文・宮川密義

長崎で歌われたわらべ唄は「かぞえ歌」や「あんたがたどこさ」「向こうよこちょの」「坊さん坊さん」「かごめかごめ」「ひらいたひらいた」「ずいずいずっころばし」「はないちもんめ」「通りゃんせ」など全国的に有名な歌のほか、長崎独特のものも歌われました。



1.「あっかとばい」

長崎特有の正月の歌でした。
昔、丸山遊女がオランダ人から異国織りの布をたくさんもらったことを暗示させます。

「かなきん(金巾)」はポルトガル語で、固くよった綿糸で織った薄い織物のこと。
裏地や更紗地などに用いられました。


〈長崎古版画に描かれた阿蘭陀人〉



2.「ハタ揚げの歌」

長崎の風は地形の関係で、朝夕の風向きがよく変わります。
時にはすっかり風がやんでハタ揚げもできなくなります。
そんなとき子供たちはこの歌を歌ったものです。

「稲佐ん山から」は「愛宕ん山から」とも歌います。
もらった風は「いんま(そのうち)戻そう」という意味です。


「長崎名勝図絵」に描かれた
「金比羅山凧揚の図」


3.「町で饅頭買うて」

長崎の羽子つき唄です。
「町」と「饅頭(まんじゅう)」というように、以下同じように頭韻をそろえました。
「久山」は諫早にあります。
この種の数え歌や地名歌は全国各地にあるようです。


4.「でんでらりゅう」

長崎を中心に古くから歌われたわらべ唄ですが、起源も意味もはっきりしません。
それぞれの地方にアレンジされて全国に広まりまったようです。

昭和52年(1977)、大阪で屋台を開きながらラジオにも出演していた前田良憲さんが新曲の中に取り入れ、自分で歌い、同名のタイトルでレコードを出しました。
レコード発売の頃、大阪のラジオ局がこの歌のルーツ探しをするなど、話題を集めました。


5.「阿蘭陀船」



北原白秋が作詞し、山田耕筰が作曲した歌ですが、往時の長崎のエキゾチックな情景を見事に描いています。
最初のレコードは昭和12年(1937)に大川澄子が吹き込み、昭和41年(1966)には長崎の純心短大教授だった寺崎良平さんが合唱向けに編曲、西六郷少年合唱団の歌でレコードが出ました。


長崎古版画に描かれた阿蘭陀船〉


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