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平成23年度第2回端島炭坑等調査検討委員会

更新日:2013年3月1日 ページID:006679

長崎市の附属機関等について(会議録のページ)

担当所属名

総務局企画財政部世界遺産推進室

会議名

平成23年度第2回端島炭坑等調査検討委員会

日時

平成23年9月29日(木曜日)午後2時30分~

場所

都道府県会館408号室(東京都千代田区平河町2-6-3)

議題

1.調査報告について

ア 建築材料等調査の中間報告

2.保存管理のあり方の検討

審議結果

事務局
(報告)本委員会の資料の作成などに関し、専門的な見地から事務局の作業の補助をパシフィックコンサルタンツ株式会社に業務委託することになったことを報告する。

1.調査報告について

ア 建築材料等調査の中間報告

事務局
「端島炭坑等調査検討に伴う建築材料等の調査」について、日本建築学会のワーキンググループから東京理科大学の今本先生にから報告をいただく。

今本准教授
調査の目的は、「軍艦島に存在するコンクリート構造物の劣化の状況を定量的に把握すること」である。

具体的には次の調査を行う。
(1)構造物劣化のメカニズム
(2)劣化を受けた構造物の物理的な特徴が今どのようになっているか現状の把握
(3)将来的な構造物劣化の将来予測

1年目は次の調査を行う。
(1)コンクリート躯体の劣化状態(強度、耐久性、ひび割れなど)の調査
(2)鋼材の劣化状態(コンクリート内部に存在している鉄筋がどの程度の健全性を持っているか)の調査
(3)仕上材料の劣化状態の目視調査
(4)夏季、秋季、冬季の劣化作用の調査(温度・湿度・飛来塩分測定のためのセンサーなどを設置し構造物への影響を調べる。)

2年目は1年目の調査を踏まえ、構造物としての保有性を調査する。RC構造の専門の先生が材料・構造の観点から建物の評価をする。

今本准教授
鉄筋の腐食に温度、湿度が大きな影響を及ぼすことが知られているため、建物の柱、梁、劣化している部材のすぐ際と、直接、鉄筋の筋棒の温湿度を測るためのセンサーを設置する。

また、調査は基本的に非破壊が望ましいが、やむを得ずコアを抜く箇所がある。コアは直径が約30ミリメ-トル、深さ6センチのものと、塩分を分析する目的で、直径80ミリメ-トル、深さ20センチ程のものである。センサーは直径30ミリメ-トル、深さ6センチのコア内部に設置する。センサーは1時間ピッチで温湿度を測定し、約1年分のデータを溜め込むことができる。それで躯体の内部の温湿度環境を調べていく。

飛来塩分を捕集するための測定器は、主には建物の屋上と地上、全部で5つ島の中に分散して配置した。直接飛来してくる塩分を捕集してこの島にはどのぐらいのNaCIが降りかかってきているかを調べる。

直径5センチ、高さ10センチのモルタルの試験体を設置して飛来する塩分を吸わせて、島中における飛来塩分の分布を全体的に把握しようという目的で調べる。重点をおいて設置したのが65号棟と16号棟から20号棟に至る日給社宅と呼ばれる建物と、それから島で一番古いとされる30号棟の周囲である。

島全体の飛来塩分量を捕捉するための調査はこれから約1年間かけて行う予定である。

温湿度・塩分関係のセンサーは平成23年9月21日、22日の調査で一通り設置した。平成23年10月29日から平成23年11月3日までかけて、次の点について精密な調査をする。
(1)非破壊で腐食状態を評価するという方法による構造物の劣化状態調査
(2)被りコンクリートの緻密度や、劣化に関与するような物質調査
(3)劣化状態の目視調査

劣化状態の目視調査は、共通の書式で評価する。書式は、主に躯体の損傷度とその程度の評価のマトリックスになっており、5段階評価で損傷の種類に応じてグレーディングを行う。

本年度、以上の調査を実施して得られたデータについて2年目に向けて解析を進める。

今本准教授
ここまで劣化をしているものが実際に存在していることが稀有な例で、材料学的には軍艦島は非常に貴重である。

E委員
材料のプロにとって大変な重要な調査研究の場であって、劣化のメカニズムがここで分かるとすると非常に貴重なデータを世界に提供できる。つまり何もしないことが学術上重要であると言える。

今本准教授
島中の飛来塩分の分布を調べるために配置したモルタルの試験体は1年目、3年目、5年目、10年目と年限をみてデータを取る目的で配置している。

E委員
長期の調査研究のフィールドとして学術上重要であるので、是非とも長期の調査設計をしてもらいたい。

A委員
地下の構造物が露出している部分も同じような手法でデータが取れるのか。また、植物の繁茂でコンクリートが破壊される事態が進行していることについてどう対応していったらよいか。

今本准教授
洗掘されて杭が剥き出しになっている部分は、杭が支持場に対して立っているので構造物的には存在しうる。ただ杭はRC部材なのであの状態で海水に曝されていたら上物より厳しい条件にあると思う。しかし、近づくことが物理的にできるかという問題があるため調査はできていない。護岸についても非常に気になるのは確かだがカバーできていないところである。

植物について今後考えて調査していきたい。

D委員
一番気になるのは全体としてどの程度の劣化が進んでいるのかである。また建てられた時代との関係はどう評価するのか。

今本准教授
鉄筋コンクリートの施工の仕様書がある。それが最初の時期は塩分に関する規制が全然なかったが、ある頃から、材料の中には塩分を含むものを使わないよう仕様書は変化した。コアは65号棟、日給社宅、30号棟、3号棟で採取する。65号棟と日給社宅は、塩分規制がかかる前の建物であり、3号棟は塩分規制がかかった以降に建設された建物である。時代背景による規制の影響を定量的に調べる計画である。

B委員
規制がかかってからの方がコンクリートはより良質になるように聞こえるが、実際に現地を見ると新しいものの方が劣化がひどいことがある。組成などの分析を予定しているか。

今本准教授
コアの数が限られているのでうまく説明がつくかは分析の結果によるが、密度と内在塩分の量と部位にどれくらいの塩分が飛来しているかの情報を得る計画である。

B委員
計測場所の高さの計画を知りたい。

今本准教授
16号棟は一番下の階と中間階と上層階とそれぞれ5体ずつ飛来塩分を捕集するためのモルタル試験体を設置している。

B委員
今回の調査は2年間ということだが、研究対象としてもっと長期に観察を続けたいという希望はあるか。

今本准教授
是非やらせていただきたい。

2.保存管理のあり方の検討

事務局
保存されるべき価値は何なのかを整理したい。

端島全体の価値を考える上で事務局の案として大きく3つの価値に分けている。
(1)端島が明治から大正期にかけての日本の近代化に大きく貢献した炭坑施設である。
(2)端島が現存する建築物や土木構造物、これらが明治期から昭和期における閉山までの時代の経過、変遷を残している。
(3)閉山以降、時間の経過とともに島内の構造物の風化・変化の過程が見え、今後も継続して見ることができる。

この3つの価値を保存するにあたり、その考え方の整理のためにまず島内を生産施設のエリア、居住区のエリア、護岸のエリアの3つに分けた。

E委員
例えば歴史的価値など近代化産業遺産としての価値と言った時に、産業遺産が密度濃くあるのが珍しいのか、珍しい構造物があるのか、一番古いのがあるのかとか価値をもう少し言った方がよい。

E委員
風化の過程というのを、風化の要素、過程を見るというだけではなくて、科学的に分析できる貴重なものだという意味での価値もある。風化の過程というところをもうちょっと踏み込んで協議をするとよい。

A委員
風化の過程と現在風化した形で残っているということと、ここが炭坑として歴史的文化的価値があるということは複合している。また、島であるということも特色である。歴史的文化的価値を今ある姿と関連付けてどうやって説明するかという問題になってくる。まとめて議論できる価値観の枠組みを作らないと端島の特性が出てこない。

C委員
廃墟としての価値を評価していくことによって位置付けが決まってくる。

A委員
廃墟の価値を初めて今ここで論じていることを認識した上で議論が必要である。

D委員
時代を2期に区分しているが、歴史文化的価値として一括りできない部分がある。時代により生産設備が変化し、それが非常に長期間にわたって存在していて、重層的に残っているので立体的な捉え方が必要である。

明治・大正初期までの日本における石炭生産が、世界的にどういう歴史的・文化的価値を持っていたのかを証明する中で、端島の位置が説明され、それにふさわしい遺産、遺構がどれくらい残っているのかを段階を踏んで時期区分して整理する必要がある。

東アジアの中において非常に優秀な石炭が存在し、海底炭鉱でなければ掘れなかったという自然的条件を考えていけば、世界的文化的価値がある程度証明されていく。

B委員
生産施設の一種のクロノロジーはさらに調査が必要か。

D委員
個々の施設がいつ頃建てられて、どう使われていたかの整理が必要である。

C委員
生産施設だけではなくて居住施設、それから島の地形も含めた島全体のクロノロジーを明らかにしていく必要がある。

B委員
上部構造はかなり撤去されてしまって一見残ってないように見えるが基礎部分や配置もはっきりわかる。それだけでも他の廃鉱と比べると遺産としての価値は高い。

D委員
生産施設の保存管理も居住区と平行して見ていけばよい。同じ基準でやる必要はなく、どうしてそういう基準でやったのかということもある程度明らかにしつつやっていくことが必要だと思う。

オブザーバ
軍艦島は、明治から大正、大正から閉山に至るまで日本を代表する石炭を産出し、かつ島が少しずつ埋め立てられて独特の生産形態、居住形態を伴った形で営まれてきたというところに大きな特色があり、史跡としての価値があると考えている。

生産区域について、表面的には撤去されているが地下遺構等はおそらく良好な形でそのまま残されていると考えられるので、総体としては文化財指定というものに十分値するという印象がある。

居住地域にある建物群については、個人的な考えではあるが、現状の居住地域の上物の保存が難しいから史跡指定ができないという議論をするべきではないと考えている。曝露試験の世界的にも珍しいものとしての価値付けを新たにここではかって、史跡の中でも重要な位置付けをすることになるのではないかと思う。

C委員
個々の物件の取り扱いは、保存管理計画の中であらためて考えていく方向でよいか。

オブザーバ
そのとおりである。

B委員
仮に史跡とした場合に基本的には島全体と捉えてよいか。

オブザーバ
文化庁の中でまだ準備しきれていないが、歴史的な過程を見ると戦前までにこの形態が出来上がっているので、それをきちんと評価すべきと感じている。

D委員
端島は端島だけで独立している訳ではない。保存管理計画の中でもう少し広い範囲で計画を立てていく必要がある。

C委員
表のまとめ方だが、全体を歴史的な価値と捉えた方がよい。

(1)創業以来の産業施設としての意味

(2)初期における近代化施設としての意味

(3)それから施設が操業を終えた後の廃墟になっていく過程

(4)その中で生じた大規模な科学的な試供体としての意味

その総体を歴史的な価値として捉えるのがよい。そういう捉え方にしておけば、全体を評価した上で、保存管理のあり方の中でコンクリートの科学的な位置付けということも組み込めるのではないか。

B委員
生産エリアの話が出たが、まだ十分に調査が尽くされていないので、もう少し資料を揃える必要がある。

お問い合わせ先

総務部 行政体制整備室 

電話番号:095-829-1124

ファックス番号:095-829-1410

住所:〒850-8685 長崎市魚の町4-1(9階)

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