開館時間 8時30分〜17時
休館 / 土・日・祝日
入館料 無料
※入館希望の際は、事前の電話予約が必要
飽の浦町1-1 TEL095(828)4134


●JR長崎駅からのアクセス
バス / バス停長崎駅前から立神、または西泊行きに乗車し、飽の浦公園前で下車、徒歩3分。
車 / 長崎駅前から約8分。

●文化財
国指定重要文化財
(日本最古の工作機械)



美しい赤レンガの建物にたっぷり詰まった歴史


この史料館は、三菱重工業長崎造船所敷地内に昭和60年10月にオープンした。
外観は明治31年(1898)に建てられた工場併設の木型場だったレンガ造りの二階建ての建物をそのままそっくり利用している。
その堂々とした、存在感は空襲や原爆の爆風に耐えぬいたからか、様々な工場に囲まれた空間の中で唯一「強さと温かさ」といった人間味を感じさせる美しい佇まいをみせている。
館内には安政4年(1857)からおよそ140年余りにもおよぶ長崎造船所の歴史を伝える資料、写真、品物など約700点余りが展示され、ユニークな企業博物館となっている。
船マニアにはたまらない、そうじゃない人にもたっぷり見応えのある、長崎造船所歴史の缶詰的名所へ……探検隊いざ潜入!



〈入口からの内観〉


広い館内を賢くまわるコツはひとまずビデオでお勉強!


順路としては右側の「官営期コーナー」から鑑賞するのがいいだろう。
三菱の創始者である岩崎彌太郎の胸像が迎えてくれる。彼は土佐の人。
当時藩政改革のため閉鎖予定にあった土佐藩経営の「開成館」を受け継ぎ「土佐開成商社」(のちの九十九商会)を興して海運業に乗り出し、他にも炭坑、金属鉱山、造船など当時の日本の経済の柱となる事業にいち早く目をつけ、積極的に投資した人物だ。
そして彼の跡を継ぎ郵便汽船三菱会社を三菱社と改称したのは弟の彌之助だった。



〈岩崎彌太郎の胸像〉

三菱重工業長崎造船所の前身は安政4年(1857)、着工をもって創業とする幕府直営の長崎製鉄所。
明治維新で官営(明治政府経営)の長崎製鉄所となり、明治4年に新政府工部省所掌の長崎造船所となった。
その後紆余曲折の後、明治17年(1884)に三菱に貸し下げ。
明治20年(1887)から三菱所有となり本格的な造船所として発展していった……というように、なかなか一企業の歴史を学ぶのは難しい。
そこでまずは入ってすぐ左手に三菱の歴史を早分かりできる8、15分の解説ビデオがあるのでぜひ一通り観てから館内をまわろう!



おすすめチェックポイントベスト6

1. 進水斧、進水記念品のあれこれ


〈進水記念ハガキ4枚〉


「武蔵」支網切断の斧


柄に第2號艦と記された戦艦武蔵の進水支網切断の斧を発見!
他にもいくつかの進水支網切断の斧があり、それぞれのエピソードがあるので注目。
さらに!進水の際の記念絵葉書というのが個性的で魅力的。
基本的には船のモノクロ写真と富士山や長崎市内の観光地などのデザイン画との組み合わせ。
中には長崎ゆかりの歌などを組み合わせたものもあって多種多芸、オモシロ〜イ。


2. 歴史を今に伝える品々


工場建設に必要なレンガ作りがら指導した主任技師オランダ海軍機関将校ハルデスゆかりの赤レンガや工部省所管時代の建屋に使われた鬼瓦。
明治20年(1887)竣工、大浦の炭坑社と高島・端島間の連絡船として75年間就航した長崎造船所最初の鉄製汽船「夕顔丸」の舵輪など、歴史が残した品々も一つずつじっくり眺めてみたい。



「夕顔丸」の舵輪

3. 永遠の憧れ・豪華客船


平成2年(1990)竣工、豪華客船「クリスタル・ハーモニー」は約50年振りの客船建造。
5000総トン、1万総トンといっても全く想像もつかないが、三菱造船所ではとにかく巨大な客船、貨客船をこれまでに98隻も建造してきたのだとか。この客船の歴史を展示した「客船コーナー」で目を惹いたのはカラースキームと呼ばれる室内装飾画の数々。
なるほど、船の旅のゴージャスさは伝え聞くけど、船の中とは思えないほど「優雅」日々が待ち構えていそうな完璧な装飾。
食事もいいもの食べられるんだろうなぁ。



豪華貨客船「浅間丸」の食事メニュー

4. 橋を架けるお仕事


川に架けた橋、島と島を結ぶ大橋。
時を経てその橋の姿もずいぶんと変化を遂げてきた。
今はコンクリートに造りを替えたが、長崎市の中心地・中央橋にあるくろがね橋は、三菱長崎造船所の前身・長崎製鉄所が慶応4年(1868)に製作した日本最初の鉄製の橋。
この橋の欄干に備えられた擬宝珠(ぎぼうし)が寄贈され展示されている。
なんと寄贈された持ち主は長年一輪挿しとして使っていたとか。
傍らには当時のくろがね橋(通称・鉄橋)の写真もあるので見比べて!
他に架橋当時の稲佐橋、樺島大橋、生月大橋などの写真も展示。



くろがね橋(浜町〜築町間)の
真鍮製の擬宝珠

5. 小菅修船場


慶応3年(1867)、薩摩藩の五代才助は小松帯刀などと謀り、またトーマス・グラバーの出資も得て「小菅修船場」の建設に着手している。
完成は明治元年(1868)、場所は三菱長崎造船所の海向かい、グラバー園がある南山手の下、小菅町だ。
通称ソロバン・ドック(小菅修船所跡)は国指定史跡として現在もその姿を残しているが、ここでは海底から陸上への斜面にレールを敷き、その上に架台を置いて船を乗せ、蒸気動力の巻揚機で引き揚げる、横須賀製鉄所のものに次ぐ日本で二番目の修繕ドックの模型を見ることができる!



小菅修船所(ソロバンドッグ)の模型

6. 船と共に移り変わる港風景


変りゆく製鉄所やドックの姿を捉えた長崎港の写真も興味深い。
クルゼンシュテルンの世界一周航誌〜日本紀行より文化元年(1804)の長崎港が描かれた銅版画には、山や入り江のかたち、長崎港に浮かぶ木船などが克明に描かれていて、この版画に日本近代工業の夜明けの光が見えるような気がする。
明治5年(1872)の長崎港と長崎製鉄所を上野彦馬が撮影した写真は4枚綴りの超パノラマで面白い!



『文化元年(1804)の長崎港』

これら6つのポイントの他にもまだまだいっぱい見応えのある展示満載の史料館。
長崎の町を大きく動かしてきた三菱長崎造船所の歴史に触れることは、長崎の歴史に触れることでもあるのだ。
世界に漕ぎ出していった客船のように大きなロマンを感じられる「史料館」へぜひ足を運んでみよう。


『三菱重工業株式会社長崎造船所 史料館』
常設展示概要●

安政4年(1857)の創業時から現在に至るまで、三菱造船所で製作または使用した各種大型機器をはじめ、古い計算機や昔日を彷佛とさせる工場写真など貴重な史料を約700点余りを展示。
館内は大きく「官営期」「三菱創業期」「明治後期」「大正期」「昭和戦前期」「戦艦武蔵」「会社生活」「貴賓御来訪」「発電プラント」「戦後造船」「客船」と、11のコーナーに分かれている。
日本の近代化に果たした役割、その偉業が伝わって来る展示構成。


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