(カランカラン、とドアのベルが鳴る)
チャリー いらっしゃいませ。
サンタ ミルクセーキばいっちょくださ……あれっ!
チャリー ああっ、おうちは!
サンタ ここに、勤めとらすとですか?
チャリー うんにゃ、ここはうちんがたでしよる喫茶店ですと。
ご注文はミルクセーキですね、少々お待ちください。
《訳》
(カランカラン、とドアのベルが鳴る)
チャリー いらっしゃいませ。
サンタ ミルクセーキをひとつくださ……あれっ!
チャリー ああっ、あなたは!
サンタ ここに、勤めてらっしゃるんですか?
チャリー いいえ、ここはわたしの家でやっている喫茶店ですの。
ご注文はミルクセーキですね、少々お待ちください。
(母親のナレーション)
以来、そんひとは、何度もうちん店にきなったばい。
そんたびに、トルコライスば注文したり、チャンポンば注文したり
皿うどんば注文したり、カステラと紅茶のセットば注文したり。
そんうちに、いろんな話ばすっごとなって
お店ん外でも会うごとなって
そしていつんまにか、ふたりは、深(ふこ)う愛しあうごとなっとったと……。
ばってんそいば、おに……お姉さまたちに知られてしもうた。
《訳》
(母親のナレーション)
以来、そのひとは、何度もうちの店にいらしたわ。
そのたびに、トルコライスを注文したり、チャンポンを注文したり
皿うどんを注文したり、カステラと紅茶のセットを注文したり。
そのうちに、いろんな話をするようになって
お店の外でも会うようになって
そしていつのまにか、ふたりは、深く愛しあうようになっていたの……。
でもそれを、おに……お姉さまたちに知られてしまった。
ガメール なんちゅうことば、チャリー!
モサール うったちには、父チャールズ・チャッパラレーん絵ば
取りもどすちゅう、大切か仕事のあって
そいの終わるまでは、恋は禁句て、何度も……。
チャリー ごめんなさい、おに……お姉さま。
ばってん彼には、うちん正体は知られてしもうとっと。
彼にも、世間には知られとらん秘密のあって……。
そいけんうったち、わかりあうことのでくっと。
モサール 何ね? 世間には知られとらん秘密て。
チャリー じつは、彼ん正体は、サンタクロースなんです。
兄2人 ええーーーっ!
《訳》
ガメール なんてことを、チャリー!
モサール わたしたちには、父チャールズ・チャッパラレーの絵を
取りもどすという、大切な仕事があって
それが終わるまでは、恋は禁句だと、何度も……。
チャリー ごめんなさい、おに……お姉さま。
でも彼には、わたしの正体は知られてしまっているの。
彼にも、世間には知られてならない秘密があって……。
だからわたしたち、わかりあうことができるの。
モサール 何なの? 世間には知られていない秘密って。
チャリー じつは、彼の正体は、サンタクロースなんです。
兄2人 ええーーーっ!
ガメール だめばい。そいならよけいにだめ。
チャリー なして? なしてね?
モサール サンタクロースは、よい子に夢ば届ける善人たいね。
うったちは怪盗団ばい。犯罪者、悪人ばい!
チャリー ばってんそいは、おとしゃまん絵ば取りもどすため……。
モサール どがん理由のあろうと、つかまったら犯罪者として裁かるっと。
うったちにかかわる人すべてば、悲しますっことになっとよ。
チャリー ……ばってん、そいならもう遅かよ。
うちのお腹には、あん人とうちの、愛の結晶が……。
兄2人 ええーーーっ!
《訳》
ガメール だめよ。それならよけいにだめ。
チャリー どうして? どうしてなの?
モサール サンタクロースは、よい子に夢を届ける善人じゃないの。
わたしたちは怪盗団よ。犯罪者、悪人なのよ!
チャリー でもそれは、お父さまの絵を取りもどすため……。
モサール いかなる理由があろうと、つかまったら犯罪者として裁かれるの。
わたしたちにかかわる人すべてを、悲しませることになるのよ。
チャリー ……でも、それならもう遅いわ。
わたしのお腹には、あの人とわたしの、愛の結晶が……。
兄2人 ええーーーっ!
<ワンポイント>
【ミルクセーキ】
ミルクと卵黄をたっぷり使ったかき氷状のもので、スプーンを使って食べる。
長崎のミルクセーキは「飲みもの」ではないことで名物なのだ。
【トルコライス】
長崎発祥の洋食メニュー。大皿に、ピラフとスパゲティを盛り
その上にトンカツを乗せるという、かなりボリュームのある名物料理。
その名の由来については、諸説ある。
【チャンポン・皿うどん】
いわずとしれた、長崎名物料理。
【カステラ】
いわずとしれた、長崎名物菓子。
次回へつづくッ! |