(布団から、頭を抱えて起きあがる)
……あいたたた。
やっぱし昨日、飲みすぎたばい。
サークルの寄りかたに、参加したあと
「ランタンば見に行こうで〜」て、みんな言うけん
湊公園まで行ったは、よかばってん
みんな、飲みすけさんやっけん
いつんまにか銅座に行って、飲みかたになって
なしてあげんなったか、知らんばってん
えいくさりどんが、みんなほたぶれたとよ。
《訳》
……あいたたた。
やっぱり昨日、飲みすぎたわ。
サークルのミーティングに、参加したあと
「ランタンを見に行こうよ〜」って、みんな言うから
湊公園まで行ったは、いいけれども
みんな、飲んべえなもんだから
いつのまにか銅座に行って、宴会になって
どうしてああなったか、わからないけれども
酔っぱらいどもが、みんな大騒ぎしたのよ。
……はあぁ、いつでん飲んだあとで
たいがいぶりにしとけばよかったって
思うばってん、後ん祭りやね。
そういえば、サークル長さんはどげんしたやろうか
えろう酔っぱげて、ぶたまんば、よけしこ
少なくとも50個ぐらいは、買いよったごたっばってん
あいばぜんぶお土産ちゅうて、家に持って帰ったとやろか。
……ああ、わたしも、そんあとどげんしたやろうか。
記憶ののうなっとる。いっちょん憶えとらん。
《訳》
……はあぁ、いつでも飲んだあとで
ほどほどにしとけばよかったって
思うけれども、後の祭りよね。
そういえば、サークル長さんはどうしたかしら
えらく酔っぱらって、肉まんを、たくさん
少なくとも50個ぐらいは、買っていたみたいだけれど
あれをぜんぶお土産として、家に持って帰ったのかしら。
……ああ、わたしも、そのあとどうしたのかしら。
記憶がなくなってる。ぜんぜん憶えていないわ。
……ていうか、なんか
なんか部屋んなかの、えろうぶたまん臭かとばってん。
とくに臭かとの、いまわたしのおる、こん布団にきばってん。
ひょっとして……
(おそるおそる布団をはぐってみる)
あいや〜!
ぶたまんの……ぶたまんの……
こがんところで、ふんしゃがれて〜!
《訳》
……というか、なんだか
なんだか部屋のなかが、とても肉まん臭いんだけど。
とくに臭いのが、いまわたしがいる、この布団のあたりなんだけど。
ひょっとして……
(おそるおそる布団をめくってみる)
ああ〜!
肉まんが……肉まんが……
こんなところで、ぺっちゃんこになって〜!
<ワンポイント>
【寄りかた】
集会。
例/「今夜は、公民館で寄りかたのあっけん、父ちゃんは行ったとばい」
(「今夜は、公民館で集会があるから、お父さんは行ったのよ」
【飲みすけさん】
飲んべえ。大酒飲み。
【銅座】
長崎の歓楽街の代名詞として使われる。
名前の由来は、江戸時代に鋳造所が設けられたことから。
【飲みかた】
飲み会、宴会。
例/「今夜は、銅座で飲みかたのあっけん、父ちゃんは行ったとばい」
(「今夜は、銅座で飲み会があるから、お父さんは行ったのよ」
【ほたぶれる】
あばれる。さわぐ。「ほたえる」と言うこともある。
【えいくさり】
酔っぱらい。
【ぶたまん】
銅座で飲んだお父さんたちの、定番のおみやげが「ぶたまん」。
なぜ「肉まん」ではなく「ぶたまん」というのか、というと
一説によれば、関西地方では「肉」は、牛肉のことを指すらしい。
なので、豚肉の中華まんを「ぶたまん」と、呼ぶのだそうだ。
おそらく長崎も、その流れからきているのでありましょう。
【はぐる】
めくる。はがす。
そもそも、ついさっきまでこれが方言と知らず
堂々と《訳》の部分に「はぐって」と書こうとしていたことは
これ内緒ですよ(><;)。
【ふんしゃぐ】
踏みつぶす。
例/「うわあ〜ん、兄ちゃんが、おいのおもちゃばふんしゃいだ〜!」
(「うわあ〜ん、兄ちゃんが、ぼくのおもちゃを踏みつぶした〜!」
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