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第6回(平成27年度第2回)長崎市原子爆弾放射線影響研究会

更新日:2016年12月5日 ページID:029043

長崎市の附属機関について(会議録のページ)

担当所属名

原爆被爆対策部調査課

会議名

第6回(平成27年度第2回) 長崎市原子爆弾放射線影響研究会

日時

平成28年3月30日(水曜日) 14時00分~16時00分

場所

長崎原爆資料館 平和学習室

議題

1 低線量放射線の健康リスクについて
(高自然放射線地域の調査結果など)
2 第5回までの被爆線量調査結果についてのまとめ
3 低線量被ばくに関する人体影響の研究論文の調査結果について

審議内容

1 低線量放射線の健康リスクについて(高自然放射線地域の調査結果など)

【A参考人】
最初のスライドで日本の各地の自然放射線のレベルをお示ししたいと思うが、多くの人がもういまやμGy/h(マイクログレイパーアワー)というのがどれくらいの線量かというのがわかってきている、ただ地域によって意外と大きな差があるということである。これががんのリスクと関係してるかどうかというのは、はっきりとわかっていない。それは自然放射線に伴うかもしれない、がん、或いは、他の健康な人と比べて生活要因による影響の方が大きいとか、そこの検証が難しいということがある。

世界的にみるとだいたいこの3つが現在調べている高自然放射線地域である。一番上にタレシュマハレというところであるが、イランのラムサール地域にある、カスピ海の南岸であり、ここはラジウム226(※1)が非常に多い、その結果ラドン(※2)も沢山出てくるわけで、非常に放射線のレベルは高い。ただ、人口があまりたくさん住んでいないので、例えばがんの調査については、不向きであるということがある。それから中国の広東省のヤンジャンという地域がある。私達が最初行ったときは、非常にへき地で道路を走っていると道路の上に稲わらを敷いて、そこを車が走ってくれると脱穀できるなんていう、のどかな風景がある地域で、今は、中国の経済のメインエンジンであり、非常に経済的に発展している。そのヤンジャン地域というところに、やはり、自然放射線が高い所がある。世界の自然放射線のレベルというのはラドンガスを含めて、だいたい2.4mGy/yearというふうにいわれているが、この地域はラドンを除いて、3mGy/yearある。もう1つは、インドの大陸南端の西の方にあるカルナガパリ地域で、ここでの疫学調査の話を今日は主にさせていただきたいと思っている。

このインドのカルナガパリであるが、大陸南端、西海岸にケララ州という人口が3000万人くらいの地域があり、このケララ州の南端にトリバンドラムという州の都があって、そこから車で北にだいたい2時間くらい上がるとこの地域がある。この地域というのが実は、キリストの12使徒のひとりであるセントトーマスがここに来て、布教したというふうに言い伝えられており、インドはもちろんヒンズー教の国だが、イスラム教徒も多いが、この地域は古くからキリスト教徒もかなりいる。インドのキリスト教徒は主に、アウトカースト(※3)の方達が多いが、この地域はそういうことではなくて、キリスト教徒はかなり経済的にも教育の制度も高いという州で、だいたい10%はキリスト教徒で、20%がイスラム教徒で残りがヒンズー教徒である。

放射線の高い地域というのは、実は海岸線でして、恐らくは、一旦、海に溜り込んだモナザイト(※4)が例えばチタン(※5)なんかと共沈して、共沈の仮定で濃縮されて、それがこちらに打ち上がってくる、となっている。カルナガパリ地域の一部、特に海岸線で放射線の高い地域がある。これがどんな家に住んでいるかであるが、海岸線に比較的、経済的に恵まれない方たちが、こういう何というか掘っ建て小屋でないが建物に住んでいて、床はないので、直接この放射能を含んだ砂の上に寝ているような感じになる。また、これは海岸線であるので漁師さんが結構多くて、この地域はかなりお魚を食べる地域であるが、道を歩いていてもかなり小魚を売っている。この漁師さんが、この黒っぽいのがお分かりなるかと思うが、黒っぽいのは、先程言いましたチタンが黒いので、それといっしょにこの放射能を含むモナザイトが共沈する、それがここに打ち上がって黒い砂となっているわけだが、その上に直接座って網を繕いでいたりするので、結構この人達も、放射線への被ばく量というのはかなりあるということになる。中産階級の人達は、ちゃんとした床がある家に住んでおられるが、やっぱり地面の方から放射線がくるということになる。モナザイト、先程からお話があるがこのようなサンプルで、この中にトリウム(※6)が入っていて、これは核燃料としては使いづらい物ではあるが、放射能を含むということになる。この地域で特に放射能線が高いのは、チャバラという地域、或いはリンダ川という地域で、ここは漁港であるが、年間に5mSV、平均ではこうなるが、10mSVを超える地域もかなりある。1年間の被ばくが10mSvという地域もかなりある。むしろ、ここの地域の問題は、比較的低い地域でも1mSv/yearで、本当のコントロールではないというところが実は問題である。この地域にはだいたい40万人の人が住んでおられて、その地域の12の小さな行政区域パンチャヤットと呼ばれているが、分かれている。

この地域の調査結果を2009年にナイア先生が発表されており、私も共著者の一人であるが、その調査では、この地域にある12のパンチャヤットのうち6つのパンチャヤット、比較的放射線の高い地域と低い地域が入っているが、インド側が選んだ6つの地域で調査をしている。あまりにも膨大な集団ではなくて、この2009年の時点では、まだ全ての調査結果をデータベース化、或いは、その内容を構築するということが十分に間に合ったということである。ですから40万人の中のだいたい半分の人達を調査対象にした。それを、あまりお子さんというのはがんにならないので、がんになる年齢というのを考えてこういうふうな年齢とした。あまりお年寄りになるとまた、もちろんがんで死ぬ方は多いが診断があまり正確ではないということで除いている。その他いろいろ実はよく調べたら調査を始める前にもうがんになっていた、という人もいるので、そういう人達を除いて69,958人を対象にした結果をナイア先生が発表したということである。

こういう調査で一番問題なのは、地域別に放射線が高い低いというのは当然あるが、その地域とで、がん罹患率を比べるというような調査が実は多いが、それはエコロジカル調査ということで、あまりそこから出てくるデータというのは信用されないことになる。それで、私どもがやった調査は、まずコホート(※7)を作って、集団を決めて、実際は40万人近くの人達をとって1990年から97年まで、全ての家屋を訪れて、屋内、屋外の線量を測った。それから、同時に質問票調査をして、例えばたばこを吸っているかどうか、或いは、どういう教育を受けただとか、年収がどれくらいあるとか、そういう健康影響に関係する可能性がある要因を逐一調べたわけである。これを同時に進めて、それだけでは当然不十分で、今度はこの人達がどれくらいがんで死ぬか、がんに罹患するか、或いは、他の病気で死亡されるかということを調べなければいけないが、インドの場合は特にアンタッチャブルの人がこの地域でもおられるので、この地域のカースト制度(※8)というのは、比較的いろんな経済的に発展してきてゆるくなってきてはいるが、やはりアンタッチャブルというのは非常に深刻な状態で、そういう人達の死亡の診断の精度というのはちょっと信用できないところがある。

そういうこともあって1990年に広島でも長崎でもある、がん登録というシステムを作って、がんになる、がんになったら訪れるというような病院を、患者さんが行くような病院を全て調査対象として少なくとも1年に一遍そこに訪れて、カルテを見せてもらい、がんの患者さんを拾い上げるというシステムを作っている。同時に先程から申し上げている屋内、屋外の線量を測定したが、7万戸全てについて測定したが、屋内にどれくらい住んだ、24時間のうちにどれくらい住んで、屋外でどれくらい過ごしたというパーセント、1年1歳ごとに計算してそれを生涯というか現在まで、がんになっている人は、がんになった方、或いは、健康な人はとにかくその時点まで累積をするということで累積線量を計算している。がん症例の同定は、先程申し上げた通りであるが、この地域のがん症例というのは、当初は先程申し上げたアンタッチャブルの人については若干、不安があったが、最近では、こういうがん登録の場合は、広島、長崎でも死亡診断書だけの情報でがん登録に登録される人達がいるが、それをDCOパーセント(※9)というふうにいいまして、それも10%を最近は切っていて、かなり完全にがん登録、がん症例がこのがん登録に登録されている。病理的な診断がある症例というのも今は75%を超えていたと思う。

こういう世界中のがんがどういうふうに今発生しているか調べるというのは非常に重要なので、フランスのリオンにある国際がん研究機関というところが音頭をとって世界各地のがん登録のデータを集めてそれを本、或いはインターネットで公表している。それは、どこのがんでも登録されるというわけではなくて、やはりある程度、基準を満した、すなわち信用できると考えられたがん登録が掲載、収載されている。これもこの地域のがん登録も収載されているということで、少なくても最低限の基準は満たしたがん登録だということになる。日本は今年ぐらいからがん登録が全国で始まったが、日本の中で都道府県別にがん登録があるが、基準に満たないということであるから、このインドのカルナガパリの地域のがん登録というのは日本のほとんどの都道府県よりも良いということになるわけである。

念のためにどれくらいがんが出てくるかということであるが、みなさんが想像されるような状況では実はない。このインドでは、中国もそうであるが、がんの罹患とういうのは、まだ非常に低い。かつて日本もそうだった。ただこの地域の特徴は、ここに書いていないのは申しわけないが、乳がんはびっくりするくらい多くて、もう30歳くらいになると、乳腺症、乳房にしこりが結構出て、手術するような方もいて、うちに来ている留学生もやはり、まだ30になっていないが手術をした。ということでこれは乳がんリスクと関係するというふうにいわれているが、例えば、この地域は、僕たち、極東アジアの人間とは、そういうがんの罹患率が違うということがある。でも共通なのは、肺がんが多いということである。肺がんはなぜ起きているかというとこの地域は、紙巻たばこというのはあまりない。紙巻たばこというのはちょっと高すぎる。紙の代わりに現地で採れる葉っぱで巻いたたばこを吸っている。当然、フィルターは付いていないので、僕たちには吸えない。逆にいえば非常に強いたばこであり、これについてどれくらい紙巻たばこと比較して肺がんが増えてくるのかというのは、インターナショナルジャーナルキャンサーとか幾つかのジャーナルに書いている。だいたい、同じである。もう一つは、紙たばこを吸う習慣があり、これは女性でもかなり多い習慣であるが、その結果として口腔がんは増える。口腔がんの比較というのは、紙たばこのせいだと思っている。逆に言えば、そういう比較的、世界でも名の通った国際誌にここで調べた喫煙、たばこの習慣とがんの関係が収載されている。それだけちゃんとした検証をしていると国際的には評価されている。少なくともがんについての疫学的な問題についてである。

次に白血病については、まだよく分からない。数も少ない。今の時点では、あるともないとも、少なくともあるというリスクが上がっているという証拠はないとしか申し上げられない。

これが、白血病を除くがんの表である。申し上げているのは、累積線量が500mSV、場合によっては、これは生涯の累積線量であるが1Gyを越えている人も多少いる。男女合わせると、これは2005年までのデータであるが上がっていっている。その相対リスクというのは、ここを基準にして、こちらの方が何倍リスクが高いかというのを示しているが、ほとんど1に近いということで増えていない。女性だけがここでちょっと増えているが、ここも9例しかないので、本当に増えているかどうかは、はっきりいえない。全体のこういう線量のトレンド(※10)というのは、増えてるということは、この結果を調べると、だいたい1Gyあたり過剰相対リスクというのを計算するが、過剰相対リスクというのは、相対リスクから1を引いたものであるが、それがマイナス0.13になる。ただし、私どもは、放射線に被ばくしたら、がんが減るということを主張したいわけではなくて、少なくとも増えていくという証拠はない、ほとんどゼロに近いということを申し上げたいわけであるが、一方で原爆被爆者はどれくらいになっているかというと広島と長崎の放影研の調査結果では非常に大雑把にいってだいたい1Gyあたり5割程度ということになる。この二つを比較すると、実は有意な差がある。だから僕たちの調査は以外と統計学的なパワーがあるということだが、正確に比較する時に、原爆被爆者との5割というふうに言ったが男の方は線量あたりのリスクが低い、女は高い、或るいは、被ばく時年齢が若いとリスクが高い、年齢が年をとってくると到達年齢が高くなるがリスクは低くなる、そういう、いろんなファクター(※11)があり、特にこういう自然放射線というのは、毎年ずっと被ばくしているので、被ばく時年齢どうするのかというような問題も例えばある。ということで、そう簡単には比較できない。だから、原爆被爆のような1回きりの被爆と比べてこちらの方が少なくとも線量あたりのリスクが低いというふうな可能性が高いと思っているが、国際的な評価に耐えれるような厳密な比較になっているか、今の時点ではなっていない。今年、そういう論文を書いて国際誌に書いていこうと思っているところであるが、現時点では、追跡は2013年まで、8年間さらに追跡されて、且つ、コホート全体、約40万人についてのデータの整理が終わっているのでそれを使って原爆被爆者などの急性被爆の計算と特にがん発生リスクを比較したいというふうに考えているところである。

いろいろな疫学調査については、当然批判がある。僕たちの調査というのは、放射線レベルが、いわゆる統計学的なパワーはなくて、実際にはがんが増えているのに軽視できないんじゃないかということになるが、先程お話ししたように、実際に計算してみると差が出てくるわけであるから、そういう比較をできる、統計学的なパワーはあるということになる。喫煙を始めとする、生活習慣の影響がマスクしているんじゃないか。それはどこまでいってもわからないが、原爆被爆者でさえいろいろな生活習慣の影響はあるはずだが、そこは、多分、無視できるでしょうということになって、普通に公表されているように、そこは直接調整はされていない。或いは最近出たINWORKSというフランス、アメリカ、イギリスの放射線作業者の追跡調査結果があるが、あれなどでも、そういう喫煙とかそういうものの調査はやっていない。ちょっと言い忘れているが、私どもの調査では、この結果を計算するときに、もちろん累積線量だけではなくて、社会経済状態、例えば、宗教、それと教育の影響を取り除いている。それと生活習慣としては、喫煙集団で、ビーディーというたばこは、紙巻たばこの紙の代わりにビーディーという現地の木の葉っぱを巻いている。そういう重要ながんのリスク因子の影響を取り除いてこのように解析をしている。そういうことをやっているのは、あまりない。原爆でも直接そういう情報をモデルに取り込んでやっているということはあまりやっていない。放射線作業者でもそういうことをやっているのはほとんどなくて、ウラル地域にかつてマヤックという秘密のソ連の原子炉施設があったが、それの作業者の人達については、そういう情報を取り込んだものがあるが、ほとんどない。僕たちのは、それを取り込んだ計算データである。ということで、非常にクオリティは、そういう意味では高い、とは主張できるとは思う。

もうひとつは内部被ばくがあるのではないかということである。これは、はっきりしたことは言えない。ただし、僕たちが福島で簡易な測定やってみても高くはない。食べ物を実際にもらってきて、その放射能がどのくらいかというのを調べるが、ぜんぜん高くない。ということで、少なくとも食べることによる内部被ばくというのは無視していいのではないかというふうに思っている。

空気中のラドン、ラドンというのは、崩壊してアルファ線(※12)を出すというのはよくご承知の通りであるが、この地域はラドンはほとんどない。ラドンというのは、結局先程のラジウム226が崩壊して222になって、さらにそれがそれぞれの仮定でアルファ線が出てくるが、そういうのがほとんどない。日本では、だいたい、10m㏃/立方メートルもないぐらいであるが、この地域でのラドンは、だいたいそんなものである。だから、日本並み。日本は非常にラドンが低い地域であるが、日本並みに低いということになる。ただし、ガンマ線(※13)というのは、当然のことながら非常に高いレベルに達している。原爆被爆者では、こんなふうになっていて、線量1Gyの50%くらいが、がんリスクであるが、これはインドの結果だが、インドでは、減っているということを主張したいわけでなくて、だいたいフラット。これは、最近、先程申し上げた通り2013年まで追跡期間を延長したというふうに申し上げたが、現在の調査ではほとんどフラットになっている。両方とも直線にあてはめて、その直線の傾きが違わないかどうかとやってみると有意に違うということが言えるけれど、いろいろな仮定がある、ずいぶん違うのではないかということで、国際的な評価に堪え得る環境になっていない。他の固形がんは先程も言った、このようなリスクであるが、他の主ながん、肺がん、乳がんについては、はっきりしたことは言えない。信頼区間が非常に広いということで、全がん以外については何も言える状況ではないということになる。

他の有名地域にいろいろな放射線が自然に高い、或いは、人工的な問題で高くなっている建物、或いは、地域に住んでおられる方は世界中におられるが一つはテチャ川である。先程申しましたウラル山脈の東側に秘密のソ連の核工場があったが、そこで、大量の放射能をテチャ川という川に流した。だいたい1951年、52年くらいにとんでもない量を流している。その流域では、白血病が発生した。固形がんも増えたんではないかといわれており、これは、1.0ということは、100%増えているということになる。原爆は50%増えている。僕たちは、全然増えていない。最近のデータでは、これは60%ぐらいではないかというふうにいわれている。ただ、これはいろんな批判があるでしょうが、ここは放射性の廃棄物を流したという仮定では、当然、硝酸も流している。それが、亜硝酸に変わって胃がんが増えるという可能性はあって、特にこの地域、胃がんは多い。最近、部位別のがんを調べましたら。それをどれくらい考慮できるか、取り除けるのかという問題はある。増えてないとは言えないが、そういう他のファクターの影響を十分取り除いているかなという批判はある。

台湾ではビルの建材にコバルト60(※14)が間違って入り込んでいる、その結果、そこに住んでいる人達が10年近く経って、放射線に被ばくしたという、これは20%くらいである。だから、このように比べると半分くらい。こちらは当然、連続被ばく、低線量率の被ばくであるが、急性に比べると半分くらいのリスクがあると。これもかなり信頼区間は低い。且つ、これもなかなか線量測定というのは難しい。被ばく線量というのは、部屋の中ではかなり減っているので、なかなか難しい。最近、実は台湾の行政が線量について再調査をやっているが、実は私もハーバードに特修生大学院に留学していた時の同級生がこれの責任者であるが、全く結果は出してくれないので、とにかくお互いにとっては非常にセンシスティブ(※15)な結果になっているということしか申し上げられないが、いずれにしてもそういう線量推定の問題がある。

さらに、原子力作業者の作業者の調査結果があって、最近これは、この調査には、いろいろな問題がある。例えば、喫煙の影響があるんではないか、特にアメリカのオークリッジでは喫煙の影響によって肺がんだけはリスクが高いとか、或いは、カナダでは、非常に高いリスクなっている。どうもなにか間違いがあったらしいということであるが、未だに本当の理由はよく分かっていないが、そういうことで、カナダを除いて、この時は日本も入っていたが、日本のデータは、この中に実は入っていない。その理由は日本のデータは、社会経済状況をちゃんと考慮した解析結果になっていないということで、この0.97という推定値に入っていないが、いずれにしても最近、イギリス、アメリカ、フランスのデータを使ってINWORKSという雑誌に結果が出ていて、30%くらいでているという結果ではなかったか、今、正確な数字が分からないが。ただ、ここで申し上げたいのは、INWORKSについては、大半がデータをよくみていたということである。一番低い線量で入っている。そこのリスクがもっと小さい。実は、がらっと線量あたりのリスクが変わっている。こういう作業者の場合は、線量が低い分というのは比較的線量の高い分と社会階層が違う。だからそこは本当に比較ができるかどうかという問題が常に付きまとう。

もうひとは、ここで例えば、僕達は原爆では50%増えている。ただ、これは1Gyの話である。低線量というのは100mGy、場合によっては、10mGyぐらいの話である。特に作業者の場合10mGyぐらいの場合が多い。10mGyと1Gyの差というのは、100倍違うわけであるから、50%の100分の1というのは、0.5パーセント。それは0.5が0.2になるか0.1になるかという議論で、それは悪いけど僕は先程、疫学者というご紹介を受けたが、必ずしも放射線疫学者かなというところがあって、放射線疫学者のみなさんそれは無理でしょう、と私は言いたい。どんな結果お出しになるのも、自分の責任でお出しになるのも、もちろんそれはいいが、実は私どもの結果も含めて、あまりにも小さいところで議論しようと思ったら、それは、ほぼ何もいえないでしょうと。ただ僕達の目的はシュミュレートがある程度出てもほとんど上がってない、ということである。僕たちは低線量の話をしようとしているわけではない。比較的中線量くらいでも線量率が低ければリスクが上がってくる、ということで、平均線量が10mSVぐらいの話をされているので、高くても15ぐらいでしょう。それは、例えば0.5が0.25になるかどうかというのは、実験動物のような全てがコントロールされている世界では可能でしょうけど、でも、私はもうコントロールできないことがいっぱいあるわけである。喫煙を含めて、食習慣を含めて、生活習慣を含めて、そういう世界で、そんなことを比較できないでしょう。実験動物だって勝手になんでもできない。そういうことをやっているのではないでしょうかというのが、私の言いたいことでである。

白血病では、よくわからない。固形がんについては残念ながらこういう検討できるのは、今の時点でインドのカルナガパリしかない。僕が知ることはナムジーでもちゃんとした結果が出てきているかもしれないが、今の状況では、お金を確保できるか、或いは、人体を確保できるか分からない。乳がんについては、ちょっと自信がないところがある。先程言ったようにインドの乳がんは、なにか特殊な状況もあるようなので、それについては、さらに詳しく検討する必要があるのかなという気がしている。以上です。

【会長】
主に、インドのケララ州での先生の長年のお仕事のまとめをお話しいただき、低線量被ばくの疫学的な調査研究の結果の解釈はなかなか難しい部分がたくさんあるということを含めてお話しいただいた。それでは、委員の先生方からそれぞれ、逐次ご質問があろうと思うが、まずは質問をお受けしたいと思う。

【A委員】
先生のデータは本当に低線量率の人のリスクを考える上では非常に重要なデータだと常々思っている。先生、非常に細かいことをおひとつ教えて頂きたいが、最後に先生が申された乳がんのリスクに関しては、はっきりしないというお話ですが、それはどういうことが原因でそういうご見解か。というのが、乳がんの線量率効果に関しては、動物実験でも結構データが線量率効果が有るというのと、無いというのがございまして、そういうことからも非常に人のデータで線量率効果に関する情報を教えていただきたいと思う。

【A参考人】

乳がんリスクを示したのが11ページの上のスライドに出ているが、これ見ていただけるとお分かりのように、マイナス6と異様に高い。追跡調査を8年間延長したらこれは当然0(ゼロ)にかなり近づいてくると思っていたが、本当に意外というか、現時点での推定値はよく覚えていないが、あまり期待していた程、0(ゼロ)には近づかない。それで、なんなんだろうと正直なところよく分からない。ここでは、実は潜伏期というのを10年間でカットしているが、このあたりの仮定を変えると変わるかなということでやってみたが、それでも結果はほとんど変わらないし、場合によっては、やはり乳がんの場合は、特定のウインドウを使うことも考えた解析が必要なのかなという気がしており、そういうことで、いろいろな先生の知識をお借りして、もうちょっと別の切り口でやってみる必要があるなということで、ある意味で、現地点では慎重な対応になっているということである。

【B委員】
今のケララ州のコホートで他のインデックスで、細胞染体的に何か変化というのがあったのかどうか、どうなんでしょうか。

【A参考人】
インドでは、有名な放影研の早川先生達がおこなった結果がある。不安定型染色体異常(※16)が浴びさせると共に増えていくということが確認されているわけである。インドの場合は、私どものグループの調査をしているが、正直なところを申し上げると、不安定型についてはバックグランドの不安定型の染色体の異常の頻度が高すぎて、なぜ高いのかは分からない。多分、やり方が悪い。ということで、ちょっと国際誌には通らないと思っている。もうひとつはインドのムンバイにあるグループがやった結果がある。安定型染色体は彼らの結果だと増えていない。不安定型は、これも有意に出てたんではないかと思うが、ちょっと正確な数字を覚えていない。あとは、染色体異常を調べたという論文がふたつ、ふたつとも、そういう異常はあるというふうにいわれて、放射線が傷をDNAにつけているということは、彼らの主張によると、実際そうなんだろうと思ったが、あるということになる。

【C委員】
染色体の異常のことが気になったが、基本的に数mSVから10~20mSVの方なんでしょうけども、10ページのところにある多い方で0.6Gyぐらいの高線量の方もおられるが、幅が大きいのは、非常に数が少ないということか。

【A参考人】
人数は覚えていないが、数万人いるが、例えば8ページを見ていただくと、がんでは22例であるのでかなりこの集団は少ない。

【会長】
対照群の平均線量はいくらくらいか。

【A参考人】
対照群はいない。0から49がここの解析では1にする。ただし、線量あたりの実数推定の場合は、ここを1にしているわけではなくて、0Gyが対照だが、こういうふうに線量群を分けてお見せした方が分かり易いということで、この8ページの上の表を作っている。この表に関しては、0から49を対照群としているということである。

【会長】
そこは、さらに例えば10mSV以下と10から49ぐらいのふたつにすると、それは意味がないのか。

【A参考人】
逆に低い所がほとんどいない。

【会長】
比較的、高い人達か。

【A参考人】
そうである。

【会長】
日本と比べれたら、明らかに高い人。

【A参考人】
明らかに高い。ですから冒頭申し上げた通り、本当の意味でのコントロール群というのはいない。

【会長】
どこかインドの別の州でバックグラウンドが似たような、比較的似たような、しかし放射線は高くないという所のがんデータというのは。

【A参考人】
インド全国、全ての州ではないが、いろんな州でがん登録がある。この地域でがん罹患が他の州に比べて特に目立って高いということはない。むしろちょっと低いかなと。

【会長】
インド国内での地域差というのはあまりないということか。

【A参考人】
それはあるが、この地域が高いということではない。

【会長】
他の地域が高いというのが一方では、あるということか。

【A参考人】
肺がんが多い地域がある。一番比較し易いのは、白血病だが先程申し上げたトリバンドラムという地域があって、その地域と比較したデータが、僕のデータですけど差はない。

【会長】
肺がんは、紙巻たばこじゃなくて、紙たばこか。

【A参考人】
肺がんは、ビーディー。

【会長】
肺がんは多いのか。

【A参考人】
他の地域もかなりポイントがあり地域的にみるとここの地域が特に高いというわけではない。ただこの地域は、紙巻ではなくてビーディーという葉っぱ巻たばこ。

【会長】
直接、葉っぱを巻くのか。

【A参考人】
その中にたばこの葉っぱが入っている。

【会長】
台湾のデータは、ビルの鉄筋にコバルト60が紛れ込んだという陽明大学のデータか。

【A参考人】
台湾のデータはそうである。

【会長】
これは、90%あたりの信頼区間がマイナス。

【A参考人】
だから、有意ではない。一部のがんは有意になっている。乳がんは有意になっているという記憶がある。

2 第5回研究会までの被爆線量調査結果についてのまとめ

【B委員】
第3回の本研究会で、最初に被爆線量の検討が行われた「岡島報告書」の検証をだしている。そして第4回の広島大学の静間先生による総括的なレビューをいただいている。そして前回、事務局の方から研究会の資料として大矢先生の報告書が提出されて、これは今回報告する。それから米国海軍医学研究所の調査報告書に含まれていた詳細は会長のほうからご紹介いただいた。これも今回いれさせていただいている。

このような流れでまずは最初に、被爆線量についての方法をまとめている。まず今回のメインになるのが、初期の線量率から推計するという方法である。これはDS86(※17)によって報告されており、測定日はバラバラであるが、この測定日の空間線量率から爆発1時間後の空間線量率を逆算する。そこから被爆線量率を算出するスタンダード的な方法である。この空間線量率の基となるデータは、マンハッタン報告書、九州大学の篠原先生の報告、それから米国海軍医学研究所の報告、そして理研(※18)のネーヤ型測定器(※19)を使いまして測定されたもの。これが前回事務局から提出されました大矢先生の報告書の主たるデータになっている。初期の線量率からの後は、後になればなるほど当然ながら線量率は下がってくるので、土壌中の放射能濃度からから推定するという方法がある。特に長崎原爆の場合はプルトニウム型であったのでプルトニウム(※20)を測ってやれば、他のセシウム(※21)とかワールドフォールアウト(※22)があったものから影響を除外していくということで、この土壌中のプルトニウム濃度から被爆線量を推計するという方法を使われたのは、岡島先生である。第3回のときには、この岡島先生の意見書を資料に出す過程でこの初期の線量率と土壌中の放射能濃度の、この両方使ってIAEA(※23)のTECDOCという方法で推計してみた。こういった全体的な方法がある。

今日は、まず、その4つの初期の唯一のデータによって、比較検証が可能な西山地区を例として被爆線量の比較を行う。特に前回提出されました大矢先生の報告書に示されている数値では、理研などの他の被爆線量などもここで比較されている。それを全面的に使っている。それから矢上地区、こちらは篠原先生のデータはないので、マンハッタン、海軍、理研、大矢先生、また静間先生のレビューの時に、理研のデータを使って静間先生も推計されている。それから最終的に岡島先生の報告書と私の推計と、全部これをまとめている。

まずこれが生データになり、西山地区の各測定日における空間線量率(※24)を示している。ただ、測定の方法が違うので出てくる単位が異なっている。それで今の標準的な単位であるμ㏉/hに換算している。換算するにあたっての出典は、大矢先生の報告書、及び最近基本的に使われている換算式を使っている。そうしますと一番最初に測定されましたマンハッタン調査。GMカウンター(※25)という器械を使っていて、大体この範囲。その測定日における範囲。大体10μ㏉、10μSv/hくらいが、一般のGMカウンターあるいはフィールドメーター(※26)だと、かなり連続音が鳴る程度の線量で、測定の間違いは考えられないくらいの線量である。それから篠原先生はローリツェン型測定器(※27)で、これはかなり場所によってばらつきがある。それから米国海軍医学研究所もGMカウンター。基本的にマンハッタンと同じタイプ。それから理研のグループでネーヤ型、これは単位がJ(ジュール)ででている。大矢先生は1ジュール=1.73μR/hという換算式を使われている。且つ、ここで出てきたμR/hから私がμ㏉に直している。そういう換算である。それでこういう4つが比較ができるわけであるが、そうすると大体この範囲に入ってくる。ということでこれは測定器における空間線量率の比較である。次にそこからDS86の式。こちらで、べき乗で、-1.2を使っているが、この換算式で爆発1時間後の空間線量率を比較するとこのような形になる。

理研が倍に大きく上がって、それだけ測定日と爆発の間の間隔が長いが、それが逆算すると大きくなるということで、こういう範囲になっている。ぜんぜん違う方法ではあるが、これぐらいのだいたいこういうばらつきのどこかに入ることが言えるかと思う。100mGy/h位の線量は、普通のサーベイメーター(※28)、或いはフィールドメーターがあるが、それの測定の上限を超えるとかなりのピッ、ピッ、ピッと鳴る程度の線量が、実際に測定したら1時間後にはあったというふうなことになる。

そこから今度は無限積算、積算していきまして、ずーっと生活していた場合にはトータルして累積線量としてどのぐらいだったという事を示している。そうすると当然ながら400、あるいは500といったところから、高いところで800ということである。これはつまり自分が被爆をするというわけではなくて、そこの空間線量を累積するとこれだけになる、そういう意味であるが、大体この程度の範囲に入ってくる。これは一番データがたくさんある西山地区の調査データ、この程度ばらつきがあるというな所である。

次に矢上地区に移るが、それと全く同じ方法で矢上地区を測定したデータである。これはマンハッタン報告書に記載されていたこのあたり矢上地区。道路沿いでGMカウンターで測定している。先ほど言ったように十分音が鳴る、検出できる、探すのに苦労するようなことではない、もう点ければすぐ数値が出るくらいの線量域になる。その中で最も高かったのが、0.19で、単位はmR/hである。ここをまずひとつのポイントとして使うということになる。それから米国海軍医学研究所は前回、会長からいただいたコピーをそのまま掲載したのですが、ここに矢上の記載がある。大きくしますとこちらで、80μR/hという数値がある。これ一本にしかない。これを使う。それから理研のネーヤ型、これはかなり広範で島原半島までいって測定している。最もフィールド調査には適した頑丈な測定器といわれているが、一番高いところで70.3という数値がある。単位はJ(ジュール)で、ここからR(レントゲン)にかえてμRというわけだが、そこで推定の方法によって数値の違いが出てきますが、これがオリジナルの数値70.3となる。

これを使って、まず、測定したときの空間線量率であるが、これは大矢先生の推定というか、換算されたものをマンハッタン、理研と使っている。それから米国海軍に関しては先ほどのデータは私の方で換算をしている。大体、このあたりに入ってくるが、比較の対象という事で西山地区と比べてみると、これが西山地区を測定したときの空間線量率で、この3つが矢上地区、これぐらいの差はあるわけだが、15から0以上の数値が出ている。これは地域間の比較。

ここから爆発1時間後の線量率を逆算したものがこちらになる。先程の西山地区と同様に、測定日と爆発日の間の間隔が長いので理研がどうしても高めに出ている。マンハッタン米国海軍はこういったところである。これはいずれもマンハッタンと理研はともに大矢報告書に記載されている数値。それから、米国海軍は私の方で計算したものである。計算式は全部同じ。今のこのデータから無限の線量を計算する。さらに、この他の3つ以外の報告、或いは、推定と比較するために、これは最大実効線量mSvになるが、その場所における無限の線量を組織吸収線量、体の組織が吸収する線量が換算すると、これは0.7を掛けるが、それが、ほぼ実効線量となる。無限線量を計算して次の0.7を掛けて、実際、人が受ける線量としてあらわしているのが縦軸mSvということになる。そうすると、当然、マンハッタンと米国海軍、理研の関係というのは、20mSvから60mSvの範囲に入っている。マンハッタンの大矢先生の試算では、このあたりに推計されている。それから理研のネーヤ型のデータですが、先程申し上げました様にJ(ジュール)と出てきますので、それをどう換算するのかというところで話が変わってくる。大矢先生は先程の1J=1.73μR/hこれは理論値である。理論的な関係から導き出されている数値である。それに対して、静間先生が前々回に発表していただいた時にお示された線量評価というのは、西山地区におけるネーヤ型の測定データ、J(ジュール)と西山地区はDS86できっちり線量評価されているから、その時に、DS86の実際の線量の関係を使って、そのまま矢上の方にもってきておられると。これは、岡島報告書にもまったく同じようなロジックである。西山地区のプルトニウム濃度と西山地区のDS86の線量を一致させて、そこから比例で計算しておられて、全く同じ方法。静間先生は、そういった方法で推計されている。だいたい20をちょっと超える程度というデータを別の資料で示されている。岡島先生の報告書では、これが25、私の推計でも23.5だったが、だいたいこの範囲に入ってくる、しかも測定器も違うが、マンハッタンと海軍は同じ測定器であるが、場所は微妙に違う。それから理研に関しては、全く別の測定方法。それからこちらは、土壌汚染から、こちらも土壌汚染と空間線量率からという、全く違う方法であるが、線量評価を考える、いつも測定しているという立場からいうと、この程度の範囲に70年前のデータが入ってくると、逆にちょっと驚きなところがある。以上です。

【会長】

一応今日でこの被爆地拡大地域の代表的なポイントが示されているわけであるが、もっとも高いところでどのくらいかという推計のデータの総まとめということで、それを確定するという意味でもご質問をいただきたいと思う。

【A傍聴者】
挙手

【会長】

これは、フロアからのご質問は受けていないのだが。

【A傍聴者】
大矢先生が今日みえていないので、代わりに訂正を。

【会長】
どんな訂正か。

【A傍聴者】
大矢先生は、単位のジュールは間違いだとずっとおっしゃていた。あれは単位はジェイという単位。

【会長】
ジュールではないということか。

【A傍聴者】
はい。それは、大矢先生、前々からおっしゃっていた。

【会長】
それでは、大矢先生のところはカットしましょう。今日は。大矢先生にもう1回確認しないといけない。ジェイというのはジュールのことではないのか。

【A傍聴者】
違う。

【会長】
B委員、なにかご意見があるか。

【B委員】
中根良平先生の資料で、大矢先生もこれを使われておられる、全く同じデータであるが、これはいわゆるジェイ、要はジェイと呼ぶか、私はジュールと呼んでおりましたので、エネルギーだと思っていましたから。

【会長】
普通、エネルギー単位のジェイはジュールなんですが。

【A傍聴者】
いや、そのジュールではなくて、ジュールと違うジェイという名前の単位だというふうに大矢先生おしゃっている。

【会長】
そうですか。それでは、それは、ジュールとの関係をさらに詰めないといけない。それでは、大矢先生の推計からすると理研のデータが一番高い値なんだから。そこをチェックしなければならない。後は、ちょっとその問題が残る。なぜ、高いのかということについて、B委員なにかご意見はないか。もうちょっと低くなるのか。そのジェイの定義が違うということで。

【B委員】
ネーヤ型電位計というのは、実際見たことも、使ったこともないから分からない。ただ、今回、静間先生の推計と、もともとデータ同じなんですが。

【会長】
理研の生データはもともと同じなんでしょう。

【B委員】
同じである。

【会長】
それをDS86の方から導いていったのが静間先生の方か。

【B委員】
いや、両方ともDS86は同じだが、1ジェイから大矢先生はレントゲンを理論的に換算しておられて、静間先生は、西山地区における実測値とDS86による推定値を使って、比例的に換算しておられる、ということの違いがある。実際に線量値はなんでもそうだが、測定したときのいわゆる構成である。それがだから、果たして、そのジェイという単位が当時の何ミリレントゲンに相当するか。その実測でも構成値が果たして有るのか無いのかというのが分からない。理論的にジェイは何ミリレントゲンに相当するか書いておられるが。

【会長】
今日は、大矢先生のデータを使いますよ、とはまだお知らせしていなかったので、提供はいただいたが、ジェイ、ジュールの問題がでてきたので、これは、あとでもう1回詰めるということで。しかし、だいたい20mSvを超える値が推計されているということは間違いないところである。よろしいか。これについて、他の委員の先生方。

他にいろんな研究がされているかというのも、同時並行してみてきているが、ここにあげた、マンハッタン調査団以下の報告書以外にはもうないだろうと、だいたいここで確定をしなければいけないと思うが。それでよろしいか。もっとも高いところで20mSvを超えていく、しかしそんな100mSvを越えているところはないと、一番高い推定値でも今のところ理研の推計の60、これは訂正される可能性があって。大体そういう結論でよろしいか。

近い将来全体をまとめなければいけないが、実際の被爆地拡大地域でそこに永久におられたという仮定での実効線量が20mSvを超えと、最大値が超えるだろうというところで、もう少し細かいところを詰めていくということで、この議題は終わりにしたいと思う。

3 低線量被ばくに関する人体影響の研究論文の調査結果について

【会長】
これまでの原爆被爆者の研究から先程のA参考人のところでも出てきたように、だいたい200mSV以上からがんが増えることが検出できるだろうと、200mSV以下、或いは100mSV以下では、検出できないということだが、最近幾つか論文が立て続けに出ており、もっとも最近出たものを今日はご紹介する。

先程、A参考人がちょっとこれに触れられた、INWORKSという国際研究の論文のデータである。私の情報提供シートの1ページ目をご覧ください。研究の課題は、日本語に訳すと職業放射線被ばくのがんリスクということで、フランス、英国、米国の3ヵ国原子力施設労働者の後方視的、ちょっと難しい言葉ですけど、過去に遡って研究したという意味である。これは。英、米、仏の疫学専門家が14名、連名で米国疾病コントロール・予防センター、日本厚生労働省、フランスの原子力企業のAREVA、米国立労働安全・健康研究所、英国エネルギー省および健康省、国際がん研究機構(IARC)というのがあるが、ここがデータを管理して、研究費用を出して提供した研究論文の報告である。

研究の目的は、長期間にわたる低線量の被ばくである。労働のたびに毎日浴びていくわけだから、その低線量、率というのもあるが、放射線被ばくは固形がんの発症リスクをもたらすか、固形がんの発症が増えるかというクエスチョンで、それに対する答えを出そうということで1943年以来の3ヵ国におけるマンハッタン計画がスタートで、原爆の材料を作るマンハッタン計画に従事した人も含んだ原子力産業に従事する308,297名の労働者のつい最近までの長い期間に渡る被ばく線量モニタリングのデータと、どういうがんによって亡くなった方々が何人かということから関連づけをするということである。

がんによる死亡に対する1Gy、1000mSV当たりに換算して過剰相対リスクをERRと計算しますが、例えば2倍に増えていれば、2対1で1という値が出てくるわけである。過剰相対リスクはそういうことである。これの追跡の総量は、8.2百万人年、観察年数を先程のがんの死亡者の17,957人に掛けていくと8.2百万人ということである。この研究は以前には15ヵ国の研究として発表されたが、その時から大幅に死亡例が増えて、

66,632人。そのうちがんの死亡は17,957人。そういうふうにがん死亡者が長期間のフォローアップ期間がおかれたので、とれるようになったということで、非常に増えている。

研究の結果ですが、線量が上昇するとともに直線的に、これは比例してということで、がん死亡率の上昇が確認されている。問題の被ばく線量がどれくらいかということだが、これは大腸レベルでどのくらい被ばくしたかという、そこでの平均値として表されているが、

20.9mSVである。中央値というのは、この1万7千数百人の被ばくの中央値は4.1mSVですから、かなり低い線量の人が沢山おられるわけである。非常に高い人が一部がおられて、平均は20.9mSVになっているということだと思う。それから、続いてデータが出てくるが、白血病を除きまして、全がん死亡率は積算線量に対して48%/Gyですから、1Gyに換算して約48%ですから約50%増しのがんの発生が起こると、その信頼区間は20~79%である。まあまあの範囲にある。それから、全固形がんで、これは、上の全がん死亡率というのが、非常に稀な珍しいがんも含めた全部の値である。普通にみられる固形がんだとその死亡率に対しては47%/Gyという数字が出ている。信頼区間は18~79%。この時にいろんな問題がやっぱりありまして、就職して仕事を開始される時に、みなさん成人であるが、もうがんが既に体内に発生しているという場合もありうるし、健康診断も受けてはいるんでしょうけど、見つからないということもある。だから、最初の10年間にがんが出た場合は一応除くというラグタイムをおいている。これは、一般的にとられている方法で、これを5年と短い期間でした場合、それから、さらに長く15年、これは放射線を浴び始めて15年間の間に発症した者は除くということで、なるべく、長期間、被ばくしたことの影響が直接みれるような、がんの死亡をみていこうということである。結果は、10年のラグタイム、5年のラグタイム、15年のラグタイムも全部比較しているが、ERRのリスクはほとんど同じであった。除くことによって、そんなにオーバーにERRのリスクが動くことはない。逆にいいますと、ほぼ放射線による発がんをみてるのではないかということを主張している。それから国別で、3ヵ国のそれぞれを1国づつのデータでみていっても、3ヵ国間の差はなくて、ほぼ同等だったということである。それから、被ばく線量が被爆地拡大では非常に重要なポイントになってくるが、100mSV以下、0~100mSVの被ばく線量の区間におけるERRリスクがどうかということが一番ポイントになってくるわけであるが、正確さはやや劣るけれどもそれ以上の低線量区間100~200mSV、200~300mSVという値がある。ERRリスクと同じであると、それが下にかっこの1,2,3で示した通りで、一番上の0~200mGyが1.04/Gyで、それから2番目が0~150mGyで0.69/Gyこれは、ちょっと下がる。それから、0~100mGyが0.81、ここは、上のふたつに比べて信頼区間が非常に広くなっている。0.01から、マイナスにはなっていないが、1.64。交絡因子(※29)として、たばこ、喫煙の問題、特に肺がんについてある。それから、原子力産業に就職される前に他の職種の仕事をしてこられた方は、もうひとつ発がんに関係するアスベストの暴露歴がぼちぼちいて、それらが影響しているのではないかということで、両方とも肺がんとか胸膜の腫瘍が出易いがんですが、従って、肺がん及び胸膜の腫瘍を全部除いて、他のがんの腫瘍だけで比較するということをやってみたけれども、結果はほとんど同じであったということである。だから、あまり大きい影響は起こしていないと。これは疫学的な観点からいくと、交絡因子というのは非常に慎重にやらないとというか、検討しなければならないので、大事な所見だと思う。

本研究の短所としては、被ばく線量の測定は職場がいろいろあって難しい。最大の努力がされているが、測定誤差がある程度はあるということが留意しなければならない、というふうに書かれてある。今のそのネガティブリスクの話なんですが、それを0~600mGyまでのところで、どのくらい過剰が出ているかということを、相対率という。ネガティブリスクではない。特別な疫学のエピキュアーという方法で線量反応があるかないかというトレンドをみているわけですが、こういうふうに直線的に右上がりに上がっていく。この比例関係が重要なわけで、科学的ということで、そういう所見であるということである。それから表A2ですけれども、これは、この直線が正しいと一応仮定して、線量を5mSV以下を、5<10、10<20、20<50と一番左の縦のラインですが、細かく線量区分を分けて、そこの平均線量が次に書いてあるが、0.6、7.2、14.3というところで、これはずーっと上がっていくのですけれども、630.8まで。そこに属する人達が何人いて何年間観察したということで、一番上の5mSV以下は平均線量が0.6mSVで、6百8万9千人年ということになる。その観察期間中にがんが10、433人がんで亡くなれたということである。そういうことで、ずーっと計算値が出ている。その計算値が要するに観察された2,065という数字は、過剰がどのくらいかということからいえば、5<10mSVの2,065は、7.1人の過剰があった。それから、10<20が2,026人で14.3人の過剰があったというふうにして、過剰が32.2、37.9、27.0、それから上は、かなり線量のところも人数が少ないので過剰も少なくなっていく。一番多いところで話をするとそういうことである。これに過剰がでてますよということがデータとして示されている。

その次のページは、図S1ということで、これは、補助的な図が電子版に載っているが、これは100mSV未満のところに注目して、相対率が上がるかということをみている。点線のラインが1からずっと上がっていくのが分かる。これが、統計操作で直線的なモデルができるということをいっている。それから3ヵ国の国別のERRが下に書いてあり、フランスが90%の信頼区間がかなり広く、下がマイナスにかかっているが、あとは、英国と米国がほぼ一緒で、全体としては既にお話ししたように0.47、1Gyあたり47%ぐらい増えていると。これが低線量区域までずーっと同じ率だということをいっているわけである。この論文は。

この研究で新たに得られた知見として著者らが上げているのが主に4点で、長期間にわたる低線量率放射線被ばくによるがん死亡のリスク上昇が確認されたわけである。これは、本当に長期間である。それから30万人という職業被ばく対象者は世界最大級でして全て成人で、男性が90%以上である。3番目にこれまでの高線量被ばくの方がより危険であるとみなす考え方がありましたが、本研究で低線量被ばくでも、より高線量、且つ、短時間被爆の広島と長崎の原爆被爆者で観察されたリスクと同等のERRリスクが認められたということで、これは、専門的ですけど、DDREFという略語で呼ばれる、線量率が高いところと低いところで比べるとこれまでの公的な機関が設定した放射線の強さ、生体に与える健康影響の強度が線量率が高いと原爆被爆者のように1.5倍になるとか2.0倍になるということが公式の見解としてこれまで発表されてきたが、今回のこの調査からいえば、それは、それ程でもなくて1か1ちょっとくらいだろうというふうに彼らは述べている。ということで、以上の成人における低線量率被ばくによる人体影響の知見は、今後の放射線防護の基準策定の強化につながる知見であるということを主張している。

これは、私の個人的な意見なんですけれども、3ヵ国の成人の原子力作業者30万人の本調査で、低線量率の被ばくにおいて、0~100mSVの範囲でもわずかながら、これはかなりわずかです、リスクが生じることを否定できない結果が得られていると思う。被爆地拡大地域住民の方々のいまのところ推定値が20mSV台くらいになっていますが、そこが含まれているわけである。

そういうところで、健康影響を被爆地拡大地域住民のことを考える場合もこのデータはある程度使えるといいますか、慎重に検証しないといけないというふうに思う。これまで、プルトニウム測定に基づく岡島報告書やその他、この間、B委員が総括していただきましたような20mSV超えるような積算線量があるということで、これがわずかながらでも健康影響があるというひとつの根拠になる論文というふうに考える。ここにINWORKSのスタディというのが、もうひとつは白血病の悪性リンパ腫が去年既に発表されていて、これは前々回からここで検討していただきましたけれど、まだ、統計的手法に少し疑義があるということが委員のひとりのE委員からも指摘されているのですが、今、そういうところをいろんな疫学専門家の意見を聞いてどの程度信頼できるものかということを調査している。ということで、私の情報提供シートの説明は以上ですが、委員の方々からご質問を受けたいと思う。

【A委員】
会長ご指摘のように、このデータは今まで線量率が低いとがんのリスクが下がるということで先程、A参考人が出されたデータとは異なる所見を報告されているということで非常に重要なデータだと思う。

【会長】
今日は一方でA参考人のご発表があったように、インドでは全然影響が現れていない、一方でこういうふうに表れているというようなことがあって、大変難しい問題が、検討しないといけない部分が沢山あるんじゃないかと思うが、白血病は悪性リンパ腫の方でも低線量でも影響がある。それからこのデータでもある。

あともうひとつは、みなさんご記憶だと思うが、子どものCT検査のデータが今どんどん出てきていて、60万人台のオーストラリアの子ども達もかなり線量関係が出ており、世界中で低線量域の人体影響の新たな研究の見解があっている。それを、最大限に我々も取り入れて被爆拡大地域の人達の人体影響があるとすれば、データを推定していきたいと思う。

あとひとつはその被ばく地域の方が実際にどういう病気で亡くなられたかと、これまでの方々が、そういう疫学研究が本格的になされてないが、精神的影響調査はかなり本格的なものが行われ、それはポジティブな結果が出て今の精神的な疾患をお持ちの方に対する医療支援というのか、制度というか、研究体制としてはそういう体制が置かれて、実際、補助も行われているが、まだ、人体影響の最大の問題であります、がんの発生に関しては、結論が出ていないということで、我々の委員会のひとつの大きな役割がその点を明らかにするということで、そろそろ結論を出す時期にきているわけですけれども、これで論文はだいたい出そろったんですが。

【C委員】
ひとついいですか。この論文の読み方ですけど、被爆者の方のデータでは、どちらかというと高線量での直線関係を被爆量とリスクのですね、それを低線量に引っぱって階層してということをやってきたわけですが、この論文では30万ぐらいの方のフォロアーがいて、低線量の方が非常に多いために0~600mGyの間で、直線性は確認できたと、それは、被爆者の方のデータと違うとこだと思うが、でも2ページの図ですか、Relative rate(※30)ですよね。全部、結局95%信頼区間が1をまたいでいますよね。ですからやっぱり、直線関係はあるけども、有意に増えているということがいえないですよね。

【会長】
いえないという根拠は。

【C委員】
いえないという根拠はといわれると。

【B委員】
おそらく、直線性を全線量域で検出すれば、ちゃんと有意に直線性があって増加しましたといえると思うが、その直線に載っているポイントが、はたして、原点はもちろん0としても、本当に低いところでの直線性に載るかどうかというのは分からない。というのも今の1ページの資料の(1)、(2)、(3)の積算線量区分をしますと、もう差が出てきていない。だから、直線に載ることは分かるとして、直線に載ってきたそのリスクそのものが有意に0で有るか無いかということは、また別の検討になるわけである。解析としては。それが今の(1)、(2)、(3)に書かれていますけど、それで線量区分で見てみると、いずれも1をまたいでいるわけです、90%信頼区間が。或いは、低いままになっている。それから先程、C委員がご指摘の2ページのFigureにおいてもバーの上と下をみると、もう1をまたいでいると、又は、1以下かもしれないということを示しているわけである。

【会長】
ここでちょっと僕が疑問に思っているのは、日にちが論文に書いていない。

【C委員】
これは、95%の信頼区間をとっているのか。

【会長】
B委員がおっしゃったのは。

【B委員】
そういうことである。

【会長】
これが統計的に有意ではない。

【B委員】
その線量区間をみれば有意ではない。ただ、線量の直線性はある、ということだと思う。ただ、どこまで低いところまでいっても線量の直線性があるのかというのは、それぞれの線量区分の中で有意差が出てくるところまでは、ちゃんと直線性に載るでしょうと、それ以下は分かりませんという理解だと思う。ひとつの直線性だけで全て判断できるというわけじゃないということである。

【会長】
直線性は原爆被爆者の場合も直線性が示されている。先程のA参考人の資料の10ページのところに、これがだいたい直線性がある。放影研の一番最新のデータの小笹先生が出されているのをみてると、小笹先生の論文にも0から200mSVの範囲が、0から0.2Gyだから200mSVである。リスクが固形がんに対して0から0.20Gyの200mSVまでの範囲が直線性があると。いわゆる閾値、これが事実上は、0(ゼロ)だということで、だから、ここが、我々に今後、検討が残されているところじゃないかなと思っている。直線性が統計値なのか、どうかということなんですよ。エピキュアという開発ソフトが開発されて、これは放影研のプレストンさんという方が開発したが、これである程度の傾きがあって、直線性があることを統計的に処理する方法が、このほとんどの論文で使われている。だから直線性がみられることを、統計的に有意な直線性だと、傾きをもった直線性だというソフトというふうにもみれる。そこがポイントで、その点をA委員、何かご存じないか。プレストンさんが開発しているエピキュアという。

【A委員】
エピキュアはちょっとあまりよく知らないが、いっているのは要するに、例えば0から100までなら直線性はみられないけれど、200mGyまでとれば直線性がみれると小笹先生の論文はいっている。

【D委員】
いいですか。今のA委員のに。この小笹論文は要するに0から0.01きざみでずっといって0.19までは直線性にならなかった、0.2になって初めて直線性があったという、単に回帰の手法モデルであってそれが有意であるということと、その0.20以下で、いろんな健康状態に有意差があるというのは別の問題である。あくまで、回帰のモデルにあてはめたということである。だからそれを分かり易く説明ができないところでいつも混乱している。

【会長】
小笹先生の論文も閾値が実質上0だというのもそういう意味か。

【A委員】
そうである。200まで引けば、閾値は0で回帰する。

【会長】
そうするとやっぱり放影研のデータは200mSVまでが有意なのか。

【D委員】
有意というか、ちょっとどうしても分かり易く説明できないが、だから直線性とそれ以下での個々の個体の有意が話が別ということである。だから、いつもそのモデルにあてはまってあって、それでオッケーで直線引けたよということであるが、そこが別問題というのをどうやって説明していいのかちょっと分からないが、とにかく直線性のモデルにあてはまったということと。

【会長】
人体影響とは直接関係ない。或いは、検出できていない。可能性はあるけど検出できていない。

【D委員】
そういうことである。検出できていないと思う。

【会長】
否定はできない、とこのいい方は。

【D委員】
否定はできないというか。

【会長】
いやいやこれはずーと100までは影響が有ると書いてある。100以上はね。

【D委員】
はい。そうである。

【会長】
そこが直線性に載っているデータがいっぱいあって、そこで突然もう影響がなくなってしまうということは、逆に考えにくい。ICRP(※31)はある程度そういう考え方をしていると思う。

それから、一方、胎児の影響の評価を調べているが、子宮内で胎児が放射線を浴びた時にX線検査で浴びるが、そのデータでは、非常に低線量で影響が出ている。それが、一応ICRPとかでも、一応認められているようである。そういう意味で胎児では認められて1歳以下、以上の子どもを含めた人体影響としては、今のところ100mSVぐらいが最低値だとなっていて、そこを覆すようなデータが本当にこういう論文のデータなのかどうか、これをもうひとつ明らかにしないといけないな、というのが、今の私の考えである。この論文の、今ご紹介した論文の最後にも放射線保健の基準に影響を与えたということを書いている。

【B委員】
今日せっかくA参考人の資料がありましたので、これで比較できるので、そこだけちょっと発言します。今回のこの論文の結論のうちのひとつでDDREF=1.0いわゆる被ばく者と、それから今回のこの原発労働者との変わらないということですが、ちょうど今日のA参考人の資料で11ページで原爆被爆者固形がん罹患、1Gyあたりでの換算すると0.47、それが今回のこの論文では0.47ですから、だいたい同じくらいというのがここから比較できると思う。

ですから、前回のこのINWORKSの前の15か国の時のデータがここの11ページ一番上が0.97ですけど、これはかなり高いところを引っぱってましたので今回ちゃんと精査したら0.47くらい、やっぱり被爆者の場合と同じくらいあると、DDREF=1.0という多分結論につながるのではないかと思う。これは、1Gyあたりの換算ですから、その低くした時にどうなるかというのは、A参考人がおっしゃった通りである。

【会長】
他に何かご指摘はないか。

【C委員】
今のB委員のは、1Gyでの計算上は47~48%ぐらいだけど、もうちょっと線量率の低いところでのDDREFは変わってくるんじゃないかということか。

【B委員】
そういうことである。

【会長】
はい。それでは今日はこれで終了とします。

(次回の開催について)あとは、小児のCTのデータが出ることが非常に大事なところかなと。今、EUのグループが100万人規模でやっているので、そういうものが9月までに出るんじゃないかと一応期待をしている。それで我々は最終結論、低線量の問題は、ある程度の結論を得ることができるかなと期待している。よろしいか、9月。場合によっては、論文がいつ頃出るかということが分かった時点でちょっと延ばさなければいけない場合もある。

それでは、今日はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。

〈用語解説〉

※1 ラジウム226
ラジウムがアルファ崩壊してラドンになる。なお、ラジウム224、226、228は WHOの 下部機関 IARC より発癌性があると勧告されている。
ラジウムそのものの崩壊ではアルファ線しか放出されないが、その後の娘核種の崩壊でベータ線やガンマ線なども放出される。

※2 ラドン
希ガス類元素の一つ。元素記号Rnラジウムの崩壊に際して生ずる放射性の気体元素。

※3 アウトカースト
カースト制度の外側にあって、インドのヒンドゥー教社会において最も差別される人々である。 アチュート、アンタッチャブル、アウトカーストもしくはアヴァルナと呼ばれ、不可触民は自分たちをダリット(Dalit)と呼ぶ。

※4 モナザイト
モナズ石(モナザイト)は、鉱物(リン酸塩鉱物)の一種。ペグマタイト、花崗岩、片麻岩、砂岩などに含まれる。通常、小さな孤立した結晶として発生する。モナズ石はしばしば砂鉱床で見つかる。インドの鉱床は特にモナズ石に富む。トリウムやウランを含むことが多く、弱い放射能を持つ。トリウム鉱石としても利用される。

※5 チタン
原子番号22の元素。元素記号は Ti。金属光沢を持つ遷移元素である。チタンは酸化物が非常に安定で侵されにくく、空気中では不動態となるため、白金や金とほぼ同等の強い耐食性を持つ。

※6 トリウム
原子番号90の元素で、元素記号は Th。銀白色の金属。モナザイト砂に多く含まれ、多いもので10 %に達する。

※7 コホート
分析疫学における手法の1つであり、特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率を比較することで、要因と疾病発生の関連を調べる観察的研究である。

※8 カースト制度
インド特有の身分制度

※9 DCOパーセント
がん登録症例に対する死亡情報のみで登録された症例の割合。DCOが低いほど計測された罹患数の信頼性が高いと評価される。国際的な水準ではDCOは10%以下であることが求められる。

※10 トレンド
統計学では、傾向変動を指す。

※11 ファクター
要因・要素・因子

※12 アルファ線
2個の陽子および2個の中性子(すなわち、ヘリウム原子核)から成る粒子線であるアルファ線は、ラジウム、プルトニウム、ウラニウム、ラドンなどの特定の放射性原子の自然崩壊によって発生する。アルファ線は質量が大きく、正電荷を帯びているため、水中では通常短い距離(1 mm未満)しか進めない。紙1枚でもアルファ線を容易に止めることができる。従って、アルファ線被曝により健康影響が現れるのは、アルファ線を放出する物質が体内に摂取された時(体内被曝)のみである。

※13 ガンマ線
ガンマ線はコバルト60やセシウム137などの放射性物質の自然崩壊により発生する。コバルト60のガンマ線は人体の深部まで透過できるのでがんの放射線治療に広く使用されてきた。

※14 コバルト60
コバルト60は、コバルトの同位体の一種である。放射性同位体であり、半減期は5.27年である。医療用、工業用のガンマ線源として利用される。

※15 センシスティブ
微妙で慎重

※16 不安定型染色体異常
染色体異常は1個の染色体が変化する異常と2個の染色体の間で起こる異常がある。また、安定型染色体異常と不安定型染色体異常があり、不安定型染色体異常は細胞分裂できず細胞死してしまうために時間とともに減少するという特徴がある。

※17 DS86
広島と長崎に投下された原子爆弾による被ばく線量に関して日米の専門家が共同で作成した評価方式。英語名称 Dosimetry System 1986 の略称としてDS86と呼ばれる。

※18 理研
理化学研究所。1917年(大正6年)に創設された物理学、化学、工学、生物学、医科学など基礎研究から応用研究まで行う日本国内唯一の自然科学系総合研究所。

※19 ネーヤ型測定器
ネーヤ型宇宙線計式測電器。放射能を測定する計器

※20 プルトニウム
プルトニウムは、原子番号94で、超ウラン元素の一つである。天然には極微量しか存在しない。Pu-239はU-238の中性子捕獲によって生ずるU-239が、2段のβ崩壊をして生じる。その半減期は2.4×104年である。これがさらに中性子を捕獲すると順次Pu-240、面積が大きいために核分裂物質(核燃料)として利用できる。

※21 セシウム
セシウムは原子番号55の元素。軟らかく黄色がかった銀色をしたアルカリ金属である。ウランの代表的な核分裂生成物として、ストロンチウム90と共にセシウム135、セシウム137が、また原子炉内の反応によってセシウム134が生成される。

※22 ワールドフォールアウト
放射性降下物のことである。大気圏における核爆発や、原子炉の事故による放射性物質の大気中への放出などが原因になり、核分裂生成物を含む放射性の粒子状物質が大気中(または成層圏中)に飛散し、これが生活環境に降下したものである。

※23 IAEA
国際原子力機関(International Atomic Energy Agency、略称:IAEA)は、国際連合傘下の自治機関である。

※24 空間線量率
ある時間内に空気中を通過する放射線の量を言う。平常時や緊急時の環境モニタリングにおける重要な測定項目のひとつである。

※25 GMカウンター
放射線量計測器

※26 フィールドメーター
放射線量計測器

※27 ローリツェン型測定器
放射線の被曝量を測定するのに用いられる検電器

※28 サーベイメーター
携帯用の放射線測定器

※29 交絡因子
統計モデルの中の従属変数と独立変数の両方に(肯定的または否定的に)相関する外部変数が存在すること。そのような外部変数を交絡変数、交絡因子、潜伏変数などと呼ぶ。したがって科学的研究では、第一種過誤(従属変数が独立変数との因果関係にあるという偽陽性の結論)と呼ばれるこれらの要因を避けるよう制御する必要がある。

※30 Relative rate
相対的比率

※31 ICRP
国際放射線防護委員会(International Commission on Radiological Protection、略称:ICRP)は、専門家の立場から放射線防護に関する勧告を行う民間の国際学術組織である

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