「ナガジン」ミュージアム探検隊

～常設～
3F 大道あや展
2F ヴィクターとクリスタベル－そっと恋して

開館時間 10時～17時30分（入館は午後17時まで）
休館月曜日（祝日の場合は翌日休館）

会場祈りの丘　絵本美術館
南山手町2-10 TEL095(828)0716

入館料　一般・大学　300円
　　　　小中高生　 200円

●JR長崎駅からのアクセス
市電/長崎駅前から正覚寺下行きに乗車し、築町電停で反対側線路へ渡り
　　石橋行きに乗り換える。その際、料金を支払い「乗り換え券」を貰う。
　　大浦天主堂下で下車、徒歩５分。
バス/バス停長崎駅前東口から田上、大平橋行きに乗車し、大浦天主堂下で下車、
　　徒歩５分。
車/長崎駅前から約8分。

大人もカップルも胸踊る！
絵本の館、２つの常設展

　大浦天主堂、グラバー園がある南山手居留地跡の一角に九州初の絵本美術館がオープンして約２年半。
年に数回企画展を開催しながら、着実に長崎の新しい観光名所として魅力を発信しているのがこのミュージアム。
建物は英国の古煉瓦などを使った明治初期の洋館風。
周囲の景観にとけこんだ外観からして大人の中の童心？をグリグリッとくすぐってくれるのだ。
館内は1Fが入館無料の絵本販売コーナー、2Fは企画展と常設展、3Fが常設展とオススメの絵本約450冊とソファを設置した図書コーナーという構成。
この中で、2つの話題の常設展があるとの噂を耳にした。
一つは全国から訪れる観光客に絶大なる人気の『大道あや展』、もう一つは、ふいに訪れたカップル達が、原作を購入するなど、いたく感動して帰るという『ヴィクターとクリスタベルーそっと恋して』。

さて、その2つの常設展にはどんな世界が広がっているのか……探検隊いざ潜入！

日々の生活の音が聞こえてくる
大道あやさんの絵の世界

　3F、大道あや常設展。
まず、入り口に掛けられたプロフィールに目を通すとそこには驚愕の経歴が！！！
「26年間美容院の経営を続ける」「54才で花火師となる」「60才で絵を描きはじめる」。
人物的にも興味を持たずにいられない文字が踊っている！
現在90才を越える大道さんの波乱に満ちた半生が記されたその横には、大道さんのお住まい兼アトリエである埼玉県越生町の様子が書かれている。
彼女のたくさんの動物や、草花に囲まれた暮らしぶりはその文章にも見て取れるが、彼女が描いた作品いっぱいに表現されているのが最大の特徴。
苛烈な人生を歩みながら優しい絵を描く女性・大道あやの絵の世界にグングン引き込まれていくのだった！

おすすめチェックポイント

1. 安心感を憶える身近な素材と素朴な筆致

代表作『びわの木の下』は220×175センチの超大きな絵。
びわの木の下にある植物や、そこに集まってきた動物が描かれているのだが、一見平面的な印象を受ける。
しかし、不思議とその巨大な絵の前に立つと、にわとりなどの身の回りにいる動物、花々など、生き物の生き生きとした様、表情に心打たれるのだ。
生きとし生けるもののをそのままに受け止めて、生きている喜び、実感が伝わって来るのだ。

『めしどき』1983年（昭和58）74才　
　190×110センチ

2. 擬人化された動植物たちの表情を捉えよ！

魚やタコの拍手、鯛が木を登る。
カエルが服を来て郵便配達……（『あたごの浦』『モモルのびっくりばこ』より）。
たとえそれが絵本の中の話だとしても、その光景を想像するだけでウキウキしてくる。
素朴な大道あやの世界に強く惹きつけられるのは、彼女が生活空間のいつも目にしている光景を絵にしている自然さからかもしれない。
どこかすっとんきょうな眼差しが愛らしくて、いろんな動物が擬人化された仕種を前に自然と口元が緩む。

ポストカードより
絵本『モモルのびっくりばこ』より 1978年（昭和53）69才

ワニのキャラが大人気�
恋人たちも羨むラブストーリー

　2F、小フロアに常設展開されているのが『ヴィクターとクリスタベルーそっと恋して』（1997年出版）の原画展。
ニューヨークタイムズ選定の年間優秀絵本絵画賞の受賞経験を持つ作者、画家ペトラ・マザーズ。
彼女の作品が日本に紹介されたのは、この『ヴィクターとクリスタベルーそっと恋して』が最初の作品だとか。
～～魔法をかけられ絵の中で眠り続けるクルスタベルに恋をした美術館の守衛ヴィクター。
彼の想いの深さが魔法を解き……～～という物語を、今回は一枚一枚の原画と共に読みすすめて行くことができる。
配色の美しさと、親近感が湧くワニのキャラクターの、スイートなラブストーリーの世界を覗いてみない？
可能ならば、ぜひカップルで。

おすすめチェックポイント

1. ストーリー通りに読みすすめよう

この本に出てくる「病の床にある　いとこのクリスタベル」は、イタリアのヴェネチア、アカデミア美術館にあるヴィットーレ・カルパッチョの絵画『聖アルスエアの夢』にひらめきを得て書かれたものなんだとか。
絵の魅力はモチロンなのだけど、まずはヴィクターの片思いからはじまる、ストーリー通りに並ぶ原画を順追って読んでみよう。

2. 絵の細部に注目！！

細かい！と声をあげたくなるような小道具が描かれていて、『あぁ、絵本ってこんなものだったなぁ』と感心させられる。
『あっ！ここにミカン！』『アッ！ここにワニがいる。しかも手に鳥乗せてエ～。』などと、絵本とは何と子どもの興味を引き付けるように夢があるのか。
大人になった皆さんも、その夢を時間をかけて取戻すのだ。
そんなわけで、絵の細部にまで目を配り何度でも楽しめる絵本の醍醐味を再確認してみましょう。

　素朴な味わいを持つ90才を越える画家・大道あや展と、ポップな色使いでほのぼのラブストーリーを展開する『ヴィクターとクリスタベル－そっと恋して』。
タイプは違っても、心を解き放ってくれる、不思議な力と大きなあたたかさを持つ2つの常設展。
できれば、時間がたっぷりある時に訪れて、絵の世界にドップリひたってほしいような気がします。

●企画展　『当館「太田大八」コレクションから～
　　　　　　　　　　　太田大八　日本の抒情展1』展示概要
●会期　　～4月21日（日）

　前企画の線描画展に引き続き、今回は絵本美術館収蔵の太田大八コレクションからの企画展。
今回は『日本の抒情展1』と題し、『馬ぬすびと』『つるのおんがえし』といった日本の古くからの物語を描いた作品の原画、計17点の展示となる。
幼少時代、長崎県で過ごし、広島の近郊で原爆を体験したという太田大八氏。
戦後まもなくから絵本や子どもの本の挿絵を描き、以後、半世紀近くにわたって子どものための創作を続けている。
しかし、対象が子どもだからといって甘さや妥協を許さない芸術性の高い作品が多いのも氏の魅力。
線描から日本画を思わせる繊細な水彩、油彩に至るまで作品によって多彩な画風を用いている氏のどんな作品に出会えるのか？
誰もがよく知っているあの昔話だけに、見ごたえのある内容となっている。

『馬ぬすびと』より

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