遠藤周作文学館
遠藤周作文学館 > 文学講座 > 第34回文学講座(H29.8.5)

第34回文学講座(H29.8.5)

題目
踏絵と日本の美――遠藤周作『沈黙』に導かれて
講師
マコトフジムラ氏(画家)、加藤宗哉氏(作家)

 平成29年8月5日(土)、「マコトフジムラ「沈黙と美」展―巡礼―」の関連イベントとして、マコトフジムラ氏(画家)と加藤宗哉氏(作家)の対談を実施しました。
 フジムラ氏の新著『沈黙と美 遠藤周作・トラウマ・踏絵文化』(晶文社、平成29年2月)をもとに、信仰や日本の美、遠藤文学のテーマとの関連についてお話しされ、遠藤文学の本質、ひいては芸術の源泉にふれる対談となりました。
 対談の冒頭、加藤氏は『沈黙と美』について、「最上質の『沈黙』論であり、最上等の日本文化論」と絶賛しました。さらに、遠藤文学とフジムラ氏の芸術の捉え方には同様のものがあるのではと指摘。フジムラ氏からも自身の境遇と遠藤との共通点が語られ、二人の芸術の本質にある〈人間の痛みや苦しみ〉というテーマについて意見が交わされました。
 話題は映画『沈黙―サイレンス―』に移り、勝つか負けるかが重要なアメリカでは、映画の最後の場面が問題になったと、フジムラ氏は話します。ロドリゴがキチジローに自分のステージを明け渡すという演出が負けにつながるということで、受け入れられなかったそうです。フジムラ氏は、「勝つことが大事でマイナスなことは避けるべきという考え方では現代社会は生きづらいが、何かに直面した時に文学を通して体験していれば立ち向かうことができるのではないか。これからを生きる子供たちに、自分が遠藤文学に救われたように、芸術によって希望や真の美を伝えていきたい」と一語一語静かに語られました。
 最後は加藤氏によって、苦しみやつまずきというのは誰もが体験することであり、遠藤の小説とフジムラ氏の作品には人の哀しみや苦しみに対する共感が描かれているからこそ多くの人を感動させているのだろうと、二人の作品が持つ芸術性についてまとめられました。
 フジムラ氏が遠藤文学を「痛みの文学」と表現したように、苦しみの中に美しさを見ようとする、暗さではなくそこに射す一条の光を信じることを描く遠藤文学の魅力を改めて感じる感動的な時間となりました。