26回 田中耕太郎さん

田中耕太郎さんは、長崎県を代表する競泳選手(自由形・短距離)。三菱重工株式会社長崎造船所に勤務しながら、2009年の新潟国体、2011年の山口国体への出場を果たした。今回は100分の1秒を争う世界でタイムを競い、夢を追いかける22歳のホープを紹介する。

水泳を始めたきっかけと、その魅力について教えてください。

田中さん 「水泳を始めたのは4、5歳でしょうか。周りの子たちがやっていたというのありますし、当時は気管支炎を患っており身体が弱かったので、親が水泳をさせてみようと思ったこともあったようですね。水泳は「タイム」という明確な基準があるスポーツです。だから成果が分かりやすいのは魅力のひとつ。しかし、僕はそれよりもいろんな人と関わりを持つことができるのが水泳の楽しさだと思います。」

水泳をやめようと思ったことはありますか?

田中さん 「何回もありますよ(笑)。でも、僕には水泳のない生活が想像できませんでした。高校を卒業し、社会人になったときも、会社に水泳部がなかったので、環境的にやめなきゃいけないのかなと思ったこともありましたが、ちょうどその頃、北京オリンピックの選考会(日本選手権)の様子をテレビで見て、「ここまで行ってみたいな」と思ったんです。行けるかどうか分かりませんが、やれるだけやってみようと決心しました。」


社会人になってからも、記録が伸びたようですね。

田中さん
「そうですね。記録は社会人になっても伸び続けました。それは中学、高校でベースとなる練習がしっかりでき、その上で社会人になってからも自分に合うトレーニングができたからだと思います。また、高校までほとんどノーマークの選手だった僕が、社会人になってから県内の多くの先生方に声をかけていただくようになったのも大きいですね。特に県の上位に食い込めるようになってからは、いろんなコーチや先輩にアドバイスをいただくようになりました。」

国体に出場した感想を聞かせてください。

田中さん 「高校生の頃は九州大会に出場するのが精一杯で、初めて全国大会の切符を手にしたのは2009年の新潟国体でした。そのとき僕は19歳で社会人2年目。その後、2011年の山口国体にも出場しましたが、どちらの大会も成績は残せませんでした。テレビでしか見たことがなかった大きな舞台に萎縮したというか、雰囲気にのまれたという面はありました。まだメンタルの部分で足りないものがあったのだと思っています。」

水泳を続ける上で一番大事にしていることは何ですか?

田中さん 「「結果が出るまでやり続ける」ということです。それから「人との関わりを大事にする」ということ。一人でトレーニングをやっても、なかなか自分の泳ぎを客観的に見ることはできませんので、先生や先輩、後輩に泳ぎを見てもらうことがあります。仕事でも同じですが、一人で全てができるわけではありません。人との関わりを大事にすることで、いい方向へ進んでいくのだと思います。」

今の目標を教えてください。

田中さん 「当面の目標は2014年に開催される長崎国体で入賞することです。国体で8位以内に入賞すると、県に得点が入ります。自分がここまで水泳を続けてこられたのもご支援してくださっている方々のおかげです。だから、県のためにも1点でも多く得点を稼ぎたいですね。それが一番の恩返しだと思っています。」


どんな選手を目指していますか?

田中さん 「記録を伸ばすのはもちろんですが、自分が関わっている人に自慢してもらえるような選手になりたいですね。また、長崎県全体がレベルアップできるように引っ張っていけたらなと思っています。「自由形の短距離なら、あの人に聞けばなんとかなる」。そう思われるようになりたいですね。それはただ早く泳げるだけではなく、トレーニングや栄養やメンタルなど、様々な角度からアドバイスできるような、長崎における短距離のスペシャリストになれたらと思います。先日、長崎市の企画で中学生に水泳を教える機会があったのですが、自分の技術を言葉に出して教えるのは本当に難しい。でも、それが自分のレベルアップや勉強にもなります。」






長崎市の企画で中学生に
水泳指導をする田中さん。

水泳を通して学んだことを教えてください。

田中さん 「先ほども言いましたが、人とのつながりを大事にするということです。いろんな場面で多くの方に支えていただきましたが、先輩や同期、後輩、先生方…そういう方々がいて、今の自分がいると思っています。国体の出場選手に選ばれるということは、誰よりも僕自身が想像していないことでした。だから、長崎の水泳界に対して恩返しがしたいという気持ちがあります。また、会社の理解があって初めて仕事と水泳の両立ができていると思っていますので、ここまで応援してくれた会社に対しても、これから貢献できるような人間になりたいですね。」


(最後に)
インタビュー中、幾度となく出てきた「人とのつながり」というキーワード。田中さんの穏やかな笑顔に、水泳で培った一番大きなものが表れていた。多い日は1日1万メートル以上も泳ぐという田中さん。「今日も6時から練習です」と微笑む姿を見ていたら、2年後の長崎国体がますます楽しみになった。


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