(姑、窓の桟に指を走らせて)
姑 ちょっとちょっとおうち!
何回言うたらわかっとやろうねぇ、まったく
窓の桟の汚なかとの、いっちょんあえとらんたい!
嫁 す…すみません、お義母さん
姑 あーも、もうよか! ここはうちがすっけん
おうちは玄関ば、はわきで掃わいてきなさい。
《訳》
姑 ちょっとちょっとあなた!
何回言ったらわかるのかしらねぇ、まったく
窓の桟の汚れ、全然落ちてないじゃないの!
嫁 す…すみません、お義母さん
姑 ああ、もういいわ! ここはわたしがするから
あなたは玄関を、ほうきで掃いてきなさい。
(玄関先。夫は車を洗っているところ)
嫁 そがん言われたっちゃ、こっちも一所懸命しよっとに…。
夫 わいん気持ちは痛かごてわかっけん、今は我慢してくれろて…。
《訳》
嫁 そんなに言われても、こっちも一所懸命やってるのに…。
夫 君の気持ちは痛いほどわかるから、今は我慢してくれ…。
(時間経過ののち…茶の間。テレビは紅白歌合戦)
姑 …ふう、よーやっと掃除もおせち料理も終わったばい。
夫 なんとか今年じゅうに、間に合(お)うたたい。
(チラリと嫁を見ながら)
姑 誰(だい)かさんの、いっちょんはかどらっさんけんねぇ…。
ばってん、一所懸命がんばってくれらしたし
年越しソバなっと、出前ば取りましょうだい。
嫁 あ、いえお義母さん…。
姑 よかよか、こんくらいうちが出すけん。
嫁 いえあの…そがんじゃなくて。わたしたち今から
ハ○ステ○○スのカウントダウンショーに行くとです…
夫 (小声で)あー…そいば今言うたら…
姑 んまぁ!ハ○ステ○○スのカウントダウンショーげな〜〜!?
《訳》
姑 …ふう、ようやく掃除もおせち料理も終わったわ。
夫 なんとか今年じゅうに、間に合ったじゃないか。
(チラリと嫁を見ながら)
姑 誰かさんが、ちっともはかどらないんですものねぇ…。
でもまあ、一所懸命がんばってくださったし
せめて年越しソバでも、出前を取りましょうかしらね。
嫁 あ、いえお義母さん…。
姑 いいわいいわ、これくらいわたしが出すわよ。
嫁 いえあの…そうじゃなくて。わたしたちいまから
ハ○ステ○○スのカウントダウンショーに行くんです…
夫 (小声で)あー…それをいま言ったら…
姑 んまぁ!ハ○ステ○○スのカウントダウンショーですって〜〜!?
<ワンポイント>
【あえる】
汚れが落ちる。
【はわき】
ほうきの事。ほうきは古語で「ははき」と表現されたりもする。
方言には、むかしから言いならわされていた言葉が
そのままに近いかたちで、残っている場合も多い。
【掃わく】
掃く。
「どんなに気取っていてもついうっかり使ってしまう長崎弁ベスト10」
なるものを決めるとしたら、必ずランクインと思われる言葉。
【〜なっと】
「せめて〜でも」の意味。
例/「納豆なっと食べて行かんね」(「せめて納豆でも食べて行きなさい」)
次回へつづく…
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