師走、それは1年じゅうでいちばん忙しい月。
食べて、飲んで、また食べて、また飲んで。
ああ、忙しいったらありゃしません。
今回は、そんな季節のひとこま。


(バイキングレストラン。腹をなでさする2人の女性)

松代 …ああもう、はらんふとかー。よけいしこ食べたもんねえ。

竹子 ほんなこて、もう食べきえんばい。

松代 そいばってん、忘年会ば中華バイキングにして正解やったね。

竹子 そうさね。普通のお店で、勘定ばワリカンで…て、しとったら
   うったちが、大損やったたいね。

松代 梅美ばさ、さっきから見よっとばってん
   彼女ひとりで、もう3人分は胃に入っとっごたる。

竹子 そいにいっちょんペースの落ちよらんもん。

《訳》
松代 …ああもう、おなかいっぱい。たくさん食べたものねえ。

竹子 ほんとうに、もう食べられないわ。

松代 それにしても、忘年会を中華バイキングにして賢明だったわね。

竹子 そうよね。普通のお店で、勘定をワリカンで…なんてやってたら
   わたしたちが、大損だったわね。

松代 梅美を、さっきから見てるんだけど
   彼女ひとりで、もう3人分は胃に入っているみたい。

竹子 それにぜんぜんペースが落ちていないもの。


(梅美、山盛りの皿を手にテーブルにやってくる)

梅美 ねーえ、向こうに新しか料理のきたごたっよ
   あれ? おうちたち、もう食べんと?

松代 もうよかよ、うったちは。
   …そいにしたっちゃ、そろそろ2時間のタイムリミットのくるばい。
   そん、がっぽい盛っとる皿、大丈夫かと?
   
梅美 へーきへーき!(かつれて食べはじめる)

竹子 むかしから、かつれごちゅうて有名やったもんね、梅美。

梅美 ほーほ!(かつれて食べよりながら相槌)

《訳》
梅美 ねーえ、向こうに新しい料理がきたみたいよ。
   あれ? あなたたち、もう食べないの?

松代 もういいわよ、わたしたちは。
   …それにしても、そろそろ2時間のタイムリミットがくるわよ。
   その、山のように盛った皿、大丈夫なの?

梅美 へーきへーき!(ガツガツと食べはじめる)

竹子 むかしから食い意地がはってるって有名だったもんね、梅美。

梅美 ほーほ!(ガツガツと食べながら相槌)


(梅美、山盛りの料理を食べ終わる)

松代 さーて、そろそろ2時間やし。帰りましょうで。

梅美 ま…待ってくれんへえ!

松代と竹子 な…なんね? ふっとか声ば出して。

梅美 ああ気付かんやった。あっちにぼっくい美味しかごたっデザートのある!
   どげんしゅう! どげんしたっちゃ、あいば食べたかばい!
   …か…かぶりには、さしてもらえんやろうか!?

松代と竹子 あう…うううう…。

《訳》
松代 さーて、そろそろ2時間だし。帰りましょうか。

梅美 ま…待ってちょうだい!

松代と竹子 な…なによ? 大きな声出して。

梅美 ああ気付かなかった。あっちにすごく美味しそうなデザートがある!
   どうしましょう! どうしても、あれが食べたいわ!
   …お…お持ち帰りには、させてもらえないかしら!?

松代と竹子 あう…うううう…。


< ワンポイント>

【はらんふとか】
おなかいっぱい。

【よけいしこ、よけしこ】
たくさん。山のように。


【がっぽい】
たくさん。山のように。

【かつれる】
ガツガツと食い意地がはる、の意味。
食い意地がはった子どもは「かつれご」。

【かぶり】
料理店などで、あまった料理を、持ち帰り用につめてもらうこと。
いわゆる英語での「Doggy Bag」である。
(注・くれぐれもバイキングレストランで「かぶり」はやめましょう)


次回へつづく…

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