(「ナガジンの制作オフィスに著者から電話)
すいません、すいません。あのですね。
「ジゲモンマスター」ん原稿の、ちいと遅れますけん。
じ…じつはですね、パソコンのうっくえてしもうたとです。
こん夏のえろう暑かこてって、こないだ言いよったでしょう?
たぶん、そのせいて思うとです。
いきなし動かんごとなって、おうじょうしよっとですよ。
仕事んデータん入っとったけん、もうがっぱいして。
いや、いちおう‘セーフモード’ちゅうとで
データはひらいゆるけん、心配せんでください。
本ば見たら‘リカバリ’ちゅうとばすれば
パソコンはようなるて、書いてありましたけん
そん‘リカバリ’ば、こいからしてみますけん!
《訳》
すみません、すみません。あのですね。
「ジゲモンマスター」の原稿が、すこし遅れますので。
じ…じつはですね、パソコンが壊れてしまったんです。
この夏のえらく暑いことって、このまえ言ってたでしょう?
たぶん、そのせいだと思うんです。
いきなり動かないようになって、とても困ってるんですよ。
仕事のデータが入ってたもんだから、もうがっくりして。
いや、いちおう‘セーフモード’というもので
データは拾うことができますから、心配しないでください。
本を見たら‘リカバリ’というものをすれば
パソコンはよくなると、書いてありましたから
その‘リカバリ’を、これからしてみますから!
(数日後、ふたたび著者より電話)
すいません、すいません。あのですね。
「ジゲモンマスター」ん原稿、まちっと待っとってください。
いやじつはですね‘リカバリ’ちゅうとばしてみたとです。
パソコン自体は、調子んようなって
そいはよかったとですばってん
なしてかしらん、今度はネットにつながらんごとなって
そいでまた、おうじょうしよっとですよ。
ネットんサービスに、電話して聞いて調べてみたら
「ネットにつなぐためのデバイス情報の、のうなっとるごた」って。
「そがんことは、えっとなかとばってん」って。
と…とにかく、近日中にどげんかしますけん。
いざとなったら、データばUSBメモリに入れて
そちらのオフィスに、は…走って持って来ますけん!
《訳》
すみません、すみません。あのですね。
「ジゲモンマスター」の原稿、もうちょっと待っててください。
いやじつはですね‘リカバリ’というのをしてみたんです。
パソコン自体は、調子がよくなって
それはよかったんですけど
どうしてかしら、今度はネットにつながらなくなって
それでまた、とても困ってるんですよ。
ネットのサービスに、電話して聞いて調べてみたら
「ネットにつなぐためのデバイス情報が、なくなっているみたい」って。
「そういうことは、滅多にないんだけど」って。
と…とにかく、近日中にどうにかしますから。
いざとなったら、データをUSBメモリに入れて
そちらのオフィスに、は…走って持って行きますから!
<ワンポイント>
【〜こて】
〜こと。何かに感嘆した際に、よく発せられる言葉。
例/「あいやー、こんワンちゃんのかわいかこて〜!」
(「あらまあ、このワンちゃんのとてもかわいいこと!」)
【ちゅうと】
というもの。「ていうと」の変化形。
【ひらいゆる】
拾うことができる。拾える。
例/「ごめんけどおうち、そこに落ちた洗濯物ばひらいゆんね?」
(「すまないけどあなた、そこに落ちた洗濯物を拾える?」)
【なして】
なぜ。どうして。
例/「なして、なしてひろうてくれんと?」
(「どうして、どうして拾ってくれないの?」)
【のうなる】
無くなる。
例/「はようせんば、のうなる」(「はやくしないと、なくなる」)
【えっとなか】
滅多にない。
例/「そんかっちょんよかTシャツは、えっとなかとよ」
(「そのかっこいいTシャツは、滅多にないのよ」)
【どげんか】
どうにか。
「どげんとせんといかん」と、宮崎県の元知事さんが発言して
この言葉は、ちょっとしたブームにもなったが
宮崎だけでなく、九州のわりと広い地域で使われているようす。
【(そちらに)来ます】
(そちらに)行きます。
標準語では、自分が主体で「行きます」となるが
長崎弁の場合は、相手が主体となり「来ます」と表現される。
英語での使いかたと同じなので、英会話などする場合
この部分に関してだけは、長崎人は苦労しないらしい。
例/「いそいでそっちに来(く)っけん」(「いそいでそっちに行くから」)
※ちなみにその後、データをUSBメモリに
入れて走って行くことだけは、どうにか避けられました。
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