(坂道の途中に、冷蔵庫を背負ったひとりの男)
あいや〜…しもうたなあ。
冷蔵庫ば、ひとりでかろうて登ってきよったばってん
こがん場所で…坂段の途中で
動きえんごとなってしもうた…。
道の、せまかとやもん。
手すりんあいだに、なんかの拍子で
うっぱさまってしもうて、取れんやっか。
ああ、ぼっくい重たか。こん冷蔵庫。
《訳》
ああ…しまったなあ。
冷蔵庫を、ひとりで背負って登ってきていたけど
こんな場所で…坂段の途中で
動けなくなってしまった…。
道が、せまいんだもん。
手すりのあいだに、なにかの拍子で
はさまってしまって、取れないじゃないか。
ああ、ものすごく重い。この冷蔵庫。
おまけに、つんたか水のすだれてきた…。
冷凍室の氷ば、出すとば忘れとったとば
いま、思いだしたばい。
あああ、背中のほう、ぼっくいつんたか。
《訳》
おまけに、つめたい水が、したたり落ちてきた…。
冷凍室の氷を、出すのを忘れていたことを
いま、思いだしたよ。
あああ、背中のほう、ものすごく冷たい。
ひとり暮らしやし、荷物もそがん多なかし
自分だけで、引越ししようて思うたばってん
こがんやったらやっぱし、だいか呼べばよかったかなあ…。
いまから呼ぶ、ていうテもあるばってん
こがん状態やったら、ケータイもかけえん。
あぁああ、くそう、腰のもてんごとなってきた。
《訳》
ひとり暮らしだし、荷物もそんなに多くないし
自分だけで、引越ししようと思ったけれど
これだったらやっぱり、だれか呼べばよかったかなあ…。
いまから呼ぶ、というテもあるけど
こんな状態だったら、ケータイもかけられない。
あぁああ、くそう、腰が耐えられなくなってきた…。
(近所のおじさん登場。男に気づく)
おじさん あいや〜! あんたいったいどげんしたとや〜!
(筆者注・BGMに「瞳をとじて」by平井堅 が流れる)
男 た…助けてくださーい…! 助けてくださーい…!
《訳》
おじさん うわあ! あんたいったいどうしたんだ〜!
(筆者注・BGMに「瞳をとじて」by平井堅 が流れる)
男 た…助けてくださーい…! 助けてくださーい…!
(こんなオチで…すみません)
<ワンポイント>
【からう】
おんぶする。背負う。「背負って」は「かろうて」となる。
例/「もう歩きえん。かろうて、かろうて〜」
(「もう歩けない。おんぶ、おんぶして〜」)
【うっぱさまる】
はさまる。つまる。
ちなみに「のどにつまる」は「のでうっぱさまる」である。
【すだれる(すだるっ)】
液体が垂れて、ぽたぽたとしたたり落ちること。
例/「早う食べんば、ソフトクリームの底からすだるっぞ」
(「早く食べないと、ソフトクリームが底から垂れるよ」)
【多なか】
多くない。
例/「坂道は、そがんは多なかです」
(「坂道は、そんなには多くないです」)
【もてん】
耐えられない。
次回へつづく… |