端午の季節の和菓子といえば、「ちまき」や「かしわ餅」をイメージする人が多いかもしれませんが、長崎では、端午の節句の祝菓子として、鯉をかたどった生菓子、「鯉菓子」が愛用されています。初節句のお返しに限らず、男の子の出産祝いのお返しとして、「鯉菓子」を贈ることもあります。
端午の節句には、男の子のいる家では鯉のぼりを揚げてお祝いしますが、この「鯉菓子」にも、滝を登る鯉の勢いに象徴されるように、強くたくましい子供の成長と立身出世を願う気持ちが込められています。


<鯉菓子 写真協力/岩永梅寿軒>

「鯉菓子」「鯉生菓子」ともいわれ、子供の頃、これをはじめて和菓子屋さんの店頭で見たときは、なんで和菓子屋さんに生の魚がいるのだろう?と思ったほど、よくできています。
お店によって違いますが、外側が練り切りや煎り餅で、中に黒あんや白あんが入ったものが多いようです。甘さは控えめ。鯉の体長は、25〜35cmくらいで、和菓子としては大きなものです。彩色もお店によって異なりますが、黒い「真鯉(まごい)」、赤い「緋鯉(ひごい)」の一対で一箱として売られています。
「鯉菓子」は、一つ一つ手造り。普段にいただくお菓子ではないので、予約注文する必要があります。「鯉菓子」を店頭で見ることができるのは、注文受付期間にサンプルとして並べられている、節句前の数週間だけです。

他にも、端午の節句をお祝いする長崎らしいお菓子としては、「鯉菓子」のカステラバージョン、あるいは「桃カステラ」の鯉バージョンともいうべき、「鯉カステラ」があります。
また、長崎ならではのかまぼこ、通称“かんぼこ”で、鯉の姿をあしらった「鯉かまぼこ」も端午の節句の縁起物のひとつです。
端午の節句は、長崎ならではのいろんな“鯉”にお目にかかれる時季でもあるというわけです。



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