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更新日:2017年11月1日 ページID:030487
長崎くんちを間近に控えた10月5日、ノーベル賞のニュースが飛び込んできました。長崎市出身のカズオ・イシグロさんがノーベル文学賞を受賞したというニュースです。
世界的な作家として、ずっと前からこの賞の候補であることは聞いていましたが、新聞の予想記事では今年は名前が挙がっていなかったので少し驚きました。とてもうれしいニュースです。
イシグロさんは5歳まで長崎で過ごし、イギリスに移住。「日の名残り」などの名作を生み出しました。初めての長編「遠い山なみの光」には戦後間もない長崎の「稲佐山」「ケーブルカー」「浜屋百貨店」「平和祈念像」などが登場します。
イシグロさんの心の原風景の一つとして長崎が焼き付けられているとしたら、それはとても光栄なことです。そして、イシグロさんの作品が世界数十カ国で翻訳されていることを考えるとき、国を超えて人間が共通に持っているものを描いてきた稀有な作家が長崎出身であることをとても誇りに思います。
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文学賞のニュースの翌日、ノーベル平和賞がICAN(アイキャン)に決まったというニュースが飛び込んできました。
ICANは、平和活動をしているNGO(非政府組織)のネットワーク組織。少しイメージしにくいかもしれませんが、政府ではない立場から、平和をつくるための活動をしている組織の集まりです。
今年7月7日に「核兵器禁止条約」が国連で採択されたことはよくご存じだと思います。大国の意見がリードしがちだった国連の中で、小さな国が力を合わせて核兵器にノーを突きつけたこの条約の成立までには、多くの困難がありました。その中で、小さな国々を支える市民社会側のサポーターとして活躍したのがICANでした。
ICANは被爆者の声、被爆地の役割を高く評価してくれています。被爆者が掘り始めてできた小さな水の流れを一緒に掘り続け、核兵器禁止条約という大きな川の流れにまで持ってきてくれた“仲間”といっていいでしょう。
今回、ノーベル平和賞にICANが選ばれたのは、核兵器禁止条約が「世界の人々が望んでいる規範」だということをノーベル賞が示してくれたものだと思います。条約は未来に向けて価値のあるものを生み出したのだ、というメッセージを発してくれたのです。
いろいろな人たちが、この条約を支持するという声をあげることで、この条約は育ち、力を持つことになります。この条約が、本当の意味で世界のルールになるまでの道のりはまだまだ長いけれど、世界中にいる仲間たちと励まし合いながら、あきらめずに一歩一歩進んでいきたいものです。
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イシグロさんのインタビューにも「平和を求める人たちの力になることを願う」という言葉がありました。長崎が、世界の平和を願う人たちとつながっていることを感じる今年のノーベル賞でした。本当におめでとうございます。
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