四方を山に囲まれた長崎の街。しかし、大きな山は少なく水源には乏しいため滝という滝は見当たらない! と思ったら小さな滝がいくつか存在した! 真夏の暑い日差しに負けそうになったら涼しげな水の音が響き、マイナスイオンいっぱいの滝へ。


ズバリ!今回のテーマは

「涼と安らぎを求めて! 小さな滝巡りの旅!」 なのだ



滝の周辺は、涼を感じ、水のパワーを感じ、何だか不思議なパワーまでも感じる癒し空間。この夏、長崎近郊にある小さな滝、有名な大きな滝ではないけれど、見つけに行ってみませんか?
 

【霊験あらたかな霊場編】

日本最古の霊場
幽玄な空気漂う

滝の観音の滝
(平間町/長滝山霊源院内)

市街地から矢上方面へ行く途中、川平へと抜ける道沿いにある「滝の観音」。長崎県名勝文化財第一号に指定されているこの霊場は弘法大師ゆかりの地。延暦25年(806)、唐の留学を終えた弘法大師がこの地に立ち寄った際にこの滝水をご覧になり「大悲示現の霊地なり」と、「行」を行われ水観音の梵字を懸崖に記されたと伝えられていている日本最古の霊場なのだ。
入口の石造りの第一峰門を過ぎると、木々に覆われた参道が広がる。そこで、あっ!と驚くのが、伏樹門(ふしぎもん)と呼ばれる厳檀の古木の門。この古木は樹齢不明。どちらが根かわからず、それで不思議門ともいわれているのだという。



滝の観音

さて、今回目指すは“滝”。近く再建された山門をくぐり苔むした庭園を過ぎると正面に本堂が見えてくる。まずはここで手を合わせ、拝観料200円を賽銭箱へ。


伏樹門


本堂

本堂右脇の通路を進むと、木々の合間に流れ落ちる一条の滝があった。高さは約30m。今も弘法大師が刻んだ水観音の梵字は、滝中央の水苔深いところにその跡が残されているのだという。隆起した岩盤を勢いよく流れ落ちる姿はなかなか見応えあるものだが、何より周辺の景観と合わせ見ることでいろんな表情を見せてくれるところが素晴らしい。この滝に名前がないというのも不思議だが、人里にあって固有の名称を持たないのは国内ではこの滝だけだそうだ。


一条の滝


滝中央

滝の観音はその名で古くから親しまれているが、正式には長瀧山霊源院という禅宗の一派である黄檗宗の寺院。それ以前には真言系の寺院があったといういい伝えもあるが詳しくは不明で、寛文7年(1667)、唐商・許登授が観音堂を建立、中国伝来の魚藍観音像を本尊として納めて以来、初めて日本に黄檗宗を隠元禅師が伝えた興福寺や、崇福寺、福済寺、聖福寺と共に、日本における黄檗宗発祥の地である長崎に残された貴重な寺院なのだ。

滝の観音の美しい景観に一役買っているのは、やはり許登授が元禄年間に献納した羅漢橋と普済橋。特に羅漢橋背後から見る滝の眺めがおすすめだ。


羅漢橋と滝

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