● 没後出版された龍馬の志を示す「英語入門書」

長崎龍馬の道--7 亀山社中記念館

龍馬が命を落とした翌年の慶応4年(1868)3月、海援隊は「和英通韻以呂波便覧(わえいつういんいろはびんらん)」という和英辞書を出版しました。これは、海援隊が版権を所有し、尚友堂という版元が発行したもので、当時の初歩的な英語入門書と呼ぶべき書物。いろは47文字の日本語と英語の発音や表記、数字・方角・季節・十二支など、代表的な漢字の英語表記と発音、時刻や方角の説明、50音や濁音1字ずつの大文字小文字の表記など約50ページにわたり記載されていました。アルファベットとアラビア数字のほか、「SUN(日)」「EAST(東)」「MORNING(朝)」など簡単な単語のつづりと発音や、時間と干支の和英対照表。まさに初心者向けの英語教科書のような内容でした。3月に発行されたということは、前年の11月に亡くなった龍馬も、この和英辞書の制作に関わっていたはず。あるいは、国際化を目指していた龍馬自身の発想から生まれたものだったかもしれません。「和英通韻以呂波便覧」は、龍馬の志を継ぐ海援隊士の龍馬への思いが詰まったものでもあるのかもしれません。

平成20年11月、亀山社中跡の遺構を中心に、地域の歴史的価値の再発見と地域の活性化を目的に活動する「亀山社中ば活かす会」では、海援隊が出版した「和英通韻以呂波便覧」を購入。長崎での海援隊の業績を記す重要な史料として大切に保存し、折をみて展示もされています。また、昨年、長崎の会社が「できるだけ原本に忠実に」と復刻版を製作。縦26cm、横18cm、ページ数54ページと、原本と同じ規格の復刻版「和英通韻以呂波便覧」が誕生し、亀山社中記念館など、長崎市内の観光施設で販売しています。ぜひ、この本で、海援隊士らは英語を学んでいたのだなぁ、などと幕末の動乱期に生きた彼らに思いを馳(は)せページをめくってみてください。それにしても海援隊は、海運業に止まらず出版業にも手を広げ、多角経営を目指していたとは頼もしいですね。






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