ここから本文です。

施政方針(平成19年6月21日)

更新日:2013年3月1日 ページID:022913

施政方針(平成19年6月21日)

平成19年6月21日、平成19年第3回市議会定例会の冒頭において、田上富久 長崎市長が市政運営に対する所信を述べました。

目次

(前文)

  1. 変革の時代=「地域力」が試される時代
    1. 時代の基本認識
    2. 地域力を高めるために
  2. 市政に臨む基本スタンス
    1. 市政を身近なものにする
    2. 力を合わせる
    3. 「今、長崎に必要なこと」を見つける
    4. 「5つの市民」を考える
    5. 都市経営の視点を大事にする
  3. まちづくりにおける基本的な考え方
    1. 子どもからお年寄りまで多様な世代が輝く、豊かで安全・安心なまち
    2. 機能的で快適な住みたいまち
    3. 産業を戦略的に育てるまち
    4. 長崎の文化が薫る魅力的なまち
    5. 平和の心を世界に広げるまち
    6. 合併地区の個性と歴史が息づく調和の取れたまち
  4. 平成19年度の新たな取り組み
    1. 地域力の向上への取り組み
    2. 防災や危機管理の向上への取り組み
    3. 子育て支援の充実への取り組み
    4. 福祉と健康の増進への取り組み
    5. 産業の活性化への取り組み
    6. 平和の心の発信への取り組み
    7. 合併地区の活性化への取り組み
  5. おわりに

前文

平成19年度の補正予算案をはじめ諸議案のご審議をお願いするに先立ち、議員の皆様、そして市民の皆様に、私の市政運営に対する基本的な考え方を述べさせていただきます。

まずはじめに、これまで12年間、市政の舵取り役を務めてこられた伊藤前市長が、選挙期間中に暴漢に銃撃され、その凶弾の前に志半ばにして倒れられました。改めて伊藤前市長のご冥福をお祈り申し上げますとともに、施政方針のご説明の冒頭にあたり、このような暴力を決して許さない安全・安心な地域社会の形成に向けて、先頭に立って取り組んでいく決意を、まずここに表明いたします。

行政対象暴力に対しては、以前にも増して、組織として毅然とした態度で対応するとともに、職員が安心して公正な市民サービスを提供できる環境を整備するため、対応する組織を新たに設置し、全職員が一丸となって安全で安心な社会づくりに取り組んでまいります。

このたびの信じがたく悲しい出来事は、私たち市民の心を強く打ちのめしました。しかし、私はこの卑劣な暴力によって、長崎市民のまちづくりへ向ける思いがついえてはならないという強い衝動を覚えました。このような暴力に屈することなく、長崎が直面する大きな苦難を乗り越えるためには、市民が自らの力を信じ、その市民の力がまちづくりにいかんなく発揮されるような、いきいきとした長崎市の姿を目指して、今こそ力を合わせて進むべきだと訴え、市政運営へのご信任をいただきました。

今、伊藤前市長のまちづくりへの情熱を受け継ぎつつ、市民の皆様から新たな市政の舵取りを委ねていただいた重責を強く自覚し、愛してやまないこの長崎を、さらに素晴らしいまちにしていくために、皆様と力を合わせて発展する長崎市の実現に向けて、全身全霊を傾けていく所存です。どうか、皆様のご支援とご協力を切にお願い申し上げます。

さて、本日は施政方針として、まず長崎市が今後歩む時代の基本認識、次に市政に臨む基本的なスタンスについて私の考えを述べさせていただいた上で、まちづくりにおける基本的な考え方、及び平成19年度の新たな取り組みについてご説明させていただきたいと思います。

1.変革の時代=「地域力」が試される時代

(1)時代の基本認識

私たちは今、どんな時代を生きているのでしょうか。時代の変化は、私たちの予測をはるかに超える速さで進み、私たちの生活に直接影響を及ぼしています。

今、地球環境のことを、私たち一人ひとりが考えて行動する時代になりました。こんな時代がかつてあったでしょうか。経済のグローバル化は進み、食卓にはいろいろな国の食材が並ぶことも珍しくありません。

また、地域をひとつにするよりどころである自治会などの地域コミュニティに加えて、共通の価値観や趣味をよりどころにした新たなコミュニティづくりも活発になっています。

少子高齢化も大きな変化です。地域では、子どもたちが外で遊ぶ姿を目にすることが以前より少なくなりました。一方、団塊の世代の皆様が次々と定年を迎えることになり、これからの地域社会の担い手として大いに期待されています。

国、県、市町村の役割分担の見直しも進んでいます。住民に身近な市町村が果たすべき役割が今まで以上に重みを増す一方、国と地方に共通する財政状況の悪化は、これまでのような行政運営を続けていくことを許さない状況です。

私たちはまさに「激しく変化する時代」の真っ只中にいます。そして、激しく変化する時代には、次々に多種多様な課題への対応が迫られます。そのこと自体は避けようがないことです。

しかし、だからといって、長崎がこの時代の変化に身を任せ、その流れに翻弄されることを私は望みません。変化の波に翻弄されるのではなく、嵐を自ら果敢に乗り切っていくだけの、強くたくましい変革の時代を歩むまちにしたいと思っています。

そのためのキーワードは何でしょうか。

私は「地域力」だと思います。

地域力とは、地域の課題を見つけ、さまざまな人々の参画のもと、その課題を乗り越えていく地域の総合力のことです。

長崎は、これまでの歴史を見ても、大きな時代の変化の影響を受けてきたまちでした。

1571年のポルトガル船の入港とともに歴史の舞台に華々しく登場すると、海外の進んだ文明や新しい文化を受け入れ、ヒト・モノ・カネ・情報が行き交う舞台として、時代の変化を経験しました。また、原爆の惨禍、そして火災や水害などの災害からの復興という困難な課題にも直面しました。しかし、これらの時代の変化や困難な課題に、私たちは地域力をもって見事に対応してきました。その結果として生まれた「交流、平和の希求、そして助け合いのDNA」は、今なお市民のなかに、まちのなかに、脈々と生き続けています。

長崎は、すべてに大きすぎず、人の息づかいや温かみを感じながら生活することができるまちです。このようなまちの特徴は、市民同士が、そして市民と行政が、共に手を携えて知恵と力を結集する、つまり地域力を発揮する上での何よりの「強み」です。この強みを活かして、地域力に磨きをかけることができれば、長崎はこれからの厳しい変革の時代もしっかりと乗り切っていけるとともに、多くの人が集まる魅力的なまちであり続けられると信じています。

(2)地域力を高めるために

それでは、どうすれば地域力を高めることができるのでしょうか。地域力を高めるためには、市民力、そして職員力の向上が必要です。

市民力

変革の時代には、新しく生まれる課題に適切に対応することが求められます。課題は今後も否応なく、そして次々と生まれてくることでしょう。先ほど申し上げたとおり、それ自体は避けようがないことです。私は、それを解決していくための多様な仕組みを持っているまちが、これからの厳しい時代に対応できる強いまちであると思います。

たとえば、高齢者の福祉を考えるとき、課題によっては、家庭で話し合って解決するという方法もあるでしょう。最近は、地域の皆様の取り組みで解決するという方法も増えてきています。もちろん、行政が解決する方法もあります。さらには、行政、地域、企業、大学、市民活動団体、あるいは一人ひとりの市民といった、さまざまな主体が力を合わせて解決する「協働」という方法もあります。長崎のまちが、そういうさまざまな解決の仕組みを持っているまちであることがとても大事なことであると思います。

実際に、公共分野への市民参画はもう始まっています。国や自治体が公益に関する全ての活動を独占的に担う時代は終わり、NPOやボランティア団体、ご近所や仲間、あるいは市民一人ひとりなどのさまざまな活動主体が、「自分たちのまちは自分たちでつくる」という思いで地域の課題に取り組む活動が、静かに、確実に広がりつつあります。

私は、このような市民が自主的、自発的に地域の課題の克服に取り組もうとする行動力である「市民力」に大いに期待しています。

例えば昨年度誕生した子育て支援センターは、その良い例です。きっかけは、必要性を感じた市民が自分たちのネットワークを活かして行動を起こしたことでした。そしてその必要性を理解した行政が、協働して運営を始めました。市民活動や個人のネットワーク化は、新しい発想や活動の柔軟さをもたらすとともにお互いの不足を補い合い、市民力を高めてくれるかもしれません。公共活動を担う意欲と能力のある多様な活動主体が、相互の連携をより深めていくよう、環境を整えていくことが大切です。

また、市民活動は決して行政の下請けではありません。それぞれの主体性を尊重しながら、地域課題の解決の担い手として、自主的、自発的に取り組んでいくことが大事です。行政との関係についても、試行錯誤を繰り返すなかから、望ましいあり方を探していきたいと思います。

職員力

市民力とともに、市役所の力も、大事な地域力の要素です。

その市役所の最大の資源は「人材」です。私は、職員の力を最大限に引き出す市役所を目指したいと思います。

「職員力」とは、常に意欲的に職場の使命を果たそうとする力のことです。市民と対話し、その活動を促し、コーディネートあるいはプロデュースする力も、これからは特に大事です。

なかでも必要なのは、職員が市民の立場に立って考えることができる想像力だと思います。また、チーム力を向上させることも必要です。さらに、これからの変革の時代には、全国横並びに合わせるのではなく、「長崎方式」ともいえる独自の手法を生み出す気概が必要です。常に自らの仕事を見直し、改善しようという意思も必要でしょう。「予算を使わずに成果を上げる方法を考える」といった発想の転換も必要です。

職員力しだいで市民サービスや政策の成果に大きな差が出る時代です。まずは職員を信頼し、一人ひとりの力を十分に引き出すことから始めたいと思います。また、職員の意識向上のためにも、優れた成果を誇る先進自治体に積極的に学びたいと考えています。

2.市政に臨む基本スタンス

このような認識の下、私は、次のようなスタンスを基本として市政に臨んでいきたいと考えています。

(1)市政を身近なものにする

市民にとって本来、市政は身近なものであるはずです。その身近さを感じていただき、地域の課題を共有するためには、まず私自身が、市民の皆様と直接お話しする機会を大事にしたいと考えています。それと同時に、私と職員、市民と職員、市民同士、職員同士のコミュニケーションについても、さまざまな方法で活性化を図る必要があると考えています。

また、長崎市の課題を一緒に考えていくためには、行政と市民との情報の共有が不可欠です。行政が持つ情報を積極的に市民に向け発信すると同時に、市民が持っている情報についても行政がきちんと認識するよう努め、そのことにより市民との信頼関係を築いていきたいと考えています。

(2)力を合わせる

まちづくりの主体となる市民や企業、大学、行政などは、それぞれに「強み」と「弱み」を持っています。私は、それぞれの主体が「強み」つまり得意分野を持ち寄るかたちで力を合わせるとき、もっとも大きな成果を生むことができると考えています。これが近年、注目を浴びている「協働」の本質であると思います。

そのために、それぞれの主体が、確かな信頼関係の下で、力を合わせ地域の課題を解決することができるようなやり方や環境づくりについて、市民の皆様とともに考えていきたいと思います。

そして、それぞれの主体を結びつけるコーディネート型の行政のあり方についても模索していきたいと思います。

(3)「今、長崎に必要なこと」を見つける

今、長崎に必要なことを冷静に見つけ、それに対して果敢に取り組んでいきます。

小さな改善から大きな事業戦略まで、あらゆる場面で「長崎方式」といえるような独自の取り組みを創り出していける行政となるよう努力します。

その際、時代の動きとの間に生じてくる「ズレ」を意識することも大切です。

観光スタイルが団体型から個人型へとシフトするなか、昨年のさるく博は、世の中の流れとの間のズレを修正する動きの一つの例といえます。

変革の時代の真っ只中にいることを常に自覚し、流れの方向をしっかりと見据えながら、現実への対応を図っていくことを意識したいと思います。

(4)「5つの市民」を考える

私は、市政の課題を解決する方法を選択するとき、常に「5つの市民」の存在を意識しながら、判断していきたいと思います。

  • 1つ目は、今、まさに目の前にいる市民一人ひとりを指す「個々の市民」です。
  • 2つ目は、これとは逆に市民全体を意味する「全体の市民」です。
  • 3つ目は、将来の子どもたちに長崎をより良いものとして渡せるように、という視点で考える「未来の市民」です。
  • 4つ目は、これまで長崎を創ってきた人たちの思いを受け継ぐ、という視点で考える「過去の市民」です。

そして最後が、長崎を訪れる観光客や長崎出身者、長崎市の近郊にお住まいの方々、長崎ファン、その他さまざまな形で長崎にかかわる人たちを意味する「外の市民」です。

私は、このような多様な市民の皆様の存在を幅広く意識しながら、市政の運営を進めてまいります。

(5)都市経営の視点を大事にする

厳しい財政状況のなか、これからは「あれもこれも」ではなく「あれかこれか」の時代です。多くの課題の中から優先順位をつけて取り組んでいくことが必要です。

それと同時に、これからの時代は、仕事の仕方も含め、行政のスタイルを変えていかなければ、安定した市政の運営は維持できません。

そこで、行財政運営全般について徹底した見直しを行うとともに、市民と行政が一体となり、お互いの役割と責任を認識しながら、効果的、効率的な行政の姿を追求してまいります。

3.まちづくりにおける基本的な考え方

長崎市においては、平成13年度からの10年間を計画期間とする第3次総合計画を市政運営の基本指針として、各種の施策を展開しています。この計画では、21世紀に誇ることのできる都市づくりに向け、平成22年度を一里塚とする「あるべき姿」の概念とそれに至る基本政策を示しています。

私は、この第3次総合計画を市政運営の基軸として、将来の都市像に掲げる「活力と潤いにあふれ、歴史がいきづく交流拠点都市・長崎」の実現を目指します。

以下、これを踏まえ、まちづくりにおいて私が考える重要な6つの視点をご説明してまいります。

(1)子どもからお年寄りまで多様な世代が輝く、豊かで安全・安心なまち

今日長崎市には、45万人の人々が生活しています。その一人ひとりが、まちづくりの主役として、市政に参加する。また、子どもからお年寄り、障害者、被爆者の方々、そして男性も女性も、それぞれのライフステージに応じて地域社会と良好なつながりを持ち、その中で心身ともに充実した暮らしを営み、安心して生活できる。私は、そのようなすべての人が輝くまちを目指したいと考えています。

そのためには、各層各世代の方々が、それぞれの立場でやりたいことに挑戦でき、生きがいを見出すことができるような社会の土壌や仕組みを、行政、地域、企業、大学、市民活動団体などさまざまな主体の参加の下に築き上げていきたいと考えています。

また、地域における安全や安心の確保といった場面こそ、地域力の熟度が試されます。地域における日頃の自主的な防災・防犯活動の強化や、ひとり暮らしの高齢者など災害時要援護者の地域による支援体制の構築、小学校区子どもを守るネットワーク活動の充実など、良好な地域コミュニティを育んで「自分たちのまちは自分たちで守る」という意識を醸成し、お互いに協力し合うような体制づくりが不可欠です。そのためにも、地域コミュニティの核である自治会をはじめ、市民力を活かして各々の地域の特性に合わせた取り組みを強化し、安全で安心なまちづくりを推進します。

(2)機能的で快適な住みたいまち

我が国では今後、人口減少や少子高齢化が長期的に続くことが予測されています。そうしたなかにあっても長崎市は、豊かで活力があり、子どもや高齢者にとって暮らしやすく、地球環境に優しい、調和の取れた地域社会を築いていかなければなりません。

そのために、まちづくりの中心的な役割を担う地域、企業、大学、市民活動団体などと行政が、長崎の「将来のあるべきまちの姿」を共有し、機能的で快適な、市民が住み続けたいと思うまちづくりを進めていきたいと考えます。

まず第1に、市街地のこれ以上の拡大を強く抑制するとともに、合併地区を含めた既成市街地の再生や緑地・山林などの良好な自然環境の保全を図り、住宅や産業、公共施設など、都市機能の適正な配置により、地球環境に優しく、行財政効率も高いコンパクトな市街地の形成を進めます。特に、既成市街地の再生については、いわゆる「まちなか」や斜面市街地の再生を図るとともに、JR長崎本線の連続立体交差事業や、これと一体となった長崎駅周辺地区の再整備に取り組みます。

2つ目として、広域的な地域間交流や、経済、産業、観光などの振興に寄与する九州新幹線西九州ルート、市内各地域の連携を強化する放射環状型幹線道路網などの都市基盤の整備を促進します。

3つ目として、いわゆる「造る」から「活かす」という考え方に立ち、生活道路や公園・住宅・上下水道施設等の整備改善、都市施設のバリアフリー化、建築物の耐震化など、既存の社会資本の適正な維持管理と有効活用を図るとともに、地域コミュニティバスや離島航路の維持、公共交通機関の充実に努めます。

4つ目として、地球温暖化をはじめとしてさまざまな環境問題が顕在化するなか、ごみの減量やリサイクルの推進など、環境への負荷の少ない循環型の地域社会の構築を進めます。

(3)産業を戦略的に育てるまち

今日、経済のグローバル化や情報技術の進展、少子高齢化等による構造変化のなかにあって、地域産業も大きな変革の時代にあります。

私は、過去幾多の景気変動を乗り切ってきた地場企業の底力は、これからの長崎の成長の大きな原動力になるものと確信しています。また、価値観の多様化は新しい市場を生み出し、新たな発想や取り組み方しだいで大きなビジネスチャンスにつながっていきます。

こうした状況のもと、私は地域の独自性と創造性を活かした産業の振興を図っていきたいと思います。

商工業においては、1.地域の資源とその優位性を活かす、2.創業のための環境をつくる、3.事業者間の連携と協働のネットワークを育てる、の3つを基調とし、地域経済の底上げを図ります。

観光においては、観光形態の多様化や市場の拡大の状況を見極め、観光を取り巻く環境の変化への対応及び観光資源の活用を軸にして、国内外との交流の拡大を図ってまいります。

また、農水産業においては、生産・流通・消費をさまざまな角度から徹底分析し、消費者が求める農水産物の生産拡大や食への理解促進などを通じて農水産業の振興を図り、地域全体の活性化へとつなげてまいります。

(4)長崎の文化が薫る魅力的なまち

文化や都市景観は、まちの魅力を創り、伝えていく上でとても大切な資源です。長崎は西洋や中国との交流の歴史の中で、他の都市にない個性的で魅力的な地域文化とその表れとしての都市景観を育んできました。私たちは長崎の文化の奥深さを、固有のまつりや伝統行事に、季節の料理や食べ物に、そしてまちなかにさりげなく残る文化財やまちなみ景観に感じ、長崎に暮らす素晴らしさを実感します。

長崎市では、昭和63年に都市景観条例を制定しましたが、その当時、都市景観はまだまだまちづくりの脇役でしかありませんでした。今日、都市のあり方についての価値観が大きく変化するなかで、国においては景観法が制定され、先進的な都市では都市景観条例の見直しも進められるなど、都市の品格が問われる時代になっています。

そしてまた、固有の文化の薫りを守り、育て、作ることは、市民の長崎への愛着を高め、まちづくりへの一体感を醸成していく上でも、とても大切なことです。

文化財の保護にとどまらず、地域のまつりや伝統行事の振興、長崎固有の資産を生かした魅力的なまちなみ景観の形成、さらには新たな市民文化の創造や国際交流の推進など、長崎の都市としての品格を整えるため、まちづくり活動に取り組んでいる多様な市民とともに、文化の薫るまちづくりを進めてまいります。

(5)平和の心を世界に広げるまち

核兵器の廃絶と世界の恒久平和の実現は被爆地の願いであり、平和への取り組みは被爆地の使命です。

被爆者が高齢化し、若い世代を中心に被爆の記憶も薄れつつあるなか、私たちは今後も繰り返し被爆の悲惨な体験を継承し、世界中の人々へ核兵器廃絶が人類の克服すべき課題であることを強く訴え続けていかなければなりません。

私は、被爆地ナガサキの市長として市民の先頭に立ち、被爆の実相を全世界に伝えるとともに、世界恒久平和と核兵器廃絶の実現を引き続き力強く訴えていきます。

それとともに私は、地球上から核兵器をなくしていくためには、平和の尊さ、大切さ、かけがえの無さを多くの人々が理解し、そしてそれを慈しみ、育んでいく心を広く浸透させていくことが非常に大切なことだと思っています。暴力を憎み、平和を愛するという素朴な気持ちを、世代や国境を越えていかに多くの人たちと共有できるか。この点で世界中の人々の共感を高めていかない限り、私たち人類は決して核兵器のない平和な社会を築くことはできないと思います。

平和を願う市民一人ひとりの力を結集させるとともに、長崎市民と願いを等しくする広島市民はもちろん、世界中の市民やNGO、国内外の都市との緊密なネットワークを築いて、平和の心を強く世界に広げてまいります。

(6)合併地区の歴史と個性が息づく調和の取れたまち

香焼、伊王島、高島、野母崎、外海、三和の旧6町との合併から2年半、旧琴海町との合併から1年半が経過しました。これら7地区には、さまざまな歴史や文化、豊かな自然などの魅力があふれており、それらを活かしたまちづくりは、長崎の一層の飛躍に向けた大きな課題です。

今後、地区が持っている資源や人材の掘り起こしを進めるとともに、まちづくり活動を担っている地区内外の幅広い団体や市民との有機的な連携を促進し、「こんな資源を活かして、こんなことをやってみよう」という今までにないユニークな発想を生み出す環境づくりが必要です。

住民の皆様の自由な発想と主体的な活動を支援し、市町村建設計画の着実な推進とともに、市民力を活かした歴史と個性が息づく調和の取れたまちづくりを進めてまいります。

4.平成19年度の新たな取り組み

長崎市においては、バブル崩壊後の景気低迷の影響から未だ完全には抜け出すことができず、中小企業を中心に厳しい経済状況が続いています。人口の減少や少子高齢化は全国よりも早いテンポで進み、中心市街地では、都市の拡大や外延化に伴う空洞化、産業の低迷、大規模店舗立地等による商業環境の変化等が複合的に進行し、その活力と求心性を失いつつあります。

財政状況についても、社会保障費の増加など歳出増の一方で、市税収入の伸びは期待できず、三位一体の改革による地方交付税の大幅減など、厳しい状況が続いています。

このような状況から、伊藤前市長におかれては、行財政の改革を積極的に推進するとともに、市政に停滞は許されないとの思いで、市長の改選期ではありましたが、平成19年度当初予算において本格予算を編成されています。

私としましても、伊藤前市長のこのような思いをしっかりと引き継ぎつつ、先に述べました私なりの手法、考え方を活かしながら、本年度の市政運営を進めていきたいと考えています。

そこで本年度においては、今長崎に何が必要か、そのために今すぐやらなければならないことは何かを考えるなかから、特に3点を意識して市政運営に臨みます。

1つは、現在抱えている課題の解決です。長崎衛生公社の問題あるいは市立病院の問題など当面する課題の解決に全力で取り組みます。

2つ目は、来年度の取り組みに備えた準備です。そのために本年度から作業が必要なものについては、補正予算を組ませていただき、着手します。特に早急に取り組まなければならない事業について、必要な予算を今議会に提案させていただいております。

3つ目は、予算を使わない、あるいは既定予算の中で、より大きな成果を上げるための工夫です。事業イコール予算という発想を脱し予算を使わない事業を生み出すとともに、仕事の進め方や仕組みあるいは職場環境の改善などにより成果を上げるなかで、「考える」「提案する」「行動する」「喜ばれる」といったことを職員により多く体験してほしいと考えています。

(1)地域力の向上への取り組み

まず私が取り組まなければならないことは、地域力をいかに育て、高め、そして市政に活かしていくかということです。地域力は一朝一夕に高まるものではありませんが、そのための手段として、市民力と職員力の向上のための取り組みや仕掛けづくりに着手したいと考えています。

市民力の向上のために

市民力の向上については、有識者や市民からなる「市民力向上検討会議」を設置し、市政に活かすためのシステムやその向上の手法について、市民と行政が協力して対策を検討していきたいと考えております。

併せて市民力発揮の前提となる市民と行政との信頼関係を築いていくため、お互いのコミュニケーションの向上が重要だと考えております。

そこで、就任後直ちに本市のホームページに「市長の部屋」を設け、定期的に市民の皆様にメッセージをお送りするようにいたしました。行政の透明性の確保や説明責任を大切にするため、市長交際費の使途についても近く公開を予定しているほか、皆様から寄せられたご意見などについて、今後その内容とそれに対する対応や考え方などについて公表を行う方向で準備を進めます。また、市の財政の現状についても、その正確な姿を知っていただくため、専門的な内容をわかりやすく工夫して情報提供できるよう、作業に取りかかっています。

市民の皆様との意見交換についても、新たに「ちゃんぽんミーティング」などの対話の場を設け、皆様のまちづくりへの思いを積極的にお聴きし、地域の活性化のためのアイデアの結集とともに、まちづくりへの意欲を持った市民のネットワークづくりを促進したいと思います。

そのほか、行政手続や各種イベント等の問い合わせ、暮らしの相談などにワンストップで対応できる「市役所コールセンター」についても、庁内にプロジェクトチームを設けて早急に検討を進め、市民サービスの向上とともに、市民にとって身近な行政を実現するよう努めてまいります。

職員力の向上のために

職員力の向上では、庁内プロジェクトチームを設けて、「職員提案制度」の活性化のための見直しを行い、新たな視点から創造性のある政策の立案や身近な業務の改善を進めます。

また、職員研修の一環として、応募制による先進都市の視察研修制度を創設し、積極的に他都市の良い点を吸収するとともに職員の資質向上とやる気の醸成を図るほか、こうした研修成果を職員全体で共有できるよう、全庁ネットワークを利用した成果報告のページを設けるなど、研修のあり方を見直します。

そのほか、電子メールを利用した「市長ホットライン」や「市っぽく手弁当会議」での意見交換など、私と職員とのコミュニケーション手段を強化し、全職員が一丸となって市政に取り組む市役所を目指します。

(2)防災や危機管理の向上への取り組み

昨年の台風13号の来襲では、被害状況の把握やライフライン復旧への対応など、災害時の危機管理のあり方について課題が残されました。組織体制や関係機関との連携体制などについて見直しを進めるほか、ホームページなどにより防災情報の提供の強化を図ります。

(3)子育て支援の充実への取り組み

少子化傾向が著しいなか、子育て支援は重要な課題です。

子育てを地域社会全体で支えるような環境づくりとして、必要なときに育児援助を受けることができるよう、援助を行う人材の育成やネットワークづくりなど、体制の整備に向け準備を進めます。

また、地域と連携して産後間もないすべての家庭を訪問し、育児についての情報提供や不安・悩みなどを気軽に相談できるような仕組みづくりについても準備を進めます。

子どもたちにとって、一番の栄養は「体験」だと思います。誉められたり、失敗したり、笑ったり、泣いたりしながら、子どもたちの心は豊かに育ちます。海や山などの豊かな自然環境を生かした体験活動や、長崎の歴史や文化に触れる博物館授業、ボランティア活動への参加など、子どもたちがイキイキとした体験ができるようなメニューづくりを進めます。

(4)福祉と健康の増進への取り組み

高齢者が住み慣れた地域でできる限り生活を続けられるよう、地域密着型サービスの整備において、特に採算面から事業者の進出意欲が弱いと見られる合併地区における小規模多機能型居宅介護事業所を整備するための助成制度について、創設の準備を進めます。

また、特に要支援・要介護の状態に無い高齢者を対象に、運動、栄養、口腔ケア、認知症予防などの介護予防事業を複合的に実施するほか、地域ケア体制の構築に欠かせない地域包括支援センターについて、その増設を検討します。

障害者福祉では、発達障害者を含めた障害者に対する就労相談や支援の窓口について、設置の準備に着手します。

そのほか保健事業では、来年度の老人保健制度の見直しを踏まえ、いわゆるメタボリックシンドロームに着目して、個人の状態に合わせた適切な食事や運動などの生活指導を行う準備を進めるなど、生活習慣病の予防を推進します。

(5)産業の活性化への取り組み

経済面では、長崎が人や物の交流で栄えたかつての輝きをもう一度取り戻すための取り組みとして、商工業や観光を中心とする産業の振興策について、専門家の方々を交えた会議を設け、中・長期の計画を構築していくこととしております。

商工業分野では、「経済成長戦略会議」を設け、本市の産業構造の現状を分析しながら長崎市の持つ強みや弱みを見極め、今後の産業振興の方向性を検討して、将来に向けた育成・成長戦略を策定いたします。

また「観光戦略策定会議」により、東アジアを中心とする海外からの集客、長崎の教会群とキリスト教関連遺産の活用、コンベンションの一層の推進、宿泊客増加に向けた夜型観光の促進、障害者や高齢者など多様な観光客への対応といった各種の課題を意識しながら、観光戦略の策定に向け多角的な見地から検討してまいります。

さらに地産地消の推進により農水産業の振興を図るため、地産地消に関心が高い消費者を募集してそのニーズや嗜好を探り、生産者の生産活動に反映させるための市民サポーター制度を設置します。また、料飲業関係団体と生産者との協議会を設け、地元食材の導入促進についての可能性を探ります。さらに、地域の腕自慢の郷土料理を公募して「ながさき味わいの匠」を認定し、ふるさとの味の継承による長崎産品の普及を図ります。

(6)平和の心の発信への取り組み

平和については、悲惨な被爆体験の継承に加え、平和を願うナガサキの思いを、積極的に発信していくことが必要だと考えております。

特に、次世代を担う子どもたちについては、平和を愛する心を強く育んで、一人ひとりが平和の種を蒔き、育て、世界に広げていってほしいと思います。

そこで、子どもの平和学習推進のためのプログラムの充実について検討を進めるほか、多くの子どもたちにも原爆や平和への理解を深めてもらえるよう、子ども向けに工夫したホームページについて、作成の準備に取りかかります。

(7)合併地区の活性化への取り組み

合併7地区の振興と一体感の醸成は、今が非常に重要な時期だと考えます。

そこで、先ほど述べました地域密着型サービスの整備にかかる支援のほか、地区の活性化を考える皆様と私が自由に意見交換をするなかから、地区の魅力の発見と、磨き方、活かし方について、考えを深めるとともに、思いを共にする皆様のネットワークづくりのきっかけとするため、「虹色のまちづくりミーティング」を各地区で開きます。

また、住民自身が、自分たちの手で、自分たちのまちを活性化するために何がやれるかということを、自主的に考えて活動していけるような環境の整備も大切です。地区におけるさまざまな団体の活動状況を把握しながら多くの皆様と協議を重ね、地区の方々の自発的活動や取り組みを、協働の立場から行政が支援していくような仕組みづくりの検討を進めたいと考えております。

5.おわりに

以上、本年度における主な取り組みを申し上げてきましたが、今日の長崎市政におきましては、これらのほかにも教育、環境、都市整備など、多岐の分野にわたり数多くの課題が山積しています。

私は、こうした問題の一つひとつに誠実に向き合い、皆様とともに力を合わせ、先人の英知と努力により築き上げられてきたこの長崎のまちを、さらに素晴らしいまちへと発展させていくため、全力を尽くしていく覚悟です。

今後とも、皆様の大いなるご支援ご協力を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

これをもちまして、私の施政方針といたします。

お問い合わせ先

企画財政部 都市経営室 

電話番号:095-829-1111

ファックス番号:095-829-1112

住所:〒850-8685 長崎市桜町2-22(本館4階)

アンケート

より良いホームページにするために、ご意見をお聞かせください。コメントを書く

ページトップへ