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施政方針(令和5年6月20日)

更新日:2023年6月20日 ページID:040551

令和5年6月施政方針

令和5年6月20日、令和5年第4回市議会定例会の冒頭において、鈴木史朗 長崎市長が市政運営に対する所信を述べました。

目次
1 はじめに
2 基本的な考え方
3 重点的な取組み
4 新ナガサキビジョン
(1)交流拡大と産業振興で、力強い経済の再生
(2)少子化対策で、子育てしやすいまちに
(3)持続可能で魅力あるまちづくり
(4)健康で安全安心な生活のために
(5)世界と平和に貢献するナガサキへ
(6)新しい時代の市役所を創造
5 おわりに

1 はじめに

令和5年第4回長崎市議会定例会の開会にあたり、議員の皆様、そして市民の皆様に対しまして、市長就任における私の所信の一端を述べさせていただきます。

このたび、市民の皆様のご支持と温かいご支援を賜り、第36代長崎市長として市政運営の舵取りという重責を担わせていただくことになりました。

私にとりまして大変光栄なことであると同時に、多くの皆様のご期待に応えなければならないという強い使命感で身が引き締まる思いであります。

これから4年間、「長崎に生まれてよかった」と思えるような、そして、長崎に暮らしていることを誇りに思えるような、そんなまちを市民の皆様と一緒につくってまいります。

全身全霊をかけて取り組んでまいりますので、議員の皆様におかれましては、何卒、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

私は生まれてから高校時代までを長崎市で過ごし、大学進学以降は市外で暮らしてきました。36年間、外から長崎市を見る中で、長崎ほど多くの魅力にあふれたまちはないと常々感じていました。

約450年前の開港以来、国内外の様々な人や文化との交流の中で発展し、個性にあふれた「歴史・文化」。海と山に囲まれた、美しく豊かな「自然」。そのような環境に育まれた食材をふんだんに使い、国内外との交流文化、いわゆる「和華蘭文化」を背景として独自の発展を遂げた、多種多様な「食」。そして、何よりも、国内外との活発な交流を背景として、他者に対して寛容で、思いやりにあふれた「人」。このまちにはたくさんの魅力があります。

ただ、この魅力をまだ十分に磨き上げきれていない、活用できていないという思いも強く持っています。

そのような魅力の原石を磨きながら、市内外、そして世界へ発信していくことで、市外の皆様はもちろん、市民の皆様が未だ気付いていなかった魅力をしっかりと顕在化する必要があります。

2 基本的な考え方

選挙期間中も申し上げていましたが、「今、長崎市は100年に一度のピンチでもありチャンスでもある」、そのような極めて重要な節目にあります。

長崎市が直面している「ピンチ」とは、人口減少です。

現在、長崎市では、若い世代を中心とする転入者の減少により転出超過が拡大するとともに、出生数の減少にも拍車がかかっています。

その結果、平成の大合併前の旧7町を含めた長崎市の人口は、1970年代に50万人を超えていましたが、現在は40万人を下回っています。

この人口減少は、地域経済の縮小や様々な産業の担い手不足、地域コミュニティの希薄化、地方行財政運営への悪影響など多くの社会的・経済的な問題を深刻化させます。

このため、まずは転出超過を抑制するとともに出生数を増加させ、人口減少のスピードを緩めることが喫緊の課題です。

一方、現在の長崎市は「チャンス」の時でもあります。

1つ目は、出島メッセ長崎や西九州新幹線の開業に加え、今後数年間は長崎駅周辺再開発、長崎スタジアムシティ、松が枝国際観光船埠頭2バース化など「新たなまちの基盤」が生まれつつあり、これを上手に活用すれば、このまちに新たな価値を創り出し、新たに人、企業、投資を呼び込むことができるということです。

2つ目は、コロナ禍の収束により、これまで抑え込まれていた様々な活動が再開され、人流が復活するとともに、日本政府による水際対策の緩和や円安の追い風などから、インバウンドをはじめとする交流の拡大が見込まれることです。

この2つのチャンスと、元々長崎のまちが持っている歴史、文化、自然、食、人などの魅力を掛け合わせることで、長崎市はもっと元気なまちになります。

そのために、市議会の皆様と手を携えるとともに、国や県との連携強化をはじめ、民間企業、大学などとの産学官連携、市民の皆様との協働など「オール長崎」の体制で取組みを進めていきます。

また、市民目線で、市民の、市民による、市民のための市政を推進してまいります。このため、市民の皆様との双方向のコミュニケーションを重視した市政運営を行ってまいります。

さらに、SDGsの「誰一人取り残さない」という理念のもと、障がいの有無や国籍、年齢、性別などに関係なく、多様性が尊重され、だれもが自分らしく活き活きと暮らすことができる長崎市を目指してまいります。

3 重点的な取組み

長崎市の人口減少は、転出者が転入者を上回る社会減と死亡者が出生者を上回る自然減が同時に進行している状況です。

社会減の主な要因としては、雇用、就学、住まいや暮らしやすさに関するものなどがあげられます。

一方、自然減の主な要因としては、高齢化の進行に伴う死亡者の増加に加え、未婚化や晩婚化、晩産化、経済的負担などに起因する出生数の低下などがあげられます。

これらのうち、長崎市においては特に転出超過が著しく、魅力的な雇用の受け皿の少なさ、あるいは所得の伸び悩みなどが要因となって若い世代を中心とした転出者の増加と転入者の減少が生じており、地域経済活性化による雇用の質・量の確保が必要不可欠です。

さらに、出生数減少も進んでいることから、結婚、妊娠・出産、子育てに希望を見出すことができ、望むタイミングで希望する数の子どもを生み、育てられるまちに転換する必要があります。

このため、私の任期中の4年間においては、人口減少対策の中でも特に経済再生と少子化対策の2つの重点分野を車の両輪と捉え、新たに「経済再生プロジェクト」と「少子化対策プロジェクト」を始動します。

まず、「経済再生プロジェクト」では、魅力的な雇用・しごとをつくるとともに、まちの機能を維持・活性化するため、交流拡大と産業振興で経済を力強く再生していきます。

次に、「少子化対策プロジェクト」では、子育てに関する経済的負担軽減を図るとともに、時間と場所の切れ目のない子育て支援や教育環境の充実を図り、子育てしやすいまちに転換していきます。

また、限られた財源や人的資源の中において、この2つのプロジェクトを強力に推進していくため、「新市役所創造プロジェクト」を始動させます。「新市役所創造プロジェクト」では、職員が効率的・効果的に最大限の力を発揮できる、ワンチームの市役所を目指して、市役所の働き方や行財政運営を時代の流れにあったものに転換し、新しい時代の市役所を創造してまいります。

この3つのプロジェクトをはじめとする新たな政策の推進体制として、高度な専門性を持った外部人材を政策顧問として登用するとともに、政策顧問と企画財政部長以下の市役所メンバーで構成される政策実現会議を設置。政策実現会議のもと、3つのプロジェクトについては部局横断型のプロジェクトチームを設置します。政策実現会議は、目標達成に向けた具体的な道筋を明らかにするためのアクションプランを策定し、戦略的な取組みを展開するとともに、アクションプランの実施状況や取組みの効果等を検証しつつ、施策の適切な見直しを行うなど、PDCAサイクルを回していきます。

このような推進体制で、「経済再生」「少子化対策」「新市役所創造」の3重点分野をはじめとする新たな政策を強力に推進することで、しっかりと人口減少に歯止めをかけてまいります。

なお、本議会に計上しております補正予算案につきましては、これら3つの重点分野を中心に、特に早期に対応が必要な取組みと、中長期的な視点で種をまく必要がある取組みについて予算編成を行っております。

4 新ナガサキビジョン

私は、選挙公約「新ナガサキビジョン」において、「経済再生!人口減少を食い止める!」とのスローガンのもと、必要な施策として、

(1) 交流拡大と産業振興で、力強い経済の再生

(2) 少子化対策で、子育てしやすいまちに

(3) 持続可能で魅力あるまちづくり

(4) 健康で安全安心な生活のために

(5) 世界と平和に貢献するナガサキへ

(6) 新しい時代の市役所を創造

の6つの柱を打ち出しました。

それぞれの柱ごとに、今後4年間の取組みの方向性を説明いたします。

(1)交流拡大と産業振興で、力強い経済の再生

経済の再生は長崎市において待ったなしの課題であると認識しております。経済が活性化すれば、市民の皆様の所得が向上し、豊かな暮らしが実現するものと期待できます。

また、魅力的な雇用の場の創出により、人口減少に歯止めをかけるとともに、税収の増加による子ども・子育て、教育、医療、福祉などの施策の充実にもつながります。

このため、「経済再生プロジェクト」において、出島メッセ長崎や西九州新幹線、長崎駅周辺の再開発や長崎スタジアムシティなどをはじめとする「新たなまちの基盤」を活かしながら、「交流拡大」、「地場産業支援」、「新たな産業の創出」の3つに力を入れて取り組みます。

また、2020年に始まった新型コロナウイルス感染症の流行により、3年余りの間、私たちは経済の停滞にさらされてきました。

本年5月8日、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけは、2類相当から季節性インフルエンザと同等の5類へと移行し、ポストコロナへの大きな一歩を進めることとなりました。

これまでの度重なる行動制限や自粛要請などにより、人同士が接点を持つ対面サービスを中心に、前例のない規模で需要が縮小していましたが、この流れが今、大きく転換しています。

これは長崎市にとっては非常に大きな追い風です。

経済再生のうち、特に即効性が高い分野である交流拡大については、この機を逃さず、訪問者数を増やすという量の面の取組みにとどまらず、旅行消費額や満足度など質を高めることで経済活性化につなげていきます。

特に、本年5月、出島メッセ長崎においてG7長崎保健大臣会合を成功裏に開催した実績を武器にして、都市のブランド力向上や高い旅行消費額が期待できる国際会議等の誘致を積極的に推進し、国際MICE都市として更なる飛躍を目指してまいります。

(2)少子化対策で、子育てしやすいまちに

全国的な少子高齢化により人口減少に歯止めがかからない中、令和5年4月1日、国において「こども家庭庁」が創設されました。

こども家庭庁では「こどもまんなか社会の実現」を最重要コンセプトとして掲げ、ライフステージを通じた子育てに係る経済的支援の強化、共働き・共育ての推進など「次元の異なる少子化対策」の実現に向けた取組みをスタートしています。

長崎市においては、平成17年以降、年間約3,000人の出生数で推移していましたが、令和元年からは特に出生数の減少が拡大し、令和4年の実績では年間2,500人を下回るなど、少子化対策は喫緊の課題です。

このため、「少子化対策プロジェクト」において、第二子以降の保育料無償化や小中学校の給食費無償化をはじめとする子育て世帯の経済的負担軽減策や、場所や時間の切れ目のない子育て支援、課題を抱えるこども等への支援などを強力に推進します。

その際、保育料無償化や小中学校の給食費無償化は本来であれば自治体間でバラつきがあることは望ましくないため、県や他の自治体とも連携しながら、国の制度として実施していくことを求めてまいります。

また、子育て施策の推進の一環として、こども家庭庁の「こどもまんなか宣言」の趣旨に賛同し、長崎市長として「こどもまんなか応援サポーター」を宣言したうえで、長崎の子どもたちの幸せと明るい未来の実現のための環境づくりに向けて全力で取り組んでまいります。

(3)持続可能で魅力あるまちづくり

持続可能で魅力あるまちづくりを進めていくためには、陸の玄関口である長崎駅周辺や海の玄関口である松が枝国際観光船埠頭から、まちなか・市周辺部を含め、市全域への回遊をいかに促すかが重要となります。

このため、都心部において、再開発が進展する長崎駅周辺と、まちなかをはじめとする各エリアとの間の回遊をどのように促すか、それとともに、ネットワーク型コンパクトシティ長崎の実現に向け、都心部と周辺部をつなぐネットワークをどのように維持・強化するのかの具体的な方向性を示す、まちづくりの「グランドデザイン」づくりに着手します。

長崎のまちは港を囲むように、すり鉢状の斜面地が広がっており、既成市街地の約7割が斜面に立地するなど、平地が非常に限られております。

このような地理的要因から、平地部に都市機能が集中しており、天然のコンパクトシティと称されることもありますが、一方では多くの幹線道路が中心部を通過せざるを得ないなどの欠点もあります。

物流や人流のために必要不可欠な幹線道路の整備はまだまだ十分とは言えないため、国や県と連携し、幹線道路の整備を促進します。

長崎南北幹線道路の整備に伴う松山町の平和公園スポーツ施設再配置については、中心部から北部にかけての渋滞解消のため、長崎南北幹線道路を早期に完成してほしいとの声と、市営陸上競技場を現在の場所に存続してほしいという声の両方があることを認識しております。

これまでも様々な検討を行ってきましたが、市民の皆様にご理解いただきながら2つの機能を両立させるためには、より市民の皆様に開かれた場での議論が必要不可欠であると考えております。

このため、新たにスポーツ施設の再配置に関する再検討部会を立ち上げ、幅広い関係者に参画いただくとともに、議論の透明性を高めながら再検討を行います。

また、現在、市庁舎本館跡地に整備することとしている「新たな文化施設」については、グランドデザインの議論や様々な関係者のご意見、環境の変化等、多面的な視点を踏まえ再度整理する必要があるため、6月補正予算において設計等に必要な経費を計上することは見送ることといたします。

(4)健康で安全安心な生活のために

長崎市においては、65歳以上人口が全国よりも約15年早い2025年にピークを迎える予測となっております。高齢者をはじめとする市民の皆様が元気で健やかに暮らし続けられることが重要です。

また、長崎市は、日本における西洋医学伝来の地であるとともに、長崎大学高度感染症研究センターや熱帯医学研究所を有しており、世界の医療・公衆衛生分野の発展に貢献することが期待されています。

産学官連携のもと、健康長寿のまちづくりを進めるとともに、持続可能な医療・介護サービスの提供、感染症等に強いまちづくりを進めます。

また、近年、わが国では自然災害の激甚化・頻発化の傾向が顕著になっています。

長崎市は、平地部の多くが埋立地であるとともに、多くの斜面市街地を有しており、台風や集中豪雨などの風水害による河川の氾濫、市街地の冠水、斜面の崩壊等に際して被害を受けやすい地理的特性を持っています。

誰もが災害の被害を受けることなく、安全・安心に暮らしていけるよう、日ごろから国・県の行政機関をはじめ自衛隊、警察、医療機関、電気やガス、その他民間事業者等の関係機関との連携体制をしっかり整えるとともに、公助のみならず、自助・共助の意識を醸成することで市民の皆様や地域の防災力向上を促進し、防災体制の充実を図ってまいります。

(5)世界と平和に貢献するナガサキへ

昨今、ロシアのウクライナ侵攻によって核兵器を巡る国際情勢が一層厳しさを増しています。

被爆地長崎は、平和を求めるすべての人々と連帯し、「核兵器廃絶」と「世界恒久平和」の実現に力を尽くしつづける使命があります。

私自身、被爆2世として、核兵器のない世界の実現に強い思いがあります。核軍縮に向けた具体的な道筋が示されるよう、8月9日の長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典における平和宣言をはじめ、核不拡散条約(NPT)や核兵器禁止条約に関する国際会議などの場において、被爆地長崎の平和への思いをしっかりと訴えます。

また、核兵器禁止条約の署名・批准や締約国会議へのオブザーバー参加、これは戦争被爆国日本として、ぜひ早急に行うべきものです。これまでと同様に強く政府に対して求めていきます。

(6)新しい時代の市役所を創造

今の時代を表す言葉として、「変化」「不確実」「複雑」「曖昧」の頭文字をとった「VUCAな時代」という表現が使われます。

これは、感染症などの疾病や豪雨、台風、地震等の災害、科学技術の急速な進化などにより、社会やビジネスにとって、先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態を言い表すものです。

このような時代においては、あっという間に従来の常識や、これまでのやり方が通用しなくなっていきます。

将来にわたり持続可能な行政サービスを提供していくためには、状況に応じて常に最適に対応していくことが求められ、事業に取り組む発想や行動様式を根本から転換していく必要があります。

このため、「新市役所創造プロジェクト」において、デジタル技術を活用したDXや、ゼロカーボンシティ長崎の実現を目指すGXの推進、SDGsへの対応、新しい働き方を通じた市役所のしごと改革による生産性の向上や行政サービスの向上を図っていきます。

また、市民目線で、市民の、市民による、市民のための市政を推進するため、私が市内各地を訪れ、市民の皆様との双方向・対面型の意見交換「シンナガサキみーてぃんぐ」を実施するとともに、SNS等を活用した積極的な情報発信などを行ってまいります。

5 おわりに

以上、4年間の市政運営をスタートするにあたり、私の所信の一端を述べさせていただきました。

これからの4年間、「新ナガサキビジョン」を実現するため、また、新しい価値を常に創っていくため、既成の枠にとらわれずにゼロベース思考で取組みを進めていきます。

今を生きる私たちの世代だけでなく、将来の世代にわたって、市民の皆様が持続可能な幸福を享受できるような長崎市を、市民の皆様とともに築いてまいります。

そのためには、大胆な転換が必要です。次の世代への責任を果たし、世界に誇れる長崎の未来を切り拓いていくため、市民の皆様並びに議員各位の大いなるご理解とご協力を賜りますよう、心からお願い申し上げまして、私の施政方針といたします。

お問い合わせ先

企画財政部 都市経営室 

電話番号:095-829-1111

ファックス番号:095-829-1112

住所:〒850-8685 長崎市魚の町4-1(8階)

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