(「蛍茶屋〜石橋」の電車内。
ひとりの男が、近くにすわる婦人に話しかけている)
男 あのう、すみません。これ「浦上車庫前」には、行きますか?
婦人 うんにゃ、こいは5番やっけん、浦上んほうには行かんばい。
浦上に行くとやったら、3番に乗らんばいかんやったとよ。
しょんなかけん、築町ん電停で降りて、1番に乗りかえればよか。
男 築町…で、降りるんですね。
婦人 心配せんちゃよか、築町に着いたら、おしゆっけん。
《訳》
男 あのう、すみません。これ「浦上車庫前」には、行きますか?
婦人 いいえ、これは5番だから、浦上のほうへは行かないわ。
浦上に行くんだったら、3番に乗らなくちゃいけなかったのよ。
しかたがないから、築町の電停で降りて、1番に乗りかえればいいわ。
男 築町…で、降りるんですね。
婦人 心配しなくていいから、築町に着いたら、おしえますから。
(婦人、にこやかに男に話しかける)
婦人 あんち、どこから来なったと?
男 東京からです。
婦人 都会からにしては、おうち
髪も、やんぼやんぼして、しょたくれとったい。
男 はあ…。
婦人 汽車に乗ってきたとね? そいとも飛行機ね?
男 JR…、電車です。
婦人 JRっていうたら、汽車たいね!
《訳》
婦人 お兄さん、どこからいらしたの?
男 東京からです。
婦人 都会からにしては、あなた
髪も、ボサボサのびてて、しょぼくれてるわね。
男 はあ…。
婦人 汽車に乗ってきたの? それとも飛行機?
男 JR…、電車です。
婦人 JRっていったら、汽車じゃないの!
(婦人、さらに男に話しかける)
婦人 観光で、来たとね。
男 はい。あのぼく、電車がとても好きなので
長崎のいろいろな路面電車を、見ようと思って。
婦人 あらそうね。まあ、ごくろうげた〜。
男 長崎のやつは、おもしろいんですよ。
旧小田原電車の150型や、旧仙台市電の1050型
そのほか、いろいろな場所からやってきた電車が
まちなかを走っているんですよ。
そう、それは、まさに「走る博物館」!
婦人 あらそうね。
あたしゃ、毎日乗りよっとに、いっちょん知らんやったばい。
男 広告が全面についてる電車も、実はめずらしいんですよ!
婦人 へええ、おもしろかねー!
《訳》
婦人 観光で、来たの?
男 はい。あのぼく、電車がとても好きなので
長崎のいろいろな路面電車を、見ようと思って。
婦人 あらそうなの。まあ、ごくろうなこと。
男 長崎のやつは、おもしろいんですよ。
旧小田原電車の150型や、旧仙台市電の1050型
そのほか、いろいろな場所からやってきた電車が
まちなかを走っているんですよ。
そう、それは、まさに「走る博物館」!
婦人 あらそうなの。
わたしは、毎日乗っているのに、ぜんぜん知らなかったわ。
男 広告が全面についてる電車も、実はめずらしいんですよ!
婦人 へええ、おもしろいわねー!
(盛りあがるふたりの会話に、水をさすような車内アナウンス)
アナ 次は、市民病院前、市民病院前です。お降りのかたは…。
婦人 あいや〜…(汗)。
男 どうしたんですか?
婦人 築町、通りすぎてしもうたばい…。
《訳》
アナ 次は、市民病院前、市民病院前です。お降りのかたは…。
婦人 あらあ…(汗)。
男 どうしたんですか?
婦人 築町、通りすぎてしまったわ…。
(またまたこんなもんやっちゃって、すみません)
<ワンポイント>
【路面電車】
正式名称は「長崎電気軌道」。大正4年創業。
再利用された全国各地からの電車や、ボディに広告の入ったカラー電車など
じつはとてもアイデアにあふれている路面電車は
長崎市民の、大切な「足」である。しかも料金が100円。安い。
【あんち】
お兄さん、の意。いまでは、めったに使う人はいないようだが…。
【やんぼやんぼ】
髪の毛がのびて、ぼうぼうになっているようす。
先月の「おいかぶる」より、さらにビジュアル的な表現。
例/「あーも、髪のおいかぶって、やんぼやんぼして、しっちゃぐらしか〜」
(「ああもう、髪がのびて、ボッサボサで、うっとうしい〜」)
【しょたくれ】
だらしなくてさえないさま。
【汽車】
長崎人にとって、JRはいまだに「汽車」。「電車」は、路面電車を指すので注意。
【ごくろうげた】
ごくろうなことで、の意。「自分には理解できないけれど」という
すこし揶揄するような意味合いも、持っている。
次回へつづく… |