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開館時間

AM9:00~PM5:00
(入館受付PM4:30まで)

休館日

12月29日から1月3日まで

観覧料(個人)

一般360円、
小・中・高校生200円

観覧料(団体)10人以上

一般260円、
小・中・高校生100円

長崎市遠藤周作文学館

〒851-2327
長崎県長崎市東出津町77番地


TEL:0959-37-6011
FAX:0959-25-1443

email:endoshusaku_seitan100

@city.nagasaki.lg.jp

第25回文学講座(H26.2.15)

題目
『沈黙』――共苦という視点
講師
長野秀樹氏(長崎純心大学)

 平成26年2月15日、講師に長崎純心大学の長野秀樹氏をお招きして文学講座を開催しました。

 長野氏はテーマを「『沈黙』――共苦という視点」と題して、作品の全体構成を語り手の視点に着目して、『沈黙』についての一つの解釈論をお話くださいました。まず講座の導入で、「共生」という言葉はよく聞くが、ともに生きようと声を発するのはいつも強い側の人間ではないだろうか。そこには「共生」という言葉だけでは抜け落ちてしまう何かがあるのだとすれば、別の思想があってもいい。そこで「共苦」という言葉を使って、その意味について考えてみたいと話され、作品の読解に入っていくにあたって次の問いを提示されました。

 「なぜ、ロドリゴは初対面の日本人(キチジロー)の年齢をわずか二歳の幅で断定したのだろう?」

 この素朴な問いは、ロドリゴの視点の変化を読み解く鍵となります。

 作品前半部のロドリゴの視点で語る「セバスチャン・ロドリゴの書簡」では、ロドリゴが日本人に向ける視点は同情と憐れみ、そして自分たちの基準で物事を断定する強者の視点に立っている。少なくとも日本に上陸した時のロドリコは信徒のために踏絵を踏む人間ではなかっただろ。それが共に苦しみを分かつという「共苦」の視点へと変化していく、と長野氏はロドリゴの視点の変化を指摘されました。語り手の視点に着目して丁寧に作品を追うことで、改めて『沈黙』の根底に流れる主題を分かりやすく解説してくださいました。さらに、ロドリゴが踏絵をふむに至るまでの変化とは「共苦」の生き方に近づく過程であることが作品から読みとれるという解釈を示されました。

 本講座では<ロドリゴの視点の変化>を軸にして、場面ごとに作品を分析する作業ではなく、作品の全体を通したテクスト読解の大切さを受講者とともに味わう機会となりました。