関係、それから結腸線量。腸の一番奥の結腸のところである。大腸の肛門の手前の結腸の深いところで線量が計算されているが、固形癌とのリスクの間である。そこに関連があるのかということで、有意な関連性が実証されたといわれている。

INWORKSのこの研究は低線量及び低線量率である。リスクが何度も労働していく過程で、少しずつ被曝していくため、その率が増えていく。最後に、トータルの線量がある。その両方を含めた電離放射線の被曝から成人の健康を防護する、そういった科学的な根拠をさらに強化するための、いくつかの強力な証拠が得られたと述べている。

結果であるが、まず、531人の方が白血病で亡くなられている。過剰相対リスクは線量がほとんどにない人に対して、どれくらい過剰なものがあったかということであるが、1Gyあたり2.96というものである。90%の信頼範囲で1.17から5.21というデータを今回は出している。

それから固形癌は17,957人の死亡で、過剰相対リスク(ERR)といわれるものは、0.47/Gy、1Gyあたりである。90%コンフィデンスインターバルが0.18から0.79でこちらは少しワイドである。

過去のINWORKSのデータ、この第二論の今回のデータと、過去の15ヵ国研究というものがある。原子力発電所の労働者である。そちらで出された過剰リスク。それから原爆被爆者のLSSコホート。こちらも以前、この研究会でかなり詳しく検討したが、そちらでの過剰相対リスク、この3群を比較した表が出ているが、白血病ではERRがINWORKSでは2.96で15ヵ国は1.93、原爆は2.63である。近いといえば近いといえ、大よそ似通っている。

それから肺癌を除いた。集団で癌の検討をしているが、こちらは煙草の影響が検討されていない。労働者たちが煙草の喫煙、非喫煙のデータがなく大きな欠陥だったが、そのデータがなく改めて補う訳にはいかないため、煙草だとほぼ肺癌が増えてくるというのは、世界のあらゆる研究で一致しているため、その他の癌も煙草で多少影響はあるが、肺癌がダントツであるということである。肺癌がこの集団は多かったため、そこで除いて残りの癌で調べてみても過剰相対リスクというのは、同じであったことから影響はなかったのではないかと推定している。

3ヵ国のそれぞれのデータ、アメリカ・イギリス・フランスのそれぞれのデータを個々に比較してみたが、全体のデータとそれほど変わるものではなかった。

最後に結論が5行ほど書いてあるが、その後の裏の方に私の意見を書いている。

まずこの研究のまとめとしては、線量の低いところで白血病では300mSv以下のずっと0であるが、以下の範囲でも上昇があったといっている。固形癌では、100mSv以下でも有意にあったという訳である。しかしこの範囲では線量とリスクの上昇の関係が、データの不確定要素が大きいため、我々の研究会でもすでに委員の先生方から指摘があったところであって、コンフィデンスインターバルが大きすぎるということで、確実なデータとしてはとれないのではないかということで、この方々も線量反応は一応不確定と言っている。

しかしながら、ERRは300や100を超えて、もっと高いところも含めた全線領域のERRと同等のものであったため、低線量域での放射線の影響はあるとこちらの方々は考えている。

今までの低線量放射線の健康影響に関して、防護の観点から低線量域の基準というのは20mSvなどでICRPの基準があるが、これが非常に低すぎるのではないかと批判もあったりするが、この研究結果からは大体妥当なものと見ることができると言われている。

この論文の概要はそういったことになる。INWORKSの最初の報告は本研究会でも詳しい解析と議論が行われ、100mSvあるいは300mSvで、前は癌で後が血流のデータであるが、その線量域での線量反応性を有意とすることは無理があるという委員が多かった。今回彼らもそういう風に訂正している。

今回の二次ともいうべきINWORKS報告は種々の批判に対して答えたものであり、100及び300mSvの低線量域の線量反応が有意とする結論は訂正された形。しかしながら、低線量域のERRは全線

領域のERRと同等であったということで、従って低線量域の線量反応は完全にないと、300以上や100以上の閾値があってそれ以下はないことも、結論付けるのは難しいと思われると解釈をしている。

このような極めて弱い因果関係は、計算上も弱いということが確認できる。というのは、癌によるリスクで計算していくと全体の死亡のわずか1%、白血病の場合は少し多くて6%で低線量によって、増えた死亡数ということで過剰リスクである。いずれも低いのは事実で、その辺りが放射線防護の観点から確認されたという論文になる。

我々が、この論文に関心を抱いているのはもう一つ理由があり、被爆者拡大地域の方たちの被曝線量が多い方で、これまでの我々の検討や他の方々からの検討でも25mSvくらい前後のところにある、その辺りで健康影響があるということが言えないということで、確かだが、そちらに繋がる様な所見で、非常に低いが否定はできないということで、先生方の意見を伺いたい。

表1に先程の癌と白血病に分けて、15ヵ国研究とINWORKSとLife Span Studyという原爆のERR、1Gyあたりがそちらに90%コンフィデンスインターバルで含めて書いてあるが、このINWORKSの今度のデータは、コンフィデンスインターバルは比較的、15ヵ国スタディではとても狭まっており、原爆被爆者のデータに匹敵している。そして、癌は実際に放射線被曝者よりもより高いリスクになっており、白血病はほとんど一緒でそういうデータになっている。そちらの解釈を行っている英文が、一般の方申し訳ないが、議論が英文になり、23ページのResultからずっと続き、Resultの最後のところでDiscussionのその前の1パラグラフ。

Sensitivity analyses have been performed on restricted dose ranges.

Significant associations were observed down to a restricted range of 100mGy forsolid cancer, and of 300mGy for non-CLL leukaemia.

Below those levels, the dose–risk relationships were not significantly different from zero due to large uncertainties but ERR estimates were consistent with those obtained over the whole dose range.

私は先程日本語で言ったように解釈をしたが、これを先生方にも是非、解釈していただきたい。場合によっては著者に問い合わせをしようと思っている。いかがか。

多くの疑問を呈する論文は、この論文の代講については疑問を呈した論文だと分かったが、その後これに対して疑問が出てくるのかというのは見なければならないが、この主張は我々の委員会としては、非常に低い線量だけれども平均線量25mSvで低線量の人体影響がある、ということにしてよいか。

欠席委員の意見も聞かなければならないが。 

もう一度私は、グループの方たちと何人か知り合いであるため、あなた達の主張がどういうことなのかをもう少し平らな文章で説明してほしい、という手紙を送ってみようと思う。問合せしてみる。よろしいか。

(委員)異議なし。

(会長)あとは、慎重を喫して、何人かの日本の研究者にも伺ってみようと思う。

審議事項

3 小児CTスキャンによる癌のリスク:放射線防護にとっての意味づけ

(会長)これも我々が一時、ある段階の癌研究も兼ねて非常に熱心にご討議いただいた、小児のCTスキャンのスタディで、これも4、5個の論文が出ており、全て低線量で影響があると、小児期のCT検査がその後、5年10年の間に白血病を増やしたり、癌を増やしたりしている。そこにまた多くの疑問を呈する論文が出ており、中々混沌とした状況になっている。

そこでヨーロッパのグループが、EPI-Studyというヨーロピアンのスタディグループを発足させて、第一報が出てきた。それでやはり影響はあるということであったが、これに対してもまた、例えば小児を何万人と診ているが、その何万人の小児の中には先天異常の子供が結構含まれている。そのためにCT検査をする。だからCT検査で放射線を浴びる。その子供たちが入っているために癌が多いのではないかと、先天異常の中には癌を起こしやすい先天異常がいくつもある。そこでかなり混沌としてしまい、癌をやはり除いた全く先天異常のない子供達でも本当に100mSv以下の低線量の影響があるのかを診なければならないという研究計画を立てた。そのためには相当な子供さんの数がいるということである。

そこで、ヨーロッパにはEUがあるため幸い、多国籍研究ができる環境にある。日本など1ヵ国で行うと、もちろんどうにもならない壁になるが、そこで今回こういう風に行っているという論文が、ICRPのジャーナルに出ていた。これはデータが全くない、まだ結果はない。方法論を今こういうことを行っていると、これはICRPのシンポジウムで発表したものを小論の形で載せてあると思う。

今結果の解析を行っているのだろうと思う。将来は結果が出てくると、これも非常に結果が待たれるというわけで、去年の中間報告を出すときにその結果を出しましょうということで、それに対する直接の答えはまだ出てない。そういう風に捉えて欲しい。

小児のCTスキャンによる癌のリスクということで、EPI-CT Studyである。Annals of the ICRP

とジャーナルの名前が書いてあるが、これが昨年出ている。小児CTスキャンの研究は2015年からずっとあったが、16年、17年にデータを狙ってこの研究会も困り果てていたが、2018年にこのICRPの論文が出てきた。

小児CTスキャンによる低線量の放射線被曝による癌リスクについてこれまで様々な研究結果が報告され、放射線防護の観点からこの癌リスクに対する懸念が広がっている。しかし解析結果の精密性と正確性について、まだ検討すべき事柄が残っている。そこでEPI-Studyはヨーロッパ諸国によって、小児のCTスキャンによる診断方法の適切、すなわち安全な実施方法の確立を目指してEUによって設立されたということである。

International Agency for Research on Cancer これは世界でも最大級の癌研究が、国連の要求でフランスに設立されているが、IARCと言いここで共同研究が計画され、多国間コホート。コホートというのは、それぞれの国の小児の母集団ということである。それを全部集めるということ。小児及び若年者の長期追跡調査が実施された。フランス・英国・ドイツに加えて、新たにベルギー・デンマーク・オランダ・ノルウェー・スペイン・スウェーデンがこれに参加している。

同一プロトコル。同じ方針で決められた方法で、CT検査をするということ。それによって出た被曝線量を計算する方法も定義、統一している。

それから個々の臓器線量、それぞれCT検査では色々な臓器を別々に、CTを撮るため、例えば肺にどれくらいあるか、骨髄にどれくらいあるかなどで、そういったのを臓器線量と言うが、その推定が非常に重要なためそれは、モンテ・カルロ方式という専門用語であるが、ファントム。子供の形をした、人形を用いて計算をされている。これが世界的に統一的な方法で、そういった専門家たちが集まって研究をしている。線量が不明な場合は、特殊な推定方法を考案したと書いてあるが、これは今回詳しくはわからない。

得られた結果に対する交絡因子について、ここが大事なところである。基礎疾患の状態、すなわち先程言った先天異常や、その他の色々病気を持った子供達が混じってくる。なぜCT検査を受けたか、病気を発病してCT検査を受けたため、その病気をすべて登録して解析している。そういうことを行っている。慢性基礎疾患である。

それから、子供達が属する家庭の社会経済的な背景、これは色々な学歴や社会経済、例えば年収などで色々な病気の頻度が違うということが沢山ある。当該医療機関外からCTを受ける病院に携わる、紹介されてきるため、前の紹介病院のデータが十分得られていなくて不明となっているものもあり、そういうものをどう取り扱って何とか、研究に影響が出ないようにするが検討したと書いてある。

EPI-CTに参加するこのデータを用いて、色々なシミュレーションを行って妥当な方法を採用したということである。不明の情報をどうやってシミュレーションするか今のところよくわからない。

そこで、総患者数は、1,170,186例。私が見た中で最大の患者数である。原爆の放影研の方が約7、8万人くらいであるため少しとんでもない数である。75%の患者さんは、子供さん達のCTスキャンは1回のみである。CTスキャン時の年齢は、約30%の患者が5歳未満でかなり小さい子供達が多い。その後平均して、十数年の間に出てきた平均の追跡期間は8年ということである。これは国によって結構差が出ているようである。

その結果、統計を出すときに一番基礎になる人年という考え方があり、一千万人に対して何年観察したかということで、例えば10年だと、一千万人の10倍で一億人年になるが、この場合は117万人の8年になるので、一千万人年(10million person year)の統計量となった。これに色々な実施をしているということになる。これは、EUの研究費がこれに充てられる。

私の意見は、これは結果が出ていないので何とも言えず、この研究会に対する影響は言及できないが、EPI-CTスタディで報告された研究方法の、詳細な報告となっている点に意義があると思っている。実際行っているということである。

この2年何も発表がなかったため、極端な考え方としては行き詰ってもう行っていないのではないかと思っていたが、ちゃんとICRPの研究会に発表されていたため、行っているのだと思った。

これまで最も問題となっている交絡因子が、先程申し上げたような基礎疾患である。種類による癌が多いというデータになっているとすれば、基礎疾患が影響していないかということを非常に精密にみたのだと思う。これが最大の一千万人年ということであるため、ある程度期待できるのではないかと思う。

フランスが、交絡因子の6万人、7万人くらいの子供達のデータを出して先天異常を除いたが残りの子供でやはり、過剰だったと発表しているが、あとの国はそういったことを行っていないため、唯一この研究が将来結果を出さないことには、我々は評価できないということである。

なぜこれに注目しているかというと、被爆者拡大地域の方々の20mSvやそのくらいの被曝線量を受けた方々の多くが、もちろん大人もおられたが、子供さんが多かった。今ご高齢になられた被爆者拡大地域の方々は、おそらく原爆の時には子供さんであったのではないかと思われる。子供の放射線に対する感受性ということで、敏感ということである。大人よりも敏感だということで、子供のデータが出てくるということは非常に重要なことである。それを将来は我々も、再検して読んで評価していきたいと思う。

それから、LOW DOSE EFFECTSといわれている英語で低線量被曝の大人と子供の両方ともであるが、国際的には非常に研究が活発というか、放射線の人体影響の中でまだ解明されていない一番大きな部分で、皆さんも考えられるとすぐにわかると思うが、福島も低線量被曝なためすぐに影響していく。そういう意味ではあちこちで採択して、その中の一つに先程まだ先生方にお見せしてないものがあり、私が目を通したところ新たな、全く別のグループが非常に面白い方法で分析をしている。

9つの国の、それぞれの国々で子供の時に放射線をCTではなくて、色々な理由で放射線を被曝した方々がおり、その中の一つが日本で、原爆被爆者で100mSv以下の被曝したグループがそこに入っているが、そういったものを併せて何十万という数字にしてプールして解析をしている。すごいなと思い、読み始めている。

そういったことで、色々な国でこういった課題を追及している状況であるため、我々研究会もまだまだ中間報告を去年させていただいたが、もう少しこういう論文が出そろった時に最終結論に到達できればなということを思うことを、今日の研究会での最終発言にしたいと思う。

何か委員の先生方からご意見はあるか。こういった構成で進めていってよろしいか。

(委員)異議なし。

(会長)それでは、これで研究会を終了とさせていただく。

お問い合わせ先

総務部 行政体制整備室 

電話番号:095-829-1124

ファックス番号:095-829-1410

住所:〒850-8685 長崎市魚の町4-1(9階)

アンケート

アンケート

より良いホームページにするために、ご意見をお聞かせください。コメントを書く

観光案内

平和・原爆

国際情報

「行政運営・審議会・指定管理者・監査」の分類