……というわけで、今から海に入るばってん
注意事項ば、いっちょ言うとくぞ〜!
ほらそこん2人、何(なん)ばあまいよっとか!
そがんあまいよったら、おいのおめいたことも
いっちょん、聞こえんやろうが!
注意事項ば、ちゃんと聞かんやったら
わいたちゃ、海でぶくるっぞ。いらにかまるっぞ。
《訳》
……というわけで、今から海に入るが
注意事項を、ひとつ言っておくぞ〜!
ほらそこの2人、何を騒いでいるんだ!
そんなに騒いでいたら、おれが大声で言ったことも
ぜんぜん、聞こえないだろう!
注意事項を、ちゃんと聞かないでいたら
お前ら、海でおぼれるぞ。くらげに刺されるぞ。
ああっ、何ばしよっとか!
せっかく立てたパラソルの、うっくえたやっか!
こんおいに、がられたかっか。
せっかく、こんあんちがこいからも
海に連れて来(く)うだいてしよっとに
わいたちゃ、そがん言うことば聞かんやったら
こんまま海にうっちょいて、帰るばい!
ああもう、わいたちゃ、しゃあしか!
泣かんちゃよかやっか〜!
《訳》
ああっ、何をしているんだ!
せっかく立てたパラソルが、壊れちゃったじゃないか!
このおれに、叱られたいのか。
せっかく、この兄ちゃんがこれからも
海に連れて来ようとしているのに
お前ら、そんなに言うことを聞かなかったら
このまま海に残して、帰るぞ!
ああもう、お前ら、面倒くさい!
泣かないでもいいじゃないか〜!
<ワンポイント>
【あまる】
騒ぐ。ふざけて暴れる。
【おめく】
叫ぶ。大声を出す。
【いっちょん】
ぜんぜん。ちっとも。
【〜(せ)んやったら】
〜しないでいたら。
例/「部屋の掃除ばせんやったら、ダニのわいてきたとばい」
(「部屋の掃除をしないでいたら、ダニがわいてきたよ」)
【わいたちゃ(わいたち)】
お前ら。「わいどん」「わんだち」ともいう。
【ぶくれる】
おぼれる。
【いら】
アンドンクラゲ。
刺されると、激痛がはしり腫れたりもするが
著者が子どものころは、刺されても気にせず、平気で泳いでいた。
ある日、東京から来た従兄弟が、刺されて泣き
「そんなに痛いものなのか」と感心したおぼえがある。
【うっくえる】
壊れる。
【がられる】
叱られる。
【あんち】
兄さん。
【〜(す)うだい】
〜をしようと。
【うっちょく】
ほうっておく。残す。置いていく。
【しゃあしか】
わずらわしい。面倒くさい。「せからしか」ともいう。
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