障害を理由とする差別の解消に関する長崎市職員対応要領第5条に規定する留意事項(平成29年4月5日決定) 障害を理由とする差別の解消に関する長崎市職員対応要領(以下「対応要領」という。)第5条に基づき、不当な差別的取扱いの禁止及び合理的配慮の提供に関し、職員がその職務を執行するにあたって留意すべき事項を次のとおり定める。 1 不当な差別的取扱いの禁止(対応要領第3条関係)について (1) 「不当な差別的取扱い」の基本的な考え方 人は、それぞれ違った個性や能力をもっています。 「区別」とは、それぞれの個性や能力を特色として認めたうえで、対等な関係の下で、その違いを表すものですが、「差別」とは、それぞれの個性や能力に、優劣や上下関係を付けたうえで、その自由や権利を無視し、侵害するなどの不利益な扱いをすることをいいます。 障害を理由とする差別の解消に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、次のような行為により障害者の権利利益を侵害することを禁止しています。 @公共施設の利用及び各種サービスや機会の提供を拒否すること。 A提供に当たって場所・時間帯などを制限すること。 B障害者でない者に対しては付さない条件を付けること。 ただし、障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではありません。したがって、次のような行為は、不当な差別的取扱いには当たりません。 @障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)を行うこと。 A合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱いを行うこと。 B合理的配慮の提供等に必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認すること。 (2) 正当な理由の判断の視点  正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由として、公共施設の利用及び各種サービスや機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないといえる場合です。 「客観的に見て」とは、対応した者の判断(主観性)に委ねられるのではなく、第三者から見てもやむを得ないと納得を得られるような判断(客観性)を備えたものでなければならないということです。 したがって、正当な理由に相当するか否かについては、個別の事案ごとに、次のような観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要となりますが、単に事故や危険の恐れがあるなどの抽象的な理由ではなく、具体的な場面や状況に応じた明確な理由が求められます。 そのうえで、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明し、理解を得るよう努めることが求められます。 @障害者や第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、損害発生の防止等) A本市の事務・事業の目的・内容・機能の維持等 (3) 不当な差別的取扱いの判断の視点と具体例 不当な差別的取扱いについては、個別の事案ごとに判断する必要があり、下記に記載された具体例であっても、差別に当たるかどうかは、総合的・客観的に見て正当な理由が存在する場合は、不当な差別的取扱いに当たらないこともあります。なお、これらはあくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要があります。 不当な差別的取扱いの具体例 @障害者本人を無視して、介助者・支援者や付き添い者のみに話しかける。 A障害があることを理由に、誓約書・同意書等の提出を求めるなど、他者と異なる手続きを課す。 B身体障害者補助犬(盲導犬、聴導犬、介助犬)の帯同を理由に入室・入場を拒否する。 ※身体障害者補助犬:目や耳や手足に障害のある人の生活をサポートする、盲導犬、聴導犬、介助犬のことです。身体障害者補助犬法に基づき認定された犬で、特別な訓練を受けています。補助犬の同伴については、「身体障害者補助犬法」で、人が立ち入ることのできる様々な場所で受け入れるよう義務づけられています。 @盲導犬:視覚障害者が街中を安全に歩けるようにサポートします。 A聴導犬:聴覚障害者にタッチをするなど色々な動作を使って音を知らせます。 B介助犬:手足に障害がある人の日常の生活動作をサポートします。 C聴覚に障害がある方が窓口での筆談を求めた際に拒否する。 D事務・事業の遂行上、特に必要ではないにもかかわらず、障害を理由に、来庁の際に付き添い者の同行を求めるなどの条件を付けたり、特に支障がないにもかかわらず、付き添い者の同行を拒んだりする。 2 合理的配慮の提供(対応要領第4条関係)について (1) 合理的配慮の基本的な考え方 「行政機関等がその事務・事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な措置、取組みを行うこと」が合理的配慮とされます。 ※意思の表明:言語(手話を含む)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む)により伝えられるものです。 また、障害者からの意思の表明のみでなく、知的障害や精神障害等により本人の意思の表明が困難な場合には、障害者の家族や介護者等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含まれます。 (2) 合理的配慮の判断の視点 合理的配慮は、事務・事業の目的・内容・機能に照らし、次に掲げる内容に留意して判断し、実施しなければなりません。 また、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、代替措置の選択も含め、相手方との話し合いによる相互理解を通じて、柔軟に対応することが求められます。 @必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること。 A障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること。 B事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないこと。 (3) 環境の整備との関係 不特定多数の障害者を主な対象とする次に掲げる事前的改善措置について、個々の障害者に対する合理的配慮を的確に行うための環境の整備として実施に努めなければなりません。 また、環境の整備には、ハード面のみならず、職員に対する研修等のソフト面の対応も含まれます。 @高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)、いわゆるバリアフリー法に基づく公共施設や交通機関のバリアフリー化 A意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・介助者・支援者等の人的支援 B障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上 ※情報アクセシビリティ:パソコンやWebページをはじめとする情報関連のハード、ソフト、サービスなどを、高齢者や障害者を含む多くのユーザーが不自由なく利用できることをいいます。 なお、アクセシビリティとは、年齢や障害の有無に関係なく、誰でも必要とする情報に簡単にたどり着け、利用できることをいいます。 (4) 過重な負担の判断の視点 過重な負担については、個別の事案ごとに、次の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要となり、過重な負担に当たると判断した場合は、障害者にその理由を説明し、理解を得るよう努めることが求められます。 @事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か) A実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約) B費用、負担の程度や財政状況 C事務・事業規模 (5) 合理的配慮となり得る具体例 合理的配慮は、具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものですが、具体例としては、次のようなものがあげられます。 なお、記載した具体例については、「(4) 過重な負担の判断の視点」で示した過重な負担が存在しないことを前提としていること、また、これらはあくまでも例示であり、記載されている具体例だけに限られるものではないことに留意する必要があります。 物理的環境への配慮の具体例 @段差がある場合に、車椅子・歩行器利用者のためにキャスター上げ等の補助をしたり、段差に携帯スロープを渡したりする。 A書棚の高い所や低い所等利用者が不便を感じる所に置かれたパンフレット等を取って渡したり、パンフレット等の位置を分かりやすく伝えたりする。 B目的の場所まで案内する場合に、障害者の歩行速度に合わせた速度で歩いたり、左右・前後・距離の位置取りについて、障害者の希望を聞いたりする。 C障害の特性により、頻繁に離席の必要がある場合に、会場の座席位置を出入口付近にする。 D疲労を感じやすい障害者から別室での休憩の申し出があった場合に、別室の確保が困難なときは、当該障害者に事情を説明し、対応窓口の近くに長椅子を移動させて臨時の休憩スペースを設ける。特に女性の場合はバスタオル等を準備し、プライバシーの保護に留意する。 E不随意運動等により書類等を押さえることが難しい障害者に対し、職員が書類を押さえたり、バインダー等の固定器具を提供したりする。 F災害や事故が発生した際、館内放送で避難情報等の緊急情報を聞くことが難しい聴覚障害者に対し、電光掲示板、手書きのボード等を用いて、分かりやすく案内し、誘導を図る。 意思疎通への配慮の具体例 @筆談、読み上げ、手話、点字、拡大文字等のコミュニケーション手段を用いる。 A意思疎通が不得意な障害者に対し、絵カード等を活用して意思を確認する。 B通常、口頭で行う案内を、紙に書いて渡す。 C書類記入の依頼時に、記入方法等を本人の目の前で示したり、分かりやすい記述で伝達したり、本人の依頼に応じ、代読や代筆といった配慮を行う。 D視覚障害のある委員(又は関係人)に会議資料等を事前送付する場合に、読み上げソフトに対応できるよう電子データ(テキスト形式)で提供する。 E比喩表現等の理解が困難な障害者に対し、比喩や暗喩、二重否定表現などを用いずに具体的に説明する。 F障害者からの申し出に応じ、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対する。また、なじみのない外来語は避け、漢数字は用いず、時刻は24時間表記ではなく午前・午後で表記するなどの配慮を念頭に置いたメモを必要に応じて適時に渡す。 G会議の進行にあたり、資料を見ながら説明を聞くことが困難な視覚又は聴覚に障害のある委員や知的障害を持つ委員に対し、ゆっくり、丁寧な進行を心がけるなどの配慮を行う。 ルール・慣行の柔軟な変更の具体例 @順番を待つことが苦手な障害者に対し、周囲の理解を得たうえで、手続き順を入れ替える。 A立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の理解を得たうえで、当該障害者の順番が来るまで別室や席を用意する。 Bスクリーン、手話通訳者、板書等がよく見えるように、スクリーン等に近い席を確保する。 C車両乗降場所を施設出入口に近い場所へ変更する。 D施設内の駐車場等において、障害者の来庁が多数見込まれる場合、通常、障害者専用とされていない区画を障害者専用の区画に変更する。併せて、ガイド(案内する者)を配置し、又は案内を見やすい位置に表示する。 E他人との接触、多人数の中にいることによる緊張等により、不随意の発声等がある場合に、当該障害者に説明の上、施設の状況に応じて別室を準備する。