(電話が鳴る)
はーい、もしもし。あらお母さん、どげんしたと?
うんうん、雨んひどう降いよるねえ。
梅雨やもんねえ。
あらそうね、この前同窓会のみんなと温泉に行ったら
みんなケータイば、持っとったとね。
「いじで便利かとばい」て、言われたとね。
商売ばしよらす人は「しゃっちがこいに出(ず)んもんば」
って、そがん言いなったと。ああ、そうたいね。
こいが家や店ん電話やったら、留守電になんもんねえ。
家族やったら、おもやいで契約でくっとの
「なんとか割引サービス」ちゅうとのあるけん
みんなそいでしよっとて。へー、そんげん言いなったと。
《訳》
はーい、もしもし。あらお母さん、どうしたの?
うんうん、雨がひどく降ってるわねえ。
梅雨だものねえ。
あらそうなの、こないだ同窓会のみんなと温泉に行ったら
みんなケータイを、持っていたのね。
「とても便利なのよ」って、言われたのね。
商売をしている人は「絶対これに出るからなあ」
って、そう言ったの。ああ、そうよね。
これが家や店の電話だったら、留守電になっちゃうものねえ。
家族だったら、共同で契約できる
「なんとか割引サービス」というのがあるから
みんなそれでやっていると。へー、そんなふうに言われたのね。
よかたい。
うちんととおもやいで、買(こ)うてみゅーか?
うちんケータイの契約に、お母さんとば加えるとさ。
ついこないだ、デジタルテレビも買(こ)うたばっかいで
こいでケータイまで使いゆるごとなったら
なんか、どんどんわこなっていくごたるよ。
ばってんよう使いきゆっやろかて、確かにそうねえ。
お母さんは、エアコンのリモコンも、ようとしーえんもんね。
せっかくの新しかテレビも、つけて見て消すだけで
デジタルん良さば、いっちょん活かしとらんし。
エレベーターは、ひとりで乗りきえんし。
銀行のATMも、使いきえんし。
《訳》
いいじゃない。
わたしのと共同で、買ってみようか?
わたしのケータイの契約に、お母さんのを加えるのよ。
ついこの前、デジタルテレビも買ったばかりで
これでケータイまで使えるようになったら
なんか、どんどん若くなっていくみたいよ。
だけどよく使えるかしらって、確かにそうねえ。
お母さんは、エアコンのリモコンも、うまく扱えないものね。
せっかくの新しいテレビも、つけて見て消すだけで
デジタルの良さを、ぜんぜん活かしてないし。
エレベーターは、ひとりで乗れないし。
銀行のATMも、使えないし。
そいけんがこそ
ここで、ケータイば使いきゆっごとなったら
長年の機械オンチ克服たい。
……よっしゃ!
さっそく明日、携帯電話屋さんに行ってみゅーか!
《訳》
だからこそ
ここで、ケータイを使いこなせるようになったら
長年の機械オンチ克服だわよ。
……よっしゃ!
さっそく明日、携帯電話屋さんに行きましょうよ!
<ワンポイント>
【〜よらす】
〜してらっしゃる。〜している最中。
例/「雨のひどかとは、台風の来よらすとてよ」
(「雨がひどいのは、台風が来てるってよ」)
【〜もんば】
〜をするのだから、〜をするのだものの意。
すんもんば、来んもんば、行くもんばなどと使う。
感嘆、不満や非難など、言外のニュアンスをこめることが多い。
例/追いかけてつかまえ「おうちもはよう走るもんば!」
(追いかけてつかまえ「あなたも早く走るんだもの!」)
【おもやい】
「共同でつかう」「共有する」の意味。
例/「1個は食べきえんけん、おもやいしゅうで」
(「1個は食べきれないから、半分こしましょうよ」
【〜てみゅーで】
〜してみようよ。
例/「あいとこいとそいも食べてみゅーで」
(「あれとこれとそれも食べてみましょうよ」)
【わこなって】
若くなって。
例/「あらまあ、おうちわこなって。パーマ屋さんに行ったと?」
(「あらまあ、あなた若くなって。美容室に行ったの?」)
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