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平成25年度第2回 長崎市原子爆弾放射線影響研究会

更新日:2014年4月25日 ページID:025439

長崎市の附属機関等について(会議録のページ)

担当所属名

原爆被爆対策部調査課

会議名

平成25年度第2回 長崎市原子爆弾放射線影響研究会

日時

平成26年3月13日(木曜日) 13時~

場所

長崎市原爆資料館 平和学習室

議題

議題1 原子爆弾の影響に関する調査研究の調査結果について
議題2 情報収集(分担等)について
議題3 次回開催について

審議結果

開会
1 市長挨拶
2 議題1 原子爆弾の影響に関する調査研究の調査結果について
(1)原子爆弾災害学術調査
・委員による説明
(2)行政主体による調査研究
・事務局による説明
(3)原爆放射線の人体影響
・事務局による説明
3 議題2 情報収集(分担等)について
4 議題3 次回開催について

主な質疑応答

1 原子爆弾の影響に関する調査研究の調査結果について

(1) 原子爆弾災害学術調査
【委員】
資料1の7ページの説明で、自然放射線の8倍あるいは200倍とあるが、自然放射線はどこを測定したのか。

【委員】
これはネーア型という測定器を使って測ったもので、バックグラウンド(※注1)から算出したもの。
※注1 バックグラウンド
放射線測定の分野では、対象とする放射線源以外の要因で計数される値を指す。

【会長】
原爆に関するいろいろな資料を網羅的に把握しようという作業をした。これだけで全てかというとそうではないので、もう少し調査する必要がある。こういう資料はアメリカの公文書館から発掘されることが多いので、長崎原爆に関する一時的なリストを見たいと思っている。長崎市にも協力をお願いしたい。

(2) 行政主体による調査研究
【会長】
長崎市の行政主体の調査で一つ大きな点は、長崎残留放射能プルトニウム調査(以下、「プルトニウム調査」という。)があるというところ。被爆地域拡大に関しては、新しい知見を見出すことにつながる一つとして、これを見直すことが有効ではないか。
遺伝的な調査に関して、「被爆者とその家族の基本調査」は、私の知っている限りでは唯一の大掛かりな調査だと思うが、これは担当になられた委員にはよく見てもらいたい。
広島市でも黒い雨や精神的影響調査が現在進行形で進んでいるので、この研究会においても非常に重要な情報なので、広島市の状況を伺いたい。

【委員】
広島市も黒い雨の地域を被爆地域と認めてほしいということで、長崎市と同様に調査を行い、国に要望をしてきたが、なかなか認められてこなかったというのが現状である。
広島市では、精神的影響に関しては、十分な調査ができていないので、長崎市の例を踏まえて、平成13年度に、有識者による広島市原子爆弾被爆実態調査研究会が組織され、私が座長を務めて取りまとめを行った。この研究会で、平成14年度に1万人を対象とするアンケート調査を実施した結果、原爆体験した人は、やはり心身への影響を抱えている可能性が高い。もう一つ重要な点は、黒い雨を体験した人は、体験していない人に比べて影響が大きいということが示唆された。こういう基礎的な情報が得られたので、広島市としては、より実態解明を進める必要があるということで、平成19年にもう一度ワーキング会議を立ち上げて、どういう調査方法がいいかということを検討した。
それを踏まえて、平成20年に再度、被爆実態を解明するために広島市原子爆弾被爆実態調査研究会を立ち上げた。その座長も引き続き担当して、平成20年の6月から、原爆体験者等健康意識調査を開始した。この調査は非常に大規模なもので、対象者が3万7千人近く、得られた回答が2万7千人くらいあり、有効回答率は74%に達した。この回答の中から、任意に900人近い人の個人調査(面談)を行い、より詳細な調査を行った。
調査の結果は、被爆体験者に、今なお心身面、健康面の不良があるということが示された。その原因は、放射線に対する不安が大きいのではないかということが示唆された。また、この調査は被爆から63年後の時点だったが、その時点においても、被爆者の1~3%に心的外傷後ストレス障害(PTSD)が認められるということで、ここで初めて、精神的影響が明らかになった。それに加えて、黒い雨を体験した未指定地域の住民に心身面、健康面において、被爆者に匹敵するような不調があるということも明らかになったと考えた。そして、この調査では、アンケート調査を基にし、再度黒い雨が降った地域の統計学的な解析を行った。その結果、黒い雨の降雨地域は従来言われていたものより、はるかに広い範囲に黒い雨が降った可能性があるということが示唆された。これが報告書の内容になり、それと同時に広島市では、物理学的な線量評価も行っている。これには気象の専門家も加わり、今までグローバルフォールアウト(※注2)のために、広島原爆に特異的な放射性物質の検出ができなかったが、今度は、古い家屋の床下、つまりグローバルフォールアウトの影響を受けにくい土壌を調査して、併せてその結果をもって国に要望した。
国はこの報告書の科学的妥当性を検証するための検討会を設置し、詳細に検討した。国の検討を紹介すると、黒い雨を体験した人の健康状態について、国も黒い雨を体験した人には、黒い雨を体験していない人に比べて精神的な健康状態が悪い傾向がみられると認めた。しかし、これが精神的健康状態が悪いという明確な証拠ではないということも指摘された。
黒い雨の地理分布に関しては、結論的には、今回のデータで黒い雨の降雨区域を決定することは難しいという結論であった。その理由として、未指定地域で黒い雨を体験した人が50%を超える地域が非常に少ないという点、それから20キロメートル以遠でのデータが少ないという点、それから被爆後60年以上たった記憶に頼っていて、その正確性が十分に明らかにされていないという点が指摘された。それから、広島原爆に由来する残留放射線の評価は、今回の調査で、要望地域において、広島原爆の放射性降下物が存在したという明確な痕跡が見い出せず、放射性降下物による被爆の明確な根拠は存在しないという結論が出された。
しかし、黒い雨を体験した人は、明らかに精神健康面で、黒い雨を体験していない人より、精神健康面が悪いという結果が出たので、これに対して何らかの対応が必要であり、現在相談事業を進めているということが、広島市の現状である。
このようになかなか国は、私どもが出した証拠を認めてくれず、非常に高いハードルとなっている。国も出された報告書を再度検討するが、非常に厳密な科学的な根拠あるいは合理的な根拠というのが求められる。その厳密な評価に対して耐えうるだけの有無を言わさないような証拠が必要である。私どももそのような根拠を作ったが、なかなか認められず、調査そのものも限界が指摘されるようなこともあった。疫学的調査に限れば、そういう厳密な調査となると、公益財団法人放射線影響研究所が実施しているようなコホート調査(※注3)のような調査になるかと思うが、限られた時間でそういう調査をするのは物理的に難しい点もある。
これからこの研究会でどういうことをやっていく必要があるのかを考えると、少なくとも2つのアプローチが可能ではないかと思う。1つは今までに報告されたデータを基に、再度そのデータを検証し、何か新しい証拠になるような糸口を見い出し、そこに最近進歩してきている新しい解析データあるいは統計の手法について新しい事実を見い出すということ。
もう1つは、新しい学問が進んできており、リスク評価に関する考え方も変わってきていると思うので、そういう新しい視点から、今までの線量データを再検討することが非常に有力な武器になるのではないかと思う。プルトニウム調査のデータでは、明らかにプルトニウムが出ているので、そういう情報というのは非常に重要であると思う。そういうところから新しい事実や線量の評価ができれば、大きな証拠になるのではないかと思う。
※注2 グローバルフォールアウト
放射性降下物のことである。大気圏における核爆発や、原子炉の事故による放射性物質の大気中への放出などが原因になり、核分裂生成物を含む放射性の粒子状物質が大気中(または成層圏中)に飛散し、これが生活環境に降下したものである。
※注3 コホート調査
分析疫学における手法の1つであり、特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率を比較することで、要因と疾病発生の関連を調べる観察的研究である。

【会長】
プルトニウム調査は、非常に緻密に調査されている。プルトニウムの調査をあれだけやるというの非常に大変なのか。

【委員】
非常に大変であり数年かかる。再検証するにしても2か所くらいしかできないのではないか。

【委員】
広島市の場合はグローバルフォールアウトに隠れてなかなか分からない。

【会長】
グローバルフォールアウトというのは、1960年代の核実験の影響である。日本の場合はソ連の実験によってセシウムとかストロンチウムとかが降ってきている。それがあるから隠れてしまうということ。

【委員】
広島市の調査では、被爆直後に立ったと想定されるような、古い民家の床下を掘った。それでもなかなか見い出せなかった。

【会長】
それに比べるとプルトニウム調査による長崎の測定値が実際にこれだけあるということは、非常に大きなデータである。

(3) 原爆放射線の人体影響
【会長】
原子爆弾後障害研究会は、毎年、広島市と長崎市交互で行われており、多数の論文発表がある。それから公益財団法人放射線影響研究所が独自に今まで2,000以上の研究論文を発表している。以上をまとめた形で、改訂第二版の原爆放射線の人体影響という冊子がある。今回の研究会の資料に加えたいと考えている。

【委員】
原子爆弾後障害研究会総索引をもらったが、タイトルしか書いていない。この中身を検索する場合、長崎市追悼平和祈念館のデータベースにはどこまで入っているのか。最近5年とか10年とかの冊子は持っているが、それ以前についてはない場合が多いので、そういったものは収集できるのか。

【事務局】
現時点では、持ち合わせていないので、委員から依頼があった資料については、事務局の方で収集したい。

【会長】
その他にこういった広島市・長崎市の研究論文以外にないかということだが、私が収集したものを紹介したい。2013年にサンフランシスコでhealth physics societyという核物理健康学の学会が、広島市の先生とか厚労省を招いて、ワークショップをやっているものが手に入った。これは残留放射能について今のデータはどういう意義があるか、問題はないかということなどを専門に検討している。これはアメリカの学者が主にやっているわけだが、公益財団法人放射線影響研究所がDS86(※注4)やDS02(※注5)を検討するときに中心になっているDr.Kerrという人が参加しており、このように定期的意見交換している。まだ解明されていないという意見もあり、こういう実態の部分も把握する必要があると思っている。原子爆弾の被害というのは広島市と長崎市以外にないので、世界には関心をもって熱心に研究している人がおり、視野を広げてみてもらいたい。
※注4 DS86
広島と長崎に投下された原子爆弾による被ばく線量に関して日米の専門家が共同で作成した評価方式。英語名称 Dosimetry System 1986 の略称としてDS86と呼ばれる。
※注5 DS02
広島と長崎に投下された原子爆弾による被ばく線量に関して日米の専門家が共同で作成した評価方式。従来のDS86(Dosimetry System1986)を改善し、2003年3月より新しい線量推定システムDS02を寿命調査(LSS)に導入した。

2 情報収集(分担等)について

【会長】
今後どういうステップで進めていくか、資料収集については、自分の得意分野を中心に全員で取り組んでもらいたい。被爆線量に関しては、先ほど話題になったプルトニウム調査報告書を中心に行われていく。それからマンハッタン調査団の方も測定しており、理化学研究所も測定している。整合性なども見ていかないといけない。人体影響が最終的なゴールであり、専門のA委員とチェルノブイリの現地でもそういうことに取り組んできたB委員にお願いしたい。
それから、広い意味での健康影響、遺伝的影響について、C委員とD委員の長い経験に基づいて情報収集してもらい、私も少し入らせてもらいたい。私とE委員は、各委員が情報収集してきたものに対し、総括的な意見を出そうと思っている。
A委員、プルトニウム報告書関連について、資料をチェックし直すことは可能か。

【委員】
プルトニウム調査については、生データにアクセスできれば可能である。

【委員】
プルトニウム調査を行った岡島俊三長崎大学名誉教授が今も福島で活躍されている。時間があれば、当研究会に出席してもらい、話をしてもらうことも可能ではないかと思う。

【会長】
この研究会には、関係人を招聘することができるので、専門の先生など、いろいろなお話を伺っていくことも必要であると思っている。資料が欲しい場合は、D委員に尋ねてもらいたい。

【委員】
資料の収集について了解した。

【会長】
今日持ってきている資料はD委員が持っているので、見てもらいたい。全6巻のMedical effects of atomic bombs The report of the joint Commission for the Investigation of the effects of the atomic bomb in Japanに目を通したが、非常に多くの記述がある。米軍が測定した放射能の検出はかなり遠方までいっている。特に東長崎方面の東に。広島市はそういうデータはないのか。

【委員】
黒い雨の地域に関しては、国が認めているところがあるが、今回のアンケート調査ではそれ以上の広い範囲では降った可能性があるということを示しているが、そこでのアンケートの症例が少ない。

【会長】
もう一点、原爆症の認定基準が見直されたことについて 、事務局から報告がある。

【事務局】
原爆症認定基準について説明。

【会長】
3つ目の課題がこの認定基準なので、資料を見てもらいたい。

3 次回開催について

【会長】
次回開催については、半年ぐらい置く必要があるが、担当される委員はどうか。

【委員】
プルトニウム調査はできるが、マンハッタン調査団とかまで含めると難しい。

【会長)】
半年後でよいか。

【事務局】
詳しい日程については、進捗状況を踏まえて、会長と事務局の方で調整させてもらいたい。

【会長】
9月中に第3回を開催したいと思う。

以上

お問い合わせ先

総務部 行政体制整備室 

電話番号:095-829-1124

ファックス番号:095-829-1410

住所:〒850-8685 長崎市魚の町4-1(9階)

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