ヤマサキユズルさん&ナガジン直伝
長崎で名月に出会えるスポット

呼吸をするかのような月の満ち欠けは、その自然のエネルギーと同時に 見るものにパワーや勇気、優しさや穏やかさを与えてくれるようだ。

■ヤマサキさん
「三日月は日本古来の言い伝えで、三日月を三ヶ月続けて見ることができると福寿を授かるといわれているんですよ。江戸時代、ある特定の形(月齢)の月が昇るのを待って多くの人々が集まり供え物をし、拝んだりする“月待ち”という行事がありました。三日月待ち、十三夜待ち,十六夜待ち、十七夜待ち、十九夜待ち、二十二夜待ち、二十三夜待ち、二十六夜待ち。全国各地に月待ち塔というのも残っているんですよ。」




夜空にぽっかり浮かぶお月さま。今年の秋は、これまでとは違った視点で月を眺める楽しみを見つけてみてはどうだろうか。


1. 諏訪神社からの月
満月頃のお月さまを見るなら、諏訪神社。鳥居や月見茶屋からのお月様は絵になる美しさだ。夕刻、正面にそびえる彦山の、山の端から出てくるお月さまは、多くの人々を魅了した。
「彦山の上に出る月はよか こんげん月はえっとなかばい 大田蜀山人」
「たふとさ(尊さ)を 京でかたるも 諏訪の月 向井去来」

2. 築町界隈から見た月
築町商店街の真ん中の十字路に立って下を見ると、月をモチーフとしたレリーフがある。ヤマサキさんいわく、築町⇒つきまち⇒月待ち、とも置き換えられてロマンが感じられるとのこと。ちなみに長崎くんちの際の築町の町印、傘鉾にはお月さまが輝いている。

3. 中島川沿いを歩きながら見上げる月
三日月から上弦の月の頃に、夕焼けの茜空に、日暮れ夕闇に……。中島川沿いを歩きながら空を見上げると、南西の空に瞬くお月さま。周囲の風情とあいまってそれはとっても素敵な情景なのだ。また、桃渓橋近くの光雲寺は、かつて長崎奉行の月見屋敷があった場所。ここからは多くの武士たちが名月を楽しんだのだ。

4. 水辺の森公園から長崎県美術館へ
ここは、海に臨み開けた土地だけに月の出から月の入りまでバッチリ見ることができる観月スポット。女神大橋とお月さまの組み合わせも乙なモノ。夏場の三日月から上弦の月は、稲佐山に突き刺さるように沈みゆき、一見の価値あり、水辺の森公園内には「月の舞台」や月の満ち欠けプレートもあり、月に親しむには最適の場所だ。

5. 浦上川の畔で見る月
梁川公園から川沿いに延びた遊歩道。川辺のベンチに座り眺める月は、夕刻、西山から上がってくるまん丸お月さま。

6. 淵神社の月
七夕にゆかりのある縁結びの神様として知られる桑姫さまが祀られている淵神社から眺める月。なかでもこの辺りから見る十三夜の月はとっても美しいのだ。

7. 稲佐山で夜景と共に
百万ドルの夜景と共に眺める月は格別。ロープウェイの運行時間を考慮すると、上弦から満月ごろまでのお月さまを見に行くのが最適。

8. 茂木の潮見崎観音
茂木漁港近くの潮見崎観音は、海を見渡せる高台にあり、昔から秋の名月が楽しめる名所だ。ここから見る月は、“布引の月”といって、月の光が海面に映り、注連縄(しめなわ)を引き渡したような美しい光景を目にすることができる。


布引の月

9. 田上の高台から眺める月
江戸時代中期に活躍した松尾芭蕉の門下・蕉門十哲の一人、向井去来の義理の伯母である田上尼(でんじょうに)が住む草庵、千歳亭(せんざいてい)が田上にあった。去来が、京都の落柿舎から長崎に帰省し千歳亭に滞在した時に詠んだ句を刻んだ句碑が田上の徳三寺境内の千歳亭跡に残されている。 「名月や たかみにせまる 旅こゝろ」 かつて月見の名所だった田上の高台からは、今も名月を眺めることができる。ちなみに“たかみ”とは、旅(た)が身と田上をかけていて、去来の郷愁の思いが込められているのだとか。

10.月の美術館では……
空を見上げても人間さまの都合よくお目にかかれないのが、お月さま。そんなふうに本物のお月さまに出会えない日も、お月さまに出会える場所が『月の美術館』だ。ヤマサキユズルさんが描く幻想的なお月さまの絵画を愛でながら、自分も月と同じ自然の一部であることを実感し、ゆったりとした時間を過ごそう。

●月の美術館
長崎市諏訪町4-3  095-893-5550
開館 11:00〜17:00(入館は〜16:45)
休館 火、水曜(企画展がないときの第4および第5日曜) ※臨時休館あり http://www.moonmuseum.net/
長崎で名月に出会えるスポットは、「長崎月手帖2008」長崎伝習所「長崎月の文化研究塾編」を参照。2009年版「月と暮らす手帖」も11月に発売予定。


◆ながさき月夜のこぼれ話

ヤマサキさんがお知り合いから聞いたお話。十人町の由来ともなったかつて遠見番所の十人のお役人さんが住んでいた家の外壁は、かつて土壁で、夜、月明かりの下、筆でその土壁に絵を描いて遊んでいたのだとか。月夜に浮かび上がっていた絵も、翌朝には夢か幻か、影も形も残っていなかったのだそうだ。長崎の子ども達もそんなふうにしてお月さまと遊んでいた、というお話。

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