十人町のばんこ

お宝認識度★★
☆☆☆

■DATA■
年代/不明
利用条件/年中24時間、坂道に疲れた方ならどなたでも
場所/十善寺地区(唐人屋敷跡を取り囲む、主に十人町、稲田町の高台)



登った人は必ず感じる、ありがたさ
坂の町長崎に設置された親切ベンチ

十善寺エリアとは、その昔“十禅寺”という寺があったことにちなみ名付けられた、かつての十善寺郷にあたる次の四町を指している。唐人屋敷の遺構である四堂を擁し、館の内にあたることから名付けられた館内町。 長崎村十善寺郷稲荷岳と呼ばれていた時代の稲荷岳、田ノ浦の中から一字ずつをとって名付けられた稲田町。館内町、十人町の南東側にある中新町。 そして、長崎奉行直轄の野母遠見番であった十人の官舎があったことにちなみ名付けられた十人町。この十善寺界隈は、きれいに整備され観光地化した新地中華街の佇まいとは異なり、今も長崎独特の景観を色濃く残したエリアだ。かつて長崎初の薬園として栄えた十善寺郷の谷間を、びっしり埋め尽くし積み重なるように建つ家並みや、その谷間に張り巡らされた多くの細く急な坂段は、長崎市民なら誰もが思い描く、“これぞ長崎”という景観なのだ。
この景観の中に実に溶け込んだ“あるモノ”が今回のお宝。その名も十善寺エリアのばんこ!(ナガジンが勝手に命名)だ。“ばんこ”とはオランダ語でベンチのこと。やはり出島のオランダ人の影響からか、長崎をはじめとする九州では、縁台や踏み台、ベンチのことを昔からこう呼んできた。
入り組んだ小路に、または坂段途中の踊り場に時折見かけるこのベンチは、十善寺エリア全体でその数30個以上もある。これらのばんこが登場したのはいつ頃からなのだろう? 誰か周辺の方が設置したのをきっかけに、右に倣えで持ち寄るようになり、ここまで増えていったのだろうか? それにしても木製、鉄製、グルッと回転する事務椅子と、その種類も様々だ。もちろん使い勝手は自由で、登り疲れたらいつでも誰でもひと休みしていい。この辺りの方は昔からこのばんこに座って近所の人々と交流を深めてきたのだろう。付近の人々の暮らしぶりが伺える十善寺エリアのばんこは、はじめて訪れた人にも優しく親切なお宝。感謝しつつ、これからも大切にしていきたいものだ。



グルッとまわる事務椅子にはナガジンもびっくり。真夏の夕涼み、買い物帰り……きっと、「立ち話ではなんだから、座って座って!」ってな具合に重宝がられているに違いない!とナガジンは推測!
 

 
 
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