(母親のナレーション)
そがんわけで、うちは
美術品怪盗団「ネ・シャール」ば、抜けることになったと。
「ネ・シャール」は、おに……お姉さまたちだけで続けられて
おとしゃまチャールズ・チャッパラレーん絵ば、ふたりで
着実に、取りもどしていきなったと。
いっぽううちは、おうちとこん子と10年間
3人で、しあわせに暮らしよったとたいね。
ばってん、ある日、夕飯ん買い物ばした帰り道に……。
《訳》
(母親のナレーション)
そんなわけで、わたしは
美術品怪盗団「ネ・シャール」を、抜けることになったの。
「ネ・シャール」は、おに……お姉さまたちだけで続けられて
お父さまチャールズ・チャッパラレーの絵を、ふたりで
着実に、取りもどしていったわ。
いっぽうわたしは、あなたとこの子と10年間
3人で、しあわせに暮らしていたのよね。
でも、ある日、夕飯の買い物をした帰り道に……。
ガメール チャリー、10年ぶりたい。
チャリー はっ! モサール兄さんに、ガメール兄さん!
モサール ……お姉さんばい、チャリー。
チャリー そうやった、ごめんして。お姉さん、どげんしたと。
ガメール 怪盗団「ネ・シャール」ば、とっくに抜けとらすおうちに
今さらこがん話をして、申しわけなかとばってん。
モサール じつは、どこさん行ったかわからんやった
おとしゃま最後の作品「けごゆかカピタン」の見つかったと。
チャリー ええっ!
《訳》
ガメール チャリー、10年ぶりね。
チャリー はっ! モサール兄さんに、ガメール兄さん!
モサール ……お姉さんよ、チャリー。
チャリー そうだったわ、ごめんなさい。お姉さん、どうしたの。
ガメール 怪盗団「ネ・シャール」を、とっくに抜けているあなたに
今さらこんな話をして、申しわけないのだけど。
モサール じつは、どこへ行ったかわからなかった
お父さま最後の作品「けぶかいカピタン」が見つかったの。
チャリー ええっ!
ガメール けごゆか人物画の収集家として、世界的に有名か
K・G・ユーカー伯爵ん、お城んどっかしゃんに
がんじょかセキュリティんもと、保管されとることのわかったと。
モサール チャリー、こいばっかしは、うったちふたりでは
どがんもならんとさ。おねがい、おうちん力ば貸して。
チャリー ばってん、うちにはあん人と息子が……。
ガメール わかっとるばい。ばってん「けごゆかカピタン」さえ、もどれば
おとしゃまん絵がすべて、手元に帰ってきたことになると。
モサール 決しておうちに迷惑はかけんけん。おねがいばい。
チャリー ああ、どんげんしゅう……。
《訳》
ガメール けぶかい人物画の収集家として、世界的に有名な
K・G・ユーカー伯爵の、お城のどこかに
頑丈なセキュリティのもと、保管されていることがわかったの。
モサール チャリー、こればかりは、わたしたちふたりでは
どうにもならないの。おねがい、あなたの力を貸して。
チャリー でも、わたしにはあの人と息子が……。
ガメール わかってるわ。でも「けぶかいカピタン」さえ、もどれば
お父さまの絵がすべて、手元に帰ってきたことになるの。
モサール 決してあなたに迷惑はかけないから。おねがいよ。
チャリー ああ、どうしよう……。
(母親のナレーション)
結局、うちは、おに……お姉さまたちと、K・G・ユーカー城さん
「けごゆかカピタン」ば取りもどしに、行くことに決めたと。
本当んことば言うたら、心配ばかけるて思うて
おうちたちには何も伝えんで、出かけてしもうた。
ばってんそいが、まちがいやったったい……。
《訳》
(母親のナレーション)
結局、わたしは、おに……お姉さまたちと、K・G・ユーカー城へ
「けぶかいカピタン」を取りもどしに、行くことに決めたの。
本当のことを言ったら、心配をかけると思って
あなたたちには何も伝えず、出かけてしまった。
だけどそれが、まちがいだったのね……。
<ワンポイント>
【けごゆか】
毛深い。
例/「あいや〜、あんタレントさんの、えらいけごゆかこと」
(「まあ、あのタレントさんの、えらく毛深いこと」)
【カピタン(甲比丹・甲必丹)】
江戸時代に日本にやってきた、ヨーロッパ船の船長。キャプテン。
もしくは、長崎出島のオランダ商館長。
【どっかしゃん】
どこか。どこかに。どこかしら。
例/「こんコーディネイト、どがん?」「う〜ん、どっかしゃん変なかばい」
(「このコーディネイト、どう?」「う〜ん、どこかしらおかしいわ」)
【どんげんしゅう(どげんしゅう)】
どうしよう。
例/「あっ、あんタレントさんのこっちば向いた、どげんしゅう」
(「あっ、あのタレントさんがこっちを向いた、どうしよう」)
次回へつづくッ! |