◆必見!文化財的価値のある仏像

まずは、これこそはお宝!と指定された文化財仏像をピックアップ!
 

◆エントリー1
観音禅寺の十一面千手千眼観音立像(国指定重要文化財)

月に一度の御開帳で御対面!
長崎半島(野母崎半島)の東海岸、脇岬海水浴場で知られる北方の殿隠山(とのがくれやま)の山裾に、和銅2年(709)、行基(ぎょうき)菩薩開祖の観音禅寺という曹洞宗の寺がある。ここは、なんと平安時代末期に創建された古い寺院の跡に建立されたお寺。創建された当初は真言宗だった。現在のお堂は、江戸時代に再建されたもので、その御本尊は往時から“みさきの観音”と呼ばれ親しまれてきた平安時代末期に造立(ぞうりゅう)された国指定重要文化財の十一面千手千眼観音立像だ。昔から長崎からの参詣者も多く、唐人屋敷近くの十人町から、このみさきの観音様へと続く道を人々は「御崎道(みさきみち)」と呼んだ。福岡は太宰府の観音寺、大分の富貴寺(ふきでら)、京都の仁和寺(にんなじ)にも千手観音像があるが、この観音像も同時代頃のもの。なぜ野母崎半島の先端にこんなりっぱな寺院があるのかというと、昔からこの港は重要な貿易港で中国へ渡る要地だったからだ。ここの港から再びここへ帰って来るように、ここの観音様に願をかけて礼拝したのだという。本堂に入り格子戸越しに天井を見上げると、そこには前回のナガジンで紹介した川原慶賀や石崎融思らによる天井絵(花卉図)が描かれているのがわかる。そして正面には国指定重要文化財の十一面千手千眼観音像が安置されているのだ。とはいっても、この観音像は月に一度、18日のご開帳の日にしか目にする機会がないので、礼拝するためにはこの日に訪れるほかない。平安末期から人々の信仰を集めてきたこの観音立像の間近に立つと、しっかりと目を見開き、正面にある海を見つめているかのように見える。そしてその眼差しは、航海の安全を見守るかのようにとても優しいのがわかる。


【分類●観音菩薩…千手千眼観音菩薩/平安時代に人気を集めた千本の手に千の眼(手のひらにある)を持つ観音。千本の手が全て同じ大きさとは限らず、真手(しんしゅ)の2本と脇手40本を大きく作って、残りは小さくする手法が主流。ありとあらゆる持物を手にしているのも千手観音の特徴。つまりは、これ以上の観音像は考えられないスーパー観音。】

歴史……………★★★★★
面相……………★★★
親しみ度………★★





観音寺・千手観音


観音寺・山門


観音寺・本堂

円通山 観音寺(えんつうざん かんのんじ)【曹洞宗】
●脇岬町2330 095-893-0844
●拝観 毎月18日に御開帳 9:00〜16:30
●JR長崎駅からのアクセス
長崎バス/長崎駅前南口バス停から樺島、岬木場行きに乗車し、観音寺前バス停で下車。徒歩3分。
車/長崎駅前から約55分。
 

◆エントリー2
正瑞寺の地蔵銅像(市指定文化財)

肉感的な地蔵菩薩像に思わず感嘆の声!

この正瑞寺は、江戸時代に深堀地区を治めていた深掘氏ゆかりのお寺。鎌倉時代、深掘氏は関東より下向して来て、交通の要地であったこの地に入り、金徳寺のある場所に居宅を構えてこの正瑞寺を菩提寺にしたという。この深堀氏にまつわる “深掘系図証文”は、佐賀の県立図書館に残されているが、当寺にもその写本があり、これも市の文化財に指定されている。この正瑞寺の本堂に安置されているのが、日本人に最も親しまれてきた“お地蔵さん”こと地蔵菩薩像だ。私達が昔から慣れ親しんできた地蔵像といえば、大半は屋外の祠に祀られている石仏が大半だが、他の仏像と同様に寺院の本尊となっている木像もある。この地蔵像は立像で、中国明代の様式にして崇福寺の本尊である釈迦如来像と同様のものと推測されている寺宝。実は、文化的価値もさながら、このお地蔵様の表情が実に写実的なことと、胸部や後頭部がこれまた実に肉感的なことでも有名な仏像だ。通常、地蔵像の胸部は、他の菩薩像と同様に瓔珞(ようらく)のついた飾りをさげているのだが、ない! 左手の小指の爪など細部にまで写実風の特異な表情が施され、この時代の鋳銅像でこれほど大きなものは少なく貴重なものだという。実に肉感的なお姿に、お地蔵様のイメージを覆される。だが、坊主頭の僧侶の姿には違いなく、右手には錫杖(しゃくじょう)、肘を曲げた左手のひらにのせた桃の実のような如意宝珠を持っておられる。この宝珠は願いを叶えて幸福をもたらすシンボルだ。延宝2年(1674)、長崎の葉山市左衛門より寄進されたこの地蔵菩薩立像は、江戸時代初期の長崎の中国系鋳銅仏師・中山八左衛門の製作。

【分類●地蔵菩薩/地蔵の“地”は大地を指し、虚空蔵(こくぞう)菩薩とで天地を構成するという大地を司る仏。「地獄」「餓鬼」「畜生」「修羅」「人」「天」の六道全てで救済の力を発揮することから、亡くなった肉親の苦しみを地蔵が取り除いてくれるという発想となり、一般庶民がこぞって石仏を作り広く信仰されている。】


歴史……………★★★
面相……………★★★★
親しみ度………★★★



正瑞寺・本堂


正瑞寺・地蔵立像

●放光山 正瑞寺(ほうこうざん しょうずいじ)
【浄土宗】
●高浜町17961 095-894-2317
●拝観は必ず寺務所へ声をかけて! 10:00〜17:00
●JR長崎駅からのアクセス
長崎バス/長崎駅前南口バス停から樺島、岬木場行きに乗車し、高浜バス停で下車。徒歩3分。
車/長崎駅前から約45分。
 


◆エントリー3
崇福寺本堂の仏像群(釈迦三尊と十八羅漢)(県指定有形文化財)

全国的にも珍しい!五臓六腑を持つ仏像
黄檗宗では本堂のことを大雄宝殿(だいゆうほうでん)という。大雄とは釈迦如来のことを指し、つまり、この中に御本尊である釈迦如来坐像が安置されているので大雄宝殿という。一つの寺でこれだけの文化財を擁するのは京都や奈良を除けば西日本随一の崇福寺。この大雄宝殿も実は国宝なのだ。この釈迦如来坐像は、昭和10年頃の仏像修理の際、内部から銀製の五臓と布製の六腑等が発見された。京都清涼寺の国宝釈迦如来立像には絹製の五臓や納入品があることで国宝指定となって有名になったが、金属の五臓があるのはこの釈迦如来像が唯一。全国的にもとっても珍しい仏像なのだ。そして、この五臓には承応2年(1653)化主(寄付集めの世話人)である何高材(がこうざい)、六腑には江西南昌府豊城縣仏師・徐潤陽ほか2名の墨書があるのだそうだ。
そして、この内臓を持つこの本尊を取り囲む形で左右に並んでいるのが十八羅漢像。羅漢とは阿羅漢(あらかん)の略で、尊敬を受ける人という意味なのだとか。つまり仏道を修行して迷いの境地を脱し、煩悩を断ち切り人々の供養を受けるにふさわしい境地を得た人々のこと。確かに悟りの境地に達しているというか、それぞれに違う表情、アクションを見ているだけで「自分はまだまだだな」なんて楽しめる気がしてくる。昔、長崎の人はこの十八羅漢像の中に自分に似た人が必ずいるって言っていたとか。現代人とはちょっと程遠いようだけど、祖先をさかのぼるとこんな感じなのかも。


【分類●釈迦如来/如来、菩薩、明王、天の中で唯一実在した人物で、仏教の開祖だということから、他の如来とは違う位置付け。日本で多く作られた釈迦像の印相は、右手は肘を軽く曲げて手のひらを前へ突き出し(施無畏印/せむいいん)、左手は手のひらを上に向け膝にのせた(与願印/よがんいん)形で、施無畏印は不安や畏れを消してくれる、与願印にはあらゆる願い事を聞き入れてくれるという意味がある。】

歴史……………★★★
面相……………★★★★
親しみ度………★★


崇福寺・大雄宝殿


崇福寺・釈迦如来


崇福寺・三尊仏


十八羅漢


十八羅漢の表情
聖寿山 崇福寺(しょうじゅさん そうふくじ)
●鍛冶屋町7-5 095-823-2645
●入館 8:00〜17:00
●無休
●料金 大人300円・中高生200円・小人100円
●JR長崎駅からのアクセス
路面電車/長崎駅前電停から正覚寺下行きに乗車し、終点・正覚寺下電停で下車、徒歩3分。
長崎バス/長崎駅前南口バス停から田上、茂木行きに乗車し、崇福寺入口バス停で下車。徒歩3分。
車/長崎駅前から約10分。
 

◆エントリー4
日本二十六聖人記念館の銅造弥勒菩薩半跏思惟像(どうぞうみろくぼさつはんかしゅいぞう)(県指定有形文化財)  

小さい姿から放たれる大きな慈愛に感激!
館内1階のガラスケースの中、スポットライトが当てられたこの仏像は思いのほか小さく、像高わずか14cm。男性の手のひら程の大きさなのだ。それにしても丸い椅子に足を組んで座り、頬に手をあててもの思う姿のこの小さな半跏思惟像が、なぜキリスト教の歴史を紹介するこの記念館に展示されているのだろうか? 実はこの仏像、イエズス(キリスト)を象徴するものとして隠れキリシタンが代々守り伝えてきたもので、昭和55年(1980)にその隠れキリシタンの家から寄贈されたものなのだという。どおりで隣にはこれも隠れキリシタンが信仰してきた“マリア観音”が展示されているわけだ。伝来に関しては明確ではないが、おそらく対馬か壱岐、または九州北部沿岸に朝鮮半島金銅仏が流入した頃、中世の倭冦の活躍期が最も可能性が高いと考えられていて、朝鮮半島の半跏思惟像としてもとても貴重な仏像。その移入の過程や隠れキリシタンの護持など、長崎県の対外関係の特色ある歴史を一身に受けたこの仏像をよくよく観察してみる。足は右足を上げて足首を左の腿にのせた“半跏踏み下げ”の形で、そして左手は右足首の上にのせている。右手は肘を深く曲げて右膝につけ、指先を右の頬に軽く触れて“思惟手(しゅいしゅ)”の形をとっている。京都の広隆寺、奈良の中宮寺の弥勒菩薩像と同様の定番の「半跏思惟像」の姿だ。小さいそのお顔には穏やかな優しい笑みが浮かび、この表情に一瞬にして心が解き放たれる。華奢でなだらかな曲線が、小さいながらも包み込むような大きな優しさを感じさせる。


【分類●弥勒菩薩/釈迦の死から56億7千万年後にようやく釈迦に代わって衆生を救済する未来の仏。この弥勒菩薩信仰は飛鳥時代に遡り、平安末期から鎌倉時代にかけて最も盛んに信仰された。定番とも呼べる物思いにふけっているかのような思惟の形は、菩薩が如来になってからの衆生の救済方法を考えている姿といわれている。】

歴史度…………★★★★
面相度…………★★★★★
親しみ度………★★★

日本二十六聖人記念館(にほんにじゅうろくせいじんきねんかん)
●西坂町7-8 095-822-6000
●入館 9:00〜17:00
●休館 12月31日から1月2日
●料金 大人250円・中高生150円・小人100円
●JR長崎駅からのアクセス
徒歩/長崎駅前から徒歩3分。
車/長崎駅前から約1分。

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【仏像の鑑賞ポイント】
【これこそはお宝!と指定された文化財仏像】
【感嘆!感動!ストーリーのある仏像】
【長崎ならでは!中国伝来の仏像】