第16回 児玉清美さん


しゃぎりの音をきくと血が騒ぐ、という長崎人は少なくないと思うが、奉納踊りに参加する踊町(おどりちょう)のひとつ、本石灰(もとしっくい)町で生まれ育った「HAIR SALON jun」の児玉清美さんも、長崎くんちをこよなく愛するくんちっ子だ。
今回の「愛すべき、長崎人」は、15歳で踊り子としてくんちデビュー、ここ数年は毎年参加しているという児玉さんに、お仕事、長崎の魅力についてうかがった。


こちらの美容室ではいつから働いていらっしゃるのですか?

児玉さん「短大卒業後すぐでしたから、二十歳の時からです。東京に憧れの美容室があったのですが、母が怪我をして、実家のこの美容室を手伝うことになりました。2年間で美容師免許を取り、友人の誘いでアメリカへ留学しました。美容師と語学の勉強をしながらのアメリカ生活はすごく楽しかったのですが、1年後に母に呼び戻されました。それから20年以上、ここで働いています。」

スタッフは何名いらっしゃいますか?

児玉さん「母と2名のスタッフ、私の4名です。私自身は、土曜日曜は婚礼を中心にしています。」

お仕事の魅力は何ですか?

児玉さん「美容師の資格さえあれば、自分次第でメイクや着付け、いろんな分野に世界を広げられることです。終わりがありません。
子どもの頃から絵を描くことが好きで、それがメイクの仕事につながっていると思います。ファッション雑誌を見るのも楽しかったし、子どもの頃から好きだったことを、今仕事にできているんだと思います。」


それは素敵なことですね。お仕事も大変楽しんでいらっしゃいますが、おくんちにも参加されているそうですね。

児玉さん「はい、15歳で初めて踊りを披露して、ここ数年は他の町のお手伝いすることも多く、裏方を含めると毎年のように参加しています。
私の大おばは美容室の近くで置屋をしていて、芸者さんが住み込んでいました。彼女自身80歳頃まで三味線を弾いて座敷に出ていましたし、二人のおばも芸者として活躍していました。そんな環境もあって、私も中学校1年生の時から日本舞踊のお稽古に通っていたので、おくんちで踊ることも自然な流れだったと思います。
今年は本石灰町が御朱印船を奉納するので、子ども達の振り付けを担当することになっているんですよ。」

それは楽しみです。長年参加されて、苦労したことなどはありますか?


児玉さん「ずっと表舞台に立たせていただいていたのですが、7,8年前、はじめて裏方になって、その大変さを知りました。踊り手は、もちろんお稽古の苦労はありますが、基本的にただ言われたように踊っていればいい。でも裏方は、移動中の子ども達に気を配ったり、予想外のことが起こってフォローしたり、大変なことが多いですね。裏方さんあってのくんちです!」

今年もお仕事とおくんちの両立でお忙しそうですが、これからやってみたいことや夢はありますか?

児玉さん「もっと外に出て、もっと刺激を受けて、仕事に活かしたいと思います。この仕事はじっとしていてはダメだと思うんです。
以前は1,2週間ヨーロッパ旅行、なんてこともあったのですが、この頃は時間がとれなくて行っていません。仕事をがんばって、時には海外へ行って、より良い仕事ができたら素敵ですね。」


ありがとうございました。最後に長崎でおすすめの場所やお気に入りの場所を教えてください。

児玉さん「おくんちの庭先まわりでは、長崎市内の各所で踊りを披露するのですが、普段歩かない場所を巡るので、知らない通りやお店を発見することが多くて、行ってみたい場所が増えていきます。京都ほどの規模ではありませんが、麹屋町の細い通りは風情がありますよ。丸山、長崎検番前の古い石畳も好きだったのですが、最近整備されたと聞きました。長崎の歴史を物語る場所がなくなってしまったことはとても残念ですね。
個人的には、夕暮れ時の中島川で、サギやコイを眺めながらぼーっとするのも気に入っています。」


数年前から英会話を、今年からはあらためて日本舞踊を習いはじめたという、好奇心いっぱいの児玉さん。日本の伝統芸能や伝統美に惹かれる一方で、10代の若者向けファッション雑誌に目を通し、若者のセンスも取り入れる。これからも枠にとらわれない自由な発想で、おしゃれやくんちをいっそう楽しいものにしてくれそうだ。

「HAIR SALON jun」
長崎市丸山町8-5
Tel.Fax.092-822-5525


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