文・マルモトイズミ

「ジゲモン」とは長崎の方言で「地元の人」をあらわします。
より高度な方言をあやつり、流暢なナマリを華麗にくり出す者こそが最強の「ジゲモンマスター」と呼ばれるのです。
 ここで、しっかり長崎弁を勉強して、ナガジン(長崎人)もそうでない人も、目指せ!「ジゲモンマスター」!

【Chapter 1・空港にて】
〜高校を卒業して1年目の、若いOL同士の会話。
修学旅行先は、中国であったため
これがふたりにとって、生まれて初めての東京旅行なのだ〜


A子
東京行くとは初めてやっけん、ぼっこい緊張しよるとって。
B美
うちも〜!ゆうべはいっちょん眠れんやった〜。


《訳》
A子
東京に行くのは初めてだから、ものすごく緊張してるわ。
B美
わたしも〜!ゆうべは全然眠れなかったわ〜。


A子
お台場で、テレビに出よらす人とかに、おうたらよかばいね。
B美
まっぽしでキムタクば見たら、鼻血んずっばいね〜。
A子
ピュ〜とかゆうて。
B美
ピュ〜とかゆうてね〜。
A子
そいよかさ、原宿んにきば、さらきよってさ
「おうち可愛かけん、テレビに出らんですか」て言われたらどげんしゅうか。
B美
そげんことは、絶対なかて思うばい。
A子
おうち、なんて言うたへ〜!


《訳》
A子
お台場で、テレビに出ている人とかに、会ったらいいわね。
B美
真正面でキムタクを見たら、鼻血が出るわよね〜。
A子
ピュ〜とかいって。
B美
ピュ〜とかいってね〜。
A子
それよりも、原宿あたりをブラブラ歩いていて
「あなた可愛いから、テレビに出ませんか」って言われたらどうしようか。
B美
そんなこと、絶対ないと思うわ。
A子
あなた、なんて言ったのよ〜!


B美
ばってん、都会にはおーどかもんもおっけん、気ーばつけとかんばさ。
A子
そがん人におうたら、ふっとか声で、おめかんばね。
B美
おめかんばね〜。
A子
あっ、アナウンスの鳴りよる。行かんば!
B美
あとは飛行機のおっちゃけたりせんごと祈るだけたい…あれ〜?
A子
どげんしたとへ?
B美
わいちゃぁーー!!
航空券ば、家に忘れてきてしもた〜(泣)。


《訳》
B美
でも、都会には悪い人もいるから、気をつけとかないと。
A子
そんな人に会ったら、大きな声で叫ばなきゃね。
B美
叫ばなきゃね〜。
A子
あっ、アナウンスが鳴ってる。行かなくちゃ!
B美
あとは飛行機がおちないように祈るだけね…あれ〜?
A子
どうしたのよ?
B美
ああぁーーっ!
航空券を、家に忘れてきてしまった〜(泣)。



<ワンポイント>
【〜らす】
「〜てらっしゃる」という意味で、丁寧な言葉づかいである。
ただし、犬にでも猫にでも使う。

【おうち】
「あなた」の意。その他混乱する一人称として、オイ=「俺」ワイ=「お前」。

【ふとか】
「大きい」という意味で使う。
「ふっとさ〜」と語尾を上げると「大きいなぁ」という感嘆の意味になる。

【おーどか】
「気が荒い」「生意気」というニュアンスの「悪い」である。

【気ー】
長崎の人間は、一つ文字の単語を言うとき、語尾をのばすクセがある。
例/血ーんずっ(血が出る)。蚊ーの来よる(蚊が来ている)。

【わいちゃぁ】
予測しない事態のときつい口に出てしまう言葉。
英語では「OH MY GOD」。同義語 「あいやー」。

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