会期 〜平成14年3月31日(日)

開館時間 9時〜17時(入館は午後4時30分)
休館 月曜日・
12/29〜1/3
(12月24日、1月14日、2月11日は開館)

会場 長崎市野口彌太郎記念美術館
長崎市大浦町1-37 TEL095(824)8209

入館料 一 般 100円
     小中生  50円


●JR長崎駅からのアクセス
市電/長崎駅前から正覚寺下行きに乗車し、
   築町電停で反対側線路へ渡り石橋行きに乗り換える。
   その際、乗り換え券を貰い大浦海岸通電停で下車、徒歩2分。
バス/バス停長崎駅前南口から長崎新地ターミナル行きに乗車し、
   長崎新地ターミナルで下車、徒歩5分。
   バス停長崎駅前から長崎市コミュニティバスらんらん(循環バス)に乗車し、
   長崎新地ターミナルで下車、徒歩5分。
車/長崎駅前から約5分。



1500点を越える作品を描いた
画家・野口彌太郎ってどんな人?

 明治32年(1899)東京・本郷に生まれた野口彌太郎画伯は、30歳の初渡欧を皮切りに西欧近代美術を超克した独自の絵画世界を形成し、飛躍的に活躍。 戦後洋画壇の代表作家だ。

父の郷里が諫早であることから、当時小野村立小野尋常小学校第六学年の時に転入学している。
戦後、両親が諫早市に隠棲するようになり、この頃から殆ど毎年のように長崎に赴いている。
しかも、野口画伯は長崎の風景、長崎人の人情に魅せられていたらしく、戦後は何度となく長崎を訪れ、数多くの長崎を描いた作品を残しているのだ。
全制作作品は1500点と言われているが、そのうち500点は空襲で焼けたりして残っていないとか(ちなみに長崎を描いた作品は約50点)。
彼の絵画を熟成させたといわれる故郷・長崎に記念美術館ができたのは誇らしいことだとつくづく実感。

さて、野口彌太郎画伯の魅力はどんなところにあるのか……探検隊いざ潜入!



触れあった人々の呼吸が聞こえてきそうな
全国各地を描いた作品約50点が勢揃い


 旧長崎英国領事館の建物を生かした野口彌太郎記念美術館には、日本の近代洋画史に輝かしい足跡を残した野口彌太郎画伯の作品300点以上を年間テーマのもと、前後期に分けた企画展(約50点を展示)が行われている。

現在、行われている企画展は『21世紀から見た野口芸術・後期 野口彌太郎日本の旅』。
制作の旅で日本各地に訪れ絵筆をとった野口画伯が題材にしたものはどんな風景?
長崎はどんなふうに描かれているの?
日本の風景をテーマとしているだけに次々に興味がわいてくる。

一見、無造作で豪放に描かれているかのように感じるが、その大胆な線で対象の性格を適確に、とらえているのが野口画伯の画風。
大胆な線描、生き生きとしたリズムを感じさせる各地の風景には、ズシンと心に響くものがあった!



おすすめチェックポイントベスト5

1. こだわりのない色使い

どこにも自然を写したり、模したりしたところがないが、これは飽くまで自然であり、風景である。
自然のもつ色と同じ、あるいは似た色は、どこにも使われずに、しかも日本の自然の色であり、世界中で日本の那智の滝以外にはない自然風景が表現されている。


『那智の滝』(和歌山県)
1972年(昭和47)油彩30号


2. 人間の生活が滲み出た作風

山、川、海。全国各地の自然風景の中に、そこに住み生活する人々のようすが自然な形で表現されているところにも目を向けたい。
米軍基地のある佐世保・国際通りでは米兵と会話する女性(子ども?)、北海道の港ではタオルはちまき姿の漁師の姿などが描かれていてリアル!


『港』(北海道)
1951年(昭和26)油彩


3. 野口画伯が描く長崎風景

戦後いち早く来崎し、異国情緒あふれる長崎の風景を愛し、率直で親しみやすい心豊かな長崎人を愛した彼は、毎日のようにスケッチ旅行に出掛け50点余りの名作を残している。
彼が好んで描いたのは、古い木造洋館、海辺や港の風物、山腹および家、独特の山の姿、船が集まっているところ、教会など山の上から見下ろした風景、町中の旅館の窓から見た街中の風景、夕暮れ時、人々が通り、橋の上を急ぎ足で行くような光景だったとか。
数多くの長崎を描いた作品の中から今回は8点がチョイスされ、野口画伯の眼に映った往時の長崎が楽しめる。


『オランダ坂』(長崎県)
1954年(昭和28)パステル


4. インスパイアされた作品の面白さ

今回第4室に展示された『踊り』と題された作品は、沖縄博での舞踊風景を描いたものらしい。
しかし関係者が作品について調査をしたところ、このような光景はありえないとの報告を受けたとか。
調べを続けると実はその舞台上で行われた舞踊を織りまぜたものだったとか。
彼の眼を通し、独自にインスパイアされて生まれた野口画伯らしいエピソードを持つ作品だ。


『踊り』(沖縄県)
1974年(昭和48)水彩


5. イオニア様式の建物にも注目!

国指定重要文化財である旧長崎英国領事館の建造物を利用した美術館ならではの利用法も魅力のひとつ。
まず、建物と絵画の調和のとれた融合がすばらしい。
建物はギリシャ美術上重要なイオニア様式で、婉曲、優麗、女性的という特徴をもっているらしい。
細く高い柱、細部にわたる装飾が軽快に施されたこの美術館の1階には美術書を集めた広い図書スペースもある。また建物の中庭には花々を見渡せるベンチがあり、ここで一息するのもおすすめ。




 全国各地を旅し、その地方地方で野口彌太郎画伯の眼にとまった景色、心に入り込んできた光景が彼特有の画風で表現された作品を集めた今回の企画展示。
どこかで眼にした風景が描かれているかもしれないし、行った所でもないのに何故か懐かしさを感じてしまうという作品に出会うこともあるかもしれない。
その豊かな感性とヒューマニズムにとんだ野口彌太郎の世界へ是非、足を踏み入れてみよう。



●21世紀から見た野口芸術『後期 野口彌太郎日本の旅』展示概要


 独立展、国際形象展等を中心にヨーロッパで学んだフォービスム的体質と洗練された色彩感覚をもって、戦後に日本洋画壇の代表作家として活躍した野口彌太郎。
彼は戦前戦後4次にわたり、フランスを初めとしてイギリス、ドイツ、スペイン、ギリシャ、イタリアほか欧州各地を訪れる一方、バリ島といった欧州文化圏の外部も取材し、西欧近代美術を超克した独自の絵画世界を形成した。
また、日本国内においても制作の旅は北海道から沖縄まで全国各地に及んでいる。

そんな中、平成13年度は『21世紀から見た野口芸術』というテーマのもと、野口彌太郎の制作の足跡を訪ねながら野口芸術のすばらしさを見直すために、後期展示では『野口彌太郎日本の旅』を企画。北海道、和歌山、沖縄など日本各地を題材に、野口彌太郎の眼と感性を通して制作された野口芸術のすばらしさが鑑賞できる内容となっている。


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