年の初めは誰もが身を引き締め、今年一年の目標高く心に誓うもの。寺社への初詣も、その気合いの現れだろう。そして、そんな自分の決意、強い意志を支えてくれるのが、“願掛け”だったり“お守り”だったりする。

 

ズバリ!今回のテーマは
「自分の努力を助けてくれる!お守り発見!」なのだ。




初詣の慣習は意外と新しく、今のように定着したのは明治時代中期からだといわれるが、先人達も昔から生活に密着した「雨乞い」、「豊作大漁」、「病気平癒」、「厄除け」など、様々な願掛けを行ってきた。

長崎は現在、長崎ランタンフェスティバル真っただ中。90万人を越える来訪者で賑わうこの中国の旧正月、春節を祝う祭りでも、願掛けが行われている。
そう! 四本の赤いロウソクを手に、唐人屋敷跡を巡るロウソク祈願四堂巡りだ。中国では昔から、お正月にお堂を参拝し、赤いロウソクを灯し萬事安泰を祈願する行事があった。ロウソクには「家内安全」「無病息災」などの文字が刻まれ、毎年、どのお堂でどのロウソクを供えたらいいのかと迷うのだが、係の方に聞くと、どこでもよくて、四堂を巡り祈願することに意味があるのだという。旅の予定がある方は、航海(旅)の神様・媽祖様が祀られている天后堂で、バッチリ祈願しておこう。
ロウソク祈願四堂巡り

そして、そんな自分の決意、強い意志を支えてくれるのが、“お守り”だったりする。 しかし、一口にお守りといっても、神社仏閣で手に入れるものに限らず、種類は多種多様。ある意味、結婚指輪も夫婦の誓いを支えるお守りだろう。
中国よりもたらされたべっ甲が長崎で制作されるようになったのは17世紀頃だが、当時、べっ甲のアメ色の美しさとその神秘的な光沢は、お守り的な役割を果たしていたともいわれている。

日本語には“信心”という言葉があるように、願掛けやお守りには先人達の教訓が盛り込まれた伝説に基づくものも多い。それによって、一段と気持ちが引き締まるのだ。 そして、願掛けや手にしたお守りによって、願いが叶ったという場合は、お礼参りや、願果たしの祝宴(報告会)を開くのも、日本古来のいい習わしだろう。
 

一生を決める? 良縁祈願
伝説の老人にあやかりたい
【月下老人の赤い糸のお守り(長崎ランタンフェスティバル)】
さて、開催中の長崎ランタンフェスティバルにも縁結びの神様が! 浜んまち会場、浜屋百貨店前に中国の縁結びの神様「月下老人」が鎮座しているのだ。 月下老人は、唐の時代から伝わるある神話から、結婚が決まっていない男女を結びつける縁結びの神様と呼ばれ、実際、中国では仲人のことを「月下老人」略して「月老」と呼ぶというそうだ。
良縁を求める方、好きな人と結ばれたい方は、浜んまち会場、浜屋百貨店前、「月下老人」前へ。縁結びの神様「月下老人」にあやかった「赤い糸のお守り」が販売されているのだ。ランタンフェスティバル最終日には皆さんの想いが叶うよう、崇福寺で祈願されるそうだ。もちろん、購入だけではなく「月下老人」様に手を合わせることもお忘れなく!


月下老人


しっかり結んで


縁結び祈願を

伝説! 縁結びの神様「月下老人」
なにも書かれていない分厚い本を開いている老人に出会った韋固(いこ)という若い男が、「それは何の本ですか?」と尋ねると、 老人は「月夜の晩にしか読めぬ秘密の本」と答え、月の光に本をさらすと、不思議なことに、見る間に文字かが浮き出てきた。老人の脇には赤い糸がいっぱい入った大きな布袋。 老人は、月の光が持つ時を操る力を借りて、この本に書いてあるこの世の男女の縁組みを知り、月夜の晩に赤い糸を、男女それぞれの足に結んで行くという。
「この赤い糸は、夫婦になるはずの男女の足首を結び合わせるために使うんじゃよ。その二人が仇同士であろうが、遠く離れていようが、或いは貧富の差がどんなに大きかろうが、この赤い糸で結び合わせただけで、二人の縁は生涯変わらず、夫婦となるんじゃ」と言った。 信じられない韋固は、しばらく老人と一緒に歩いていると、老人は、韋固が将来結婚する相手だと、盲目のおばあさんが抱く幼い子どもを示した。韋固は、 老人がわざと自分を侮辱しているのだと腹を立て、下僕にその女の子を殺すよう命じた。そこで、下僕は女の子をナイフで一刺しして逃げた。
14年の歳月が過ぎた。韋固は兵隊を率いて戦いに勝ち、手柄を立てたので、相州刺史(州の長官)・王泰の娘と結婚することを賜った。娘はとても綺麗だが、惜しいことに眉間に傷痕があった。韋固は不思議に思い、王泰に尋ねてみると、「14年前宋城で、子守があの子を抱いて米市場を通りかかった時、ある暴徒にわけもなく刺された。致命傷とならず傷だけですんだのは不幸中の幸いで、この子は命拾いした!」と教えてくれた。
韋固はあの老人の予言がその通りになったのを知って、王泰に、14年前のあの夜のことを一部始終漏らさずに話した。韋固は悟った。月夜の晩、月の光で本を読む老人がいうことは本当だったのだ。
「天意には背けない。男女の縁組みは本当に神が決めるものだったんだ」。 そこで、娘と韋固の二人はこの縁をいっそう大事にして、幸せで相思相愛の生活を送ったというお話。
 

目をつむって運試し?
恋愛成就の恋占い
【諏訪神社の恋占い】
長崎の氏神、お諏訪さんには江戸時代から縁結びのいい伝えがある陰陽石がある。参道の敷石に男石と女石が幾何学的な紋様で埋め込まれたこの石を踏み、最後に拝殿前の「四角に丸型」の両性が合体した石を踏んで参拝すると、縁結びの願い事が叶うといわれているものだが、これとは別に、近頃恋愛成就の恋占いが、静かなブームとなっている。恋愛成就と聞けば、すでに恋人がいる方も、募集中という方も試してみたくなるのが常。お諏訪さん拝殿前の回廊に、20年ほど前からさりげなく鎮座する恵比寿様と大黒様をご存知だろうか?


大黒様


恵比寿様

この木彫りの彫像は、恋愛成就の恵比寿様と大黒様と呼ばれ、目をつむり、およそ5mの二体の間をうまく渡れたら恋愛が成就するといわれているのだ。 男性は大黒様から、女性は恵比寿様からスタートするというちょっとばかりのルールもあるので、間違わないようにどうぞお試しあれ!
初詣客で賑わう年初めから節分までは、残念ながら混雑を防ぐために撤去されているが、節分を過ぎたらまた拝殿前に設置されるそうだ。


大黒様と恵比寿様

さて、結婚を無事終えると、子どもが授かりますように、子どもが授かると、無事に生まれますように、子どもが生まれると、スクスクと育ちますように。そして子どもが大人になれば……と、願いごとは途絶えることはなく、家族が増えるにつれ増えていくものだ。

お腹の中で卵を孵す卵胎生で、しかも卵を抱えるのはオス、という繁殖方法が不思議なタツノオトシゴは、全国的に安産のお守りにされていると聞いたことがある。なんでもその様子が、何の苦もなく生まれるようなので安産にも例えられているのだとか。長崎の中でも野母崎エリアの漁師さんの間では、娘さんのお守りにと持って帰ることもあるのだとか。

また昔から安産祈願なら清水さん!と、清水寺の撫で仏様に安産祈願をする方は多い。その撫で仏様の名前は、賓頭盧(びんづる)様。お釈迦様の弟子である羅漢さんの一人である賓頭盧様に撫でてもらうと諸々の病が治ったことから、信仰を集めているのだ。賓頭盧様の右手ははずれるので、安産祈願の方はこの手でお腹を撫で、また出産後は赤ちゃんの頭や体を無事に成長するように撫でるといいという。
現在、清水寺は復原工事のため参道中頃、駐車場すぐ横にある聖天堂を仮本堂としている。平成22年の落款式まで賓頭盧様もここに祀られているので、妊婦の方も安心して参拝してはいかがだろうか。


賓頭盧様
 

大願成就の守護霊石に
願いを込めて、さぁ、股ごう!
【矢上神社の安産股ぎ石】
お諏訪さんの陰陽石同様、矢上神社の参道の石畳、中段途中に岩石が埋め込まれている。ひとつは楕円、ひとつは八角形に切り出されたこの岩は、その名も安産股ぎ石。五年計画でスタートした境内改修工事の皮切り、平成16年に行われた敷石の改修の際、すでに平成5年に奉納されていた新日見トンネルの貫通時出た玄武岩を使用したのだという。
古来より、危険で困難の多いトンネル工事などで貫通の時に出た岩石は、安産、子授け祈願に霊験あらたかだと伝えられ、大願成就の守護霊石とされてきた。新日見トンネル工事期間中、毎月この矢上神社で工事の安全を祈願してきたある企業が、この大願成就の守護霊石を矢上神社に奉納したというわけだ。
この石を股ぐことによって安産、子授けの願いが叶うといわれるが、矢上神社の金子宮司さんいわく、「昔から男の子には家を建てさせよ。女の子には子を産ませよといいますが、安産に限らず、難しい大願を成就して欲しいと、お母さん達がお子さん達にまたがせていますよ。」

安産股ぎ石
矢上地区では、すでにしっかり浸透している霊石なのだ。


矢上神社参道



宮司 金子さん

さてさて、年を重ねた方々の願いごとといえば、“元気で長生きしますように”。歩いたり、体操をしたり、規則正しい生活を送ったりと、毎日、健康のためによしとされることを実行してはいるけれど、それを後押ししてくれるのが、縁起物を食すという楽しみだ。

中国で古くから不老長寿の果実として尊ばれている桃と、南蛮貿易で伝わったカステラが組合わさった桃カステラは長崎ならではの贅沢なお菓子。ほのかなピンク色の可愛い桃の部分は、フォンダン(糖衣)で描かれている。大人の手のひらほどのこの桃カステラは、長崎では昔から初節句を迎えた女の子にいただくお祝いのお返しに贈る縁起ものだったが、今では季節に関わらず、年中販売している和菓子店が増えた。そして、町中の饅頭屋さんには、いつでもかわいい桃饅頭がある。長寿を祈願し、ぜひ一年に一度は食べておきたい縁起物だ。

桃カステラ

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