ここから本文です。

平成22年度第3回 端島炭坑等調査検討委員会

更新日:2013年3月1日 ページID:006497

長崎市の附属機関等について(会議録のページ)

担当所属名

文化観光部文化財課

会議名

平成22年度第3回 端島炭坑等調査検討委員会

  • 日時:平成23年3月24日(木曜日)午後1時~
  • 場所:市役所本館地下1階 議会第1会議室

議題

  1. 平成22年度の調査報告について
  2. 平成23年度以降の進め方について
  3. その他

審議結果

1 平成22年度の調査報告について

ア 実習報文調査

D委員
端島については、「高島炭坑史」のようなまとまった文献がまだ刊行されていない。歴史的価値付けを行う場合、その全体像を取り上げて行くために、実習報文は非常に適切な資料である。
本年度収集済みの資料は資料1のとおり。九州大学については、卒業論文も8点別途収集した。
内容分析についてはまだこれからであるが、今わかっていることは、第1点に実習報文は文章だけではなく中心は図面、地図であるので、使えそうな図面等の撮影をきちんとやる必要がある。
第2点に大学によって実習報文の内容がかなり違う。これは学科の性格や、あるいは指導教授との専門の関係もあるのかと思うが、地質調査に重点的に入っている大学、採鉱技術のところが中心になっている大学、端島全体の生産地域としての居住空間などの情報を積極的に集めている実習報文とかいろいろ特徴がある。
今後は、各データを整理し総合的に分析していくと、かなり全体像が得られるのではないかと考えている。
第3点には、東京帝国大学と京都帝国大学が、かなり包括的な、精密な記録を残しているので、今年度(平成22年度)大体調査が済んだ東京の次に、京都の調査を主に進める。
実習報文の特徴として、調査期間が数ヶ月ということで時期的にはある時点の調査となり、時系列的変化というものには必ずしも正確なデータを得られない。しかし、ある時点についてはかなり詳しくわかるので、なるべくたくさん集めることでその欠点は補えるのではないかと考えている。
時期でいうと、第二次世界大戦前のものを中心に集めている。
次年度(平成調査としては、京都大学の未調査部分と早稲田大学、秋田大学など最初はあまり重視していなかった大学にもかなりあることがわかったので、所在状況をはじめ実態を明らかにしたい。また今年度収集した実習報文の分析を始めていきたいと考えている。
B委員
予定としては平成23年度まであるいは更にということもあるのか。
D委員
一応1年間でできれば終わらせたいが、幾つか残ってしまうところがあろうと考えている。
B委員
具体的に収集されるデータの中身は、実習報文をどのような形で収集されているのか。
D委員
撮影したものをCD-Rに記録しているが、やはり使いにくいので紙媒体に印刷しておいたほうが便利だと思う。
A委員
これをどのように整理するのか。例えば、画像で保存したとしてどういう項目でデータにとって検索できるようにするのか。
D委員
世界遺産の場合の提案書の中にどれくらい盛り込めるかということと同時に、やはり文化財として指定されていく時の資料として歴史的な価値付けという点では必須のものになっていく。当面はそういう目的のもとに、必要なところを整理することになる。
D委員
現在の端島の産業施設部分がほとんどないということから、これをどう復元するか、どのようなものがあったのかをきちんと検証するということが第一だろうと思う。
また、現在残っている遺跡の大半が生活居住部分であるので、どのような生活が行われていたのかということを、その変化をきちんと追っていくことも第二番目の課題として必要だと思う。
方法としては、まず目次を全部印刷してどの実習報文にどういう情報が載っているのかということをデータベースにすれば比較的簡単にアクセスできるのではないか。
B委員
技術史的な観点で、例えば、採掘技術みたいなものが端島の実習報文の中から編年的に明らかになる可能性はあるか。
D委員
それはあると思う。第一竪坑から順次どのような技術がどのように導入されどう稼動したのかが、それぞれの年の報文、その近くの報文から詳しくわかると思う。

イ 類似事例調査

(事務局説明)
類似事例調査について911の世界遺産の中から資料2のとおり9遺産を選定した。

  1. アイアンブリッジ峡谷(英国)
  2. ブレナヴォン産業用地(英国)
  3. コーンウォールとウェストデヴォンの鉱山景観(英国)
  4. リヴァプール-海商都市(英国)
  5. エッセンのツォルフェライン炭坑業遺産群(ドイツ)
  6. ファールンの大銅山地域(スウェーデン)
  7. レーロース鉱山都市と周辺環境(ノルウェー)
  8. ハンバーストーンとサンタ・ラウラ硝石工業群(チリ)
  9. シーウェル鉱山都市(チリ)

B委員
端島が世界遺産の一躍を担うとした場合に、どういう類似の遺産と比較をすればいいかというのは重要である。しかし、端島のような廃墟そのものが遺産になるというぴったりと合う例はなかなかない。
B委員
説明があった世界遺産のうち石炭の採掘、炭坑といえるサイトはどれになるか。
事務局
ブレナヴォンのビッグ・ピット、コーンウォールの鉱山の部分、エッセンのツォルフェライン炭坑業遺産群である。
B委員
石炭の坑道で開放されているものはあるか。
事務局
地下坑道掘りに限って言えば今のところない。
D委員
鉱山保安法との関係がある。炭鉱の場合は、やはり地質の問題として、金属鉱山の場合よりは危険度が高い。特に海底の場合はもっといろんな危険性が入ってくる。
C委員
ハンバーストーンとサンタ・ラウラ硝石工場群は、40年間補修が行われず放置され廃墟みたいになっているということで、世界遺産になると同時に危機遺産にもなっている。
結局目指すところは、廃墟としてやっていこうというのか、それとも、修復復元しながらやっていこうというのか。この場合どこまでやれば危機遺産から解除されるのか。
事務局
ハンバースト-ンの報告書がどれほどユネスコの方まであがっていて評価がなされるのかという情報は今のところない。
この報告書が出てくれば、例えば、端島の修復をどこまでやるのかの参考事例になる。
事務局
端島を風化に任せておくという方向性、つまり、文化財の価値とは別の部分で材料工学的の曝露実験的というところの活用の方向性を考えたときに、文化財的な保護というのは、逆に支障になるといった相反する条件がある。
1つの想定としてゾーニングの考え方がある。曝露実験に資する建物の特定、文化財としての保存というところのすみ分けが、面的な線引きであったり部位的な線引きで可能か検討したい。
D委員
類似事例について、鉱山関連遺産をどの程度復元したのか。
(鹿児島県(オブザーバーで出席))建物、構造物が崩れるのを止めるために最低限の措置を実施するというのが基本的な考え方のようである。その上で、補う材料というのはもちろん古いのがあればいいが、新しいのを補うときには、しっかりとわかるように区別する、ディスティンクトというが、区別するようにはっきりと色や明彩、材料でも判るようにはなっている。復元は必要最低限の介入が行われている。
D委員
産業遺産としての全体性の問題だが、端島は産業施設部分がかなり弱い。
事務局
高島の本坑の蛎瀬竪坑、二子竪坑、もしくは北渓井坑で地下構造の部分を語りながら補い合って総体として価値を高めた資産になるように工夫ができればと考えている。
A委員
端島に対する遺産としての価値評価の一番主要部分が、現在残っているいわば廃墟の形をとった地上構造物である。また、関係して生産施設の遺構が非常に弱いということに関して言うと、石炭産業の遺産として関心の高い坑道の復元という問題がある。炭坑という存在と切り離しては考えられないもので、それを除外して、炭坑の遺産としての価値を論ずるというのは、多くの人はかなり違和感を与える。坑道を何とかして復元するということは、どこかで一度考えてみてもいい問題である。
事務局
端島は海底炭坑の島という宿命から、いきなりマイナスの地下に入ってしまい、近くが海ということから、化石水や海水の湧出が非常に大きい状況である。端島の補完的なものとして、池島の活用もできればいいと考えている。

ウ 研究論文調査

(事務局説明)

事務局
論文は116件(端島に関するものが36件、高島に関するものが80件)があり、閉山前、閉山後ともにある。近年はさらに端島に関する論文も増えている傾向にある。
A委員
これらの論文は、基本的には建築学建築史の研究あるいは住宅部分の生活史であり、炭坑史、産業史の研究はない状況である。日本石炭産業史の中で燦然と輝くこういう遺産について、実はまともな研究がほとんどないというのが現実である。
端島については、これを見れば大体分かるというものが出てくるような作業をこれから行う必要がある。
D委員
端島だけでは完全性に少し問題がある。高島と両方セットにして捉えていくということと、三菱について、2つの炭坑がどのように経営されてきたのかという、もう一段階上のレベルでの研究が必要である。
高島炭坑の方が比較的研究(結果)があるとはいえ、やっぱり時代的に明治期に限られているということもあるので、統合して見ていくという視点を打ち出していくということが大事である。
B委員
委員会として高島を特別扱いするのではなく、高島も当然視野に入れた議論をこれからも進めていきたい。
事務局
高島と端島だけではなく中ノ島も含めて、この委員会の中でご検討いただきたい。
B委員
高島炭坑の中に端島があるので、高島というテーマで書かれた論文は端島もそこに言及されていることも多いのではないか。
事務局
端島炭坑は、84年間の創業の大部分が高島坑に対する支坑という役割で活躍している。端島の価値付けについても高島を含めて価値付けをして、必要な方法等を考えたい。
B委員
論文については、別の情報源を先生方が持っていて、更にこれに加えるべきものがあるという可能性もある。

エ 北渓井坑跡の発掘調査

(事務局説明)

C委員
発掘調査で、建物としてひとまとまりとなる成果というものはあるか。
事務局
遺構の部分的な確認しかできていない。今回は遺構の残り具合というのを確認した。調査にあたっては、かなり大規模な形で実施をしないと難しい部分もあるため、調査の計画と、それから実施方法等も検討していかなければならない。
平面図は、内閣文庫の高島炭坑関係の資料にも図面がついていない。佐賀藩の関係資料とかグラバーに関する資料に図面がないか今後調査する。
写真を詳細分析して配置図にできるか検討している。
B委員
北渓井坑跡の写真の下の部分だけが市の指定になっている。今後は調査された範囲とか、指定範囲を広げる方向で計画は進められると考えていいか。
事務局
竪坑のみだけではなくて、そこを含むある程度広い範囲を保存の対象として、文化財としての指定というのも今後考えていきたい。
事務局
高島には蛎瀬坑、二子竪坑、南洋井坑、クラブハウス的なものとか当時の護岸の跡などの素材がある。実習報文の中の成果や、研究論文の中で価値を高めながら、必要に応じて諮るべきものについては調査を深めていきたい。
D委員
写真の竪坑の部分を見ると、現在の竪坑よりも地面がもう少し低いのではないかと思う。先ほど標高1.2メートル、満潮時に水没、海面がきているという説明からすると手前の方は盛土だったのか。
竪坑付近は全然手をつけていないのか。
事務局
竪坑に近いところは今回、調査の対象としていない。文献等で出てくる竪坑の寸法と、現在の寸法とに少し開きがあったりとか、その後明治10年代の終わりか20年代ぐらいになってから、飲料水用の井戸として使用されているという記録がある。後壁が剥落し作り直したという記録があり、当初のままの形ではないと考えている。

2 平成23年度以降の進め方について

(事務局説明)

B委員
保存管理計画は、当然世界遺産をにらんだ推薦書の文書の中の1項目になってくる。「九州・山口の近代化産業遺産群」世界遺産登録推進協議会の計画との整合性はとれているのか。
鹿児島県
委員会の作成したスケジュール(案)は、平成23年度、24年度に個別の保存管理計画を策定すれば、協議会全体として25年度に最短で推薦書を出せる。推薦書の本体そのものには、個別の保存管理計画というのはその計画名が載るのみだが、端島は特殊な資産なので、具体的にイコモスから個別の保存管理計画の提示が求められる可能性がある。しっかりと説明ができるような論理的なものができれば大変ありがたい。
C委員
端島の保存管理計画については、世界遺産の前の段階として、国の史跡としての保存計画が問題のないものである必要がある。そういう意味で、文化庁の史跡の方の担当者、あるいは世界遺産の担当者と十分緊密な連絡をとり、これで過不足ないか、特に不足がないかということは確認をしながら進めてもらいたい。
対象資産の評価を、この骨子の前の段階として考えておく必要がある。
事務局
この会議に先立ち、文化庁の記念物課調査官とも打ち合わせをさせていただいている。今回の骨子というのが基本的に文化庁から示されている指針に沿った内容になっている。それが、端島炭坑自体がそれに沿うものであるかどうかというところからの議論が当然この委員会の中で必要である。
事務局
文化庁とはこの委員会を立ち上げる前から相談をさせていただいて、その指導のもと委員会を開催している。
史跡指定にあたっての保存すべき部分と風化にまかせる部分とゾーニングというところのアイディアについても、文化庁と相談をしながら行っている。風化の過程にまかせるというような文化財の取り扱いというのは考えにくいが、観光客がたくさん集まっている現状は、文化財保護法がまだ想定をしていない文化財に対する需要が一つあるだろうといった意見も文化庁から頂いている。
既存の文化財保護法に基づかない取り扱い等々がもしかしたら出てくるかもしれないが、少なくとも3年ぐらいの議論をいただいた後に、よりふさわしい保存方法とか指定の方法があればそれを一緒に探していこうという意見を頂いている。
D委員
世界遺産の前提として、国内で保護を対象に文化財として指定されるという、史跡の可能性が一番高いと思う。そうなると図面とか、歴史的価値の確定とか、建築年代の確定とか、結構大変な準備作業が必要であり、この日程だとかなりきついと思う。
事務局
世界遺産としては明治中期までの炭坑の役割だけでなく、後の生活史を含めて、高島とともに価値がどこにあるのかということを明らかにした上で取り組んでいきたい。
B委員
最終的な成果物を確認しておきたい。
事務局
保存管理計画を事務局で作る。23年度も4回、次の年度も4回の委員会開催を予定している。
A委員
端島の保存管理の部分について相当困難な高い壁があると思わざるを得ない。
端島とかあるいは三池もそうだったが、運動先行と言われた声は今は全くない。その保存管理についても従来とは全く違うアイディアで、位置付ける必要があるのではないかという雰囲気が共有されるようになってきた。
文化庁も従来だったらなかなか議論のテーブルに上がらないようなテーマ、もしくは考え方の枠組みもやっぱり検討してみる必要があるとなりつつある。
B委員
このスケジュールの中でまず、対象資産の価値の把握と保存の方針の検討ということで、その最初に価値の評価を行う。
保存の基本方針、この辺がもう既に議論が始まっていると思う。
保存管理の骨子はできるだけ早い機会に、たたき台から私どもも考えなければならないと思う。
C委員
かなりスケジュールがタイトで、優先順位、これができなければ次の段階に行けないみたいな形の行程表を作成した方が何を優先すべきかがクリアになっていい。
事務局
価値付け部分がスタートであり、後はその整備とか方針とかを、キャッチボールのようにやり取りしながらどんどん密にしていくようなフローになると思う。フローチャートは事務局で作成し、近いうちに説明をしたいと思う。

3 その他

ア 3Dデータを利用した測量図立面図作成

事務局
前回、長崎大学の松田教授の研究の報告をしたが、その3Dデータを利用した測量図、立面図の作成が可能ですのでその成果品を報告する。

イ 長崎市の景観行政について

事務局
長崎市の景観条例を改正し、本年(平成23年)の4月1日から施行する。今後は、先生方初め、地域住民とか、関係各位の間で具体的な景観形成方針とか景観形成基準の検討をしていって、景観計画というものに記載をしていくというような作業が出てくる。
4月1日の施行時点においては、長崎市全域にかかる一般地区の部分として、良好な景観形成に資するというのみである。
端島、高島の価値を明らかにする中で、それにふさわしい周辺景観というのが定まってくる。法に基づく届出制にするのか、許可制にするのかというところの軽重も含めて検討したい。

ウ 参考資料
  • 「端島・中ノ島・高島の坑口変遷表」
  • 「端島自然形と付近の岩礁及び砂洲」
  • 「端島の現況」
  • 「現況写真 端島・中ノ島・高島」

B委員
坑口の変遷表は特にこれが整備計画にあたり参考になる資料と思う。どんなふうに活用できるかというのが、これからの議論である。次回またこれに関する議論が出てくるかもしれないので、この活用法がありましたら、ご提案頂きたい。
事務局
次年度(平成23年度)の委員会は、資料に示したように4回ほど会議を予定している。それで1回目を、大体6月の初旬、遅くても中旬までには開催したいと考えている。
日程は委員のご都合を伺い事務局で調整を図る。

お問い合わせ先

総務部 行政体制整備室 

電話番号:095-829-1124

ファックス番号:095-829-1410

住所:〒850-8685 長崎市魚の町4-1(9階)

アンケート

アンケート

より良いホームページにするために、ご意見をお聞かせください。コメントを書く

観光案内

平和・原爆

国際情報

「行政運営・審議会・指定管理者・監査」の分類

ページトップへ