ここから本文です。

第6回(平成26年度第5回)高島炭鉱整備活用委員会

更新日:2015年6月2日 ページID:027107

長崎市の附属機関等について(会議録のページ)

担当所属名

総務局 世界遺産推進室

会議名

第6回(平成26年度第5回) 高島炭鉱整備活用委員会

日時

平成27年2月19日(木曜日) 9時30分~

場所

都市センターホテル(東京都千代田区平河町2-4-1)

議題

1 軍艦島コンクリート構造物の劣化調査について
2 端島居住施設の補修について
3 その他

審議結果

1 軍艦島コンクリート構造物の劣化調査について
【オブザーバB】
端島は、高潮等により建築物が塩水をかぶってしまう状況にある。北西風によって生じる劣化外力については、飛来塩分による鉄筋の錆、コンクリートの中性化、コンクリート中の水分状態、及び高台にある3号棟、一番古い30号棟、海に最も近く建っている51号棟で飛来塩分等を調査した。
コンクリート中の水分量が重要で、コンクリートが乾燥していれば劣化、錆は発生しにくい。また、温度が高くなると腐食反応の速度が上がるので、これをベースとして劣化予測を行った。色々な箇所で外部の湿度を測定しているが、湿度が100%を超えているところもある。
当時のコンクリートの水セメント比は、セメント量が253kg/立方メートルで、現在のコンクリートより少ない。骨材とセメントの割合は現在と大きな差はなく、骨材によってはボタを使っているものも各所に出てきた。骨材は、アルカリと反応しシリカゲルを生じて水を吸って膨張し、ひび割れが起きているものもある。鉄筋の腐食はコンクリートが剥落して中が見えるので、それで判断した。また、ひび割れをモニタリングしている。中性化はあまり進んでいない。水分で満たされているコンクリートでは中性化は中に浸透しないが、湿度が60%ぐらいの環境であると中性化が進む。端島はそのような環境にないため、中性化はあまり問題にする必要はない。塩分の調査は、島内の多数の箇所で実施した結果、当時はコンクリートに海水を混ぜていたという可能性がある。鉄筋位置は、電磁波レーダ法などを使って調べた。増し打ちし、100mmを超えるかぶり厚さがあった。水分で満たされたコンクリートは酸素がなく、腐食反応が生じていない。少ないケースだが、奥にある鉄筋は健全かもしれない。外壁面は早急に何とかしなければ危ない。調査で端島を訪れる毎に、浮き、目視可能な損傷、剥落と繰り返されている。劣化損傷度の評価を通常の区分から端島の評価基準へ当てはめ、グレード1)~5)で劣化損傷度の評価を行った。16号棟から20号棟まで、階ごとに柱と梁で分けて、グレード3)、4)、5)がどれぐらいあるかを見たが、どれもそう変わらなかった。柱より梁のほうが劣化が進んでいる。高さ方向では上のほうに行っても劣化はひどい状態である。
70号棟は、基礎部分が洗掘され、片持ち梁状の振動を励起しており、いずれたわんできて倒壊しズルズルと全部引きずり込まれるのではないか。16号棟では、振動解析をするためにフレームモデルを使い、耐力がどれぐらいなのか最先端の解析技術で評価をした。その結果、この建物の劣化状態では高波、潮風ぐらいの横力を受けても倒壊する可能性があることがわかった。
護岸は、70号棟のように洗掘されている箇所が16号棟の北西付近にも見られ、早期に補修しなければならない。

【C委員】
内部に水分が補充されていれば中性化は進まないということで、内部の剥離や鉄筋の腐食を止めてしまえば延命は可能か。

【オブザーバB】
ひび割れて鉄筋がどこにあるかわかるものは駄目である。電磁波レーダを使わないとわからない鉄筋については何も起きていないだろう。

【C委員】
建物が倒れる直前というのは一気に傾いてくる。調査を行う必要があるのではないか。

【オブザーバB】
3次元計測装置などでモニタリングを自動でできるような仕組みを考えたい。今までは加速度計を使って振動を測定している。

【C委員】
倒壊のときは形状変化が起こるので、早めにデータを取り始めたほうがよい。
どう長期的に保存して安全性を確保するか、今後の検討の中に入れてもらいたい。

【事務局】
16号棟を一部に補修したいと考えており、16号棟の1階部分のレーザ測量は来年行いたいと思う。また、建物の傾きも記録として残したい。

【A委員】
16号棟は中破でも、このまま劣化が進むと倒れる危険があるということか。

【オブザーバB】
中破でも劣化は進行している。被災度判定区分はひび割れ幅でしか評価していない。被災度判定区分の方法をどう適用するか、もう1回判定をしたほうがいい。

【E委員】
調査者が入ること自体も危険であるし、そもそも一般人が入るということはあり得ないということか。

【オブザーバB】
専門家に関しては見解を調査結果に反映する目的で入ってもらっている。

【事務局】
16号棟を部分的に補修しようと思っているが、安全性をいかに確保するかが大きな課題になってくる。安全対策は補修と合わせて研究したい。

2 端島居住施設の補修について
【事務局】
端島居住施設の補修の目的は、端島の居住施設の劣化の進行を抑制する方法を確立させることであるが、現実的には今は保存技術がない。既存の補修工法を用いて部分的に施工を行い、効果の検証、あるいは課題の抽出等を行いたい。1年目から10年目ぐらいにスパンを区切り、1年目、2年目を第1段階として、現場の部分施工、安全対策、屋上の防水の方法や排水管などの方法を検討できないかと考えている。2年目には、現場での部分施工を受けて効果の検証、課題の整理、モニタリング、スケジュールの整理を行う。3年目、4年目、5年目は、施工した見た目や効果、変化の観測、課題の対応策の検討を行い、そこで出た課題、変化観測などを7年から10年でやる中で、第3段階として補修工法を考えていく。屋上の防水は、劣化を抑制していく上で重要なことなので、3~4年目ぐらいから順次行いたい。
保存の基本的考え方と手法は、文化財保護法は現状保存が原則になる。これは2つに分かれる。1つは、現状の形態を維持することで、外壁は色をつけない含浸剤の塗布や、水分、空気などの外的要因をシャットアウトすることでRC構造物の劣化を一定抑制できるのではないかという考え方である。柱、梁、床などは何も手を加えないとそのまま劣化していくため、ケレン、錆止め塗布、錆止め剤注入で錆の進行を一定抑制する。鉄筋等が既になくなっているところの修復はできない。もう1つは、現在の機能を維持することである。これは、「建築時の形態を維持」、「外観の形態を維持」の2つに分かれる。我々としては従前の建築時の形態を維持ができないかと考えている。
内側からフレーム工法をすると形を変えてしまう。外壁は含浸剤塗布、モルタルを塗る。柱、梁、床版は錆止め塗布、錆止め剤注入、FRPグリッド増し打ちによる補強で、引っ張り力、圧縮力を回復したい。これにより、劣化の進行を遅らせることができるのではないかと考えている。

【事務局】
含浸剤塗布とは、コンクリート表面に透明な含浸剤を塗り、表面に撥水性の膜ができて水をはじく方法である。剥落防止工は色々なパターンがあるが、端島の景観を残せる施工法の透明な剥落防止工である。ひび割れの補修は、充填工法である樹脂を注入しやすいようにコンクリートの表面をU型、V型にカットしてひび割れの中に樹脂を入れ、ひび割れを閉じる。コーキングのガンで樹脂を入れるものと、注射器から樹脂を自然に送り込む、あるいは圧力をかけて送り込む方法がある。鉄筋防錆法は、露出している鉄筋の表面全体をコーティング、その後、断面修復して表層をモルタル等で復旧する。断面修復は、防錆処理した後に、元あった形の断面をモルタルで復元することである。鉄筋自体がなくなった場合には、鉄筋を入れる代わりにFRPの格子状の強度部材を入れ、モルタルで重ねて見えなくするという方法が最近採用されている。
炭素繊維系の材料は単価が高いが、端島の現場の作業環境、運ぶ距離を考えると軽い材料、また錆びないため、剛性のアップができるのではないかと考えている。
工事をするときの前提条件の整理をご議論いただきたい。以下、市として提案する考え方である。
外観:「部分変化許容」
形態の外部:「変えない」
形態の内部:「部分的変化許容」
構造:「部分的変化許容」
屋上のガレキ:「撤去」
建物周辺のガレキ:「撤去」または「一度撤去して戻す」
建物内のガレキ:「撤去」もしくは「足場を設置するところだけ移動」
通路のガレキ:日常の維持管理、補修のための通路のみ「必要最小限の範囲で撤去」
現在の姿形を変えないというよりも、必要最小限変えた上で劣化を遅らせる方法を考えていきたい。

【A委員】
前提条件は、それぞれの棟ごとの手法によって適用するかどうか変わってくるのか。

【事務局】
劣化進行抑制は優先順位をつけて手をつけていくものであり、手をつけないところは今のままになる。

【C委員】
基本的には全て倒れることを前提にやらざるを得ない。16号棟の隣が倒れたら16号棟をいくら補修しても倒れてしまう。優先順位というのは建物の価値であると同時に、遺産全体をどう守っていくかということである。屋上の防水は下手すると補修したことで水分量が減り駄目になることもある。ここだけは絶対に守らなければいけないのであれば、隣の建物は今壊してしまうという議論だってあり得る。護岸のほうが緊急性が高い。

【E委員】
安全性を確保した工事というのはできるのか。文化財ということを考える以前に、これは人が入る施設なのか、どういう施設になるのかによって、どういう補強をするのか考える必要がある。構造補強をやらなければ人は入れない。工事の安全性の問題と構造体として維持できるかという2つを先に解決しておかないと次のステップには行けないのではないか。

【オブザーバA】
今の状態を凍結した形でそのまま残せる状況ではない。史跡指定時の状況を維持することは基本であるが、劣化が極端に進行しているものについては、基本的には抑制していくという考え方になるだろう。

【C委員】
このまま朽ち果てるのを待つところと、直すところと、個々の建物ごとに状況が違ってくると思う。隣の建物に影響を与えるものに手を入れなければ、こちらに重要なものがあってもそれは壊れてしまう。最も危険なところは護岸や建物の下のむき出しのところではないか。

【事務局】
護岸は今の形をそのまま維持することはできないと考えている。
護岸の技術基準が海岸法で定められている。ただし、背後に人が住んでいる場合の基準であり、背後に人が住んでいない場合の基準はない。被覆していない護岸は0.2立方メートル/m/秒あると壊れるというデータがあるため、0.2立方メートル/m/秒以下に抑えるような規模で作らせてもらえないかと話をしている。まず手をつけるべきところは護岸の基礎、海の中に空いている穴を塞ぐことと、護岸の天端のクラックが入っているところは埋戻しや断面を厚くしなければいけない。2か所大きく洗掘している西側護岸は、27年度に埋め戻し工事をする。70号棟の建物の下は改良土を圧送して埋め戻す工法を考えている。
建物を長らえるためにはどういう方法がいいのか部分的に16号棟の1階部分で行い、効果を検証していきたいと考えている。

【E委員】
現実的に施工ができるのか。修理をした後に耐震補強などが必要になってくるのか。

【オブザーバB】
劣化が進行しているという状況の中では、補強・補修工事の仕方を考えないといけない。1、2年、補修工法、工事の仕方を検討した上で施工を試行してみる必要があるのではないか。工事における安全性確保、かつ効果が高いものを抽出した上で施工したほうがよい。

【C委員】全体としてどこにどう手を入れたら何年もつのか調査して欲しい。個別にやっていても、1つ崩れたらほかにも影響を与えて全体の価値がなくなる。積極的に壊すということを認めざるを得ないかもしれない。

【E委員】
耐震補強は必要か。

【オブザーバB】
耐震診断をやればIs値は絶対足りないだろう。Is値0.6立方メートル/m/秒以上を確保するような補強をしたほうがいいのか、するのかというのは我々の判断ではない。補修の工法を考えていく上では前提条件を早めに示していただきたい。

【E委員】
人を入れるのか、入れないのか、建物をどういう施設にしていくのかによって修理の方法は変わる。そこを決めないとスペックが決まっていかない。
「部分的な変化の許容」は「復元」と言い換える。削れたところを充填するということで復元する。これは文化財保護的には正しい方法である。構造のところの「部分的な変化」は「構造補強」と言ったほうがいいのではないか。復元と構造補強と分けると文化財としてはわかりやすい。

【B委員】
全体的な土木構造物のマネジメントが必要であるということについては、道路公団がノウハウを持っているのではないかという話もあるので事務局で調べてもらいたい。
建物等については、研究機関との連携も図っていただく必要がある。
前提条件の整理に関しては、「部分的変化」は「復元的な措置」ということで、文化財保護上も許容して何ら問題はないだろう。構造のほうは「部分的変化」というよりも「構造補強」とするというご意見をいただいた。当然外観の形態は変わるが、やっていかないともたないということだと思う。
ガレキについては、事務局から撤去という方針を提示されている。私は撤去は妥当と考えている。撤去すれば、その後、剥がれたときや落ちたときに状況が把握しやすい。ガレキを放置しておくことは建物を長持ちさせるのに対してプラスに働くことは絶対ない。

【事務局】
ガレキは必要最小限の撤去をしたいと考えている。

【E委員】
計画書にそのように書いておけばよい。ヨーロッパ型の遺跡は石が倒れた状態で置いてあり、遺跡の表情をよく見せるが、ここではそれが果たしてできるかどうかということを含めて考えるべきである。

【B委員】
遺跡としての景観的な観点にも配慮を払う必要があるということである。護岸についても、部分的な補修等だけではなくて、全体として護岸をどうしていくのかということもしっかりとまとめておいたほうがよい。

【事務局】
護岸整備については前提条件を九州整備局に投げかけ協議している。景観がこう変わるというものも委員会でご意見をお伺いしたい。

【B委員】
経費の点が心配である。長崎市が補助事業を受けるとしても、主体としてやっていかなければいけない。世界遺産に登録されるような国民的な資産であるとすれば、長崎市だけにとどまらず、もう少し広い範囲から財政的な支援を受けられるような仕組みも考えておく必要がある。

【E委員】
最初からお金がいくらかかるのか心配していた。イニシャルコストだけでなく、メンテナンスにもお金がかかる。見通しを持っていないと、後々大きな負担になる。

【事務局】
いくらお金がかかるのか出すためにも試験的にやってみたい。金額次第では、全体を守れるのか、部分的に守れるのかということになる。この委員会の後半に議論をお願いしたい。

【E委員】
全部残ることはあり得ない。具体的に果たしていくつやれるかというところに来ている。

【事務局】
研究を今後も続けていかなければいけない。資料に体制図をつけている。この補修に際しての工法、安全対策の方法を専門家に研究していただこうと考えている。地元の大学には現場のデータの収集などお願いしていきたい。

3 その他
【事務局】
次回委員会は長崎で開催を予定している。3月22日(日曜日)に池島、中ノ島の現地視察、23日に委員会を開催する。

お問い合わせ先

総務部 行政体制整備室 

電話番号:095-829-1124

ファックス番号:095-829-1410

住所:〒850-8685 長崎市魚の町4-1(9階)

アンケート

アンケート

より良いホームページにするために、ご意見をお聞かせください。コメントを書く

観光案内

平和・原爆

国際情報

「行政運営・審議会・指定管理者・監査」の分類

ページトップへ