(茶の間)
夫 母ちゃん、「北海道カニ食べ放題ツアー」に出かくっとも
もう来週たい。ぼっくい楽しみかやろう?
嫁 そいでお義母さん、お義母さんの旅行着にと思うて
ぬっかごたるセーターば、買うてみたとですばってん…。
姑 ふん、こん色はうちには赤(あ)っかばい!
そいにこがんふとかったら、ずんだれて見ゆっし!
こがんと、着(き)ーきらんばい。
夫 そがんことなかて、ダボってして着たら、かっちょんよかて。
ほら、よかけん着てみんね。
《訳》
夫 おふくろ、「北海道カニ食べ放題ツアー」に出かけるのも
もう来週だね。とっても楽しみだろう?
嫁 そこでお義母さん、お義母さんの旅行着にと思って
暖かそうなセーターを、買ってみたんですけれど…。
姑 ふん、この色はわたしには派手だわ!
それにこんなに大きかったら、だらしなく見えるし!
こんなの、着られないわ。
夫 そんなことないよ、ダボっとして着たら、かっこいいよ。
ほら、いいから着てみなよ。!
(姑、しぶしぶ隣の部屋へ行く)
嫁 せっかく買うてきたとに、あがん言わんちゃよかやろうもん…。
夫 ごめんてごめんて、もちっとやけん我慢してくれろて…。
《訳》
嫁 せっかく買ってきたのに、あんなに言わなくてもいいじゃないの…。
夫 ごめんよごめんよ、もう少しだから我慢してくれよ…。
(姑、茶の間に戻ってくる。セーターを着てまんざらでもない様子)
姑 なんか悪かねー、おうちたちに留守番ばさせて
うちだけ、カニ食べ放題に行くとの…。
土産ばたくさん買うて来るけん、なんが好(す)いとんね?
メロンね?とうもろこしね?バターあめね?
嫁 あ、いえいえ、どうぞお気使いせんごと。
わたしたち、お母さんの留守しとる間にハワイに行きますけん。
夫 (小声で)あー…そいばいま言うたら…
姑 んまぁ!ハワイげな〜〜!?
《訳》
姑 なんだか悪いわねー、あなたたちに留守番をさせて
わたしだけ、カニ食べ放題に行くのが…。
土産をたくさん買って来るから、なにが好きなの?
メロン?とうもろこし?バターあめ?
嫁 あ、いえいえ、どうぞお気使いなく。
わたしたち、お母さんの留守しとる間にハワイに行きますから。
夫 (小声で)あー…それをいま言ったら…
姑 んまぁ!ハワイですって〜〜!?
<ワンポイント>
【赤(あ)っか】
年配の女性のあいだでは、どうやら本来の「赤い」という色だけではなく
「明るい」「派手だ」という意味でも、使われているようす。
【ずんだれ】
服の着かたや生活態度などがだらしないことをいう。
【〜きらん】
「〜ができない」という、不可能なことをあらわすときに使う。
例/「ああこれ以上我慢しーきらん」(「ああこれ以上我慢できない」)
※「きーきらん」は「来ーきらん」の時でも使用する。
【かっちょんよか】
かっこいい、の意味。
例/「キムタクはいつ見たっちゃぼっくいかっちょんよか〜」
「(キムタクはいつ見てもものすごくかっこいいな〜)」
次回へつづく…
|