文・井手啓二さん

夢が実現することは嬉しい。
33年ぶりの九州。
18歳で九州を離れているので、もともとどこもロクに知らない。
だから、どこもかしこも未知の土地である。
今は、その気になればいつでも、阿蘇、九重の雄大な景観を味わえることが無上に嬉しい。
長年の京都暮らしの後だからか、自然の景観への驚きの方が強い。
それは加齢のせいなのか、もともとの性向なのか自分でも判然としない。

というわけで、1泊2日程度の九州探訪を大いに楽しんでいる。
長崎市内外の探訪は日常の楽しみである。
長崎は当然お気に入りの街である。

ターミナル都市の静けさ(通過交通がないのです)、斜面都市のタテの景観、人口40数万の県庁所在都市の便宜さ、海と港の眺望とくに夕映えの海、400年をこえる歴史をもつ港町、原爆遺構、魚料理と中華料理、果物・野菜・花き・魚の新鮮さと安さ、そして開放的性格の人々。
これらが長崎の魅力であり、観光資源だと私は思っている。

私もそれぞれを楽しんでいる。
もちろん気に入らぬ点、もっとどうにかして欲しい点も山ほどある。
歴史的都市の割には古いものがない。大事にしていないというのも不満。
でも生誕地の福岡市よりマシかと慰める。
防災放送の無神経な利用にも呆れる。
しかし諸々の不満を上回る魅力がある。
20〜30分も行けば、散策でき、気分転換できたりする自然がある。
泳げる海辺がある。
いつでも鳥の鳴声を楽しめる・・・等々は、最高の贅沢の一つであろう。
毎日大村湾を遠望できる市北部に住んでいるので、夕陽の見える丘、雪浦の浜を楽しめるし、アツアツのテンプラ(かまぼこ、と当地の人は言う)を齧りながら手熊の浜を歩くのは冥利に尽きる思いがある。

親しい友人が来崎すると、時に長崎の奥座敷の茂木や小浜町(南高来郡)木津に案内する。
全員、海の見える風景と魚料理に絶句する。
そこを見計らってビワ、イチゴ、花き、柑橘類の安さを少し誇張して言う。
友人の反応に私が舞い上がる一瞬である。

最後に、マイナーであろうかと思いますが、観光客の方でも簡単に行ける私の好みの景観と散策の場所をいくつか挙げておきます(百聞は一見にしかず、損はありませんよ!)

〈港・海の眺望〉
長崎東高校、ホテル長崎周辺、長崎プリンスホテル15F、長崎純心大學、住友生命ビル8F、空港〜時津の船からの眺め。

〈公園等の散策〉
長崎大学経済学部キャンパスの庭、県立図書館周辺、あぐりの丘、中尾城公園(長与町)。


井手啓二さん

長崎大学経済学部教授。
専門はアジア経済論。
私達に身近かな話題として、春秋の年に2回、北公民館にて行なわれている講座『茶の間経済学』のコーディネーターを努めておられる(各8回・無料)。
生活と関連ある経済学について長崎大学から様々な講師を招いてのこの講座、秋の公民館講座は『広報ながさき』で公募の予定。


次回は、井手さんがとても尊敬する同僚のお一人、長崎大学経済学部教授・国際関係論専門のジェフリー・ガンさんにご執筆いただきます。


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