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平成26年度第2回 高島炭鉱整備活用委員会

更新日:2017年1月16日 ページID:029309

長崎市の附属機関について(会議録のページ)

担当所属名

企画財政部 世界遺産推進室

会議名

平成26年度第2回 高島炭鉱整備活用委員会

日時

平成26年7月29日(火曜日) 13時30分~

場所

都市センターホテル(東京都千代田区平河町2-4-1)

議題

(1)高島炭鉱跡 端島炭坑跡保存管理計画書(案)について
(2)高島炭鉱跡 高島北渓井坑跡保存管理計画書(案)について
(3)その他

審議結果

1 高島炭鉱跡 端島炭坑跡保存管理計画書(案)について

【事務局】
~前回の指摘と対応について~

1点目の「世界遺産の位置づけの書き込みが不十分」、「海洋炭鉱ではなく海底炭鉱という表現の方が相応しい」、「居住施設の価値の扱い」の指摘については、計画策定の経緯や目的の中で書き込みをしている。また、この保存管理計画は、高島炭鉱調査報告書と管理保全計画(CMP)との整合性を図った位置づけとしている。

2点目の「擁壁と護岸の区分についての整理が必要」、「護岸遺構を裏付ける変遷図の中では埋立前の自然地形の表示は不要」などの指摘については、擁壁・護岸の区分を海側に面した護岸地区、内陸側は居住施設地区と生産施設地区という3つに分け、内陸側の居住施設、生産施設の中にある天川でできた石積みは、現時点で護岸遺構とは確認できないため石積み擁壁遺構とし、海側に面して護岸機能を持っているところを石積み護岸遺構と整理した。

3点目の「生産と居住施設の特色については、生産に関する話の次に居住という順番が適切で、生産施設に関する書き込みをもっと多くすべきである」という指摘については、史跡の特色と課題の中で、「1.世界の交通革命に寄与する日本の石炭産業の創生と日本の近代化を支えた製鋼業への貢献」として整理し、明治20年ぐらいまで三井と競うようにして高島が交通革命に寄与していることや、国内に対して、製鋼業に対する国内の発展に寄与していることを述べている。次に「2.我が国近代の石炭産業の成立と発展を示す炭坑の島」として時代区分を整理している。4つの竪坑跡が象徴する海底炭坑の開発と生産システムを、4つの竪坑、石炭の質が非常に高かった話、深度化を進めていった内容から図と表とで整理した。また、1つの生産の流れを実習報文から拾い出し、その特徴と各生産システムの採炭から通気までを時代を追って表に整理した。居住施設としての職住一体となった超高密な居住環境と地域コミュニティの形成については、明治期から1910年までを着目する世界遺産価値の評価の視点と、それも含めて時代の変遷とともに近代石炭産業の成立と発展が時代ごとに残されているという史跡価値の視点の2つがあるということを、特徴として整理している。

4点目の「風化の過程、崩壊、滅失の可能性、という記述は文化財という観点では違和感がある。生産施設の評価の中で貢献度として要素ごとに評価するのはおかしい」という指摘や、「短期、中期、長期という優先度の考え方では、長期は一般的に長期保存するという考え方になる」という指摘については、風化、滅失の記述は削除するなど再整理し、生産施設の評価は、明治期の遺構などの歴史性、各時期の生産施設を示す生産技術の各要素、生産施設全体という点と、現況の劣化状況といった緊急性をもとに保存管理に当たっていくという考え方で整理した。護岸遺構の評価としては、外周護岸は護岸機能維持を最優先とすること、その中で劣化の緊急性を考えていくという考え方で整理した。前回は各要素の貢献度を示したが、今回は現況の劣化状況の中で、計画的に保存管理を進めるという考え方にしている。居住施設に関しては、貢献度に代え「価値への寄与」と見直した。

【F委員】
実習報文の図面は重要な資料であるが、内容が正しいのか。特に護岸や居住施設についてはどのぐらい正確なのか。

【D委員】
実習報文は、現地で長期間にわたって調査を行い、資料は三菱から提供されたものなので信憑性は高い。

【D委員】
実習報文の資料的価値や意味に触れておいたほうがよい。

【C委員】
石積擁壁部分が、「かつて護岸機能を有した可能性のあるものも含む」と記述されているが、これは「かつて護岸であった可能性のあるものも含む」という表現が正しい。

「保存管理」、「整備活用」という言葉の使い方が非常に混乱する。4章の整備活用の基本方針の中に、活用の話と整備の話が混ざっている。本来、史跡は保存して活用するのが目標であり、その手段として管理や整備がある。保存管理計画よりマネジメントプランと言ったほうがいいのかもしれない。第3章を「史跡の保存」、4章は「史跡の活用」にし、その手段として管理や整備があるという考えである。保存のための管理、保存のための整備があるし、活用のための管理、活用のための整備がある。そういう整理をしたほうがわかりやすい。

保存管理の全体的な考え方の中に延命措置を図るとあるが、延命措置を図るということは具体的に工事の手を加えることから、整備を意味する。保存管理と言いつつ、保存のための整備も含まれている。

【B委員】
延命措置という言葉は前から使っていたか。文化庁は延命措置という表現は問題ないのか。

【オブザーバ】
長崎市が作成した報告書では使っていたと記憶しているが、詰まった形で議論されたものでは必ずしもない。今回、この「延命措置」という言葉を使うかどうかはご議論いただいたほうがよい。

【事務局】
報告書では、居住施設に関して劣化の進行した鉄筋コンクリート造は、将来にわたっての保存は保証できないことから、保存という言葉を用いずに、「外観の維持について一定の延命を図る措置として整備する」という書き方をしている。

【F委員】
世界遺産レベルでは、壊れていくというのは許容しないと思うが、そのような前例はあるのか。

【A委員】
前例はないと思うが、許容しないというわけではないものと理解している。

【F委員】
これが特例的であれば、それに対して1つの章を使って解説したほうがよい。

【B委員】
保存管理という考え方の中に延命という概念が入ってくるということ自体、今後の方向性としてどうなのか。また、文化庁は延命についての考え方を公に言われたことはあるのか。

【オブザーバ】
鉄筋コンクリートの構造物は未来永劫に守っていくというのは難しい。延命措置という言葉が妥当かどうかは別だが、そういう考え方を組み込んでいかざるを得ないのではないか。一定の手を加えることもするし、手を加えないで崩壊していく過程をモニタリングし、将来何らかの形で再現、復元、研究の材料として、記録して持ち続けるということを含めて保存管理という形で行うべきだと思っている。

文化庁としての延命に対する考え方も明確にしていかなければいけないと思っているが、明確に「延命措置」という言葉を堂々と使うかどうかというところは躊躇する。

【B委員】
従来の議論の中である程度許容せざるを得ないのではないかという議論は存在したが、明確に言語化はまだされていない。文化財保護の考え方に関する大変革につながる議論で、「保存できないから延命する」とあまり軽い書き方をしないほうがよい。この言葉を使う前に考え方の説明をすべきである。

【A委員】
委員会が発足したときに、今までにない保存の考え方を出さなければいけないのではないかという議論があり、文化審議会もそれを受けて、延命や劣化を放置するということを含んだ上での史跡指定をしていかなければいけないと理解していた。しかし、確かに今までの文化財保護からすると、大きな転換で価値観が変わる。

【F委員】
ここで問題になっているのは基本的に鉄筋コンクリートの問題である。そこまで概念を広げてしまうと文化財保護の話とは離れてしまうので、限定的な話として入れるべきである。

【A委員】
建築学会の最終的な報告はまだ出てきていないのか。

【事務局】
委託業務としてお願いしたものについては、報告書が提出されている。建築学会の報告書には、具体的な方策までは言及されていない。後ほど委員へ報告書をお配りする。また、建築学会の調査は長期的に継続することとなっている。

【A委員】
3章に端島全体を保存することを最優先とあるが、ここで言う端島全体というのはどこまでを指すのか。保存するというのは具体的にどういうことを指すのかというのはまだ不確定な部分があるように思う。この部分をもう少し具体的に文章化したものを報告書のどこかに独立した形で設けることになるのではないか。

【オブザーバ】
端島の価値については、上物構造物の価値が歴史的な遺産であるが、建っている島、造成されて営みが形成された島自体、その中に埋蔵されている遺構等を含めて、全体として価値がある。上物が全部なくなって更地になってしまっても、遺跡としての島、地下遺構が残されているので、遺跡としての価値は減じる部分はあっても文化財指定解除にはならないと思う。

【D委員】
建物は残っているほうがいいに決まっているが、その辺が世界遺産価値と史跡価値との違いにつながってくるのではないか。どこまで保存するか、現段階における質的水準に応じて書くことになるのではないか。

【F委員】
ヨーロッパではこれから鉄筋コンクリートの保存が問題になるのではないか。

【E委員】
既になっていると思う。以前国際会議に出席した際に、日本と同じことを言っていた。

【A委員】
「端島炭坑跡は史跡価値とともに世界遺産価値を持つことが最大の特徴である」と記載してあるが、この報告書の中で言っていいのか。1.で端島全体の保存を最優先と書きながら、その下では生産施設と石積みを優先するというようなことを言っており矛盾はしないのか。

【F委員】
1.には、史跡というのは国の文化財保護法の概念で、そこに史跡の指定説明に書かれていることが書かれている。2.から下はもっと細かい項目で、具体的にどうするかというやり方の提案だと思うので、1.、2.を続けてしまうとわからなくなる。これは史跡の保存管理計画と理解している。

【F委員】
この根拠というのは、史跡の指定説明の文章を上手に書くことで、そのまま入れてもいいと思う。価値がどこにあるかを書いているので、それ以外のものの価値は見なくていい。むしろフリーハンドで価値をつけてもいいのではないか。それ以外の価値はいくらつけても構わない。

【C委員】
保存と、そのための整備、管理なので、1.で保存の対象がどのようなものであるのか、どのような方法で保存をしていくのかということをうたった上で、それを具体化する方法としての管理や整備の手段を書いていく。すなわち、延命のための整備を行うということである。「保存管理」という言葉は誤解を生む。ここでは、保存が目的であって、管理はしない。

【F委員】
居住施設の遺構の価値への寄与区分図は、居住施設の価値をどのように判断しているのかというのをわかりやすく説明してもらいたい。施設として長持ちしやすいことが価値なのか、建築的には小さくても重要なものや、大きくてもどうでもいいものがあると思うが、現在の評価では、結果的には大きいものが残るような印象を与える。残しやすいものとか残しにくいものという判断になっても構わないと思う。

【A委員】
寄与が高いものほど保存の必要性があるという論理になっているのか。

【事務局】
16号棟や17号棟は、緊急性が高くて、なおかつ価値への寄与が高いことから早く手をつけなければいけないという考え方としている。ただ、歴史性については、古さや濃密なコミュニティ住宅の代表的な建物であるということを考慮しているが、それを歴史性という言い方だけでまとめている。

【オブザーバ】
寄与区分図で、65号棟は寄与が1)、中庭にある児童公園は寄与5)になっている。65号棟は、中庭を含めて価値があると思うのだが、この考え方はどうなのか。評価の指標は建物に特化した形の評価になっているが、付随する公園も一体として評価するべきではないか。また、50段や地獄段等の著名な階段は、島の外から見えないが、居住施設の生活文化や生活史という観点から言うと貴重だと思う。

【F委員】
51号や48号棟は端島銀座を再構成するという意味では景観的に重要なものである。また、児童公園も66号棟が先にでき、児童公園を囲い込んでいるので、都市的な意味づけを与えていくと少し違ってくる。

【E委員】
居住施設遺構の保存管理の判断資料で、劣化度5が一番下に来ている理由は何か。

【事務局】
大破と評価されたものが劣化度5で、手がつけにくいという観点から一番下にしている。

【A委員】
18号棟と30号棟と65号棟北は寄与度が1)で特に高いのは何故か。

【事務局】
65号棟は北側棟だけが大破という診断で、65号棟の東や南は中破である。65号棟北については端島最大の居住施設として代表的とも言える遺構であるが、昭和20年に完成した北側棟は大破と評価されており、北側棟の取り扱いは今のところ東側、南側の2棟の整備と含めてどのようにしていくかが課題になっている。

【A委員】
改めて3章から4章にかけての構成と合わせて、処方箋みたいなものをもう少し時間をかけて検討しないといけない。

【D委員】
居住地区そのものの価値の問題、居住地区をどのように保全し管理していくのかということは議論全体にかかわってくる。

【A委員】
生産施設部分の基本的な考え方と、コンクリート主体の居住部分の基本的な考え方の保存の方向性を先にまとめる必要がある。

【B委員】
居住施設の格付けについては、いつごろ建てたものかということや、外観を基準に考えられてきている。後から建てられた建物は、端島ならでの強引な建て方で、そういう工法上の問題もチェックしなければいけない。

【E委員】
端島ならではの建築方法については、建築学会の報告書では触れていないのか。

【事務局】
阿久井先生の本には書かれていると思う。

【A委員】
上位関連計画として市の総合計画やマスタープランなどが挙げられているが、本計画に密接に関係するのは、高島炭鉱管理保全計画だと思う。この管理保全計画の日本語版はどのようになっているのか。日本語版は、どの程度まで配布していいものなのか。

【事務局】
委員へ配布可能か確認する。

【A委員】
世界遺産の管理保全計画と齟齬がないような形の計画書にしないといけない。

【D委員】
生産施設のところで一番気になるのは充実期の昭和期に入って第2竪坑が掘進されて深くなっているということと、第4竪坑と2本柱で行われることに伴って動力が電力に大きく依存せざるを得なくなっていることである。その電力が二子島から供給されている。つまり端島の生産システムは、端島で完結していない状況だということである。これは、高島と一体になって考えなければいけないと提起しているような気がする。歴史的な史跡としての価値が、この段階でかなり大きな変化を生じている気がする。その辺は強調しなくてよいのか。

【A委員】
空間的には高島と端島は分かれているが、生産システムとしては一体で考えないといけないということだろう。

【A委員】
この報告書は端島編と高島編の2部構成になっているが、前半の両方に共通する部分は編成し直そうという話もある。

【事務局】
当初は2つに分けたほうが議論しやすいのではないかということでしたが、報告書としては1つにまとめさせていただきたいと考えている。電力のことについても高島とのつながりが歴史的にあったのかといったところの確認も必要になってくる。

【事務局】
生産施設遺構に関しては、緊急性、各時期の生産施設の顕著性等を勘案して優先順位を設定して対策を施す。

石積み擁壁遺構も緊急性ということだが、歴史的価値の有無を今後検証されるということで、その必要性を記述している。

居住施設遺構に関しては、現時点では技術面や費用面で多くの課題を抱えている。限定して保存整備を行う実証実験のモデルを設定するという考え方も取れるのではないか。

公開活用は、学習資源としての公開活用、研究資源としての公開活用という2つに大きく整理している。

公開のための整備ということでは、日よけ、トイレの設置、シェルターの設置、電源施設の設置などを項目として挙げている。

【C委員】
石積遺構の保存整備で想定される対象検討例で、石、コンクリートブロックは補強材ではなく、構造材という言い方のほうがよい。

居住施設遺構の保存整備の方向性の中で、「全構成要素を保存整備の対象とするが」と言い切っているが、これは現実には難しい。「本来はするべきであるが、現実は云々」とするほうがいいのではないか。

保存管理計画は、先に要約版を作るとまとまりやすくなる。

【A委員】
本計画を再構成するにあたり、何か前例はあるか。

【オブザーバ】
文化庁のマニュアル書どおりに作っているので、参考となる前例はないと思う。

【A委員】
事務局の力だけで再構成するのは大変だと思うので、ぜひ先生方のお知恵をお借りしたい。

【事務局】
鉄筋コンクリートの保存は非常に難しいので、技術的な延命がどれだけできるかという話になると思う。長崎市としては、1つの建物をいろんな手法でやってみて、それがどれぐらい効果があるか実験的にやってみたいと考えている。

【A委員】
現在作成している報告書のこの次の段階で、より具体的な、予算や年次計画も含めた計画を作成するということか。

【事務局】
整備活用計画は当然作成を進めていくが、鉄筋コンクリート構造物については、まず手をつけないと遅くなってしまい、出てくる成果も遅くなるので、少しずつでもできるものはやっていきたいと考えている。

2 高島炭鉱跡 北渓井坑跡保存管理計画書(案)について(資料2)

【事務局】
高島北渓井坑跡の価値を高島炭鉱調査報告書に基づき整理している。

本質的価値については、外国資本と外国技術が我が国において初めて導入された洋式炭坑であるということ、竪坑をはじめとして周辺に蒸気機関の痕跡とみられる遺構などが残存し、近代的炭鉱技術の導入初期の様子を伝えている。本質的価値に関連する価値については、トーマス・グラバーの別邸跡、旧石炭積み出し港といった当時の北渓井坑の様子をうかがえるような景観、南洋井坑跡、蛎瀬炭坑等、高島炭鉱関連遺構の姿を今日に保存しているということを挙げている。

保存管理の基本方針としては、遺構の状況把握が進んでおり、年代が最古に位置する北渓井坑跡について保存管理を着手する。地下遺構など未確認の部分については今後も計画的に調査を行う。特定された諸要素については、その本質的価値である近代的炭鉱技術導入初期の様相を損なうことなく適切に保存管理を行っていく。史跡の範囲内にある民有地に関しては所有者への協力を求め、将来的に公有地化を目指していく。史跡地外の遺跡について、その歴史的意義と遺構の把握に努め、その上で文化財としての取り扱いを検討していく。現状で高島北渓井坑跡は高島観光の資源として活用されており、本島内の炭鉱関連遺跡とネットワーク性にも留意して一体的な利用促進を図るということを挙げている。

保存管理の方法としては、史跡地内の竪坑跡については現状を維持するためにメンテナンスや日常的な維持管理を行う。地下遺構群についてはさらなる調査により施設の様相の解明を行っていく。西側の崖面については定期的な目視調査等により崩落等に備えるとしている。

史跡地内のそれ以外の要素の課題と対策としては、史跡の保存活用に寄与する要素として説明板等の充実を図っていく。古写真から推測される生産施設の範囲にその施設が建っているということがあるため、今後の調査や整備に合わせて設置位置を再考していく。史跡の価値及び保存活用のどちらにも寄与しない要素については、基本的には調査や整備に合わせて撤去を検討していくとしている。

高島北渓井坑跡の本質的価値に関連する要素としては、周辺という部分ではグラバー別邸跡、旧石炭積み出し港、旧石炭積み出し港の古写真に記録されたものと同じと想定される松がある。

その他の炭鉱関連遺跡は、残存状況や価値を明らかにするための調査を今後検討していく。高島神社や高島石炭資料館のように現在使われている施設については日常管理の中で適切に対応していく。

ゾーン区分の設定として、真ん中の赤いところが現在北渓井坑として公開されている場所である。その他の場所は道路や民家として生活に利用されている。これを踏まえて、ゾーン区分図を作成している。Aゾーンは原則として史跡の調査研究、保存管理、整備活用に資するもの及び防災等の緊急を要する場合の措置以外は認めない。Bゾーンの場合はこの考え方に加えて、周辺住民の生活に支障を来す事象が生じた場合は現状変更について可否を判断していく。Cゾーンは調査研究、防災等の緊急を要する場合以外に道路の改修が必要な場合も措置を一部認めるという方針を立てている。

4章は周辺環境の一体的保全である。高島北渓井坑の稼働期の要素を伝えるということで、高島北渓井坑、旧石炭積み出し港、グラバー別邸跡の残る小島を一体的に保全する。

第5章は整備活用の基本方針として、1.「跡を適切に保存し、次世代に継承していく。2.「史跡の本質的価値の顕在化に努める。」3.「北渓井坑跡とその周辺は高島北渓井坑の稼働期の様相を見学者に伝えるため一体的な整備活用を行う。」4.「高島炭鉱の歴史的意義を見学者に伝えるため、高島島内の炭坑遺構や端島炭坑との一体的な活用を行う。」という方針を立てている。

整備活用の方向性として、史跡地内の整備を行うに当たって、必要な箇所については地下遺構の確認のための発掘調査を継続して行うとしている。

活用の方法としては、高島北渓井坑跡周辺の一体的活用として、見学者の休憩案内施設等の整備、見学施設、サインを考えている。

高島炭坑関連遺跡との連携としては、高島北渓井坑の創業から二子竪坑閉山までの変遷を見学できるように島一周の歴史探訪コースの設定や、その誘導サインの整備等について検討していくとしている。

端島炭坑との連携としては、北渓井坑と端島炭坑、2つの史跡をめぐる炭坑跡コースの設定を関係者と検討していくとしている。

【C委員】
整備活用の基本方針の1.「史跡を適切に保存し、次世代に継承していく。」は整備活用の話か。また、整備の方法を例示しているが、例示の前に、動線、遺構の保存、遺構の見せ方、施設の整備等の根本的な話から具体の話に入っていくべきである。

【D委員】
史跡地外の要素について、高島は基本的に言えば全島炭鉱だという視点が欲しい。端島と比べると規模が大きく、施設の残存状況も大分違うが、端島と同様に海底炭鉱の掘削地点の島として存在していたことを示す要素のあり方と、その全体の見せ方を考えるべきではないか。

【D委員】
高島の場合は、研究蓄積、資料発掘が少ない。それを踏まえて、将来的な可能性も含めた計画が必要だと思う。

【C委員】
保存管理計画であるから、計画対象範囲はそこから見える景観等にも言及していくという姿勢を示していただきたい。

【A委員】
整備活用の対象を「史跡とする」という言葉は入っていない。史跡にこだわらず、高島全体の計画をこれに盛り込むという方向性でいいのか。

【C委員】
あくまでも対象は史跡の指定範囲であるが、当然その周辺にも言及は及ぶ。それが法的な根拠を持つものかどうかは定かではないが、別の規制等によってそれを具体的に効果のあるものにしていく、そういうことまで書いておけば保存管理計画書としては意味合いが大きくなる。

【A委員】
最初の計画策定の経緯や目的のところで、島全体の方向性を書き込む必要がある。

【F委員】
生活施設までターゲットに入れるというのは端島と同じだと思うが、お寺や墓地も入れてもらいたい。

【E委員】
高島の史跡というのは狭い範囲で指定されてしまったため、ほかのところが置き去りにされてしまっている部分があるように思えるので、最初から島全体としたほうがよい。

【A委員】
史跡が中心の計画にとどまってはいけないというのが、今日の委員会の結論だと思う。

3 その他

【事務局】
東京都市大学から、軍艦島にモニタリングの機械を設置したいという計画が提出されている。電源がないため、電源供給システムとデータを転送するシステムを設置するという計画であるが、たくさんの機械を設置する提案のため、軍艦島の景観を壊す恐れがあり、ここまで設置することは長崎市としては認められない。地元の大学、九州の大学と連携してやっていきたいと考えている。平成26年度の活動として、カメラとセンサーを設置する計画である。

【A委員】
研究の目的は、異常検知システムの構築か。

【事務局】
主目的は震動センサーを各所に設置して、建物がどのように劣化していくか、もしくは予測するというものである。なぜ軍艦島でやらなければいけないのかが必要で、別の場所でもいいのであれば許可する必要はない。

【C委員】
軍艦島にとってプラスになるかどうか。施設の規模によっては現状変更の許可を取る必要がある。

【A委員】
太陽光パネルの設置が計画されているが、許可する、許可しないはどこで判断するのか。

【事務局】
これは素案であり、次にどれぐらいの大きさの機械を設置するかを提案していただき、文化庁とも相談させていただいてから判断したい。

【A委員】
これは文化財行政の中でいい、悪いという判断になるのか。

【オブザーバ】
この手の観測は軍艦島に資するかどうかというのが大事だと思っている。遺跡に影響がないのであれば駄目ということはなかなか言えない。建物の震動ということで、軍艦島にも資するのではないかと思っている。もう少し詳しく聞かないとわからない。

【事務局】
期待されるのは、建物がこれだけの震動が起きたときに、例えば2、3日後に壊れるというのがわかるのであれば、作業員への危険の予知に活用できるのではないかと考えている。

【A委員】
事務局が何も知らないまま進むということだけはないようにしていただきたい。電気を入れるという計画はないのか。

【事務局】
電気を引くという計画はない。

【E委員】
稼動時代に海底ケーブルで電気を引いていたが、あれは今どうなっているのか。

【事務局】
切られている。人為的に切った跡がある。

【E委員】
現在、台風8号の影響でクルーズでの見学ツアーは実施していないのか。

【事務局】
上陸ツアーは中止しているが、周遊は行っている。8月8日から、第1見学通路までは上陸できる予定である。

【A委員】
先日の「産業遺産国際会議」シンポジウムで、護岸の損壊の対応について質問があった際に、九州大学の先生が護岸の補修は、ここにかつて人がたくさん住んでいたときには対応していたのだから知恵はあるはずだという話をされていた。かつての経験による補修とかいうことは何か伝わっているものはあるのか。

【事務局】
かつての被害では護岸自体が倒れている状況の写真はよく見るが、今回のように内側から吸出しで穴が開いたというのはこれまでなかったと思う。

【A委員】
閉山までにあったような壊れ方とは違うということか。

【事務局】
閉山前とは違い、幅8m高さ1.8m程度の非常に大きい穴である。徐々に穴が大きくなっていったもので、今回の台風で急に穴が生じたわけではないと思う。潜水調査すると、ほかにもそういう穴がある箇所が見つかるのではないかと思う。

【事務局】
次回は8月28日木曜日、東京で予定している。本日のご意見を修正し次回までに反映させる。

中ノ島については、本保存管理計画の中には含めていなかったが、中ノ島についても保存管理計画を作成することを検討している。高島、端島、中ノ島の3つを一つにまとめて保存管理計画にしたいと考えている。

【A委員】
以上で、第3回高島炭鉱整備活用委員会を終了する。

お問い合わせ先

総務部 行政体制整備室 

電話番号:095-829-1124

ファックス番号:095-829-1410

住所:〒850-8685 長崎市魚の町4-1(9階)

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