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平成24年度第2回 端島炭坑等調査検討委員会

更新日:2014年6月30日 ページID:024404

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担当所属名

企画財政部世界遺産推進室

会議名

平成24年度第2回 端島炭坑等調査検討委員会

日時

平成24年7月31日(火曜日) 13時30分~

場所

都道府県会館407号室(東京都千代田区平河町2-6-3)

議題

  1. 端島炭坑等の価値について 
  2. 保存管理の基本的考え方について
  3. その他 

審議結果

1 端島炭坑等の価値について
【事務局】
端島炭坑等の価値について、全体(高島炭坑、中ノ島炭坑、端島炭坑)の価値をまずとらえ、その上で端島炭坑の価値を整理させていただいております。
【事務局】
全体の価値ですが、「日本の近代化を牽引した石炭産業の確立」ということで、具体的には次の5点を挙げています。
1.西洋商人との合弁事業による、わが国初の洋式炭坑
2.外国技術の積極的な導入と自立化
3.炭坑業を基本とする財閥資本の形成
4.日本の近代化の夜明けを牽引
5.日本の重工業化の原動力として貢献
端島炭坑に着目した場合に、「石炭産業の誕生から風化の過程を伝え続ける炭坑の島」という形で次の4点を挙げています。
1.炭坑の誕生から閉山、風化の過程がすべて読み取れる石炭産業遺産
2.日本一の炭質といわれた海底炭坑で深度化をすすめていった技術
3.世界にも類を見ない超高密な居住施設と生産施設が一体となった炭坑の島
4.歴史的コンクリート構造物の劣化状況を読み取れるような科学的試供体の集積
【C委員】
まず内容以前に、日本語をしっかりしていただきたいと思います。
内容的にも整合性に欠けるようなところが幾つもあります。
それぞれ例を挙げると、
・「日本の近代化の夜明けを牽引」というところですが、「夜明けを牽引」という表現はいかがなものかと思います。
・「17世紀後半、石炭は自家用燃料として採掘された」とありますが、「1760年には既に採炭が行われていた」と書いてある箇所もあり、事実関係の記述に誤謬があります。
【D委員】
日本全体の近代化の中での炭坑としてどうなのかを他との比較の中で明らかにしないと報告書にはならないと思います。
【C委員】
端島では、創業期だとか発展期だとか合理化期だとか、いろいろ用語を使っていますが、本当にそういう言い方でいいのかもう一回検討した方がいいと思います。例えば、「合理化期」という表現は、むしろピークを迎える「充実期」という言い方の方がいい。「発展期」についても2つありますが、別の適切な言い方を何とか考えられないでしょうか。
【D委員】
端島は非常によく残っているという意味では日本では珍しいので、そこを強調された方がいいと思います。
重工業がなぜ九州に来たかという理由の一つに、この炭坑というのが挙げられる。製鉄などとの関連の中での重要度も位置づけられていくので、一つ項目を作るぐらいそこをもう少し深めてもいいと思います。
【B委員】
土地利用の問題について、炭坑に関して言うとエネルギー革命以後、基本的には積極的に壊しているわけで、閉山後もずっと残ったという非常に特異性の強いサイトだと言えると思います。
【オブザーバA】
端島の価値について、国際的な面から見ても、世界一高密度の空間にあれだけの人間が住めたこと自体が奇跡的で、その結果としての鉄筋コンクリートの集合住宅の形成は他に例がありません。端島における文化財としての価値というのは、世界一の高密と言われた住空間の構成が、ほかに例のないユニークなものであることと考えており、端島の価値を検証するときには、単なる炭坑技術だけに囚われず、日本独自の鉄筋コンクリートアパートを造ってきた点を強調すべきではないでしょうか。
【オブザーバB】
文化財の価値というのは、世界遺産として遺産群の中で貢献できる要素という以外にも価値がある場合もあります。「九州・山口の近代化産業遺産群」の方では、日本独自の高い水準の教育の成果だとか、日本の伝統的な文化というものと融合した上で、急速な発展に結びついていったというストーリーを展開していますから、そういう目で見たときに、基本的なところが抜けているのかもしれないと思います。
【A委員】
文化財的な価値の部分と、それから、産業遺産としての価値の部分と、非常に多面的であるということだけは確かなようです。オブザーバAの方からは、極めて高密度な居住空間という類いまれな事例としての価値の話がありましたが、これと史跡としての関連というのは何かあり得そうでしょうか。
【C委員】
産業と一体となった居住空間が必要なものだったし、それが価値の一面ではあると思います。「九州・山口の近代化産業遺産群」という枠組みの中で考えているという観点からすると、産業遺産としての価値を前面に出して、その中で、産業に従事する人たちが住む場所としての居住空間がその中に含まれているという位置づけの方がわかりやすいような気がします。
【D委員】
日本のそういった密集空間というのが、福利厚生的な意味合いも含めて成り立つのかどうかというのは、非常にアピールになると思います。
【A委員】
報告書の構成の仕方、或いは、主な着眼点みたいなところをもう一度見直さなければいけないと思います。報告書の全体構成はいかがでしょうか。
【D委員】
世界遺産として見る場合には、九州全体の炭坑がどういう意味合いを持っていたのかというのは、やはり触れておいた方がいいのではないかと思います。
【オブザーバB】
全体のこの報告書の中で、それぞれ何を根拠に持ってきているのかを明らかにした方が役に立つと思います。
【D委員】
もっと日本全体もしくは世界、近隣も含めて端島の特徴の議論が必要で、項目立ても含めて、概論的な部分と端島の部分と軍艦島の部分を分けて構成をし直した方が、価値としてはっきりするのではないかと思います。
【B委員】
現在残っている端島が、「九州・山口の近代化産業遺産群」の価値づけにどのように貢献できるかと言うと、もっとも軍艦島らしい部分は時間軸上ずれてしまうという問題が最初からあります。端島を「九州・山口の近代化産業遺産群」の核に位置づけるためにどのような説明ができるかというのが、この報告書に求められていることではないでしょうか。
【オブザーバB】
価値があるからそこを保全しようという話になるので、やはりそこは全部きちんと論証しておかないといけないと思います。最低限、世界遺産のOUV(注)に直接関係しない価値も含めて体系的に出していただく必要があります。
(注)OUV(outstanding universal value(アウトスタンディング ユニバーサル バリュー)世界遺産に登録されるための必要条件。国の違いを超えて、現代・将来の人類にとって貴重な文化遺産・自然遺産のこと。以下同じ。)

2 保存管理の基本的考え方について
【事務局】
端島炭坑に関して、端島全体をいわゆる史跡指定して保存管理を図るという全体の方針の中で、それぞれの要素を本質的価値を構成する要素と関連する要素、それ以外の要素に整理しています。現段階では、本質的価値というのは、石炭産業の確立、或いは端島炭坑独自の変遷過程ということで、いわゆる産業遺産関連を中心に本質的価値を構成するということです。あわせて、関連する要素に関しては、いわゆる建築関係の居住関係と考えています。基本は、産業施設エリアをベースに、次のA、B、C案を提示しています。
A案は、端島炭坑の曙、或いは礎を築いた、明治・大正期を重視して、それを特徴づける要素を象徴的な要素という形で整理しています。
B案は、もう一歩時代を踏み込んで、戦前までの昭和の時代、この時期に、昭和6年まで埋立てが進み、あるいは、昭和9年に第二竪坑掘り下げを開始した。昭和16年には、端島としてのピークの出炭量を迎えたという戦前期までを一つ重視した考え方をたたき台としてお出ししております。
C案は、風化の過程までの全てを網羅した中でとらえているということで、一連の生産工程だとか、生産施設の変遷というものを、現存する生産にかかわるものを中心的にとらえていくという考え方です。
高島炭坑に関しては、北渓井坑が、わが国初の洋式炭坑ということの中で、どういう範囲に設定するかということの課題は残っておりますけども、重点的な史跡指定というような考え方です。
中ノ島炭坑に関しては、既存文献の中では、現状としての価値を構成する要素が非常に重要、豊富にあるということは理解できていますけど、それを裏づけるような調査がまだされていないということで、史跡指定を目指しつつ、更に調査をかけるというようなとらえ方にしております。
【C委員】
昭和49年というのは、閉山した年ですよね。凡例として、昭和49年という書き方は考え直した方がいいと思います。
【D委員】
今、時代順に保存の考え方、A、B、C案が出ていますけども、この価値とやはり保存の考え方が一致してこない。この価値を維持するためにこれを残しますというような形の方が説明としてはわかりやすいと思います。どの部分の価値を最優先していくのかという、価値づけとの関係で見る必要があると思います。
【A委員】
結果的に言うと、島全体を史跡にして残そうということであれば、無視していいような遺構は一つもないだろうという結論になると思います。現在残っている施設を保存しようとして果たしてできるのかということの方が一番重要なことになってくると思います。
【B委員】
保存というのが、基本的には風化の延命ということ以外に多分ないだろうと思いますが、技術的なものについて専門家のご意見を伺いたい。
【オブザーバC】
技術的にも無理な状態のものもあり、そのままの状態を保持できるというものは、結構少ないと言わざるを得ないと思います。号棟ごとに分類が多分できると思います。
一般の観光客の方は、軍艦島はそういう廃墟を目当てにこられると思っていますが、そういう意味で、何らかの形で残していかなければならないんだと思います。一般の方の魅力を感じるところを残したまま壊してしまわないような形で残すという、非常に難しい技術開発を建築学会として考えているところです。
それからもう1点、保存するのに一番キーポイントが護岸です。建築学会として、この9月にもう一回調査に入る予定です。
【A委員】
この端島に関しては、残さないでいいという対象物は恐らくないのでしょうが、それが本当に残せるかどうかはまた技術的な問題があって、それは今後に残された課題になるだろうと思います。
護岸について、長崎県の方で何か考えていることがありますか。
【長崎県】
端島の護岸について、護岸の所有者はだれなのか、護岸を管理する者はだれなのか、護岸の監督者はだれなのかを改めて整理をし、適切な保護・保全についてどのようなことができるのかの協議を県・市で開始しているという状況です。
【事務局】
護岸に対してどういうふうな手の入れ方が一番適切なのかについては、今後とも専門家の先生方に伺いながら、間違いのないやり方をしないといけないと考えています。
【A委員】
県と市の方では、史跡指定を目指すこととは別に、緊急の対応ないしは体制づくりをお願いしたいと思います。
【D委員】
基本的に、個々の建物を現状維持することは恐らくできないだろうと考えてよいでしょうか。恐らく学術上も、そういうことをしない方が、産業遺産の場合はいいと思います。そうはいっても、護岸的なものは価値からいっても、本当は手を入れない方がこの場合はいいかと思いますが、どうしても手を入れざる得ない部分、価値をもっと減じてしまう可能性がある部分については、何らかの修復なり復元を行う必要があると思います。
【オブザーバC】
30号棟のように一番古いものに関しましては、これはもう修復自体、多分難しいと思われます。研究対象として見れば、現状の状態をそのままの状態で残すことで、劣化の過程のプロセスの段階、段階を見れるという研究上の価値はあります。
【D委員】
学術上の価値を落とさずに、こういう文化財として保全できる方法がないのかという検討会を別に設ける必要があると思います。
【A委員】
現存する個々の遺構について処方箋みたいなものが必要になってくると思います。
【オブザーバA】
建物の歴史的価値から言えば、大正5年の30号棟、それから日給社宅は是非残したい。復元とか補修じゃなくて、目に見えない形で今の技術なら非常にうまく新しい骨組みを入れ込んで形だけは残すような補強はできると思います。
【オブザーバB】
OUVを構成する要素として何を残していかなければならないのかという本質的な検討を保全管理計画なりで整理してやっていかなければなりません。全体としての資産の残し方ということと、保存のあり方ということに関して、恐らく、もう少し海外の意見を聞いた方がいいと思います。
【オブザーバB】
産業遺産の部分に関してはいわゆる真正性を見出すことはなかなか難しいので復元とかいうことはあまり考えない方がいいと思います。
【事務局】
次回の委員会につきましては、9月の下旬を目途に調整をさせていただければと思います。

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総務部 行政体制整備室 

電話番号:095-829-1124

ファックス番号:095-829-1410

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